2024/01/02 のログ
ご案内:「無名遺跡」にエスクレンタさんが現れました。
エスクレンタ > 人の世では新年を迎えたという。そのせいもあってか、中々訪れる客と言うものはいない。

「私は昨日ゆっくり休んだしねえ」

遺跡に潜む魔族達と酒盛りを行い、宴における非暴力の不文律を破って仕掛けてきた不心得者を嬲って更に盛り上がったものだと
昨日の騒ぎに想いを馳せて。

しかし、遺跡における商いとは求める者にとって休日など事情を知ったこともなかろうと、
遺跡の中層、最近仕掛けられた罠の転移先が多い地帯にまで赴けば、天鵞絨の絨毯を敷いて商品を並べ、
その前にローブを目深にかぶって猫背に座り込む。

さて、新年初のお客様、ともなればそれなりにサービスもすべきだろうかと思いながら、
普通に割引でいいものかと思いつつ。

「……姫初め? は違うだろうしねぇ」

まあ、そうそう物好きも来ないだろうと思いながら。

ご案内:「無名遺跡」にファルスィークさんが現れました。
ファルスィーク > 今日は少し興が乗ったので、久しく訪れていなかった場所へと赴くとして足を踏み入れた遺跡の内部。
大体のマップは頭の中に入っている為に、特に道に迷うこともない。
だが、新たに発見された通路や部屋等があれば、そこを散策してみたり、途中で出会った魔族などには適当に挨拶や言葉、時には拳を1、2合交えたりと、歩みが遅くなる事もしばしば。
冒険者に出会えば、突然襲い掛かってくるなどの敵対意思を見せない限りは、友好に会話をする程度。
見つけた目ぼしいものは回収しつつ、―――進先に奇妙なものを見たので、足を止めて小首をかしげ観察する。

まず、不釣り合いな天鵞絨の絨毯。
その上に並んだ商品らしきものから見て、座り込んでいるのは……商人らしい。
僅かに逡巡した後、止めていた足を進めて近づいていき、かけてみる声。

「……それは売り物なのか?」

まずは、相手の目的はなんであるのかを探るために投げかけた質問。
商品と見せかけて、獲物を釣るための罠である可能性も考えての。

エスクレンタ > 「そうだよぅ。たまに来る冒険者や魔族に商いをしてるねえ。
 きちんと金銭を伴っての取引もするし、物々交換も相手が困っている時でも困っていない時でもするよう。」

 己の背丈よりも、幅よりもよほど大きな背負い袋を背後に従え、
 天鵞絨の絨毯に並べた様々な薬、魔道具、装備、その他消耗品に
携帯食料まで取り揃えながら、開口一番の質問に答える。

「商いがあるところに人が集まるんじゃない。人が集まるところで商いが成立するもんさ。
 だからここも天下の往来、立派な取引の場所だ。

 と言っても、商いの場はその時その時で変えたりもするんだけどねえ。」

 フードから覗く烏賊目玉、触腕を蠢かせながら、その異形に反して鈴の鳴るような声で言葉を紡ぐ。
 敵対的な意志は感じられないどころか、無銘遺跡と言う場にあってどこかのんびりとした、静寂を讃える水面が如き振舞いを見せ、そも罠を仕掛ける方向での駆け引きを持たぬことが所作に現れていて。

「まあお前さんはお客さんと言うには違うんだろうけどね。
 お偉いさんが新年に散策する場所ではないだろうに、知り合いが迷子にでもなったのかい?」

ファルスィーク > 「ふむ……」

実に分かりやすい回答が返ってきたのは、相手の性格も含めての事なのだろう。
その言葉や口調から、敵意や害意も感じられず。
もしそれらを隠していたのだとしたら、相当な曲者ではありそうだが、そこは己の勘に頼る所であり、騙されたのならば相手が上手だっただけの事となる。

背丈よりも大きな荷物があるのは、商品は並べている物だけではないということだろう。
取り扱っている種類の多さにまず興味を惹かれ―――。

「ほう……需要と供給だな。
私も一時期、露天商をしていたことがあるのでよくわかる。
場所も悪くはないな……特に切羽詰まった者には、地獄に神といったところか」

垣間見えた瞳と触腕に相手の素性を知るが、特に構えることもなく浮かべる笑みは己の勘が正しかったようだと思った為。
であれば、商品をじっくりと品定めするように目線を向けつつ―――己の素性は大体把握しているらしき言葉に聞こえたので笑みを深めた。

