【イベント『王都から騎士団・冒険者等への緊急要請 「血の旅団」討伐依頼』開催中】
九頭龍山脈の中に築かれた中規模の城塞都市。街の周囲は城壁で守られており、山間部という地形を利用しているため、外部から攻めることは難しい。
古くから存在しており、歴史的に国境付近の守護、及び異国の動向の監視を行う都市として重要視されてきた。
現代では魔族の国の軍勢との戦いの重要拠点の一つにもなっており、その重要性は依然として変わらない。この城塞都市からタナール砦へと補給が行われることも少なくない。
また、ミレーの隠れ家の調査拠点の一つでもある。
魔導機械を含めた様々な兵器が城壁内外に組み込まれており、守るに硬い要塞都市である。地下にも堅固な城壁が存在し、上空には魔導機械による魔力障壁が展開されているため、地下・上空からの攻撃にも強い。
内部には娼館や酒場等の施設も存在している。
※内部施設についてはその他にも描写していただいて構いません。
◆現状(イベント『盗賊団「血の旅団」討伐』)
現在、盗賊団「血の旅団」によってアスピダは占拠されている。都市を選挙する盗賊団の軍勢を率いているのは、かつて存在した暁天騎士団の団長である「クシフォス・ガウルス」である。
堅固な要塞であったが、シェンヤン公主降嫁による公主の護衛や辺境の反乱鎮定のために人員が徴収されており、守りが脆弱になったところを突如現れたクシフォスの軍勢によって一斉に攻められ陥落した。クシフォスがかつてここの主であったためにその弱点もよく知っていたためである。
街の住民の多くは戦闘時に多くが逃亡したが、一部は城塞内に取り残されてしまい、娼館などで働かされているものも多い。
盗賊団の本拠もここに存在していると目されており、アスピダは魔族の軍勢との戦いの重要拠点でもあるため、王国側はこの城塞都市の奪還を最優先目標としている。
王国側の軍勢とクシフォスの軍勢との戦闘が城壁や城門前で繰り広げられており、時にはクシフォスの軍勢が出撃して王国側の軍勢と戦うということが繰り返されており、現状では戦力は拮抗している。
略奪品や拉致されてきた者たちも運び込まれており、捕虜への性的な尋問・拷問なども行われている。
【公式NPC 暁天騎士団長「クシフォス・ガウルス」】
かつて王国内で名を馳せていた暁天騎士団の団長。壮年の男性で、堅固な甲冑を身にまとい、顔や体には戦傷が多く刻まれている。
腐敗した王国の中では珍しく清廉潔白で人物であり、まさしく正義漢と評するに値する人物であったとされる。自身の戦闘能力は非常に高く、同時に指揮能力にも長けていた。
寡黙な男ではあったが交友関係は広く、
王国内の騎士団の腐敗の是正に努め、実際に功績を挙げていたため騎士団や国民からの信頼も篤かった。
王侯貴族の汚職にも厳しい目を向け、汚職事件を解決に導いたこともあるが、そのために王侯貴族の一部からは疎まれ、王都から離れた城壁「アスピダ」へと強制的に暁天騎士団もろとも転属させられてしまった。
二年前の「血の旅団」討伐作戦において、彼を疎む王侯貴族の命によって無理な作戦行動を強硬に命じられたが、不正は憎むものの祖国への忠誠心も篤かったクシフォスは承諾し、非常な健闘の後に死亡した――とされる。多くの部下を死なせてしまったことを悔やむ言葉が最期の言であったという。戦場での死であったため遺体の回収は不可能であった。
彼の死後、暁天騎士団は解散させられ、生き残った彼の部下たちも他の騎士団などに転属されることとなった。
しかし、彼は生存していた。そして、あろうことか自身が戦った「血の旅団」の幹部として一軍を率いており、かつては行わなかったような残虐な作戦も平然と行い、彼が憎んだはずの略奪行為も行っているため、彼を知る者は衝撃を受けるとともに、本来の彼ではこのようなことは絶対にしないと口を揃えて述べる。
