2024/02/25 のログ
サフィル > 人間相手に奮われることはない。
だが、貴族故に、俗世からずれた術師故に、犯罪者を、魔族を、国益に仇成す者を人と認識しない。
ミレー族も飼育管理されるべき動物と考えているのは秘密として。

本来は、目の前の御仁とは本質的に合いいれることはないのかもしれない。
目の前の御仁が故あって助太刀する場で敵対するかもしれない。

だが、彼と接するのは楽しいのだ。
たとえ、いずれ切り結ぶ間柄になるとしても、話をするのは楽しくなってしまう。

……そんな御仁が、間合いを保ちながらも、己の実力を推し量る目を向けながらも、
それでもこうして気にかけて声をかけてくれるのがたまらない。

「あぁー、カジノでぇー。いますよねぇー。
 負けたのは自分のせいというかぁー、ギャンブルなんてぇー、運営が勝つように出来てますよねぇー。
 おつかれさまですよーぅ。」

 ひふぅー、などと間の抜けた声を出しながら、お仕事の話を聞けば関係ないのに頭を下げて来る有様。
目の前で大きな実りがだぷりと、身を起こせば一呼吸おいてむちぃと。

「んふふぅー、色々とぉー、ちゃぁーんとぉ、仕込みはしてますよぅ?
 でもぉー、そういう事をぉー、言ってくれるのはぁー、アーディスさんがレディの扱い方を知ってらっしゃるからですよねぇー。
 えらいですねぇー。んふふふふぅー。」

 観念して素直に肯定してくるのであれば、尚更上機嫌になってしまい、すり寄って頭を抱き締めてくる。
 人通りの多い往来で。
 まるで出来の良い弟が出来たようで、長女ながら末娘、頭の上がらない長兄がいる身として嬉しくもあって。
 ……よし、いつか衝突するような状況になったら終始こちら側につくように説得しよう。
 今決めた。

「んふぇー? あぁー……、ここじゃぁー、よくあるんですけどねぇー。
 会員制のバーとかぁー、VIPルームにぃー、防音とか色々遮断する結界を張るんですよぅ。
 そう言う部屋が必要な理由はぁー、アーディスさんが思いついたこと全部だと思いますよーぅ?」

 問われれば、セキュリティ自体は誰が仕込んだか口にしても問題はないのであっけらかんと。
 術師自体に解かせようとしても、その相手は番兵、巨兵。最悪にして最強のセキュリティなわけで。

アーディス > (――多分、こうやって話せるのは決定的な決裂が起きていないからだ。
 彼女の認識とは異なり、自分はチンピラであろうとも騎士である。

 ならば、騎士とは自分を頼った相手を決して見捨てない。
 加えて、魔族や異種族などまで「ヒト」と認識しているのだ。

 決定的な事態が起きれば破綻する、それは彼女も同じ認識だろうが。
 ――別にそんな事は、ありふれた話ではないだろうか?
 談笑していた次の瞬間に相手を唐竹割にするなど、よくある話だ。
 それが彼女と自分に適応されないなど、どうして言い切れようか?

 だから、それとこれとは別だ。
 少なくとも、間違いなく彼女をこうして気にかけている自分もまた本心である)

「今日は少なかったみたいで、大体四人位だったよ。
 ……胴元が賭けは絶対強いからなぁ、俺は賭け事だけは苦手なんだ。
 顔に出るらしいしな」

(そういった事は強くない、と素直に彼女を認める。
 相変わらずボリュームのある身体つきが揺れるが、それをのんびりと眺める。
 こうやって見ると、確かに眼福ではある。)

「だろうな、とはいえ酔ってるから絶対じゃない。
 自動だったとしても、僅かな穴から広がる可能性はある。
 そういう時は、俺を頼ってくれて構わない――程度だよ。
 予備の予備、それくらいで良いさ

 ……っておい、ひっつかないでくれって、おい」

(これだけスタイル抜群の美女に抱き着かれるのだ、往来で。
 殺気じみた視線を向けてくる、実力の判らない馬鹿がまぁ多い事多い事。
 一人であればチンピラらしくよしぶん殴るするのだが、流石に彼女の前でそうはいくまい。

