2024/06/18 のログ
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ご案内:「魔族の国」にイェルドさんが現れました。
ご案内:「魔族の国」にコルチカムさんが現れました。
イェルド > 俗に魔族の国と呼ばれる地は様々だ。
色々なものが住まう以上、大なり小なり必ずできてくるものがある。社会、というものだ。
食うか食われるか、如何にして身を守るか、という寄合から、管理社会の巧みさを競うようなものまで、多種多様。
規模も様々だ。集落から街、街から堅牢な壁を張り巡らせた都市国家のレベルまで。
その内の一番最後、高く分厚い壁に囲まれた或る街に魔大公を名乗るダークエルフが居た。

「……――この辺りまで来るのも、久方ぶりだな」

奴隷蒐集趣味を持つ魔貴族が治める広大な都市は防衛のためではなく、奴隷を逃さないために高い壁を築いている。
掻き集めた奴隷を売買し、或いは貴重な種など特色がある者ならばオークションを開く。
その在り方は、マグメール王国の側と然程変わりはない。どれ程似て、非なるのか。知ればふと思いたくなる程と言える。
様々な外見の者が行き交う通りの中、装飾を施された白いローブを被る姿がフードの中から目を遣って嘯く。
フード姿というのも、この街ではそう珍しくもない。
顔を隠したい者も居るし、そうでなくとも誰何されない程度にはファッションとして浸透している。

「この先の商人に荷を渡したら、少し歩くか。コル」

そんな姿が背後に遵えるは二つ。二頭立ての幌馬車と侍従とするダークエルフの女だ。
車軸を軋ませる幌馬車には、いくつもの木箱が積み込まれている。
中身は果実酒。全て闇深き森の国で醸造された高級酒だ。
場末の酒場にはもったいない程のそれらは、然るべき処に卸せば十分な金になる。
以前から付き合いのある商人だ。魔法で品を引き渡すのが容易いが、色々と仕来りと作法がこの街にもある。仕方がない。
御者もなく、ただ歩くだけでついてくる馬の横顔を労うように撫でつつ、ローブ姿が声を放つ。

コルチカム > 黒い髪の毛をさらりと流し、額飾り(サークレット)を頭に付けているダークエルフが一人。
 髪の毛や複の色に溶け込んでしまいそうな、確りとした外套を身に纏っていて、体のラインは見えて居ない。
 女の対比となりそうな、白い色の豪奢なローブの男性の少しだけ、前を歩いている。
 獣のような視線は周囲を捉え、威嚇とは言わないが、警戒の色を隠すことはない。
 高貴なものとその侍従という関係は、見て取れて、そのうえ、それを隠してはいない模様。

 この町では、それでも当然だと言って良い、マグメールも治安はよろしくはないが、此処はさらに宜しくない。
 往来で肩がぶつかり、それで殺し合いになるというのさえ、儘ある話。
 それでも、他の場所よりははるかにましと言うより、此処が治安が良いと言われる部類の場所に有るのだ。
 人に様々いて魔族も様々あり、そんな中の治安。
 だからこそ、今この状態でも、襲い来るものは可能性としては有るから、戦士は周囲を見定める。

「―――。」

 久しぶりと言う主の言葉に、返答はなく、白いリップの唇は動くことはなかった。
 ネガティブ(反抗的)な理由では無くて、単純に覚えていないだけの話だ、サークレットの力で頭が良くなったとして。
 補正前の状態を良くすることは、まあ無理だろう。
 ただ、奴隷だった――今も奴隷だ、と言うことぐらいしか、覚えていない。

「どちらかに、目的があるので?」

 その後の言葉に対しては、ハスキーな声で戦士は問い返す。
 理由などは如何でも良い、目的が知りたいだけだ、行先を知り、其処迄の護衛を考える。
 役割を役割として認識し、十全に動くための知識を求めただけ。
 それ以上の理由などはなく、元の性格からも、戦士であり、細かいことを気にするような女では無かった。

