2024/05/01 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/天然温泉」にセナさんが現れました。
セナ > 「ぅ、あぁぁぁ……今年分の運、全~~~部使い切った気分だわ……」

山中の森林地帯を奥に進んだ人気の無い空間に、緩み切った少女の声が響く。
その日の食い扶持にしようと獣を追い、森林へと入った折に偶然見つけた天然温泉。
幸い獣の確保も大きな問題も無くこなせ、大した疲労も無いまま腹も満たす事が出来た。
基本的に懐が寂しい冒険者である少女にとって、温泉との偶然の邂逅は幸運中の幸運で。

「旅籠の湯ってのも悪くは無いけど、どうにも堅苦しくて羽が伸びないのよね、っと……」

近くの岩場に装備を置き湯にたっぷり身を沈めて満足気に大きく身体を伸ばすと、
満面の笑みで手を伸ばしたのはとっておきの酒を入れた竹筒。栓を開ければ一口飲み下して

「…………っぷは! く、ぅぅぅぅぅ~……あ~、あたし、今日も生きてるわ……」

満悦の吐息と声を漏らして、上機嫌のまま空を見上げる。
その日は晴天。木々の隙間から望める満月が何とも趣深く、
湯気に包まれた静かな空間はまるで貸し切りの様な気分にさせ、少女は笑顔をより緩ませた。

「近くに寝床に出来そうな場所も見つけたし、何なら暫く拠点にしても良いかも? ふふふっ」

更に奥へと進んだ先では随分と長く使われていないであろう山小屋を見つける事が出来た。
決して居心地が良いとは言えない小屋ではあったが、少女の様な宿無しにとっては上等過る寝床だ。
今夜は良い夢が見れそうだ、等と零しながら少女は束の間の休息を満喫している。
何事も起こらなければ、このまま静かに冒険者の一日は幕を下ろす事だろう。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/天然温泉」にアークさんが現れました。
アーク > 山中の森林の中、薬草狩りに夢中になっていた少年気付けば日はとっぷりと落ち、汗まみれの泥だらけ。
確か温泉があったはずと、向かいながらの薬草採取。

春の芽吹きに合わせて薬草から毒草様々な植物で満ちていて、背中の背負い籠は気付けばずっしりとした重さ。
小さな体でそんな加護を背負っていれば時折ふらふらと揺れる体。

闇夜でも変わらずに見える視界に映った薬草を取りに茂みに体を突っ込めば、がさがさ、がさがさと、少女が浸かる露店の温泉の傍の叢が不意に動き、葉や枝の擦れ合う音を響かせる。

セナ > 「…………っ!」

風切りがそうさせるのとは違う、何かが物理的に擦れ合う草木の音。
獣か、魔物か、はたまた人か。何が立てた音かまでは湯気と暗闇で判別は出来ないが
少女は緩み切っていた表情を即座に引き締め、選択した行動は――潜伏。
幸い、温泉の中央には一つ突き出した岩の存在があり、音を立てずにスイ、と移動すれば
物音を立てる主の姿を確認するべく瞼を細め、息を顰めて身体を隠す。

(ちょっと……何なのよ人が良い気分に浸ってるっつー時に……!
 あぁンもう装備が遠い……こっち側に置いときゃ良かったかしら……ミスったわ)

心の中で舌打ちしつつ、潜伏を続ける。
害のある姿が見えたなら、即座に駆けだして装備を拾って脱兎の構え。ごくり、と――小さく固唾を飲んだ。

アーク > がさがさと叢の揺れる音が一度ピタッと止む。
其れは少年が薬草の下へとたどり着き丁寧に採取しているわずかな時間。
根と、1/3程残したところで採取すれば今の時期2週間もすればまた元通り。
春様様である。
そして見つけ辛く、貴重な薬草であれば手の中のそれは輝いて見える。
テンションは無駄に勢いよく上がり、茂みから立ち上がれば、ざばっと音を立て上半身が現れる。

「薬草ゲットー♪」

丁寧に採取した薬草片手に満面の笑みでそれを掲げてから、布で包み、ポイッと背負い籠へと投げ入れる。

少年は気付いていないが、温泉の中の岩陰に潜伏する相手が見るのは背の小さな少年。厚手の布の服に、木で編んだ竹かごと、麻を撚り合わせた背負い紐。
茂みに潜り込んだ拍子にところどころから小さな枝が生えているがグリーンマン等よりも明らかにヒトに近く見えるだろう。
顔立ちも幼く緑の枝が刺さった金髪。
しなやかなながらもぷにっとした体躯の少年が差し込む光に浮かび上がる。
無防備で無警戒且つ敵意も害意のかけらも見せぬ姿は潜む者にとってどう映るか…。

セナ > (……? は? ぇ、何よ……子供……?)