「君の商品に興味を惹かれた時点で客である。
散策は何か掘り出し物でもあるかと思っての…まあ、酔狂ではあるか。
ほう…迷子がいれば、その情報まで扱うのか」

手広く扱う商品の種類から、成程、確かに商人であると関心はしつつ―――では、相手から己を見て、お勧めの商品はあるだろうかと問うてみた。

エスクレンタ > 逡巡する声と仕草にまだこちらを警戒していることを読み取りながら、深読みをしているのだろうなと思いつつ。
まあ情報量が多いのは分かる。自覚してる。
遺跡の中層に、バカでかい背負い袋抱えて、豪華な絨毯敷いて、イカ顔魔族がヘローゥと来てる。
多分それなりの身分なのだろうけど良く初手から一太刀浴びせてこなかったもんだと。
逆にこれで警戒してなかったら帰ってくれともなるのだが、ここに来るまでの足取り、足音に警戒がない。
相応に腕は立つのだろうという程度の認識。あと偉い。あと戯れに露天商する程度にはいろいろやってる。
暇潰しか? ……暇潰しなのだろうな。表情が落ち着いてるというより、欲はあるのだろうが、
欲を持つ者と比べて躍動がない印象がある。

「そういうことだねぇ。需要はあるけど肝心の供給がガッタガタだしねえ。
 お前さんには価値のない情報だろうからタダで教えておくけど、今ここ、
 最近他の魔族が仕掛けてる転移系の罠の到着先が近くに集まってんだよね。

 だからま、適度に切羽詰まってるお客さんが集まるならここになるのさ」

在住の魔族故にパイプがあり、そこから生まれる情報網を持ち、故に成立する商い。
それは都市部と何ら変わらぬ商いに必要な要素を全て抑えたもので、
そして、相手によって情報の価値を見極めて提供する。

「逆にここで商売してる奴に目がいかない奴いないよ? まあでもみんな大体何か買ってくかぁ。
 掘り出し物はどっちなんだろね。探索してのお楽しみ程度……、ただ、魔導機械の部品は
 どこぞの貴族が王都で買い取ってる話聞くし、相場は上がってるんじゃないかなぁ。」

 ダンタリオという家が王族と結託してアスピダ奪還に備えて準備を進めており、
 その上で魔導機械の要素が絡む流通が発生してるのだという。

 そう言う意味では今は魔導機械がどれも掘り出し物となるが、目の前の客にはさして意味の薄い要素だろう。
 ……そも、目の前の男が掘り出し物と喜ぶ顔があまり想像できない。

「情報も料金次第だね。街の盤上遊戯でもあるまいにサイコロ振ってお得な情報ゲット!
 ……というのも都合の良い話だよぅ。
 それにまー、迷子がいたとして現存してるなら確保されてるのが大概だろうしね。

 あとその手の情報は御代はいただかないよ。別にここに住んでる奴は大体が話してもオッケーだぜ! オッケーよ! みたいなのばっかだしね。」

 それで情報を流したところで、誘い込まれる形になるのだからというのは言外にも伝わるだろうかと思いつつ、
 お勧め、と言われれば、ふむ、と考えて。

「まずそもここで困ってない。散策してる。多分金持ち。下手な商品は言うほど興味ない。」

 つらつらと、やり取りした上で、観察した上での感想を口にして。

「そもお前さん、なんぞか勧められておぉ、て盛り上がることあるのかい?」

 と、そんなことを聞く。


 何でもできる。何でももっている。何でも成し得る。
 それは、あらゆる物を持たざる者であるように。

 商いは、そも欲しがるという欲があるから成立するものなのだ。

ファルスィーク > ざっと対峙したいる間の腹の探り合いはいつもの事。
重要なのは情報を得るための観察であり、それは雰囲気、言葉や口調、表情や仕草ではあるが、一番重要視しているのは第一印象と勘。
その後に、荒事になった場合に対応できるかどうかの実力となる。
場所に不釣り合いな状況であった為に、初手はさすがに妙な者と遭遇したと少し怪訝に思ってしまったのは、こんな場所で商品を並べていられるくらい相手もそれなりの実力者であるからだ。
時に…野党や追剥と変わらなくなる冒険者などに襲われる可能性もあるだろうに、のんびりとした対応であれば尚更でもある。
等々、お互いの探り合いは、それはそれで楽しくもあった。

