2023/09/02 のログ
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」にハヴァン・グレイナルさんが現れました。
ハヴァン・グレイナル >  
 アスピダ山間部
 天候は曇り 雨が降りそうな しかし降らないまま薄暗い灰色雲が覆っている中
 雲下では涼やかな風が熱を帯びた体を撫でていく。
 露出した肌の汗が冷える中でも、その熱は冷めることはない。

 剣撃と怒号
 目の前で意趣を返すような傭兵達の、どこか解放された笑み
 大義名分を得て剣を振るう 殺しを覚え始めた若く粗暴な騎士を思い出す。
 そんな顔も、突き出された槍数本や、己の中短剣の肉厚な刃が脇腹を通り過ぎれば
 楽しみ切れなかったという顔で消えていく。

 それならまだよかった。

 しかし、苦い顔 決意した顔の若い騎士 真面目な騎士
 國を見限った年を重ねた騎士らとの刃はこんなにも苦みを帯びる物だと
 相打つ度に実感する。


   「―――ッッ!!」


 振り上げようとする両手首を、肉薄にした間合いから振り上げて切り落とす
 小回りの利く返す刃が、鎧の隙間を抉るように兜の向こう側へと深々と突き刺さったのなら
 その肉で振り抜けないことがないよう、刹那押し込んで空間を広げ、血潮と共に引き抜く。
 周りの者らが、同じような鎧同士で打ち合う姿。
 共食いのような光景の中、ハヴァンは拳を硬く締める。

 横合いから来た勢いばかりつけた、若い剣
 間合いを縮めると、剣を握る拳に左拳を合わせ、指を砕き獲ったのならば
 落ちる剣の向こう側、痛みと剣ですら死ねなかった若い貌に、陥没を与えるべく
 剣を握ったままの握りこんだままの右剣が鼻の軟骨と共に、奥の頭蓋の中心がベコリと凹むのを感じた。

ハヴァン・グレイナル >  
 拳が抜かれ、目の前で大の字に倒れる若い騎士
 ―――顔を知っていた。


   「…、…■■■・■■■か。
    ―――好い奴ほど、アスピダに行くか。」


 未来の無い国より今を信じてついていきたい男がいる
 その足取りと貌は、軽く憑き物が落ちたようでも
 剣を合わせる時に覚悟を決めた貌で、まるで親を今から殺すような表情で攻めて来る。

 横合いから攻めてきたときに聞こえた、あの裂帛の気合
 それが妙に悲し気に裂けていたのが尖ったこの耳に残った。


   「主を選べないのが従者だ。
    従者が主を選んだら、こうなるのは―――っ…、…決まっていただろうに。」


 腐敗した中にいた奴らほど、染まれずに向こう側に行く。
 それが妙に現実的な中、エイコーンが今はいない。
 それが救いだろう 苦い光景でも、今はまだ士気が高く続いている。
 
 ―――嗚呼、足がこんなにも重く感じるのは久しぶりだ。
 ―――賊が薄くなり、騎士と傭兵らが増え始め、本当のクシフォスガウルスの一団に近づこうとしている。
 ―――英雄なんて、殺す側に回るものじゃない。 竜を得た時代の先祖が、今はうらやましかった。


   「―――。」


 目の前をハヴァンがにらみつけると、騎士傭兵の混ざり合いらが、目の前に幾つもいる。
 ほんの10秒足らずか、骸を眺めて呟いた感傷の間に、攻めきれなかったらしい。


   「―――来い。」


 そう言って、騎士の剣にしては身幅があり、丈が短いマチェーテのような刃を見せ
 軽鎧から覗く筋肉がミシリと高ぶっている光景を見て、息を呑む。
 息を整え 躰を熱くし 覚悟を決めて 吠えかかったのだとしたら―――。
  

ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」からハヴァン・グレイナルさんが去りました。