2024/11/23 のログ
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ご案内:「タナール砦」にアマーリエさんが現れました。
アマーリエ > ――取られ、取り返されを繰り返す土地、タナール砦。

勝ち負けの移ろいは円舞のよう。流される血は巡り、まるでこの地が新たな生贄を渇望するかのよう。
今日も今日とてまた然り。魔族の一派、一群が占拠した砦に対し、王国の騎士や兵士、傭兵や冒険者達が攻め入る。
慣れたものは豪雨のように降り注ぐ死を擦り抜けて生を拾い、そうでないものは容易く命を落とす。
こんな土地に守る価値があるのか、と思うものも決して少なくあるまい。
だが、軍略的な云々を弁えていないお偉方は、依然として勝利して得る面子というものが大事であるらしい。

「いい加減……、負けを認めたらどうかしら、ねっ!」

砦の門を抜け、進む先は中庭。そのルート上で凛とした声が響く。
夕刻から始まった戦いは、夜が更けるにつれて次第に趨勢が傾きつつある。その契機となったの到着した戦力によるものだ。
先駆けは数騎の竜とその乗り手たる騎士。彼らが上空から落とす竜の吐息(ドラゴンブレス)や魔術の釣る瓶打ちによる猛攻から、破城槌を抱えた兵と騎士による門扉の突破。
総兵力としては多くはない。だが、全体が一個の流動する生き物の如く浸透し、砦の内部を敵の血で染めてゆく手並みは手慣れたものだ。
第十師団、と呼ばれる兵力の総体を束ねる女騎士が、白い鎧を輝かせて槍を振るい、行く手を阻む魔族達を切り払う。
立ちはだかる者達が弱い、というわけではない。だが、雑兵も含めて依然として数が多い。刺しても切っても尽きぬ。

「……指揮は次席の騎士に任せる、として。
 せめて遊んでいられる位の歯応えがあるのが良いんだけど、どうかしら。ねぇ?」

通信魔術を適宜開き、意識共有を計る配下達からの報告を頭の中で聞く。
ちら、と頭上を見上げれば、火の手が上がる中で白い竜がその照り返しを浴びつつ、空を行く。
空中の視点と魔術的な視点を複合し、何処に兵力を優先するかを考え、差配する。
中庭については、この塩梅ならば単独でも方が付けられるだろう。余程の何かが、居ない限りは。

アマーリエ > 予想される敵将の像は様々だ。数に任せるだけの攻め手か。質と量を程よく織り交ぜて手堅く行く手合いか。
襲撃を受けた際の状況についての情報は不明瞭だが、報告を受けてからの出撃まで時間がかかっている。
ある意味、いつも通りだ。凌辱その他、想像できない位の何かが――起こっている可能性も皆無ではない。
取り敢えずざっと見で安心出来得るとすれば、悪しき魔法の実験場のような使い方はされていない、という位だろう。
偶にいるそのタイプは突入のための下拵えもそうだが、後始末の面でも厄介過ぎる。

(居るとすれば、私みたいなタイプか……それとも、か)

想定される敵将は人倫も何もそっちのけ、ではないだろう。
いや、そもそも魔族に人倫を説くという時点で何を言っているのか、と言われなくもないが。
ただ、生死問わずな趣向に走るタイプの場合、死体を犯す趣味をしていると、色々と厄介なことが起こりかねない。
魔物は捕らえた人間の雌、女を利用して繁殖し、個体を増やすタイプも少なくない。寧ろ多いとも言える。
自分から母体、孕み袋になる、あるいは女王蜂めいた種でもない限り、捕虜を取り、利用することに意味を持ちうる。

「――……居るなら、出てきてくれない? 逃げ去るなら追う気はないけど」

わざと挑発めいた言葉を放ちつつ振るう槍に魔力を篭め、一閃と共に術として成立させる。
穂先に生じた光が熱波として成立し、放射状に広がる波が陽炎を伴いながら、触れるものを片っ端から灰にする。
焼いて浄めて灰としてしまえば、敵には多少なりとも哀れみを抱かないでもない。