「さすがに掘りつくされた感じか。
それでも新たに見つかる区域もあるようだ。
そのおかげで、余計に遺跡の全容がややこしくなっていくんだが…。
――ほう…それはなかなか面白い仕掛けだな。
待っていれば客が来るか」

客と出会う可能性が格段に上がるのは、遺跡での持ちつ持たれつの関係が良好だという証拠か。
そして、このような場所では、情報の重要性は高い。
もっとも、信じるかどうかの判断は、買った者に委ねられるのだが、相手の場合は悪質性は見受けられず真っ当な商人であるようだ。

そして、相手との会話からでも有益な情報は既に入手してはいるが、それを己に語るのはサービスといったところなのだろうと判断しつつ。

「魔導機械の類か…あれはあれで、知識も技術も必要になる。
扱い方を間違えれば、弄っている時点で甚大な被害が出るんだが…集めているのは実用に目途が立ちつつあるとも見れるか」

各地の情勢に関しては、思案気な表情ともなりつつも、相手に出してみたお題は、少々意地悪だっただろうか。
それでも、己自身を観察して様々な思考をしているらしいのは見て取れる。

「そういう賭け事要素があるのは、むしろ好む方だ。
確保されているのは良いとして、無事にという部分は中々難しいだろうな…。
その上、引き取りに行く側を釣るための餌にもなって、一石二鳥か」

只でというほど甘くはないのがこの場所である。
そして、そのような善意があったとしても必ず裏があるのも当然であるので笑い。
そして、相手からの返答には、その笑みを濃くしたのはよく観察しているという事実故。

「一応、あるにはある。
それはだな……人材だ。
大抵の事は成せるが、それは手の届く範囲だ。
それ以上となれば、必然的に届かない。
であれば、自己の判断で的確に動ける者に任せる必要がある。
まあ…これは一例に過ぎないが。
―――故に君が欲しい。と言ったらどうする?」

恐らく、これは相手がようにしなかった言葉となりそうな気がする。
そも、一番必要とするのは商人としての手腕であり、他には遺跡とのコネクションや発掘品も含めてではあるのだが……言葉そのままでは十分に誤解を生むセリフとなるやもしれず。

エスクレンタ > 一応、相手もこちらの”実力”を推し量っているのだろう。
そも冒険者は体が資本、法の及ばぬ街の外での稼業。主にそれを相手にする、と。

さて、それとなく情報を一つ明示はしたのだがそれも考慮に入れているのだろうか。

後は、そも敵意を見せていない商いをしようという相手の実力を推し量っているその視線の意味も。

「たまに在住が新規に開拓してるからね。だって新たに財宝がないと人が来てくれないもの。
 たまぁに、大昔の大先輩方が仕込んだまま閉ざされた通路もあるらしいし。
 魔導機械がいつまでも尽きないのはそういうのもあるんだろうね。

 ほら、この遺跡エロい目に会うだろう? ある程度仕込みを共通した方がそういうことしやすいのさ。
 んで、その話をたまに耳にしたら、あ、その辺いいねって出張る感じ。

 普段はこういう決まった場所に出るでもなく、他の場所にも店を開いたりするよ。
 私も商いはしたいが、必ずしたい! ってわけじゃないからね。
 一期一会も面白いもんさ。おー、意外とこういうところで出会うのか、とかん?」

 主軸になる情報はあるが、それに拘るわけでもないのだと。遺跡の中を気ままに放浪し、
 時に魔族から、時に人間から取引をして商品を得たりもする。それを売りもする。
 まるで商いを、それを通じてのやり取りを嗜んで愉しむように。

「どうだろうねえ。どこぞでは魔導機械を身に着けた傭兵部隊もいるっていうし、
 今のところこの辺りの技術界隈は玉石混合の過渡期から抜けてない感じだろうねえ。

 実用化できるかどうかは、アスピダで動きがあれば見えてくるかもしれないねえ。」

 情報と言うよりは昨今の情勢を総括したもの。未だ生産は出来ない魔導機械、しかし徐々に解析が進み、
 高価ながら一部で人々に流通しつつある。
 その技術の最終的な実用化、軍事利用。それが見えるのかは、さて。

