2025/05/11 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にシルドさんが現れました。
■シルド > ハイブラゼールの資金源であり観光の目玉でもあるカジノ。
そのルーレットを回す姿の男が一人いた。ハイブラゼールといっても富裕層向けの区画が9割を占めているが、残る1割は平民クラスの人間。言い換えればここで働き日銭を得ている平民・冒険者の為の賭場でもあるのだ。
当然対冒険者用にルーレット盤自体に厳重かつ念入りな魔法の保護と抵抗が施されており、純然たる運以外の要素で干渉しようとすれば直ちに警報がなりお尋ね者となる。
張り紙にも『魔法・暴力などの抜け道厳禁』『違反者は即捕縛』
こう書いてある。
富裕層向けのディーラーなら魔法への対策なども出来るのだろうが、自分はそういった物がない。なので特注のルーレット盤でディーラーを行う事になっていた。
ベーシックスタイルの赤黒と数字が描かれている盤は客の夢と欲望を乗せて回されているのだった。
カーっという軽い音と共に盤の外周を綺麗に回る白い球。
皆が一斉にチップを張っていく。
「――ノーモアベット。」
そのコールでベットが締め切られ手を合わせて拝む者
無駄に熱くなっているのか血走った目でボールを追いかける者。
既に勝ちを確定させているので少額ベットを行い、富裕組には劣るが有料サービスを受けつつ空気だけを楽しむ者等がいた。
(んまぁ、このルーレット自体イカサマなんだけどなぁ。)
カジノの上層部がこのルーレットの出目を操作しているというのは半ば公然の秘密ではある。
ボールに刻まれた紋章がウィールを滑る時に摩擦などを計算して未来に干渉している。魔法の抜け穴ではあるがそれを表立って騒いだところでどうなるものでもない。
逆に言えば、上層部の気まぐれ次第でおこぼれにあずかる事もあるのだ。
■シルド > 出目は赤の30。悲喜交々の声が入り混じる中チップを計算し没収されたチップと幸運の女神が微笑んだ客にはチップを配られていく。
赤と黒だけに賭ける堅実な客もいれば1点勝負にドンと置いてくる客もいた。
メモを取っている客もいてそういった客は次は違う数字に確実に賭けてくる『お客様』なのだ。丁重に、少しずつチップが減らす様にされていくのだろう。
(に、してもやっぱ華はねぇなぁ。)
分かり切っていた事だが、賭場に来る客で見た目が麗しい客でもいれば目の保養にもなるし、勝負をしている様子を見て楽しむ事も出来る。
自分がやっているのは固定された力でボールを投入し、アルバイトで鍛えた小銭計算の要領でチップの回収とチップの払い戻しをするだけなのだ。
ある意味、暇ではある。
ちなみにだがこのテーブル、客人が座るとどういう仕組みか天上やテーブルに隠されている魔導撮影機でスケスケにされてしまう。
名目上はイカサマの道具を持ち込ませないためと言っているが、まぁ目的はゲスなものだろう。
さて客の一部が入れ替わっていく。破産した人間は顔色暗く、大きく勝った客は換金のため離れたり、といった具合だ。
次の客はいい女が座りますように!などというお祈りをしているのだった。
■シルド > しかして見目麗しい女性が座ることなく――こうしてアルバイト。ディーラー代理は無事に終わるのだった。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からシルドさんが去りました。