2024/01/05 のログ
ご案内:「無名遺跡」にシェティさんが現れました。
■シェティ > 旧い時代から存在するとされる無名の遺跡群。
今や迷宮と化したその場所に足を踏み入れるのは何も人間の冒険者や探索者ばかりとは限らない。
それでも、仄暗く湿った空気に覆われた迷宮の中を歩むその姿――侍女服に身を包んだ魔族の女の姿は、傍目にも奇妙に映るだろうか。
されど当の本人は其れを意に介した様子も無く、背筋を伸ばし優雅ささえ感じさせる所作で、緩やかに足を進めてゆく。
「――――……はぁ……、またで御座いますか。」
されど、少し進んだ処でぴたりとその足を止める。
片手に携えた明かりを掲げ、行く先に伸びる回廊を蒼銀の瞳が見詰める事暫し。
侍女服のスカートの下から一本の短剣を抜き放つと、数歩先の床を狙って投げ放つ。
すると、短剣の刺さった地点の床が不自然に凹んだかと思えば、女の目の前でその床が大きく口を開けて見せた。
中を覗き込んで見ても底が見えぬ落とし穴を見下ろしながら女は酷く辟易した風に溜息を零すのだった。
ご案内:「無名遺跡」にレヴェリィさんが現れました。
■レヴェリィ > 「……それはこちらのセリフでもあるわね」
奈落の闇を覗くあなたの後。
十分周囲に注意を払い、警戒していたであろうあなたの背後から声が掛けられた。
それは、あなたが気配に気付かなかった……というよりは、まるでその瞬間に背後に出現したかのよう。
あなたが振り向いたなら、若干の苦笑を浮かべる以前であった夢魔の姿が在るだろう。
「久し振りね、シェティ。忘れ物かしら?
それとも……また私に会いたくなっちゃった?」
なんて、茶目っ気たっぷりに揶揄ってみたり。
■シェティ > ぽっかりと空いた大穴を覗き込む女の背後から掛けられる声ひとつ。
一瞬前まで何者の気配も無かった筈の其処に突如姿を現わした存在に、跳ねる様にスカートの裾を翻しながら振り返る。
されど、その先に見えた姿から感じられる敵意は薄く――加えてそれが既知のものである事に気が付けば、女は警戒の色を僅かに緩め。
「……えぇ……また、お会い致しましたね。レヴェリィ様。
生憎と、そのどちらでも御座いませんが……御変わり無い様で何よりです。」
揶揄う様な声で己の名を呼ぶ少女の声に、されど侍女風貌の女は抑揚の淡い声で応えながら、
スカートの裾を軽く持ち上げ緩やかな所作で頭を垂れて見せるのだった。
■レヴェリィ > 「ちょっとイタズラが過ぎたかしら。ごめんなさいね」
素早い反応に感心したように頷き、くすくす微笑む。
口で謝ってはいるものの、あまり反省した様子はなさそうだ。
とはいえ、その嬉しそうな表情にはあなたが感じた通り敵意はなく、純粋に再会を喜んでいるようだ。
「あなたも変わらず真面目な子ねぇ。私は会いたかったのよ?