「そういうことだねぇ。こういう無法地帯で捕まる方も悪いんだし
 むしろ殺さない辺りすごくいいやつじゃない自分!? みたいなのもいるしね。
 うん、人によっては絶望的に考えが合わないのもいる。
 だからまあ後は拳で語れ? みたいな? そう言う感じなのはダンジョンあるあるだねぇ。」 

 この遺跡で道理などを説く方が間違っている。なにせ腕に物言わせて稼ぐところだ。
 そこで人間の法律を出したところで笑われるどころか引かれる。最悪殺される。

 他所の家で自分家のルールを出すのはそういうこと。所詮人の法律も広大な大自然の前ではローカルルールなのだ。

「うん。なんていうか、色々相手や地域のルールを無視してズカズカ入ってくる人なんだなって思う。」

 だからこそ、社交辞令に商品の一つも買って見せず、居丈高なたとえ話を出されると、
 スカウトや交渉のつもりなのだろうかと純粋に気になって返事を返す。

 特に失敗もしない、特に不利な状況を経験したこともない。
 もしくはそれが彼方に消えるほどの長い年月を生きた末に、身に着けた力で何かを成し得て、
 ここまで歩いてきたのだろうかと考える。

「そういう冗談でもしょうもない質問を投げかけてきたのだから答えてもらおうかな。
 私がなんで商いをしていると思う?」

 だからこそ、聞いてみようか。相手の意見を、見解を。
 何故その言葉が出たのか、相手を見ているのか、相手を理解しているのか。

 自分が理解したつもりで、間違えた経験はないのか、その先にどう動くのかを。

ファルスィーク > 「新規開拓が出来る程となると、この遺跡の全貌は途方もないものになりそうだ。
いまだに発掘されていない未知の魔導機械…それ以上の代物アーティファクトなどが出てくるかもしれないという夢はある。
もっとも、その場合には守護するものが阻んで手が届かないだろうな。

獲物を待ち構える獣の巣穴としての機能は十分に果たしているな。
実際、実入りは大きいからこそ、誘い込む餌としても使えるので、享楽と娯楽としての遊び場になってもいるのは理解できる。

持ちつ持たれつの情報共有は、お互いに利益があってが一番でもあるし、多重の罠を含ませたか…そういう部分では、戦術にも活かせそうだ」

相手が何故、こう言ったことをしているのか。
無法地帯であるのは、その通りであり実力だけが物をいう場所であるために、実に単純明快で分かりやすい場所ではあるので、そこは同意するばかり。

魔導機械に関する情報には耳を傾けるのは、それが如何に脅威になりうるのかを理解しているからで、戦況の均衡が大きく崩れる要因は押さえておきたいところ。
もっとも、魔導機械が数機でも実戦配備されれば、魔族も側も遊びではなくなり激戦、泥沼化していく可能性もあるな…とも思案しながら頷いた。

「ルール無視か…成程。
であれば、気付かずに甘えてしまった私の方に非があるな。

ふむ…客であれば、人であれ魔族であれ何物も対等であるから」

相手からの言葉に納得し、非礼を詫びた後、相手からの問いかけに対して己なりの言葉を返してみる。
交渉などの駆け引きの楽しみとは別として、商いの根本的な所を挙げてみるのは、己が露店をやっていた頃を思い出しつつの。
僅かな間ではあるが、相手を観察して己が感じた事をそのまま告げてみた。

エスクレンタ > 「まがりなりにも露天商をしていた、というなら甘えるんじゃないよ」

 ぴしゃりと、言葉で断ち切る。

 商人であったことを明かした。
 警戒し己の実力を推し量ろうとする。
 商品を自ら吟味することもなく何を欲するかと問うてくる。
 そして、己を欲しいと引き抜こうとする。

「それで詫びているつもりなら作法の一つも分かっていない。
 王様か何かのつもりかい? 

