2025/02/17 のログ
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ご案内:「タナール砦」に銀華さんが現れました。
銀華 >  
 それは雪の日だった。
 そこら中まだ雪の濃さも降り積もる雪の量も大したことはない日々
 ポツポツとしたものばかりで街道沿いでの困難な話も聞かない。

 しかし、雨が降り注いだ後の空気の冷たさのように、人の頬を刺すような冷気
 あの独特なツンと鼻につく空気の匂い。
 それらが訪れれば歳重ねた人間ならおおよそわかる ああ、今切っ掛けができれば雪が降ってしまう、と。


   「―――降ってきたか。」


 タナール砦 午後 黒い雨雲は濃い灰色へと転じて雪を降らせる空

 自身で言えば故郷に比べ、雨がただ転じただけの雪など大したものじゃない。
 雪が雪として降り積もろうとするあの大粒の、重く積もろうとするものに比べればかわいいものだった。
 だが周囲は、人であろうとも魔であろうともそれを悦び肴にするような酒狂いでもなければ
 体を冷やし、酒を欲し、温もりを求め、肉を食み、火を引きずり出す。
 凍り付いた人の像 震えて動けない人の伏す姿 疲労や苦労の限界から笑いながら周囲を刺せるだけ刺し
 最後には食まれ消えていく赤い染み。

 それを長烏帽子兜独特なシルエット、フォルム
 その立ち姿で人の姿、国の姿を取ろうとも今現在は魔族側の勢力としてタナール砦の一つ
 銀華はそうして立っていた。

 銀華も同じだ 凍り付く世界は銀華にとって自然そのもの。
 熱をというよりも、経過からグゥ、と腹が鳴る。
 それを摩りながら砦では満足に舌に合う食事は人側の物資頼りか。
 質の悪い転じた雪では舐める気にもならぬまま上を見ると、後ろから近づく同じ勢力側の一人。
 女体姿で形を取るからか 下卑た笑みで誘い掛けてくるそれを一瞥し、歯列をかみ合わせて飢えた口が語ろうか。


   「შეაჩერე(やめろ。)

    გინდა მარილთან ერთად ჭამა?(塩振って食うぞ?)


 同じ側で争っていると、人の形と人のような攻撃を混ぜると装備含め目立つ。
 食の好みと食への渇望も同じくだ。
 雪喰ってた竜が食に目覚めたらどれほどかを一部とはいえ其れも察している。
 故に、共通語ではない北の竜の言葉はどれほど耳に伝わるか。

 たじたじで腹を空かした側から消えると、銀華もまたフンッと溜まった白い吐息を吐こうか。

ご案内:「タナール砦」から銀華さんが去りました。