2024/08/23 のログ
ご案内:「無名遺跡」にシアンさんが現れました。
シアン > 無名遺跡には、財貨がたんまり。危険もたんまり。存在が知られて幾年経ても踏破出来ないほどの深さに蔓延る罠に魔物にエトセトラとそれはもうたんまり。とは、いえ、時と場合によっては、魔物と取引や協力体制を取ることも極稀ながらにある。

「はぁん? そらぁ太ぇ野郎だ、あ、ガチで太ぇな? わかった。気ぃ留めとくよ」

人間に変わり者がいるように魔物にも変わり者が居る。
“彼ら”はそんな“変わり者”であり無名遺跡を根城にし無名遺跡に挑む者相手に商売する子鬼(ゴブリン)たち。
上層と中層のだいたい中間地点といった立地のいわば『階段室』といった形をしているそこで、
子鬼(ゴブリン)商隊と一人の冒険者が会話していた。
顔見知り、以上で結構な親交があるらしく時には笑い声も上げながら和気藹々と歓談する中、
『料金を踏み倒して逃げていった冒険者』なんて不届者の話を聞いて男が眉を顰める。

「引っ捕え……るのは、無理かも知らんが。人一人抱えて此処あちこち回んのは骨折れるわ。いやマジで骨折する」

やたらと精巧な似顔絵が作成された紙を手に持ち、恰幅の良い冒険者の顔をまじまじと見ながら頷き一つ。
『あんた等もよけりゃー協力したってー』とたまたま周りに居た冒険者たちにも声を掛けつつ肩を竦める。

シアン > 人間でも魔物でも商人には便宜を図って損はない。商いの世界は情報が早い、加えて、無名遺跡の魔物商人たちは無碍にすると只でさえ何が起きるかわからない場所がもっともっと何が起きるか解らなくなってくるのだから良い顔の一つ二つぐらいはしておくべきだ。実益のある話でもあるし魔物商人には何かと縁があるから親切心も少々入った話も、そこそこに。

「さて。探しものが増えちまったが……」

カンテラの燃料をちょこっとだけ購入してから早速継ぎ足したそれを腰にぶら下げて、階層を下る。
何の変哲もない……というには入り組みすぎているがスタンダードといえばスタンダードな迷宮を、
ここはもうすっかり歩き慣れているのでマッピング済の地図は一応持っているがほぼ確認せず歩む。
とんとんとん、と抜いてある得物の鉄杖で肩を叩きながら、目線はあちら、こちら、巡る。
慣れてはいても油断をしていい場所でもないが故警戒は怠らず右に左にと目線は動かし進む、進む。

「若ぇと逸るよなあ」

目的は、人探し。新人がうっかり、或いは功名心にでも駆られたか、上層で済む話を中層に降りていって帰ってこないというから探しにきた。……十中八九どこぞでくたばってんだろ、とは、思うのだが遺品の一つや二つは持ち帰らないといけない。

「いや。いや。俺も若ぇけどね?」

まだ三十路前である。十五、六の若者にとっちゃ『おっさん』の誹りも向けられる年頃であるが。一人でぶつくさとぼやきながら傍目からすると気が抜けているようにも見える風情でずんずんと突き進んでいる。