2023/11/18 のログ
ご案内:「タナール砦」にグァイ・シァさんが現れました。
グァイ・シァ > 雲の無い夜、丘の上に聳える砦は、薄い月を背景に黒々と聳える。

丘の上を冷たい風が音もなく渡って行く。本来なら冬枯れの草なりが音を奏でるのだろうが、いまこの丘でこうして立っているのはこの砦くらいで、風が運んでくるのは焼けた地面の香りばかりだ。

視野の効かない歩哨の上、朱い髪の女が体温を奪う風に構わず佇んでいる。
その顔が白いのは寒さのせいか或いは元の性質なのか、女の表情からは判然としない。
ただ砦内と違ってしんと音のない丘を静かに見据えて、恐らくは、見張りの役を務めている。

寒くなると戦場からも熱が奪われるように思う。
今日の小競り合いも本当に形ばかりで、戦略的な駆け引きさえ見付けられなかった。

(あまり、長居して面白い場所ではなさそうだ)

風に翠の双眸を眇めるようにして考える。
戦場は糧を得るには容易いものの、今の気分としてはいささか面白みに欠ける。

グァイ・シァ > 月が傾き空が白み始めた頃に漸く交代の声が掛かった。
女は白い吐息を吐きながら振り返る。陽の登る時間帯が一番凍える。流石に毛布にくるまったが指先がかじかんでいる。

休養をたっぷりとった様子の相手とすれ違いざま、相手から触れようと伸ばされた手は宙を掻いた。

(運が良い奴だ)

ヒトに触れられるなどぞっとする。しかし斬り落としたりすれば騒ぎが起こる。
女の姿をした魔物は、朱い髪を靡かせながら砦の中に消えて行った。

ご案内:「タナール砦」からグァイ・シァさんが去りました。