2023/11/19 のログ
ご案内:「無名遺跡」にシェティさんが現れました。
■シェティ > 遺跡の奥深くに甲高い断末魔の声が木霊する。
耳を劈く程の其れに眉を顰めながら断末魔の発生源――地面へと崩れ落ち動かなくなった異形の魔物の姿を見下ろして、
その身体に突き刺さった短剣を引き抜き、刀身に付着した体液を拭い去ってからスカートの内側へと収めてゆく。
「――――……全く、この様な荒事であれば、私の他にも適任が居られましょうに………。」
ぽつりと、誰に聞かせるでも無く独白めいた言葉を漏らすのは冒険者とは程遠い、侍女服に身を包んだ魔族の女の姿で。
『随分と前に遺跡の奥に置いてきたとある品を回収して来る』というのが今回女の主から与えられた命だった。
彼の言う『随分と前』がどの程度昔の話であるのかも、その時点での此処がどの様な場所であったのかも知る由は無いが、
遺跡の至る所に蔓延り牙を剥く魔物や罠は見境が無く、相手が魔族であるからと言って手心を加える気配はまるで見られなかった。
■シェティ > 一息ついてから、出立の際に与えられた地図を広げて視線を落としては暫し思案する素振り。
されど、其処に記された道筋と実際に広がる迷宮の如き遺跡の光景は似ても似つかず、
少しずつ目的地に近付いているであろう事は察せられたが、其処から先の正しい道のりが見つけられずに居た。
「………一先ず、前へ進むしか道は無さそうですが………。」
今の状況を再確認する様に独白を零してから、何処か観念した風な面持ちで目の前に伸びる通路を進み始める。
背筋を伸ばし優雅さすら感じさせる所作で進めてゆく足取りはしかし、仕掛けられた罠や魔物の存在を警戒しながら慎重に。
遺跡の更なる深部を目指し、侍女風貌の魔族の女は単身緩やかに進んで行く。
ご案内:「無名遺跡」にレヴェリィさんが現れました。
■レヴェリィ > 行けども行けども、迷宮はただ広がるばかり。
しばらく進むと魔物の気配すら感じられない静かな区間へと入る。
もしあなた自身が足音や呼吸音も殺しているなら、そこはまるで全ての生き物が寝静まった夜闇の中のようだった。
もっとも、闇に生きる魔族であるならば、暗闇程度は問題にならないだろうが。
───そんな暗闇の中を、よく目立つ青く光る蝶が漂っていた。
ふわふわと重さを感じさせないそれは、どうやら魔法生物の一種のよう。
もしかすると、あなたはそれが古くから存在するとある『夢魔』の使い魔であることを知っているかも知れない。
敵意や悪意のようなものは感じられない。
広義的に言えば、同じ魔族であり同胞ではあるはずだが……。
蝶はただゆっくりと、あなたを案内するかのように枝分かれした通路の一つへと進んでゆく。
■シェティ > 何処までも伸びる迷宮の通路を進んで行く。
そうしてどの位進んだ頃だったか、狭く細い通路が不意に終わりを告げて、魔物の気配も感じられない静かな暗闇へと足を踏み入れる。
蒼銀の瞳が周囲の様子と手許の地図とを幾度か見比べてみるものの、如何やら無事目的地に辿り着いた――と云う訳では無さそうだ。
己の微かな息遣いを除いて一切無音の暗闇の中、警戒を緩める事は無く先程よりも慎重な足取りで進んで行く最中―――。
「――――……蝶………?」
不意に、その視界に映ったのは青白く淡い光を放ちながら羽搏く蝶の姿。
遺跡内の原生生物とも魔物とも異なる、何方かと言えば女と同じく理性を有した魔族に近しい気配。
其れだけで警戒を解く理由には足りぬものの、揺らめくその姿がまるで道案内の如く一本の通路の先へと消えて行くのを見て取れば、
僅かばかりの逡巡の後、覚悟を決めた面持ちで侍女風貌の女はその案内に付き従う様に、蝶の消えた通路の先へと身を投じてゆく。
