2023/12/26 のログ
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ご案内:「魔族の国」に天ツ鬼さんが現れました。
天ツ鬼 >  
──より強い力を求めた時。
特に、肉体に根ざした力、フィジカルのパワーを高めたい、そう思った時。
人であればひたむきに鍛錬し、より強固な肉体を手に入れるべく励むだろう。
つまるところそれは己との闘いとなる。

では人外ではどうか。
常人ならざる肉体を生まれ持った強生物がより強い力を求めた時。
己と向き合い肉体をひたすらに鍛える…というのは想像し難い。
中にはそういった者もいるのかもしれないが。

というわけで、より強き力を求める女鬼は魔族の国にやってきていた。
無論、強者との闘争の中で己をより鍛えあげるため。
ここのところの連敗はそれなりに響いた。
特に直近の敗北のうち一つは完全に力勝負もフィジカルで負けていた故に。

──魔族の国の荒野。そこを根城にした巨躯の魔獣。
大きな一本角を持つそれは女鬼と比較しても大人と子供以上のサイズ差がある。
荒ぶる獣は突然目の前に立ちはだかった女鬼を目掛け、地を蹴り突進する──。

天ツ鬼 >  
先ず。己と相対し逃げぬところが素晴らしい。
意外とこの地においても、女鬼を見るや警戒し逃げる獣は多いものだった。
故に、その猪突猛進が何よりも好ましい───。

「むんっ!!!」

両腕を広げ、突撃する獣の一本角を抱えるような形で突進を受け止める。
両腿の筋肉が隆起し、踏ん張りを見せるも圧倒的な体重差。設置する大地を刳り、大きく後方へと押されてゆく。
しかしそれも数秒のこと、長い轍を作った先で、魔獣の突進は前に進まなくなる。
幾度地を蹴り、抉ろうとも。巨大な壁に阻まれたかのように───。

「くく…!良き猛進…っ!!」

両腕、そして膂力の要となる腹にメキメキとありったけの力を籠め、今度は女鬼が前へと進む。
大角を抱えられ、その野太い首を完全にロックされている獣は大きく暴れることも出来ず、一歩、また一歩を押し返され──。

天ツ鬼 >  
「ぬ…おぉオォォオオォォッ───!!」

咆哮一線。
大木を引き抜くかの如く、角を起点に女鬼が魔獣を薙ぎ倒し──、そのまま、抱えた大角を圧し折る。

─────!!

女鬼に続くように魔獣は咆哮をあげる。
しかしその咆哮は魔獣の喉笛に全身で絡みつき締め上げる女鬼の手によって掻き消され──。

ゴグンッ、という鈍く大きな音が荒野に響くと同時、巨体が大地へと倒れ伏す。

「ふふ…なかなかの大物……さすがのぱわーじゃったな…」

魔獣の角に続き、首を捻り折った女鬼が疲労困憊で座り込む。

「…ここらのヌシかと思ったが。単なるでかい野の獣か…?」

知能の高い獣であれば魔法の類すら使う。こういった原始的な闘いをする獣では、ヌシなどという器ではないだろう。多分。

天ツ鬼 >  
「煮ても焼いても食えそうにないのう。…どれ、角くらいは売り物になるか…?」

一休みから腰をあげ、圧し折った…転がる大角の元へ。
拾い上げ地に突き立ててみれば己の上背よりも長大な角。立派なものである。
人間の国と違い、魔族の国であれば己の容姿を気にせず村や町に入れることも理解った。
それなりに良い金にはなるか、と思いつつ、運ぶのが難儀であるなと笑う。

魔獣の角を担ぎ上げ、適当ない方向へと歩みだす。
確かあっちに村落だか町だか街だか城だか…あったような気がする…。

一々地理を覚えてもいない女鬼は飽くまで適当に、荒れ地を歩いていった