 あれ、でもなんだろう。
 抱き着いてる彼女がなんか企んでる気がしなくはない。
 それも絶対致命的な場面で起動するヤツ。

 やっぱりこの手は大切なものだけ取り逃がす、となりそうな感じのアレだよ。
 そうして、説明を受ければああ、と察したような顔)

「そういった意味じゃ、サフィルもお疲れ様じゃねぇか。
 寧ろそういった部分を国で見ているからこそ、致命的な破綻がまだ起きてねえんだろうな。
 ……ほら、ひっつくなって。 周りからの視線が痛ぇんだよ」

(――本当、なんというか絡んでくる姉みたいな相手である。
 ただ、力任せに剥がさずに訴える辺りは気圧されている感が物凄い。

 思想的には恐らく相容れないと判っているが、なんというか微妙に放っておけないのは何故だろうか。)

サフィル > 互いに知らず心得た上で成立する薄氷の親交。
お互いに己の意志が、理念が、価値観がある上での、相対さぬ内は結ばれる間柄。

だが、一番面白いのは、こういう上辺だけの馴れ合いでいつ首を狙い合うかもしれない関係が、
利害が一致して共闘する時。

そういう一戦を越えて、一線を越えて肌を重ねることを考えてしまうのも、
術師はただ間延びした物言いだけの印象通りではない人種で。

「顔にも出ますしぃ、それにぃ、そもそも勝つための場と技術がありますからねぇ。
 場に何重も厳重に結界を張った術師相手にインゴットでぇ、殴り掛かるようなものですよぅ。
 だからぁ、アーディスさんはぁー、知り合い同士だけするような賭け事だけにしましょうねぇー。」

 そこで仕事をしてきたというのに、まるで賭け事を嗜めるような口調。
 なんだか空気的にお姉さんぶりたいらしい。
 なので背伸びして間延びして弾みがついて目の保養の助けとなって。

「じゃぁー、今日はアーディスさんがぁー、エスコートしてくれるんですよねぇー?
 えぇー、やぁーですよーぅ。予備の予備じゃなくてぇー、今日はアーディスさんは私の騎士なのでぇー。」

 周囲の目線などおかまいなしに、殺気に対してむしろ楽し気に貴方の腕を挟み込むように爆乳が押し付けられてくる。
 ここまで術師のスタイルに気づかなかった視線の主達もその最中で尻が装束越しに浮かび上がり、
 胸も強調される様に更に殺意が増して、この場にいづらい空気になっていく。

 要は、貴方を誘っているのだ。
 今のうちに説得する時の布石を組んでおきたいし、何より彼と肌を重ねるのは嫌いじゃない。
 いや、むしろ好きな方だ。
 こうね、見た目オラついてるのにその実優しいのはぐっとくるので。

 絶対何人か落としてますねこれ。いや、堕としてますねこれ。

「いいぇえ、私の家はぁ、術師として貴族なだけでぇー、国防とかは依頼されて受けてるだけですよぅー?
 そういう甘やかされた家柄はすぐ腕が廃れて潰れますからねぇー。
 ステイシス家はぁー、実力主義でぇー、仕事もお金を積まれて受けるのですよぅー。
 すごいでしょぉー。

 宿もちゃぁーんと、経費でホテルを取ってるんですよぅー? んふふぅー。
 アーディスさんもぉー、一緒に泊まりませんかぁー?」

 いつか絶対敵対しそうなのにぐいぐい誘って来る。

アーディス > (――多分、騎士としての体面をかなぐり捨て。
 忌み嫌い使わずにいるものを使って、それで最善を引いてやっと勝ちの目がある。

 逆に言えば、彼女の手の裡を僅かながらとはいえ、知っている身だ。

 そこまでやると勝ちの目がある、と見るべきか。
 そこまでやらなければ届かない、と見るべきか。

 ――どちらにせよ、そうならねばきっと判らない。
 そして現状はそうなっていない、ならば違うのだ。)

「……自殺だな、遠回しじゃなくて盛大な自殺。
 賭け事やるとしたら、それこそコイントス位だ。
 俺がコイン弾く役で」

(器用ではある、ただし悪辣ではない。
 普通に騙すような真似はしない事は、彼女も知っているだろう。
 それ故のコイントスであり、自分が胴元に回ると言う事。

 ただ、うん、とりあえずこのひっつくの止めてくれ。
 色々視線が痛い、物理的な干渉されそうに痛いの。)