このため、何かしらの洗脳等の術が彼に施されているのではないかとの指摘や、クシフォスは戦死した彼の部下たちを引き連れ、暁天騎士団を再結成していることから、何かしらのネクロマンシーが使用された可能性も指摘されている。
言動については以前と変わるところは少なく、略奪を命じる際も虐殺行為などは強く戒めており、その点はかつての面影を残しているといえる。
※公式NPCの扱いにはご注意ください。クシフォスの元部下やかつての同僚、現在の部下などとしての設定は可能です。上の人物設定に基づいて、会話をしたことがあるなどの設定も問題ありませんが、NPCとして直接現在のクシフォスを描写内で喋らせるというような行為はご遠慮ください。
※クシフォスの元部下、現在の部下などの登録も可能です。クシフォスを慕い暁天騎士団に合流した元騎士団員も問題ありません。また、占拠されているアスピダの市民や密かに潜入した者、囚われて奴隷とされたものなどももちろん可能です。
※イベント進行によってアスピダの状況は変わりますので、ロールプレイはそのイベント進行を越さない範囲でお願いします。イベント進行に先立って城門を突破した、内部に突入したなどの行為はご遠慮ください。
※クシフォスの軍勢は盗賊団にありながら統制されており練度も高いというような設定になります。その点ご留意いただければと思います。
参加者(0):ROM(1)
Time:12:14:02 更新
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。
■メイラ・ダンタリオ >
―――いや、正確には数人、エイコーンに死角や背面から叩き込む者
ヘイトすら移動させる者すらいる。
メイラと似た者同士は、少なからずいる。
数年前ならいざ知らず、今ではメイラと肩を並べ駆け抜けようとする者だって。
これがメイラが混ざる一団での、強烈に痺れ伝わった狂奔のような気狂いだったらメイラだけだった。
周囲は足場崩しや罠張り 鎖と鉄球を用いた縺れ技など絡め手しかない。
それについてくる者らがいることで、破壊欲求と同等の自身へのより高みを求める飢餓にも似た何か。
それが必死に動かし続ける両腕とは違い余裕めいて思考させている。
全ては あのお方の為。
全ては あのお方の為
頭の中で巡る行動原理は未だ枯れ果てることはない。
魔族とブレンドされたこの身体は未だ止まること老いることを知らない。
まだ高みへと至れるはず 掛け下がるだけの老いに任せた兵とは違う。
「お前ごときお前如きオマエゴトキナンガニィイウイウウウウウウウウアアアア!?!」
狂いが見え始める言動と共に、体は冴え頭は血を欲し、鎧が呼応して未だ冷めと反動を与えない。
破壊できなくても 勝てなくても “負けない戦い方” なら幾らだってあると言わんばかりに
剣撃の果て、 擦り切れた内側の手革から血が滲み始めたのがわかるほどの中
聞こえるのは噛み締めた自慢のギザ歯が織りなす 耳障りな異音。
「―――ッッ!!」
歯軋り一回 二回 三回
それと共に力が増産され、瘤は堅くなり、足場関節部位を狙って逆側から一撃。
転倒目的で加えた一打と転倒。
山間部により横転を繰り返すそれを見ながら、外側に反り返った乱杭歯の並びが目立つ兜
其処から左右に細く、細く、フシュウッと白い濃い吐息が熱量と外気温差で色づいて吐かれた。
■メイラ・ダンタリオ >
―――音
今のアスピダ戦線城壁外山間部
魔導機械迎撃を必要としないエリア
無理に人間傭兵も出張る必要が少なく、城門へと別ルートへと出入りしてしまえばいいといえる空間。
なにせ其処では届く対象は狩って駆って刈って齧り尽している。
薄く積もっている白は赤が飛び散る場所が其処ら彼処にある。
其処で、音が響き渡っている。
無数の音 硬くて 重くて 大きくて、それらが何度も打ち合う音が聞こえている。
音、音、音、音
まるで金属が撓んだかのような波状の響きが上がる現場は、骸と赤が目立つ薄雪の大地
そこで攻防を繰り広げている、異形の女兜を身に着ける黒真銀の全身甲冑
