2024/06/15 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にカナーンさんが現れました。
カナーン > 「あー……世の中うまくいかないっすー……」

 薄暗い小さな酒場のカウンター席。小さな椅子に大きな尻を乗せ、だぼっとした服の下の有り余る丸みを抱き枕に、濃い目の桜色に火照った頬を机に押し付け、カナーンは普段は高く甘ったるい声をワントーンひくくしてそうぼやく。

 目の前には木のカップに少し残った強めの酒。その傍らには木の実が数粒乗った木の皿と、カウンターに体を預けた拍子に脱げた帽子、そして数本の小さな謎の輪が並んでいた。

「絶対いいと思ったんすけど……」

 カウンターの下で床につかない足を所在なげにぶらぶらと揺らしながら、カナーンは桃紫色の瞳を細めて眉を寄せ、ぽてっとした唇を不満げに尖らせる。

カナーン > 「そりゃあ、直接気持ちよくなる効果はないっすよ。でも娼婦さんだって仕事休まなくてよくなるし、お客さんも知らない子供に後から急に会うことなくなるし、みんな万歳じゃないっすか」

 ぶちぶちと呟きながら小さな輪を一つ細い人指し指で引き寄せると、小さな円を指先で描いて、カナーンはくるくるとそれを回した。材質は不明だが軽いらしいそれは、回転が早まるにつれ彼女の指をゆっくりと登り、他の指に当たって机の上にすとんと落ちる。

「絶対お値段以上の価値があるのに、なーんで誰も買ってくれないっすかね……」

 がばっと体を起こすと、カナーンはカップをわしづかみにして残った中身を一気に飲み干す。そして、甘ったるくなった息を吐き出すと、カップを勢いよく置いて店主に告げた。

「かっ、はー……! も、もいっぱい、くださいっす!」

 少しの後、継ぎ足された琥珀色の酒を、カナーンはカップに口づけると一気に干そうとして――その強さにくじけて、半分程度を飲んだところでまたテーブルに体を投げ出す。

「どーしたら売れたっすかねえ……」