2023/11/21 のログ
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」にシアンさんが現れました。
シアン >  
城塞都市「アスピダ」近郊。
剣戟が響き、魔導が跳ぶ、気勢が上がり、悲鳴が上がる、轟轟と戦の音が轟く城門の真ん前、
よりかは幾らか遠くの場所――
城塞都市と近隣都市あるいは村村を結びつける交易路であり生活道路でありといった其処で、

「ふざけんな!? んだその固さぁ!! 痛っっってぇなアホがぁ!!」

男が思いの丈を思いきり叫んでいた。
固く握り込んでいた拳を解くと手をぷらぷら振ってみたりふーふー息吹きかけてみたり、
殴ってみたら殴った拳が壊れる程とまではいわないが跳ね返ってきた衝撃は予想以上で、
つまり叫んでいる内容通り。
“いっっってぇ”のである。

周囲には。散乱した、幌やら車輪やらと爆散した馬車だったもの。倒れ込む、足を踏み潰されて呻く御者や全身打撲で転がる冒険者。倒れ込む、黒騎士。――問題は黒騎士だ。全身鎧(フルプレート)の手入れに金を掛けられず錆止め代わりにコールタールを塗ったくって真っ黒になった貧乏貴族or騎士の成れの果て、でなく。宝石か鉱石かといった艷やかな黒色でぬらりと光を帯びた、大きさ目算4~5メートルほどの、貧乏騎士とは似ても似つかぬ人外だ。

アスピダ方面に向かう馬車がこの“エイコーン”に轢かれた。
馬車が誰かを轢くならとかく馬車が誰かに轢かれるとは……
大変びっくりした。
殴ってみたら結構凹んで吹っ飛びはしたが殴った拳のほうが壊れそうである。
頑丈と評判の魔物でも仕留めれる程度にそこそこ本気でやったというのに……
大変びっくりした。

「さあて。どうしたもんかね……来るんじゃなかった、ほんとにもう。あいつめぇ……帰ったら一週間はぶち犯すぞ」

お気にの女がこの“エイコーン”とやらに興味を示していたので、
まあちょっと見に行ってみるか? とりま見るだけ。
と、やってきたら接敵&開戦する羽目になるとは不運だ。
のっそりと身を起こし膝をつき足を立てる動作だけでもずしんと腹に響く重低音を上げている巨人に辟易顔しながらぼやく。

シアン >  
確か、聞いた話では~……模倣だったか? 接敵対象の特性などを真似るとかなんとか……“雷鳴”の使用は控えた方が良いだろう。此処で仕留められなければ電撃を放つ魔導人形が出来上がってしまって城塞都市攻略に頑張っている皆様にくそ迷惑。加えて、周りに転がっている要救助者も巻き込む恐れがある、一応助ける気でいるのに自分か自分を真似た魔導人形の雷撃で止め刺したら流石に気の毒。いや、いや待て……?
云々、考えを巡らせ、目線を眼前から外せば周りをちらり。
幸い向こうも巨体を殴り飛ばす敵を相手に思考中の様子だ、
直ぐに攻めに掛かってこない間に――
ヘッドバンドを外してから髪を後ろへ撫で付けてヘッドバンドで一括り、上着を脱いで袖を腰のあたりで縛る。

「逃げるか」

現況不利過ぎる。仕事で来ているならとかく物見でこれは大変まずいので逃げる事にした。
踵を返せば、地面を蹴り上げ、走り出す。途中ひょいひょいと怪我人を拾って――

「めっちゃ揺れるけど我慢しろよ~」

は? みたいな具合に呆然と佇んでいるエイコーンを背にして、走る、走る、走る。肩に一人両手に二人ずつ持って尚速度は、あるいはエイコーンが直ぐに走り出せばそれでも追い付けたかもしれないが気づいた時には彼あるいは彼女との距離をぐんぐんと引き離して気付けば豆粒。

「……次戦る時までに対策考えんとなぁ……」

そんな速度で揺られる怪我人が悲鳴を上げるのは無視して景色がかっ飛ぶ走りを維持し、安全地帯まで走り抜ける傍ら、あーあ、何て嘆息零しながら呟くのであった。

ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」からシアンさんが去りました。