「ああもうこんなに酔って……分かった、分かりましたよお姫様。
 今日はあんたの騎士だよ、仕事も終わったしどうせ暇だ。
 何より、あんたと居るのは俺、嫌いじゃないしな」

(素直に本音を告げた。

 思想がどうとか、考えがどうとか。
 そういう部分ではなく、その在り方が好ましいと感じている。
 迷わずに自分の思想の為に動けるのは好ましいのだ。

 一歩外れれば、恐らく自分は彼女の敵になるだろうけれど。
 幸い、まだ道は同じようだし。

 そして、流石にここまで言われれば意味も分かろうと言うものだ)

「猶の事じゃねーか、国に依頼されるだけの力があるって事だ。
 それを維持、更には発展出来るなんてどんだけ凄いんだよ。

 ……はぁ」

(押しが強い、本当に強い、ぐいぐい来るよこの姉ではないけど姉みたいな人。
 だが、こういうのは嫌いじゃない。

 だから、抱き着く彼女の身体をそのまま抱き上げる。
 軽い位の彼女をお姫様のように横抱きにして)

「ホテル、どっちだよ? ――付き合うよ、お姫様」

(素直に従う事にした。
 正直、もっと交友を深めたいか否かで言えば深めたいのだ。

 ――或いは、知っている顔とぶつかりたくないだけかもしれないが。)

サフィル > 「えぇ、ですからぁー、ああいう場所は術師が機嫌よくごちそうしてる分だけいただくのがいいんですよねぇー。
 んふふぅー、だからアーディスさんは警備をされる側なんですねぇー。」

 カジノから金を巻き上げる最善の方法だろう。
 それは最も賢い選択。堅実な者を嗤う者こそ確率の、そして場を握られることの恐ろしさを理解していないのだ。

 だからこそ、誠実に自分が掛け値なしにコイントスをする、とすると言えるのは好ましく思う。
 なお他の外野が挑みかかってきたら色々這い出して来る。阿鼻叫喚の地獄。
 金を巻き上げられるか命を巻き上げられるか。まことハイブラゼールは魔窟の極み。

「えへへへぇー、分かればいいんですよーぅ。またまたぁー、そうやってアーディスさんは女性を喜ばせるのが上手いんですからぁー」

 ただ口調がおっとりしている。それだけで軽んじられた。
 周囲から、術師界隈から、蒙昧な貴族から、自分だけは分かっているという男から。

 だから何よりも忠実に生きて、求められたことを遂行して、仇成す者を葬り去って。
 そうして”無慈悲な巨兵”は出来上がった。

 そう呼ばれるのは不本意ではない。そう呼ぶのは、そう賞賛するのは己を軽んじた者達だから。

 けれど、いつかこの相対するであろう人は好ましく思う。
 いつだってそうだ。

 好ましく思う者は、人に敬意を評する者は、自分とは向こう岸にいる。

 だから、今の出会いを楽しく、堪能する。

「それだけちゃんと家が頑張ってるからですねぇー。んふふぅー。
 術師の家に仕事が集中するとぉー、術師でもないのに裏で繋がってるとかなんとか言う人いるんですよねぇー。

 ……ふぇ!?」

 軽々と、持ち上げる。自分を。
 それは、鍛えてるから出来るだろう。

 だがそれを、圧を感じている相手に出来るかと言えば話は別だ。

 ここまでしてしまえば、周囲の者は文句も殺気も向けられなくなる。とはいえ、だ。

「ああ、これは、ちょっと、流石に、恥ずかしいですねぇ……。
 ああ、ええっとぉ、ええっとぉ、あっちの方にお願いしますぅー……。」

 言われるがままに、ホテルへの道筋を示して、声はいつも通り間延びしているがか細くなって。

アーディス > (元より騙す事など難しいし回りくどい。
 それよりも理解をする方が余程難しい。

 相手を理解しなければ、知らぬ手で自分が死ぬかもしれない。
 だからこそ相手を理解する、チンピラなれど対話を望む。
 それが相対へ至るとしても、だ。

 ――それが、騎士としての自分の生き様だ。
 死ぬまで掲げると誓った、生き様である。

 この街の危険性を改めて説く彼女に、ふぅむと考えて)

