2024/07/13 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道途中」にリセさんが現れました。
■リセ > 「………どう、しましょう……」
遅い夏の日暮れがゆっくりと迫り始めた、午後。
コクマー・ラジエル学院、課外授業で教師に引率され泊まり掛けで王都を離れた遠征が行われている、その往路のこと。
遠征とは云え、一応は貴族学級の内容なので教師だけではなく別個でしっかりと充分に精鋭な護衛が配備されて。なんなら個人で従者を連れることも自家用馬車を使用することも許可されておりかなり大人数での移動の最中。
しかし、やたらに人数が多いことも災いして、専属の従者を連れる余裕もない下級貴族の末娘が群れに逸れて途方に暮れていた。
基本的に上級貴族や目立つ生徒にばかり集中してしまう教師の目。
本来なら目立たず、従者もいない生徒に目をかけて点呼をきっちりと行うべきではあるが。
――この強い暑気のために張り詰めているばかりの教師の神経が参っていたのも要因のひとつで、親しい友人もなく存在感のない女子生徒は忘れ去られて、街道の片隅で独りきり。
街道沿いに聳える大樹の木陰にぽつりと泣きそうな顔で蹲っていた。
そこは街道でも東西にそれぞれ伸びる別れ道。どちらに行くのが正しいのか把握していない逸れ女生徒はとにかくどちらかに進むという判断もできず、動けなくなってしまって。ただただ日差しを避けて枝葉の作る涼しい木陰の下でじっと誰かが気づいて探しに来てくれるのを待つばかり。
「誰か……気づいてくれるでしょうか……そもそもいないことにすら気づかれなくて行ってしまったのに……」
今日の目的地である宿場町に着くまで、気づかれないかも知れない。
夕方、ようやく生徒がひとりいないことに気づかれても正直手遅れな可能性が高い。
そこまで、無力な女子生徒一人が山賊すら出没するという街道の真ん中で無事でいられるかどうか。
そんなことは当人にも把握できていて、不安と孤独と恐怖に押し潰されそうになりながら、場違いな制服姿で山賊街道の途中、取り敢えずは無暗に歩き回って体力を削らないようにじっと木陰で待機していた。
■リセ > 正しい道順を知っていて合流しようと歩いたとしても、普段体育の授業でしか運動しない甘やかされた貴族の足では追いつけるはずもない。
だから、待つしかできなかった。
たとえ、いつまで待っても迎えなど来ないとしても。
どんなに心細くとも。
「………わたし……ここまで、なのでしょうか……」
明るく強い日差しの下では影も濃い。枝葉の形にまだらに作られた木陰の下昏い想像を巡らせる。
水筒や救急道具など数少なく最低限の品物が詰まった小さなバッグをぎゅ…と身体の前で縋るように握りしめながら。
こんなことならもっとあれをしておけば、これをしておけば、と17年の人生に悔いを感じ、
「……お友達……欲しかったです……」
そうすれば独り置いてけぼりにもならなかったかも知れないけれど、それよりも孤独のまま道の途中で果ててしまうのが堪らない。
なんだか、どこにも辿り着けなかった一生のように思えて堪らず、蹲って両手で顔を覆う。
癖のない銀の髪が簾のように流れていた。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道途中」にスラッグさんが現れました。
■スラッグ > 「やれやれ、参ったゼ……」
山賊街道に隣接する森の中、巨漢の男が時折、背後を振り返りながら獣道を進む。
身の丈は2メートルを超え、差し込む木漏れ日に照らされる貌は、
オールバックの黒髪、潰れた鼻に下顎から伸びる牙に尖った耳と明らかに人外の特徴を備える。
人間からは豚面などと蔑まれる魔族の一員たる亜人種のオークである。
巨躯に纏った樹皮と竹の鎧には無数の矢傷や魔法の痕跡が残されて、彼が戦闘をこなした事が見て取れるだろう。
「有無を言わさず、いきなり切り掛かってくる狂信者どもめ。
他の連中が無事に逃げおおせられたならば良いのだが……」
学院の課外授業である危険地帯への遠征。
学生や教員のみならず護衛や従者を引き連れた簡易な一軍は人外の住処である森を侵し、
途中で遭遇した敵性亜人に対して有無も言わさず剣を抜き、矢を射掛け、魔法で焼き払う。
オークの英雄たる彼ではあるが、非戦闘員の仲間を守りながらの防戦では苦戦を余儀なくされて、
何とか殿を務めあげて、自分も人間たちから逃げてきた次第。
背後からの足音が聞こえなくなり、撒いた事を確信すれば嘆息を吐き洩らして、
手にした片手鉈で藪を斬り払えば、丁度、少女が腰掛ける街道脇の大樹の正面に姿を現して。
■リセ > めそめそ落ち込んでいた女生徒だったが、ちょうど迷子に気づいた教師が慌てて道を引き返して来てくれて。
取り逃がしたオークと生徒が鉢合わせしそうになっていることに気づくと一団を呼んで。
はぐれた女生徒に何かあっては責任問題!と殊更必死になって危害を加えられる前に奪取し。
「え…っ…? え? え……?」
何が起こったのやら把握できないままに、群れに逸れていた女生徒は教師に抱えられてその場から全速力で立ち去ることとなり。
きょとんとした双眸に何やら魔物の姿が映ったような気もするが――結局なんなのかやはり判らないまま、現場を強制的にあとにしたのであった。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道途中」からリセさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道途中」からスラッグさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にエストさんが現れました。
■エスト > 「あれ?見失った?」
まだ日が高いといえる九頭龍山脈の山中。
臨時で組んだ仲間と共に目撃されたという大型の魔物の確認に足を運ぶ。
しかし目撃情報があった辺りには影も形もなく、仕方なく探すことに。
最初こそ集団で探してはいたが、埒があかないと別れて探すこととし。
それでも声を上げれば直ぐに駆けつけれる距離を保っての探索になり。
そうしてそれらしい影は見つけ、一定の距離を保って追いかけることしばらく。
どれだけ追いかけたか気が付けばその影は見えなくなってしまっていて。
困ったなという顔で空を見上げて少し考えることにし。
「合流したほうがいいかな」
こういう時は一度合流かなと、一番近い仲間がいる方向へと足を向けて歩き出す。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からエストさんが去りました。