 そして、対等であるのは客だけじゃない。商人もだ。
 取引とは、交渉とは、お互いが対等で初めて成立する。

 商品の一つも品定めせず、見下して、こちらを終始品定めするように推し量ろうとする。

 客? 引き抜きにかかった時点でもう客じゃない。別の交渉が始まってるんだ。
 お前さんはそう宣言した時点で、こちらの身を預かるか否かを見せねばならんという上で尚
 己を客と騙るのであれば、何度横紙破りをすれば気が済むのだと問いたくもなる。

 ……お前さん、露天商をしていたというが、今は商いをやっていないのかい?」

 相手のことなど知らない。なにせ相手はこちらが欲しいと吐く前に名乗りの一つもないような男だ。
 だからこそ問い詰める。貴様は何故客と名乗ったのかと。

「そして何より、こちらの質問に答えずだんまりかい?」

 己が何故商売をしているのか。問いかけて、返って来た言葉に返答は含まれず。
 もう一度ぐらいは、機会を残しはするが。さて。

ファルスィーク > 「甘えか…さて、問われたことに素直に答えたんだがな」

鋭い言葉を向けられたのは、どうやら相手の怒りに触れたらしい。
試すような言動を向けたのは確かではある。
様々な品に興味を惹かれたのは事実ではあるが、それ以上に興味を惹かれたのが、様々な商品を仕入れてくるという手腕と情報通である相手に対してなのだが。

「見下したつもりはないが、見下しているうちに入るらしい。
私の場合は、交渉次第では己も商品の内という考えがあったのでな。
何なら盛り上がるのか。と聞かれたのでそう答えたんだが。

――地方で領主をしているファルスィークという。
君の仕入れる情報や、ここでの発掘品を定期的に購入したいと考えている。
それに対する対価は相応の額をもってさせてもらう」

相手の言葉通り、現在は商いはやってはいないのだが、探り試しすぎたのも事実ではある。
さて、最後の機会として投げられた答えに関しては。

「商売が楽しい。
それを機会にしてのコミュニケーションと知る事、物に価値を与え見出すことだな。
故に、それだけの怒りが込み上げてきたんだろう。」

己が相手に感じた感想をそのまままた言葉にした。
商品よりも商人に対して気が向いていれば、成程とも思えることではある。
そこでようやく納得したように考え込み―――懐から取り出したのは手の平サイズの革袋であり、それを相手に手渡してみる。
中には大粒の宝石が幾つか入っており。

「改めて非礼を詫びる。
これは気付かせてもらった礼としてだ。
で、先程の申し出は……諦めた方がいいかもしれないが、一考してもらえるとありがたい」

大きく息を吐きだして、改めて並んでいる商品に目を落とし。

エスクレンタ > あまりにも浮世離れし過ぎている。最近、こういう手合いが人の世に降りているのだろう。
潜んでいるつもりの魔王がこの遺跡がある王国に蔓延っているという。

定命の人にしては落ち着き過ぎている。大方そのうちの一人だろうか。

「怒り、ねえ。商いの、人の関りの道理をここまで土足で踏み潰していくモノが
 今は外じゃこんなにいるのかと思っただけだよ。

 ……ギリギリ合格点にしとくよ。正確には商売を通して人とやり取りをするのが楽しい、だよ。
 ここには色々な人間が来る。老いも若きも男も女も。みんな必死だ。
 その中で、みんな頑張って生きて、その中で繋ぐ為にここで商いをしていく。
 中には瀕死の仲間を助ける為に大事なものをここで手放していく人もね。

 あの背負い袋は、そういう大事なものをいつか返す為のものでもある。

 ……少なくとも、あんたのように、自分の力に、存在に自覚なく、いつまでもここに居座って、
 つい今しがた自分が口にした、切羽詰まって地獄に神、と思う者がここに近づく機会を奪う可能性さえ考えてない者と商売をして楽しいとは思わないね」

 強大な者は何をしても強大である。その事実は変えようがない。
 ではそこに対等と口にするのであれば、何をすべきか。
 それは人それぞれであろう。

「エスクレンタ。セピア族のエスクレンタだよ。
 仮にも商業都市を取り仕切るご領主様が、商人は相手の足元を見るものではないが、
 己の足元は常に気を付けるべきだという商いの基本を、ここまでないがしろにしてるとは思わなかったがね。」

 名を聞いただけで、領主とだけ聞いてラディスファーンのことを示唆する。

 怒りはない。観察はしている。だが、逆に気にもなる。
 自分はその日暮らしの生活、極論を言えば商いをしなくても生活は出来る文化形態だ。
 だからこそ、地位にも資産にも興味はない。

