2023/11/16 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山中」にタマモさんが現れました。
■タマモ > 九頭龍山脈、中腹辺りか。
立ち並ぶ樹木、そして茂みの中、一つ、また一つ、声が上がる。
それは、最初は驚きの声で、その後、怒声に変わっていた。
その声の上がる場所、どれでも良い、その一つに近付けば。
ぽっかりと開いた落とし穴、それが見える事だろう。
覗いてみれば、かなり深い落とし穴。
ただ、周囲は柔らかい土である為に、落ちても、落ち方が悪くなければ、そう大した被害はないと思えるものだ。
まぁ、それが逆に、登り難さに拍車を掛けており。
一度落ちたら、誰かの手を借りなければ出る事が出来ない、そんな状態となってしまうものである。
「………あぁ、この思った通り、引っ掛かってくれる事の楽しさ…
本当に、賊と言うのは、面白い連中じゃのぅ」
と、そんな呟きを零したのは、一人の少女。
その背には、大きな風呂敷包みが背負われており、その重みを感じさせないよう駆け足で先を進む。
そして、さっきとは違う幾つもの声が、少女の背後から発せられているのだが…
その内容は主に『盗んだものを返せ』、聞けば少女の方に非があるような物言いである。
少女の呟きと照らし合わせば、山賊から少女が何かを盗んできた、そんな感じなのが分かるだろう。
■タマモ > 少女は進行方向を、右へ左へと切り替えるも。
やはり、地の利は相手にあるのか、なかなかに駆けて逃げ延びるのは手間のようだ。
…もっとも、山賊は山賊で、なかなかに苦労をしているようで。
駆けて逃げながら、時折、ぱちん、と指を鳴らしている少女。
何らかの力を使っているのだろう、その度に、どこかしらの地面に、さっきのような穴が現れる。
それは、不思議と狙い済ましたように、追い掛けている誰かしらを必ず捉えているようで。
その度に、また一つ、声が響き渡るのだった。
「しかし、思ったよりも多かったみたいじゃのぅ。
落としても落としても、きりがない上に、諦めが悪い。
まったく、困ったものじゃ」
そう、ここまで逃げている間にも、結構な人数を落としたはずだ。
なのに、追っ手の手が途絶える事がない。
いい加減、疲れてきたんだが…とは思うも、今回は、転移や飛翔は使わないと決めているのもあって、なかなかに一苦労である。
■タマモ > まぁ、答えを言ってしまえば、この付近一帯を根城にしている山賊団が今の相手。
結構大規模な為、この付近、どこかしこに部下達が配置されているのだ。
…もっとも、少女の健闘もあってだろう、もう少し突っ切れば包囲網からは抜け出せそう、なところまでは行っている。
最後の守りとして、なかなかの腕を持った部下が控えているのか。
はたまた、その山賊団を調査、相手をしようとする何者かと遭遇出来るのか。
それとも、偶然通り掛かるような何者かに出会えるのか。
さて、この先、どうなる事だろう。
■タマモ > どうやら、懸念も不要、期待も外れたらしい。
駆け抜ける先には、変わらぬ連中ばかり。
まぁ、それであるならば…
「………やっと見えた終わりであれば、途切れさせる訳もなかろう?
そもそも…な、お主等に、これを持っておる資格はない」
周囲を見渡していた瞳が、すぅ、と細められる。
その言葉が、誰に聞いて貰うと言うものでもなく、紡がれたならば。
駆けている身を低く、低く、下げさせて。
たんっ、と地面を片手で叩くように触れた。
その瞬間、ぞわり、と周囲の雰囲気が一変する。
何をしたのか、何が起こったのか、誰にも分からない。
ただ分かるのは、思い通りに体が動かない、それだけだ。
そうした中、少女だけは、何も変わらず駆け抜けて。
包囲網から、完全に抜け出すのだった。
ご案内:「九頭龍山脈 山中」からタマモさんが去りました。