イェルド > 主と侍従とする女の背丈は同じ程度。身体のラインは兎も角、顔を隠してしまえば正体は伺い辛い。
奴隷売買を主産業と謳われるような街だ。
顔を出して売り買いをするのは面倒、厄介という点もある――らしいが、それもまた個々による。
真偽定まらない噂だが、マグメール王国の方から魔族と関わりを持つ人間が出入りしている、という話もある。
その点、どうだろうか。己はどうだろう? 何を隠す程のこともあるだろうか。
この白いローブは国の主、魔導士としての正装でもあり、戦装束の一つでもある。
杖の類は手になくとも、ローブの腰に巻いたベルトより腰に下がる剣もまた、護身以上の意味合いを持つ。

その上で侍従を従え、侍らせるのは何故か。
見栄えだけではない。些事を任せることで、その分出来ることが増える。

「覚えてはいない、か。オレがお前を買った街でもあったんだがな」

そんな今、侍従とする同族は拾ったのではない。出物として買ったのだ。
言葉に返答のない有様に肩を揺らし、フードを下ろせば風に触れる銀色の髪が揺れる。
魔性を帯びた金色の瞳を細めつつ、思うのは蛮族の出の女に下賜した額飾りだ。
知力を格段に増強するそれでも、そもそも覚えていないことまで汲み上げ、想起する――というのは無理な相談だろう。

「この先の店に用がある。転移魔法で物を送り付けても良かったが、その辺りを阻害する結界が面倒でな?」

歩きつつ目線を前に遣れば、屋敷めいた広さと大きさの商家が見えてくる。
店舗も構えているが、倉庫や荷解き場なども兼ねたバックヤードの方が寧ろ敷地の多くを占めている。
店の軒先を差配している、山羊面の魔族がダークエルフの若造の姿を見れば、揉み手で駆け寄ってくる姿に目礼を一つ。
来たぞ、と。引き連れてきた馬車の方を見遣ろう。
魔族が店の奥に声を張り上げれば、暫くして奴隷らしい半裸の人足と蝙蝠の翼を背負ったような別の魔族が来る。

「……大人しく従え

手綱を取ろうとする姿に馬が暴れかければ、声に抑揚をつけて馬に文字通り言い聞かせる。
それだけでしん、と。大人しくなる。ただの馬ではない。馬のように見えるが魔獣だ。
口元に覗く鋭い歯列は飼い葉を食む以外の用途が強く、禍々しささえ伺える。馬車を引きつつ、裏手に誘導してゆく姿を眺め遣る。

コルチカム > 確かに、実力で言うのであれば、主の実力の方が上であり、コルチカムが護衛に居る必要が無いように考えられる。
 しかし、それは違うのだ、強ければ護衛が要らないという訳ではない。
 万が一のことを考えた際に、主よりも強い物が現れたときに、その身を犠牲にし、逃げる時間を稼ぐ存在も必要となる。
 その為の護衛が、コルチカムである、奴隷であることを考えれば、その積りなのだろう、主は兎も角、護衛に任命した将軍の意向は。
 それに、些末事―――顔を出しての交渉など、そう言った物も又、コルチカムの役割なおんだ。

「此処が。」

 コルチカムは、秘境も秘境、文明などさえないような場所。世界樹と呼び習わす大樹の基にある大森林の生まれで、育ちだ。
 しかし、村の禁忌を破り、追放され、当てなく彷徨い力尽きて倒れて奴隷商に拾われる。
 ダークエルフならではの容姿が目を引いたのだろう、奴隷商の目が鈍らで助かったのは。
 コルチカムの持つ武器は、木剣―――棍棒だが、世界樹の木を削られており、魔法の武器なのである。
 聖属性を帯びているうえに、世界樹を切り倒すような実力が無ければ、破壊する事の出来ない武器だ。
 それだけでも一財産だが、それもセットで買われたのだと、聞いた事が有るような無い様な気がする。