 それは、商品を奪われぬだけの力が、例え目の前の”魔王”相手にもあるからこそ言えるのかもしれないが、
 だが、金と力があるだけで、商いなど成立するものなのかと。

「……ここにたまに来る貴族なんかが言う話だが、
 全てを手に入れた、全てを持ち得た者は、心を追求するんだって講釈垂れてたよ。
 アホだったけど、心を追求するって言ってるだけあって、部下や雇ってる冒険者が何を欲してるかよく考えて動いてるアホだったよ。」

 非礼を詫びる。その言葉だけである。謝り方を知らないのだろう。
 部下を見ていないのだろうかと思う。それとも、謝罪する部下を特に思案せず許すのかと。

 だからこそ、詫びた後に礼などとやはり見下ろしてきて、宝石を差し出して来る。
 それに手を伸ばすことなく、嘆息一つ。


「ファルスィーク・フォン・エインウィスナー。

 お前に売るものはない。
 お前はやり取りをしているこの場の本質を何も理解していない。
 一つ教えておいておくよ。賠償の金銭はまず相手が詫びを承諾してから取り決めを行い、そして差し出すものだ。
 そうでなければ相手に金で解決したがる存在だと思わせてしまうからね。」

 名が轟く領主にして豪商にして魔王にそう断じて、瞳を見定めて。
 それから立ち上がり、手を一奮いすると、品物に水滴が付着し、ふわりと浮かび上がる。

「……商いを今はしていない可能性も途中少し考えたが、あの商業都市の領主様とはね。
 ま、この遺跡からあんま出ない私には関係ない話だがね。

 今度からは足元に気を付けて歩くよいいよ」

 背負い袋に商品を収め、天鵞絨の絨毯を己の手で丸めて畳むと、袋の口をふさぐように置いて、
 水滴が留め紐を縛ると背負いあげる。

「ま、発掘品は調査隊でも編成して掘り出せばいいよ。」

ファルスィーク > 生まれながらに力を持った人でないもの故の驕りともいうべきか。
相手からしてみれば、商いの真似事と言えるものなかも知れず。

「耳が痛いな。
だが、指摘には感謝する。
ここまで率直に言う者も中々居ないからな。

必死であるのは分かるが、実力が伴わず分不相応であればその結果が出るのは仕方がない。
君がさっきも言ったように無法地帯であるからな。
だが、それでも必死な者たちにとってセーフティーポイントであるのは、救いなんだろう。

エスクレンタ。忠告は有難く受け取らせていただこう。
商いの基本か…色々と見直さなければならいな」

領主としての領分が大きくなっているのは、領土を治めるためには必要ではあるが、商人としてはまた別である。
行動している時が、一個人であるのなら公人ではなく私人であるならば尚更かと、言葉が痛くもある。
しかし、見直せば己にも領地にもプラスに働くのは間違いないとも思える。

「心の追求か。
人心掌握の類であれば、それなりにだが…それとはまた別の事を指しているんだろう」

礼にと出したものも、己としてはごく当然の謝罪ではあったが、無礼に当たったらしく、それについても忠言をもらえば成程と再度受け取る。

「賠償とはそういうものだと思っていたんだがな。
誠意を形に変えるという意味では、金銭は実に目に見えやすく分かりやすいからな。
だが、色々と勉強させてもらった。

君には不愉快な思いをさせてしまったな」

少しぼかしはしたが、己を知る相手情報量に少し驚きはする。
王族としては、それが当たり前となっていたことに対する振り返りの機会を得たのは有意義ではあったが、相手にとっては何の利益もなく損害ばかりか。
店じまいは言葉通り、売り物はないとの意思表示であるのなら、そこは当然かと諦め。

「ここに調査隊を派遣すれば、組んだ隊にはいい経験にはなりそうだが…費用が掛かりすぎるな。
私一人である程度散策して、拾い集める方が効率がよさそうだ。
そのうち、マップでも作成して売りに出せば、探索者や冒険者の死亡率も減りそうではあるが」

今いる当たりの地図を思い出しつつ…相手が稼ぎ場所だと言っていたこの場所から立ち去るのは己の方なのだが。
革袋をしまいながら特徴のある姿を再度一見し、軽く手を振ってからさらに奥へと足を進めていった。

ご案内:「無名遺跡」からエスクレンタさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」からファルスィークさんが去りました。