2023/12/02 のログ
ご案内:「タナール砦」にグァイ・シァさんが現れました。
グァイ・シァ > 陽が落ちると空気が冷える気候になった。聳える砦は陽光とどもに静かに温度を失っていく。
黒い夜空に白く穿たれたような月と星を遮るものはなく、時折過ぎる夜鳥の影だけがこの風景が生きているの証のようだった。

冬の歩哨での見張りは人気のない役割だ。遮るもののない丘は風が吹けば吹き曝しで、乾燥した体温だけでなく呼気から水分も奪っていく。
手を挙げれば、或いは交代を申し出れば大概すぐに付くことが出来る。

殆どがやりたがらないその役を申し出て奇妙がられないのは、人付き合いの苦手な手合いの逃げ場にうってつけだからだ。
狭い砦の中、ある程度の戦力がある状態ではどこへ行ってもヒトだらけだ。兵士の誰もが陽気で仲間同士でつるみたがるわけではない。止むを得ず兵役に着くものもいるし、たまたま気分で無いものだっている。

そうした一人を装って、女の形をした魔物は今宵、夜警の役を買って出ている。月の有る夜は松明も付けない。夜陰のなか毛布に包まって、翠の瞳で月光が照らす戦場を眺めている。

「―――――…」

戯れに長く吐いてみた息が白い。それが立ち昇って行く様を見送って、また視線は下へ戻した。
毛布の中、刀の柄に置いたままの指を時折動かす。
それに違和感を覚えてきた頃には一度、塔内へ戻る必要があるだろう。

グァイ・シァ > 戦闘が少なくなった戦場は、女に取って居座る価値が低い。遺跡に潜って魔物とやり合う方が得るものがある。

(そろそろ河岸を変えるべきなのだろう)

また白い吐息を、今度はゆっくりと唇の間から零して
静かに更ける夜は、女の期待はずれ、予想どおりに、何事もなく明けていくのだろう。

ご案内:「タナール砦」からグァイ・シァさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にイリーナさんが現れました。
イリーナ > 季節は廻り、冬に備えて魔族と人間の争いも小康状態――。
お互いに冬を越すために戦力は温存し……というのは都合のいい考え方だったのだろうか。

「――なんって、間の悪い!」

冬を超えるための準備のために、タナール砦へと搬入された資材、食料。
商人のキャラバンに雇われての道案内兼用心棒として搬入が終わった一息を衝いた時に上がる鬨の声。

一気に騒然となる砦内と、ありあわせの戦力として有無を言わせぬ徴収となった冒険者の赤目の女であった。

ひとまずは、ここまで連れてきたキャラバン隊を逃がすため、駐屯していた兵団とともに、砦へと取りつこうとする魔族たちを左手に持つ魔導銃を乱雑に撃つ姿があった。

イリーナ > ゴブリン、コボルト――数を揃えた主兵力。
それを守るために、砦の守りをぶち破るために突っ込んでくるオークに、それを一回り大きくした大型種。
もしかしたら、上位種や支配種とも自分たちが呼称するような相手も、この小競り合いをかき乱す機を気まぐれにうかがっているのだろうか。


砦から放つ駐屯兵の弓兵とともに見下ろしながらの撃ち下ろし。
いくら射っても恐れず、引かず、前へ前へと進み砦に取りつこうと向かってくる怪物たちにいら立つように唇を結んで。


「っ――、これなら……。」

戦況は拮抗、いや、防衛側の強みを活かしてか若干こちらが押し返すことができているだろうか。

押し寄せてくる圧が一瞬緩んだことに、結んでいた唇と頬がわずかに緩んで。

イリーナ > 凌げる、助かる、このまま――。
収束した魔力を銃口に溜め、小隊単位で動いていた魔物へと撃ち下ろす。
数少ない魔術師たちの砲撃に合わせた一撃。
行進の地ならしが一瞬途切れ、砂と魔物たちの血が混じった砂埃が舞い上がり――。


―――でかいのがくるぞぉお!


それが晴れた直後、野太い、悲鳴にも似た叫びが砦内に響き渡る。
鎧をまとわない軽装の女だからか、赤いコートを翻しながら、覚悟を決めて、高台から飛び降り――直後。

先ほどまで女が陣取っていた高台が揺れ、砦の門も情けない悲鳴を上げるように軋み、決壊が近いことを物語る。

「っ、むちゃした……ぁ」

銀の髪に崩れた灰やら誇りやら、人間の鮮血やらが降り注ぐ。
砲撃か、それとも質量のある何かを投げてぶつけられたのか。
理解は追いつかないが、一気に崩れた戦況に狂乱騒ぎとなった砦内で、女の冒険者は次にとるべき行動を考えるために周囲を見渡すが。