 主の言葉で、此処で買われたという事は認識したが。だからと言って、其処に感想が浮かばない。
 今の生活が全てであり、今の活動が喜ばしい、ならそれでいい、と。

「はい、承りました。では―――その後です。」

 大きな商会、様々な物を売っている店と言う認識はある。
 此処の主とも、顔を合わせたことも思い出す、その際も、酒をやり取りしていたか。
 積み荷は、今回も前回も同じものであるから、何かなければ前回と同じやり取りになるのだろう。
 山羊の頭の魔族が近づいてきた。判っているからか、自分では無く主に挨拶する様を見やる。

 馬は、主以外に従うのが嫌なのが判った。
 それを察した主が先に釘を刺した、だから、馬は―――魔獣は大人しく従っていく。
 それに対して、コルチカムは主に一つ礼をして、魔獣と馬車について行く。
 その理由は、単純だ、荷物の受け渡しの為の確認作業。
 主の荷物をくすねたり誤魔化したりするなら、ぶっ殺す為。

イェルド > 強くなければ王と呼べない。名乗れない。魔族が棲む領域であれば猶のこと、力なき王とは考え難い。
だが、護衛や配下が必要ではないのか?と言えばそうでもない。
隅々まで支配を及ぼすための手先としてもそうだが、意を汲める誰かが従うなら、万一の際の対処も容易い。
先代が退位して以来の配下の一人たる将軍が、侍従を定めよと常々苦言を呈していたのもその辺りからだろう。
現場判断、即決即断が必要な交渉事で、背後に控えているものの有無もまた、意外と大きいこともある。

「……偶々の掘り出し物だったか、あの時は。
 別に同族が売りに出てもおかしくない場所には違いないが、他所の地の同種というのが気になってな?」

奴隷含め、物品のオークション会場は冷やかしに混じるだけでも眺めると面白い場所だ。
顔を隠すだけに飽き足らず、代理人をやってまで金銀財宝を出し合い、競う場所は他者の背後関係を想像できる。
購入する対象は何か。どれほどの代価を出したか。買い上げたものは何処に送ったか、等々と。
だが、あの時の己もまたそうした値踏みの対象とされた――のかもしれないか。
同種が売りに出されていた時のことを思う。
セットに売りに出されていた品々も含めればまさに一財産だったが、それに見合う価値はあった。
他所の地の同族の存在、その地にある事物のサンプル等々。買い上げた対象の個人の能力、武威も含んで考えるなら猶更に。

「土産を買って帰るつもりだが、それはここに任せればおおよそ事足りる。付き合いが長いからな。
 ――例の市場を見て回るか。
 
 別にお前以外の誰かを買いたいワケじゃないが、今の流行りとやらを見ておきたい」
 
土産と言ってもその範囲は大きい。森では入手し難い鉱物や珍しい野菜、果物の種。
出入りの商人に任せるのではなく、わざわざ己が出向かなければ、首を縦に振らないような品もこの店は商っている。
ローブの下から取り出す紙束は予め買うもの、当座必要になるものを記したものだ。
大口客を遇するように茶を飲んでいかないか、と勧めてくる山羊頭に丁重に断りつつ、取り出した紙束を託す。
今回捌きに来た果実酒の金額と差し引きで、釣りは十分に出るだろう。くすねたりごまかしでもしたら、否、それ以前の問題だろう。
荷下ろしを見守るように車に付いてくる侍従に声をかけ、荷下ろしを終えるまで待つ。

戻ってくれば、街を見に行こう。
注文の品の目録と言える紙束を改め、店奥に下がる山羊頭が荷下ろし後の馬車に品を揃えてくれるだろう。
如何に多芸、魔力のある魔族とて、直ぐに荷造りはできない。其れなりの時間がかかる。

コルチカム > 「過程はどうあれ、私は主に買われました。
 今の待遇には感謝しかありませんし、今後とも忠誠を誓っていくだけ、です。」

 過去は覚えていない、と言うよりも、未だに、頭飾り(サークレット)を外すと、今でも記憶があいまいになってしまう。
 だから、コルチカムは奴隷なのに、専用の着替え用の部下がいる。
 本来のコルチカムは、蛮族で、頭飾り(サークレット)の力で、今の思考、言語、性格を保っている。
 それが無いと全裸でうろついたり、どこかいったり、ちょくちょく大騒ぎになる。