両手に携えた身長を超える丈と胴体を隠すほどの身幅の非特大剣
それが、何度も火花を剣花として散らす鋭い攻撃と防御。
エイコーンの特性上、相手よりもわずかに上回り続ける技術という点
それを今まで接するだけ無駄だとしていたメイラが、迎撃範囲以外でこうして打ち合い打ち合いを続けることで
悲鳴の上がる体 盛り上がるまま緩められない両腕の筋肉
兜越しで目の挙動が止まらない赤い二つの視点。
何がメイラの胸の内に火をつけたのか 倒すことができないまでも、それを利用して飢えている力への欲求
それの糧にせんと、先ほどから剣撃が止んでいなかった。
ついてこれる者はおらず、できるのはタイミングを計ることのみ。
「――――シィィィ゛ィィイ゛イイイ゛イイッッッ!!」
右 脇 胸 足
間合いの長さも相まって、届く範囲で防ぎ切りつけ、しかし古代鍛鉄でも魔導機械金属を断ち切ることは難しく
間合いを一度取るように切りつけるではなく、突きの動作で飛ばしの要領で押し込むと足の摩擦が雪と相まって後方へと下がった。
■メイラ・ダンタリオ >
戦場
アスピダは昔は今をときめく血の気が多い者達の一際集まる場だった。
だが、今ではもう何度目の冬が過ぎただろうか。
うっすらとした雪が白く色づかせている大地。
ここが積雪で不可侵領域と化していたらもうクシフォス・ガウルスが煮詰めているなにかしら
その一計が進めていかれるばかりとなっていたに違いなかった。
メイラ自身も、タナールやゾス村周辺
以前の地盤変動で起きたタンジョンの入り口が増設されてしまったことによる魔物の散発的な出現
それに参じることが多くなってしまっていた。
今の入ることすら叶わないアスピダ
もはや“アスピダに入らせろ病”で止める周囲を殴り飛ばしてでも行こうという気すらない。
極めつけは魔導機械エイコーンによる、一対一では不利になる結果しないとわかってしまったアレだ。
盗賊も減り、傭兵も得体のしれない状況に足を鈍らせる。
範囲を調子づいて広めようとしないかぎりは、無理に刈り取る必要もなかった。
都市には近づけば魔導機械型迎撃装置
内部への侵入を拒む結界と城壁。
以前は恐れ知らずに近づいて、色々とこなしていた身も今は響きもしていなかった。
――――が。
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」からスルーズさんが去りました。
■スルーズ > 己が言葉が影響を残すことは理解してる。
だが、理解してなお性に合う相手と言う者もいるのだ。
将を選べぬ兵士でない傭兵であるからこそ、己が旗は己で選ぶ。
それが楽しみであり、生存するための方策でもあるからだ。
何よりも、冒険者気質であるがゆえに、負け馬には乗らない。
アスピダの状況は、正直先は長くないだろう。
決め手がないから延命は出来ているが、出来ているのが延命だけとしか見えない。
ならば、旗色を変える政治力をつかうのもまた一考。
有力な傭兵がアスピダに敵対する。
それは他の傭兵の旗色にも影響を与えるのだ。
無論、天邪鬼なスリル依存症患者がアスピダに流れる可能性も否定はできないのだが。
「まぁ、ありていに言えば、そう。
冒険者に飽きたら行くかもしれないが、アタシにはまだまだ楽しみで可愛い弟子がいるんでね。
ただ、アンタが満足いくのなら、それはそれでよいだろうさ。
……いつでもとは言わないが、たまには参陣要求も聞いてやるさね。」
最後の一言冗句めかして。ただ、2人の間にはそれもまた約定であることは知れる程度の心持。
その先の、彼女の心根を読み取るほどの力を持たない専業戦士は、一旦は後方に下がることになる。
この後も、傭兵としての契約期間までは、怪力令嬢の隣に巨体が現れて、相手の戦線を崩壊させては戻っていくことがちらほらと。
いつものアスピダ戦線よりも、多少の被害が少なかったのは、王国軍にとっては僥倖だっただろう。
次の戦場はアスピダか、タナールか。