草木を分けて姿を現した陰が余程予想外だったのか、
覗き見ていた少女の表情から険が失せ、呆気にとられて目を開く。

(こんな時間に一人で……? 流石に子供が出歩く様な場所じゃないわよね、ここ……)

流石に場違いだ、と。先程迄と比べれば薄くはなるものの警戒心は失わぬまま、
湯煙に隠れ湯の中を進み、置いていた装備に手を伸ばして脱出の用意を進めつつ
少年、の様に見えるその人影の動向を伺う為、少女は尚も息を顰め続ける。

アーク > ふんふんと鼻歌を歌いながら、茂みをかき分け姿を現した少年。
見た目は完全な人である。
見ようによっては小人系の者にも見えるが、服の上からも分かる幼い体。
よいしょっと背負い籠を手ごろな岩の上に置いて何かに気づいたのかきょろきょろと周囲を見渡してから小首をかしげる。
手早く服を脱ぐと籠の横にポイポイッと放り投げ振り返る。
野暮ったい浅手の服を脱げば白くすべすべのもっちりとした少年の身体。

ぺたぺたと温泉の畔に屈むと湯船の中に手を突っ込み、ごくごく微量な魔力を編み、水に伝え温泉の中に広げ調べ始めるが、外からは只湯温を確かめているようにしか見えないだろう。
その中で隠れている人の存在を見つければどうしたものか…。
山賊だと嫌だなぁ等と考えながらも水に干渉し、相手が急に動けば水の触手を生む様に魔術を仕込み。

「誰かいるんですか? 覗きはダメですよ…?」

荒事はそんなに好まない少年、その人物に掛ける声はどことなく不安を孕んだ声色であった。

セナ > 「あー……はいはい、居るわよ。人間。女。冒険者」

少年が声を掛ければ、岩陰から少女が姿を現す。
両手を軽く掲げて上げ、目に見えて怪訝そうな表情を浮かべた赤髪の少女だ。

「……ったく、覗きなんて趣味じゃないわよ。むしろこっちも同じ事考えてたっつーの。
 ……んで? そういうあんたは何処ぞの誰よ。こんな夜更けにガキが一人って、死にたいの?」

不安げな様子を少年の声から感じ取れば一先ず警戒心を解き、
『呆れるわ』と漏らしては『親はどこよ』と尋ねながら歩み寄る。
相手が子供であるからか、少女は特に肢体を隠すでも無く佇んでいる。

アーク > 相手がひょっこりと姿を現せばビクンっと小さく体を跳ねさせる少年。
此方を怪訝そうに見るその表情に小さく小首を傾げ。
誰何されつつも相手が死体を隠すでもなく佇んでいれば一瞬見惚れてから視線を湯に切ってからその言葉に応える。

「なんだ。 よかった…。えっと、僕はアーク。 男、新米錬金術師…です。 死にたくはないけど夜じゃないと取れない薬草とかもあるし…。 親? もういないよ? 僕一人。お師様からは旅に出ろって言われて今はこの辺りにいるの。」

ほっとしつつも魔術は残したまま、温泉に入る前に汗だけは流さなければいけないと、小さな手で湯を掬い、体を流しながら相手の問いに応える少年。
近づく相手の下肢が視界に入ればその視線をついっと上げれば、しゃがむ少年よりも高い位置にある相手の顔を見上げ。

「えっと、体冷えちゃうよ…?」

等と相手の体を気遣いつつ、小さな手でかける水の量はたかが知れている。

セナ > 「はぁぁ……良かないわよ良か」

少女の問いに返し、呑気に湯をかけてくる少年の態度に頭を振りつつ
『お構いなく』『のぼせる手前よ』と一言置いて、湯の縁に移動して岩場に腰を掛ける。

「……セナよ。入ってたのがあたしだったから良いものの、
 悪人やらデカい獣やらだったらどうするつもりだったのよ、ったく……。
 錬金術師が何なのかは良く知らないけど、夜しか取れない薬草……って言ったっけ?
 そんなにリスク負ってまで採集する程の価値が有るもンな訳?
 有ンなら……金になりそうね。ねぇ、温泉譲ったげるから代わりにどこに生えてるか教えなさいよ」

そう返しつつ『お湯どうぞ』等と少年に手振りで湯を譲り、少女は火照った身体を冷ます。

「帰る場所だとか一先ずでも寝る場所だとか……そういうアテはあんの?
 あぁ、そういやさっき奥に小屋を見つけたわよ。アテが無いなら使ってどーぞ」

自分より余程荷物が多そうに見える少年に伝えれば、返答を待ちつつ足湯を嗜む。