2023/10/02 のログ
ご案内:「タナール砦」に黒仮面さんが現れました。
黒仮面 > 現在、タナール砦を占領しているのは魔族。
それを指揮する者を、期日までにどうにかしろ、それが今回受けた依頼だった。
暗殺者なのだ、素直に暗殺を行えと伝えれば済む話が、そうしないのは理由がある。
その指揮官が男であれば、ほぼ間違いなくそれを行うだろう。
だが、女の場合はそうしないのがこの暗殺者だからだ。

その指揮官らしき者が休息を取っている一室。
月明かりのみが窓から照らすその場所、何もない片隅に伸びる影の一部がゆらりと揺らぐ。
一切の気配を感じさせず、その影は人の形を取り、その者が眠るベッドへと静かに歩み寄る。

まずは、その相手の確認。
そして、それを確認次第に次の行動に移るのだ。

黒仮面 > 闇に慣れた目は、月明かりだけで十分相手を認識する。
ベッドに横になった相手、それを一瞥した後に。
右手が動き、一度、二度と何かを投擲してみせる。

闇に紛れた何か、魔力によって形成された細い針。
それが寝ている相手の額、そして胸元に突き刺さる。
それに反応したのだろう、一度体を震わせるも、それ以上の動きは無い。

「よう、起きたんだろ?
悪ぃな、テメェの動きと、力を縛らせて貰ったぜ?
これで安心して殺せるってもんだ…アバヨ」

その針の意味は言葉の通り、脳に打ち込んだ針が体の動きを縛り、核に打ち込んだ針が力を封じる。
そんな回りくどい事をせずとも命を絶つ事は出来そうだが、魔族ってのはたまに妙な力を持った者も居るのだ。
だから、念の為にそれらを封じ、確実に殺める。

物言えぬ、見開く瞳でこちらを見詰める事しか出来ない、指揮官である魔族。
手にした刃が振り上げられ…その心の蔵を刺し貫いた。
再び体を跳ねさせるも、それが小さな痙攣へと変わっていき、その動きも完全に止まる。
それは、刃に仕込んだ猛毒。
魔族に特化させたそれは、血に混ざれば確実に魔族を殺すのだ。

ズルリと刃を引き抜けば、ヒュンッと空を切らせるように振り抜き、刃を濡らす血を払う。
それを鞘に収めてから、ゆっくりとした足取りで部屋の片隅、この場所に現れた時に介した影へと踏み入って。
そのまま、ズブズブと影の中に消えていった。

後に残ったのは、毒殺された魔族の指揮官。
次の日には誰かの目に留まり、一騒動起こるだろう。
そこを狙うように、依頼主である一団が一斉に砦を襲う。
それで、今占領している砦は人の手に落ちる、それが筋書きだ。

実際にそれが達成されるのかは興味はない。
暗殺者の仕事は、もう終わっているのだから。

ご案内:「タナール砦」から黒仮面さんが去りました。