それとも王都のどこかになるか。
それは、また別の話。
■メイラ・ダンタリオ >
似た気質 いや、戦闘のせいか
非特大剣で数体の上半身が千切れ飛び、上空をぐるんっと数度回って地に落ちる姿
メイラの質量武器による攻撃も目の前の半巨人は見ている。
体は血筋から 何でもかんでもした後 だから 戦闘はこうも苛烈に真っすぐになろうものか。
敵対する意思はなく、同じ旗 メイラの傍で戦いたいとまで言った
周りはざわめく 巨星が怪力令嬢の傍に場さえ合えば寄り添うといったのだ。
メイラがいなくても、アスピダとは敵対する意思である。
傭兵家業は今日と明日で違うものながら、メイラは矛を向ける先が同じと示すそれに笑み
そして綺麗に生え並んだ歯を浮かせ、微笑んだ。
「フフッ、星はわたくしに寄り添うと。」
終わった戦場 兜を脱ぎ、三つ編みの蠍尾 それが解ける。
バサリと長い黒髪がマントや背筋の血に振れようとも構わず広がった姿
多少の汗 多少の血 その姿でクスクスとほほ笑む姿は上機嫌。
先ほどの抑えつけられ気味に鎮めようとした兵らの苦労は何処へやら。
「ええ、一々寄り添うのが面倒になったら来なさいな。
どちらでも、わたくしは満足ですわ。」
しかし、戦力としても血としても欲するダンタリオの性のせいか
良質な戦士としても女としても認めている様子。
―――その時は、全部手に入れてしまいますわ。
メイラは結論付けてこの前線から駐屯まで下がっていくだろうか。
この日、怪力令嬢の傍には時折巨星が沿う時がある。
その時は、いつもよりも酷くなることは、味方も敵も知れることとなった。
■スルーズ > 声をかけ、返ってきた返事に可笑しそうに笑って違いない、と応じれば
「ま、自分の常識を破壊できない連中はそうなるってことさね。
アンタの戦いっぷりは、亜竜でも一人で打倒す自信があってもぞっとする。」
似た者同士と言うのは相違ないだろう。
かたや戦場をかけ、敵兵を血糊に、肉塊に変える者。
かたや山野をかけ、獰猛なる魔獣を屠る者。
刃を向ける相手が違えども、『普通の常識』の範疇には収まらない者たち。
「ひと所に縛られるのは好きじゃなくてね。ある程度好き勝手やらせてもらえる冒険者の方が性に合ってるのさ。
とはいえ、戦場にでるなら、怪力令嬢の側で戦いたいとは思ってるけどね。
アンタの戦い方は、見ていて胸がすっきりする。」
冒険好きであることは否定しない。
だが、傭兵をやらないとも言っていない。
同時に、戦場に出るならば、旗は選ぶとも口にした。
巨女もまた笑みを浮かべて返した言葉。
更に紡がれるのは、狂気にもにたメイラの戦いぶりを心地よいと告げる狂気。
なるほど、先程メイラが口にした通り似た者同士で相違ない。
この身を欲しいと告げるその言葉は光栄なものなれど、恐れやしり込みをする者も多い中、
不敵に受け止め受け入れれば、口元ニヤリとした笑みを浮かべて
「なぁに、アタシが傭兵で出るときは同じ旗だ。
それに、アタシが鍛えても冒険者にむかない戦闘狂なら、アタシからアンタの旗へと加わるかもしれない。
そう言う意味ではアタシ達は持ちつ持たれつってことさ。」
■メイラ・ダンタリオ >
巨体による間合いと怪力での数体断ち
メイラの矛盾めいた全身甲冑姿での切り込む接近と手数。
終わるころには、アスピダ内へ逃げた他。
それを追いかけようとするメイラを、複数人で抑え、正気を促すことで終わる。
周囲は、赤が多量に流れ落ちて虫の息もいれば、赤で塞がる息で絶命したもの
二つに分かれて千切れ飛び、離れた位置で転がるもの。
様々ながら、メイラに近づいてくる半巨人の姿に、メイラもまた数人が運んできた非特大剣
その鉄塊を背中側に収め直す頃には振り向いた。
苛烈さも、吐息の激しさも鳴りを潜め、言語化すら読めない兜越しの狂言もない。
兜をガチンッと上半分が逆トラバサミのように開くと、赤を吸い、全身に雷撃傷のように走る鎧をそのままに