■レヴェリィ > 進めば進むほど、通路に満ちた闇は深くなっていき。
やがて魔族の瞳を以てしても、見通せない程の漆黒の空間となった。
目の前を飛んでいる蝶を追っていく限り、迷うことはないだろうが……。
方向感覚も足元の感覚も、時間感覚さえも狂ってしまいそうな一面の黒。
「魔族が探索する側だなんて、珍しいのね」
だが、そんな代わり映えのない景色にも終わりがやって来る。
前方に新たな青い光が見えた。あなたを導いた青く光る蝶、それが何羽も集まっている。
その中心……朽ちた大きな瓦礫の上に、一人の少女が腰かけていた。
「ごきげんよう。何か探し物かしら?」
どうやらそこは少し広くなった小部屋のよう。
少女はくすりと微笑み、こっちへいらっしゃいな、とあなたを手招く。
■シェティ > 遺跡の通路は進めば進む程に、周囲を覆う暗闇は墨を流したかの様に深く濃くなってゆく。
最早魔族の女の夜目を以ても見通せぬ程の暗闇の中を、壁に付いた手と先を飛んで行く蝶の案内だけを頼りに進む事しか出来ず、
その結果当初の目的地へと近付いたのか、遠ざかったのか、それすらももう判らない。
「―――此処は………?」
やがて前後不覚の暗闇を抜けた先に見えたのは、青白い光を放つ無数の蝶によって照らされた小部屋の風景と、一人の少女の姿。
人間とは異なる――周囲の青い蝶の群れと同様に、己と近しい魔族側の存在であろうと感じ取るまでに、少しばかりの時間を要し、
あどけない微笑みで手招きする仕草には、失礼致します――と一言断ってから、侍女風貌の女はその空間の中へと足を踏み入れる。
「探し物―――ええ、その様な所で御座います。
貴女様は………此方にお住まいの御方で御座いましょうか………?」
この場所が遺跡となった今でも、この迷宮に住まい手を加え続けている魔族が存在するという話は、噂程度に聞き及んでいる。
目の前の少女がそうである様には――正直余り見えなかったが、相手の問い掛けに曖昧な答えを返すと同時、
蒼銀の瞳を瞬かせながら、ふと浮かび上がったその疑問を侍女風貌の女は口にするのだった。
■レヴェリィ > 「正確に言えば、違うわ」
あなたの予想通り、質問には首を横に振る。
「でも、完全に違う、とも言い切れないわね。
私はどこにもいないけれど、どこにでもいるから」
しかし、続くのは謎掛けのような言葉。まるで悪戯っ子のようにくすくす笑い。
その間にも、青い蝶の一部がふわふわとあなたの近くを漂い、その周囲を照らした。
警戒心を慮ってか、一定以上は近寄って来なかったが。
「とはいえ、ここのことならよく知っているから、探し物なら力になれると思うわ」
■シェティ > 「―――然様に御座いましたか。………失礼を致しました。」
己の問い掛けに、首を横に振って否定の言葉を告げられたならば、緩やかに頭を垂れて謝罪の句を述べる。
されど続く謎掛けめいた言の葉と、悪戯をする子供の様な笑みを浮かべる眼前の少女の様子に、侍女風貌の女は小首を傾げながらも、
最後に述べられた相手の一言には、暫しの間躊躇う様な素振りを見せる。
魔族同士の身とは言え、出会って間も無い目の前の相手に其処まで頼って良いものか如何かと云う、警戒が半分、遠慮が半分。
されど現状彼女の手助けが無い状態では、目的地への到達はおろかこの遺跡からの帰還すらも危ういであろう事は容易に理解出来た。
暫しの間を要した後、やがて意を決した様に侍女風貌の女は懐から一枚の地図を取り出して見せる。
「………実は、この場所を目指していた処なのですが………。」
そう告げながら、蝶の青い光を受けて照らし出される遺跡の地図は随分と旧い時代のもの。
目的地と思しき場所に印が付けられてはいるものの、その道中の道のりは現在の遺跡の構造とは似ても似つかぬもので―――。