 閑話休題(話が逸れたから戻すと)

 戦士としての扱いも、食事などの供給も、何もかも、喜ばしいと、コルチカムは思っている。
 大公に忠誠を誓い、共に歩むことを望む。プライドの高いエルフをもってしても、そう感じるぐらいに。
 そして、自分を拾った奴隷商の目利きの悪さが、主の運の良さなのだろう。
 最初、値段を出した際に、一瞬静まっていたのを、思い出す。
 そして、奴隷商が、不人気と勘違いしたか、さらに値下げから始まり、その後の競売で主が買い落したのは、思い出す事が、出来た。
 その場所が、この町だったと認識できなかったのは、頭が悪いのと、目隠しもされていたからだろう。

 ――――しばしの時間が、過ぎる。
                  喜ばしい事に、従業員の悲鳴は聞こえてこなかった――――

 戻ってきた際の、目的地を確認する。
 自分が買われた、奴隷商に足を運ぶとの主の言葉に、一つ頷いて見せる。

「戻りました。
 そうですか。、奴隷市場に行くのですね。
 畏まりました
 有能なのが居れば、良いのですが。」

 大公の軍も、それなり以上には実力があるモノだ。
 しかし、それで安心して居れば、魔族の国ではやってはいけない、奴隷を買うというのも手段だが。
 本来は敵を倒して、従属させるというのは普通だ。
 それはそれとして、有能なものが、転がって居る事が有るのだ。
 自分も、その掘り出し物と言う部類になるのだし、そうでなくても、文官方面で頭のいい存在は奴隷になる事もある。
 未だ荷づくりには時間がかかりそうなので、奴隷商の館の方に、主を先導する様に、足を進める。

イェルド > 「そうだな。あの時、競り落として本当に正解だったと。オレはそう思ってるよ」

ただ、馴らすまで色々あったが、今思えば笑い話にもなるだろう。
奴隷としての主用途は武力と性欲処理。或いは繁殖用。後継の作り辛さは長命種としてどうしても付き纏う。
単なる腕力、武力面については、購入時に添えられていた品々と謳い文句のお陰で申し分ない。
――寧ろ、なぜあの時誰も気づいていなかったんだとも思う程だ。奴隷商もその時に参列していた客たちも。
見れば分かるだろう、という魔導士としての勘、知識の無さも若しかしたらあったのかもしれない。

故に総じて、運が良かったと言えるだろう。
競り上げではなく、お誂え向けに在庫を捌かすつもりで競り下げて程々の値にしようとしたところで、即決した。
王国風に言うのであれば、こう言うのだろう。ウィンウィンという奴だ。オレによし。お前にもよし。
使い勝手を上げるために秘蔵のマジックアイテムを持ち出したが、これもまた文句のない投資の一つ。

……そんなことを思い返す。

シたくなったときにシようとする時のあれこれは、改善できたかどうかはさておき。
奴隷の悲鳴は聞こえても、奴隷頭含めて従業員の悲鳴の類はリピーターをしている側としては大変喜ばしい。
悲鳴をさせる以前に、即死魔法で速攻で口封じ、対処をしたのかもしれないが、配下の監督の上では問題なかったのだろう。そう判断する。

「コルのように使い出のあるのが居る、とは限らないけどな。
 だが、この街は大なり小なり、様々な奴隷を商って成っている。……いつぞや俺とお前でフクロにした魔族でも流れ着いてたら、笑おうか?」
 
一つ間違えれば、今の自分たちもそうならないとは限らない。
身を落とさぬように立ち回り、生き残るためには?強くなるしかない。単純なことだがそれが難しい。
慢心しないためには何が出来るのだろう? 分を弁えるには住処に篭ったまま、立てこもったままではいられない。
配下たちから良い目で見られなくとも、頻繁に居城を留守にするのはそのためだ。
そのうちマグメールの王都に出先の拠点として、運送屋のようなものでも設えて、移動のための魔法陣でも仕掛けてみようか。
腹案として、そう思っていたりもする。実行に移すにしても、留守を任せられるような人材の確保は随時進めなければならない。