赤い瞳と白いギザ歯をのぞかせ―――見上げた。
始まる前にも思った 中々無い経験だと。
いや、戦いの中ではむしろ、いつもか、と新鮮さと馴染み深さ 混ざり合った奇妙な感覚でこちらに笑むそれを見上げ。
「似た者同士でしょう わたくしも、貴女も。
折れかねないのではなく、折れていく中で一握りだけが向かってくる。」
タナールならこうはならなかった。
人間同士では、もはやクシフォス・ガウルスと御しきれないエイコーンのみが障害か。
だから、曇り硝子のような赤い瞳で笑みを向けた。
周囲が若干圧倒されるものの、メイラの黒鎧周辺で見守る者らは、慣れた身丈か。
「冒険者好きでもなければ、わたくしが手に入れてましたのに。」
星であろうとも手に入れる。
その言葉は嘘偽りない笑み。
スカウトしないのは、仕え従う気性でもないせいか。
こうして同じ群れで居させる方が確立も高い。
強者好き 魔交じりのダンタリオとしては、目の前の星は手に入れば手に入れていただろう巨体っぷりだった様子。
■スルーズ > 元々は放置していても勝ち戦なのだ。
それだけの戦闘力が、突破力が、メイラの部隊に、メイラ自身が持っている。
だがその様が故に、正規軍がついてこれない。
ついてこれるのは、戦場の狂気を知る傭兵であり、自分の命をコインとしてベットする冒険者だったりするものだ。
金も勝利も欲しい。だが、それ以上にスリルが欲しい。
そんな、危険なドラッグにも似た『なにか』に囚われた連中。
そんな連中は敵にも味方にもいる。
だが、敵は巧みに使われて、味方は大して使われない。
それは将器の問題と言えばそれだけなのだが、そんなことでは面白くないと考える傭兵も一定数いるのだ。
メイラの戦いっぷりにたいして、己はまだおとなしい方だろう。
だが、生来の、その後の鍛錬によって得たこの巨体と巨大な斧。
その二つが戦意をくじくのは良く知っている。
タダでさえ不利だった敵軍に、新しく脅威が発生したと感じさせれば戦意をくじくことになるのは自明の事。
だが、この動きは賭けでもあって。
「……正気が豆粒ほどは残っててくれよ……?」
一瞬だけでも強烈な敵意をその身に受ければ、ゾクリ、と背筋に悪寒にも似た寒気が這い上がる。
だが、そこで歯を食いしばり、両足に、両腕に、全身に力を込めて、その寒気を振り払うかのように
「オオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
大咆哮をもって振り払い、その勢いを持って斧を大きく振りぬいていく。
先端の大きな質量が、1人、2人、3人と跳ね飛ばす。
1人目は斧の刃によって断ち割られ、2人目は勢いをもって無力化され、3人目は命は保つが吹き飛ばされる。
そんな戦況へと変わっていけば、数刻ほどで戦場は落ち着きを取り戻すだろうか。
短時間とも言えぬ、長時間とも言えぬ半端な刻限故に、流石に肩で息をしつつも、程なく呼吸を整えれば、斧を担いで先頭の方へ。
程なく見える黒鎧。その名を知られる怪力令嬢にお目見えせんと、一介の傭兵が近づいて。
「いやいや、凄い戦いぶりだった。アンタが味方でよかったよ。
敵なら容易く心を折りかねない。」
多少の疲労の色はみえるものの、それ以上に戦場の高揚感が上回るのか、楽し気な調子で言葉を投げた。
■メイラ・ダンタリオ > 大質量武具を振り回す怪力が、今はその鎧の身軽さと身体力をバネに両手に携える双剣で超近接を鬩ぎ合う
鋭く薄く手早くが売りのそれが、厚くただ切り落とせればいいというだけの優美さも装飾性もない
ただ鱗模様と銀色だけが映った刃
この場所で厚い装甲を持つ者は後方に位置するだろうものの、侵入されないように動きやすいがやはり多い。
貫き、断ち、革鎧の向こうへと突き破るように双刃の切っ先が貫いた姿
肺を破って血泡が気泡を作って下手な音を喉から絞り出す。
その鼻先で、異形の女兜 外側に反り返った乱杭歯が並ぶ兜が声なき声を聴かせる。
