2024/11/06 のログ
アルマース > 『♪夢が叶うのは今夜』――歌う声に合わせ、
ふわふわの羽毛の扇を広げて踊り子たちが歌姫を覆い隠す。
ぱ、と扇を引っ込めた時にはステージ上に歌姫の姿は無く、歌声も徐々に小さくなる。
一人、また一人、夢から醒めるように踊り子も舞台から消えて
『また一緒に夢を見ましょ』と最後に声だけが残った。

そして舞台裏。

「お疲れさまでーす」

濃い化粧を落として手早く髪を解き、髪飾りや耳飾り、店の借り物の装飾品は返却。
自前の衣装は、ゆったりとしたシルエットの上着を羽織って見えないようにする。
そうすると、さほど親しくない者にはさっきまで舞台上にいた者とは思われない。
踊り子が仕事を終えた後に店内をうろうろするのを良く思わない店もあるが
ここでは細かいことは気にされない。
とはいえ衣装のままでは目立つから、一杯飲んで帰るなら客の振りくらいはした方がいい。
本日の給料を手に入れて、一服したり一休みしたりしている踊り子達に、お先に、
と告げてバックヤードを出ると、ステージが終わりざわめきの戻った室内を横切り、
壁際にあるバーカウンターへ向かう。

アルマース > 「動き足りないなー。このままじゃ眠れな~い。
 ねー、なんか眠れそうなやつつくって? 色が可愛いのがいい」

スツールに腰を下ろすなり、顔見知りのバーテンに頼んで、
酒が出てくるまでの暇つぶしに人間観察をする。
賭場の方から肩を落としてやって来る男、
取り巻きを引き連れてソファ席で食事をしている身なりの良い女……

「……今夜は平和だねえ。あたしも一ゲームだけやっていこっかな」

イカサマに端を発する殴り合い、負け続きで機嫌の悪い者同士の揉め事は日常茶飯事らしい。
今夜はまだ流血沙汰も見ていないし、警備で雇われている者も暇そうだ。
ハイブラゼールに来てから、踊る、寝る、宿で食事をする、くらいしかしていない。
土地勘があれば別なのかもしれないが、女一人で出歩くには大分物騒に思えたのだ。
それでも仕事があれば退屈はしないけれど、汗もかかない運動量では寝つきも悪い。
賭場に繋がる扉に目をやり……一勝負するかどうかは飲んでから決めることにしよう。

まずはグラスを手に、可愛いのか怪しいのか微妙な飲み物……
紫色からピンク色へグラデーションになっている液体に口をつけるのだった。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からアルマースさんが去りました。