2024/05/29 のログ
ご案内:「タナール砦」にネヴェドさんが現れました。
■ネヴェド >
戦火に燃えるタナール砦。
いつもどおりの光景といえば、いつも通りの光景。
奪って、奪られ。奪って、奪られ。
しかしその戦場は常に同じ局面の繰り返し、とは限らない。
オーガ、キュクロプスといった大型の尖兵がその物量と圧倒的な体躯で壁となって王国軍の戦列を押してゆく。
「…やはり、並の兵士ならば力押しで十分。
単純な一兵あたりの戦力ならば押し負ける筈がない…か」
戦列の後方、虚空に椅子でもあるかのように腰掛けた女魔族はその冷たい輝きの視線を戦場へと向けていた。
その立ち位置。大きな金色の角、人ならざる雰囲気を醸し出す白磁の肌が、女が魔族であることを如実に語る。
敵性の存在であろうと生唾を飲んでしまいそうな肢体を惜しげもなく晒し、魔族の一軍を統率する女は冷静に戦線の分析を続けていた。
■ネヴェド >
大型の魔物を多く揃えた布陣は実験的な意味合いもあった。
行軍するには目立つが召喚陣を利用すれば広域展開は容易に可能。
人間領…要するに旧神の加護の影響を考えれば国境であるこの場で…というのは難しくとも。
魔族の国側の砦近くに配備しそう遠くない距離を移動させることは可能…。
砦から先へと攻め込むのは難しくとも──。
「…特化戦力が混じっていなければこんなもの…。 ……───、ん…」
巨躯の魔物達の隙間を縫うように、一人の人間の兵が切り込む。
咄嗟に小さな動きの出来ぬオーガやキュクロプス達はその一匹の鼠を見逃す。
まっすぐ、指揮官と判断された女の元にその白刃を届かせようと勇敢なる兵が走る。しかし。
女の手に出現した身の丈程の漆黒の鎌刃に、その剣は弾かれ中程から無惨に圧し折れる──。
「…隙をついて入り込もうと、それが一匹二匹の小鼠ではな」
弾き飛ばされた兵士を見下ろす視線はどこまでも冷たく、一切の慈悲を感じさせない。
そしてその眼から感じる通りに、振り下ろされた鎌に兵士の男の命は軽々しく刈り取られる──。
■ネヴェド >
「…これ以上は期待する意味もない。終わらせる、か」
口にした期待とは、決して人間の奮闘に対するものではない。
突出した戦力…、女の主たる魔王が興を唆られるような、人間の強者。
より強き者との闘争を望む我が王への"良い報告"を期待するものだった。
自らの喉元に届き得る刃が、隙間を潜り抜けた矮小一匹では、と。
期待感の薄れた戦列へ、女は片腕を薙ぐように振り翳し無数の魔法陣を展開する。
「我が魔王ラストの名の下に魔王妃ネヴェドが命ずる。──蹂躙しろ」
膨大な魔力が魔法陣から巨大な肉の壁たる戦列へと加護を与える。
攻撃力、防御力ともに大幅に増大した大型の魔物達は更に勢いを増し、王国軍の戦列を押し潰してゆく──。
「……ふ」
大勢は決したものと、再び虚空へと腰掛け、ゆったりとその長い脚を組み、女はさして興味も抱かぬ表情で戦場を見下ろしていた。
ご案内:「タナール砦」からネヴェドさんが去りました。