兵の絶命とともにグルンッと白目を向く姿と、グッと刃を深めてから抜き放つ、肉収縮の貫き辛さを消した押し広げ。
恐ろし気な鉄塊はまだ向こうで鎮座しているというのに、手にする二つ。
それを手に、アスピダに未だ突入が許されていない飢え
それを晴らすかのように、メイラの狂気が伝染した者らが追従するワンマンではない戦場で、どよめき。
―――巨人
―――わたくしの視界に入った巨体のシルエットは、一瞬だけ瞼を広げて敵意を向ける
しかしそれは友軍側 斧を持つその背丈 半巨人といってもいい身丈で周囲の兵を小柄に変え
そして斧で断とうと動く全身鎧が参加した。
誰かが言う 化け物が増えたと
命あっての物種
金と得 どちらも得づらくなってきた状況は、傭兵の足を踏ませない。
忠義と狂気で満ちたメイラ
勝ち戦をさらに勝ち戦にさせんと動く強者
金と命 両方がなければ成立しないアスピダ側が崩れるまで時間はそうはかからないだろう。
メイラの兜越しに、熱気がこぼれるように呼気が薄く白く乱杭歯の造形から零れ出る。
「―――巨星。」
その体格と顔を覆わない星兜という頭蓋を守るだけの姿
ポツリとメイラが発した言葉は、相手の スルーズの呼び名の一つか
メイラが、怪力令嬢と呼ばれているように。
■スルーズ > いつもは冒険者をしているのだが、アスピダ戦線があまりに膠着しているのでほぼ泣き落としに近い状態で久しぶりの傭兵稼業を受け入れれば
「……こりゃぁ、酷いな。」
メイラが前へ前へと推進していく中、もう十分知っている者たちは、彼女にさせるがままに、その上で周囲を取り囲まれないように護衛をする形。
同時に、技術には長けていても心が強くない者たちは、その様を見て恐慌状態とまでは言わないものの、腰が引けている。
この状況では膠着もするだろう。
とはいえ、この状況を打開したとしてもアスピダの城壁が城門が破れるとは限らない。
「……だが、やらないよりはマシだろうよ。」
苦笑交じりにぽつりとつぶやけば、メイラの後方、彼女をよく知る少数の友軍の更に後ろに配置された、大して勇敢でもなんでもなく家柄で今の位を得て、ダンタリオにそこまでネガティブな印象を持っていない男、今は傭兵団を任せられているが、メイラの戦いの様を見て少しひるんですらいるように見えるその男の胸を手の甲でトン、と叩いてから
「ほら、あの角度から、あの角度まで。あの範囲から内側には敵兵を彼女に近づけないように指示出しな!
アレを気にしない連中なら前に行くだろうし、気にする連中は後ろを押さえる。
違う!あの勢いは前に向けるんだよ!前に集中させるんだ!そのために、周りの余計な連中は、アタシ達で抑える。
護衛はその周囲に十分いる、後ろで見てるアタシ達は、戦場の線形を作るのが仕事だろ?」
指揮官にそんな言葉を向けるものの、分かっているのかいないのか。
ただ、その参謀はある程度できる奴の様子。意図を理解してくれたらしい。
指揮官を通してその後ろ、参謀に向けて頷けば
「んじゃ、アタシも少し、前で『仕事』をしてくるさ。後はよろしく頼むよ?」
そう声をかけてから、斧を担いで走り出す。目標は、メイラを中心に左翼側。メイラの護衛のさらに外。
回り込もうとしている敵兵にぶつかり、抑え込むことで彼女の推進力を前にだけ向けさせる策。
更にその外へと向かうなら大回り過ぎて、両翼の友軍にとっては『都合のいいエサ』になるだろうから、抑え込むべき急所はここと同じ距離の右翼。
その二か所を押さえるように動くことで、ただの混戦になり果てかけた戦場がもう少し、秩序を取り戻すかもしれない。
……とはいえ、その秩序もただ戦場の勢いの向きを定めるに過ぎないのかもしれないけれど。
配置についた女もまた、口元にニヤリと笑みを浮かべれば、咆哮と共にその大斧を振るい、敵兵を叩き伏せていく。
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」にスルーズさんが現れました。