……ふふ、あんまり揶揄うと困ってしまうかしら。程々にしておきましょうか。
それで、今日はまたどうして魔王の従者がこんななところに?」
前回の目的の場所には自分が案内したはず。
ならばまた何か主に無茶振りでもされたのだろうか、と首をかしげ。
■シェティ > 謝罪の言葉を紡ぐ少女の声には緩く首を左右に振りながら、いえ、と短い言葉で応え。
己との再会を喜ぶ様に微笑む少女の表情を、対照的に感情の色の薄い女の蒼銀が少しの間見詰めてから。
「―――……その様なお言葉をいただけるのは光栄に御座いますが……。
今回は探し物と云う訳では無く……そうですね、調査――と云った処でしょうか。」
続く少女の問い掛けに対しては、言葉を選ぶ様にして答えを返す。
目まぐるしく姿形を変える無名の遺跡群――其処に現在はどの様な魔族や魔物が住まい徘徊を続けているのか。
そういった遺跡内部の仔細を確認し見て廻るのが今回侍従である女に与えられた役目だった。
また主に無茶振りをされたのか、と問いたげに首を傾げる少女の仕草には、否定はしなかったが。
■レヴェリィ > 「ふぅん、調査、ね。また面倒な仕事を押し付けられちゃったのね」
蒼銀を見詰め返す、深く清んだ青。
どこか底知れなさを覚える青の向こうから面白そうにあなたを眺めていたが。
その要件を聞くと同情するように眉を寄せた。
「無意味に広くて、魔族の気まぐれ1つで何から何まで変わってしまうここの調査だなんて、
流石にちょっと可哀そうに思っちゃうわ……どうかしら? 調査の進捗は」
もし真面目に調査するとしたら、何カ月も掛かってしまうのではないだろうか。
言外にそんな懸念を臭わせつつ。
■シェティ > 「……それが役目ですので。」
面倒な仕事、の言葉に対しては思う処が有ってか否か。
それでも、己を見詰め返す深く澄んだ青色には矢張り抑揚の淡い声音でそう答えて―――。
「無論、この遺跡の隅から隅まで隈なく調べ上げるつもりは御座いませんとも。
一頻り軽く見て回って、この様なものがあった――程度の報告を上げておけば、我が主も満足するかと。
現状は……そうで御座いますね、魔物にも何体か遭遇致しましたが、それよりもこの通り罠の方が多く。」
同情の色を孕んだ言葉には、彼女の懸念を振り払う様に答えを返す。
幾ら魔族の女と言えども、何ヶ月もこの迷宮に籠もれる程の体力も備えも持ち合わせては居ない。
その上で進捗を尋ねられたならば、傍らの落とし穴を指し示しながら口にするのは率直な感想。
事実、先程から魔物以上に遭遇しているのは行く手を阻む罠の数々――何れも殺傷性の高いものでは無く、
侵入者に対する足止めや捕縛、更には嫌がらせにも近しいものが大半であった。
■レヴェリィ > 「本当に果報者ねぇ、彼の王は」
どれだけ無理難題を押し付けられようと揺るがぬ忠誠心。
その惚れ惚れするような真っ直ぐさに目を細め。
「ふふ、まあここは『彼ら』の遊び場のようなものだもの。
どこもかしこも悪意たっぷりの仕掛けだらけで、これくらい奥まで入り込むと進むのも一苦労でしょうね」
殺意や敵意ではなく、悪意なのでまだマシかも知れないが。
例え命に別状のないとしても、特にあなたのような女性には掛かりたくない罠ばかりだろう。
「…………また道案内、してあげましょうか?」
───ニィッと口端が弧を描くように上がる。
既にあなたは、彼女との取引に何が要求されるかを知っている。
その上で夢魔は問いかけるのだ。あなたと真正面から見つめ合ったまま。
■シェティ > 深い青を細めながら呟かれた少女の言葉を主への賛辞と受け取ったならば、恐れ入ります、と小さく告げて侍女の女は頭を垂れて。
「彼等――で御座いますか。成程……話には聞いておりましたが、随分と悪戯好きの御方の様で。」
迷宮に仕掛けられた罠の数々、その仕掛け主を知っているかの様な少女の口振りに、侍女の女も何かに思い至った風に頷いて見せる。
直接の面識は無いが、この遺跡群には旧くからそうした存在が居る事は話程度に知っている。
仕掛けられた罠は何れも殺傷性の低いものばかりであったが、必ずしもそれが無害である事とは結び付かない。
そしてそれは、目の前で唇の端を持ち上げながら提案を持ちかける夢魔の少女においても言える事だった。
暫し考える素振りを見せる。
彼女の持ちかける提案は、相応の対価さえ支払うのであれば決して己にとっても不利に働く事は無いのだろう、けれど。
「―――……ご提案は痛み入りますが、今回はレヴェリィ様の御手を煩わせる必要も御座いません。
この程度の罠であれば、面倒ではありますが掻い潜るのは然程難しくは無いかと。」
暫しの思案の後に、詫びる様に深く頭を下げて少女の提案を辞すると、それでは失礼致します、と告げて侍女の女は踵を返し。
そうして大口を開けた侭の落とし穴の脇を擦り抜けると、その姿は迷宮の暗闇の奥へと消えてゆくのだった………。