「何事も程々に、って教訓にゃなるだろ。
 命まで奪われたらご愁傷様って奴だけどな、自己責任だろうし。

 ……? 喜ばせる気がある、って訳じゃないんだがな。
 割と思ったように口にしてるし。」

(そこはそれだ。
 自分から破滅へ飛び込む者を止めるまではしない。
 そんなのは騎士の領分ではない。

 彼女がどんな人物か、何を感じているかは判らない。
 ただ、零してしまったステイシスの家名については何も言わない。
 それがどんな家なのか、知っているのかさえも口にせず)

「……術師じゃねぇが、似たような傾向があるのが実家なもんでね。
 それがどれだけ大変かは、見ていて少しばかりは理解してるよ。
 ――全く、俺とは本当に大違いだよ、お姫様」

(圧を感じる? 次の瞬間には首と胴が泣き別れ?

 ――上等だ。
 それで揺らぐ程に、自分の在り方はブレてはいない。
 どれだけ強くとも、ともすれば自分より強かろうとも。
 彼女は貴人だ、ならばこれくらいやってのけるのが騎士と言うものだ。

 同時に、ここまでやると周囲に見せて覚悟を決めたと言う部分もある。
 若干、もうどうとでもなれ感もあるけれど。)

「そこで恥ずかしがるなよ、お姫様?
 あちらな、了解。 それじゃ、大事に大事に運ばせて頂きますかね。」

(視線を向けるだけで何もしてこなかった根性無しを鼻で笑う。
 一度決めればこんなものだ。

 そのまま、彼女と共にホテルの方へ歩いていく。
 まるで凱旋する騎士の様に、堂々と)

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からサフィルさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からアーディスさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” カジノ」にグァイ・シァさんが現れました。
グァイ・シァ > 歓楽街最大級のカジノのひとつ。
紫煙がただよう大広間に幾つもカジノテーブルがある中を、大小種族様々なひとが行き交っている。
客と店員は3:2、1のなかにさらに半分くらいは娼婦が混じっているようだ。

…というのが、ポーカーのひとつの卓についている女の見立てだった。

横目で室内を伺っていた女の眼の前のコインが攫われていく。
大した額ではないが、無表情の女が視線を向けたディーラーは目が合うとさりげなく視線を逸らせた。

(…なるほどな)

女は先から、小額を負けたり勝ったりしている。同じ卓ではない。
だが

(大体幾らくらいになるといちど負けて、幾らぐらいなら『勝たせてもらえる』という符牒がある)

そういう『ルール』があるかもしれない、と 周囲の掛け金も観察しながら『感じた』ものに独り頷くと、次の勝負を断る印に札を返してその席を立った。

このカジノがどういう場所かというのを把握するのに数日、各卓で行われているゲームを把握するのに数日。

(…えらく、草臥れたな)

さらに暖かくなって戦場がにぎわい始めるまでのつもりで始めた事だが、思いのほか熱中してしまった。
掌を見ると大分血色が失われている。そろそろ遺跡に潜るかして、『補給』が必要になるころだろう。

どこか階上から賑やかな音楽が流れてきて、紫煙とともに酒の臭いも強く漂う。見上げるステンドグラスの嵌った天窓の向こうは暗いようで、釣り下がった幾つものシャンデリアの灯りが眩しく思うくらいだ。

ぼうっと立っていると人に突き当たられる。女は視線を下ろすと、ヒトの流れに沿って歩き出す。
流れ着く先が卓なら暫く観察して、そうでなければ今日は出口へと移動するつもりである。
女の姿はどこからどう見ても薄汚れた流れ者で、カネの臭いなど皆無だ。わざわざカモにしようと近寄って来るものもいない。

グァイ・シァ > 時間も時間だが、ヒトの流れは減るどころか増えているようだ。
女が乗った流れは卓というより奥にある別の広間に流れているようで、今しがた出てきた広間からの流れに更に入口からのヒトの流れが加わって、さながら大波のように奥へ押し流されていく。
奥の人を集める別室が何なのか、気にならないではないが今急ぐこともないだろう。
そう判断した女は、流れを逆に身を返す。背後に居た相手に悪態をつかれるがお構いなしだ。
酒と香水の混じった香りに辟易しながら館外への流れへ辿り着くと、まだ春遠く感じる空気に満ちた外気を求めて漂って行った。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” カジノ」からグァイ・シァさんが去りました。