あとは――慰み者の類も、もう少しいても良い。

嗤い話のように言葉を放ちつつ、先導するような配下の足取りに続く。
オークション会場も備えた奴隷商が集う区画は、そう遠くない。
見えてくるのは裸の四つん這いで放し飼いにされた人間、檻に入った獣人やミレー、鳥籠のような特別な牢に繋がれた魔族――等々。

コルチカム > 「そうですね、雑魚がその身にふさわしい場所に堕ちた、と、確認してあげましょう。」

 笑うなど、とんでもない。武人として考えて話すのならば、それこそ、無視の方が良い。
 其処に意識を裂くほどの存在ではない、お前なんぞ、敵ですらない、その辺の路傍の石なのだと伝えてやろう。
 勝ち負けは実力の差だ、そして、負けてしまえばすべてを失う。それは、コルチカムも通った道だ。
 全てを失い、新しい物を得る事が出来た、それは望外の幸運と言う奴なのだろう。

「で、どういうのを見繕うのです?」

 様々な理由で、人権を失った者たち。
 奴隷の檻を横目に見ながら、問いかける。
 繁殖目的ならば、同種のダークエルフだろう、ただ、近似種のエルフでもできる。
 主がエルフを甚振りたいなら、それも良い。
 自分のような肉体の雌―――一応、美人の部類だと部下には聞いている。
 そう言うタイプが欲しいのか、それとも、飽きが来ないように、別のタイプが欲しいのか。
 主が望むならいつでも抱かれるつもりではあるし、実際何度も。

 そう言う意味(性的な)方の問いかけと。
 そうじゃない方(実務的な)方の問いかけ。

 両方をいっぺんに混ぜて言うのは。
 コルチカムはそのどちらも見繕う、敢えて言うなれば。
 態々分けて聞くのが、面倒くさいから、と言うのもある。

 徐々に近づき、それに従い、奴隷の質も上がってくる。
 もうすぐ入り口に到着するだろう、そんな距離感、ぐるり、と見回す。
 様々な奴隷、様々な客。
 気の抜けない、現状。

イェルド > 「ははは。とは言え……流れている方がまだ、幸運な方かもしれないけどな?」

戦場で闇討ち、奇襲、約定を違える等、何も珍しいことではない。律儀すぎる方が珍しい。
とは言え、卑怯と呼べる手を使ってもなお勝てなかった者こそが嗤われるべきである。そう思う。
武人という生き物の作法、考え方は理解できる。
だが、武人としての在り方を尊重せず、歯牙に掛けない手合いの末路こそ嗤われるに足るべきだろう。
そんな者たちが生きて、苦界に身を落とし、生き恥を晒すのは――晒せるだけまだ幸運だ。そうでないことが、逆に多い。

「……――種付けの雌は肌の色がどうあれ、どれだけ居ても良い。
 が、もう少し政が分かる奴が良い。それと農事だ。
 先々を考えると、荒地を開墾して森を広げるか、畑を作れるようにしたい」
 
侍従にして下僕の見立ては実に正しい。
祖先かそれに近い年寄りはエルフに憎悪を持っているものが少ないが、自分にとってはそうではない。
ただ、堕として雌に出来たら、面白そうだ。そう思う。
人間や魔族達の考え方と言葉を借りるなら、奇麗どころはどれだけ侍らせても困らない、といったところか。
嗜好を言えば枯れ木のように細いのではなく、己が愛すべき下僕のように出るところがついていれば、もっといい。
其れと同時に、知能的、知識層ともいえる者たちは、種は問わずに欲しい。有能な人材はいつでも欲しい。

「ただ、頭が良い奴は口が回る。奴隷に落ちても尚も口が閉じない奴は、さて。どれだけ生き残るかな?」

問題は有能なものほど、奴隷だと先に死にかねない。
使えるものは使い倒すだろうし、口煩いものは静かになるように躾けるか、最悪言葉を奪うか。
丁度見かけた奴隷商の軒先を冷やかしついでに眺めよう。
淫魔の類だろうか。奇妙に整っていながら、青白い顔立ちの商人に片手を挙げつつ、形状様々に並ぶ檻を眺める。

コルチカム > 「それをどう思うかは、本人しだいですね。」

 戦士で考えるなら、死んだほうがましと思うだろう、過去の自分もそう思っていた。
 頭飾り(サークレット)を付けられて、滾々と説明されて、今はそれを撤回はしている。
 今は、恩ある主の為に命を使う事に決めている。
 そう言う意味で言うなら、確かに生き恥を晒して生きているのだ。

「主の好みを2~3程。
 後、知識奴隷、農奴ですね。」

 コルチカムがこんな風に会話が出来るのは単に頭飾り(サークレット)のお陰なのである。
 知識のブーストをしっかりしてくれる其れのお陰で、普通に使えるレベルまで会話が出来るようになっている。
 今現在は、条件の確認と言う所。
 この店にそのランクにある奴隷が居るかどうかはまた別だ。
 確かに、見目麗しそうな存在は居るのだけども、同にもマナが怪しい。
 何かしらがあるのだろう事が見て取れる、騙すつもりなのか、体に病を患っているか。
 繁殖用とするなら、患っているのは論外だ。

「本当に頭が良い者は、口を閉じます。
 誰だって、死にたくはない物ですから。」

 頭飾り(サークレット)で、知識のブーストがすごい事に成っているコルチカムだから。
 本当に頭がいいならば、と考える。
 無駄に知識を開かして使い倒されたり、殺されたりはしないだろう。
 寧ろ、奴隷商に取り入ったり、口を先に閉ざして阿呆のふりしてしまうものだ。
 あと。
 そう言った物を専門に扱う所に、行った方が確実とも、思うのだ。

イェルド > 「仮にオレがそうなるなら――……恥ずかしさの余りに生きてられないな。
 そうならんように立ち回るし、考えもする。手の限りを尽くす」
 
そうだな、と。短く答えつつ、同時に思う。
魔導士であると同時に己もまた戦士だ。生き恥は晒したくないということは納得も出来る。
同時に為政者、政を任された者としての認識もある。
己が死ぬときは、同時に国が亡ぶということに繋がり得る。そうでなくとも、森が焼かれる事態は避けたい。
闇の恩寵こそあれ多様な生き物が棲み、恵みをもたらす森だ。
そんな土地を楽しみの一言で焼けるのが魔族であり、人間でもある。悪辣さはいずれも負けず劣らずと言ってしまえる。

「ああ。今日のこの場でどうにかなるなら、それ位居れば良い。……居れば、だが」

例の額飾り(サークレット)は、宝として秘蔵せずに下賜して正解だった。奴隷の使いでが増すどころか、倍増しているとも言える勢いだ。
今の会話における条件の確認がそう。誰でも良いわけではない。見繕うにしても、よくよく考慮しなければならない。
商人はあぶれている在庫を早々に片したい。だが、金銭を支払う側としては希望に適うものを欲する。
侍従の見立てと並行して、同時に白いローブ姿が顔を巡らせる。
視線を合わせて媚びを売るもの。嫌悪の目を向けるもの。死んだ魚と見紛うような虚ろな目をしつづけるもの。色々居る。

「クク、そうだな。全くその通りだ。
 ――でだ。黙り込んでいるお前はどうだ?オレの目に適うものや否や?」

底上げ、ブーストされた知性をさらに補佐し、吟味を加える。
檻の一角で只管に口を噤みながら目を向けてくるエルフが居る。この辺りで見ない特徴はマグメール王国から来たものだろうか?
そう思いつつ、今ここで希望に適う者が居れば、店の者を呼ぶ。目録と特徴の確認等を行い、健康状態も確かめて買い付ける。
思いつきのまま、でも構うまい。今の侍従にして奴隷のように良い物であれば、何処までも使い出がある。

商談が整えば、一番最初の店に戻る際に身なりを整え、伴わせよう――。

ご案内:「魔族の国」からコルチカムさんが去りました。
ご案内:「魔族の国」からイェルドさんが去りました。