2024/02/04 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にグァイ・シァさんが現れました。
■グァイ・シァ > 海からの風は興は殊更冷たい。
街並みによって直接の海風が吹き付けられることはないものの、都市を通り抜けるそれは音をたててそこかしこの露店の帆布と叩き、掲げられている旗や看板はばたばたがたがたと身を震わせている。
道行く人々も身体を縮め、速足にし過ぎるものばかりだが
流石の港湾都市と言うべきか、曇天の下でも人通りは変わらない。
船で訪れたもの、これから旅立つモノ、或いは航行を生業にするものそれを通して商売に励むもの
(…顔ぶれは、王都より多様なのだろうな)
それらのヒトに混じって、通りを往く女はそう判じていた。
冬に入って戦が減って、たびたび街に出て『獲物』をさがすようになった。
戦で直接手を下す、或いは指揮するものに出会うのは容易だが、数そのものが減ると飽く時間も増える。
もうすこし『面白い獲物』がいないものか、街で出くわす可能性などはほんのわずか。
純粋文化を楽しむような性質でもなし、観察するのは行き交うヒトのことばかり。
(―――そろそろ、根を張る場所を探すか)
一日だけ
ちらりと見下ろした己の手首から血の色が失せている。
今日ヒトの流れを観察したら、遺跡にでも潜って血を浴びてくる必要がありそうだ。
食事を必要としない身体であるから路銀は溜まりやすい。
朱い髪の女は、ヒトの流れが把握しやすいような位置にある広場の傍らにあるカフェの一つに足を踏み入れると窓辺の席を陣取った。
近付いてきた胡乱な視線を送って来るウェイターに金貨を示して、適当に飲み物を、と告げて女の視線は広場へと転じる。
刀は腰にさしたまま浅く腰掛けるその姿は、兵士や冒険者も訪れるこの都市では珍しいものでもない筈だ。
■グァイ・シァ > 暫くして運ばれてきたのはうっすらとブランデーの香る紅茶だ。
さして格式高い店を選んだつもりはないが、カップも手の込んだものだと持ち上げたその軽さと繊細な持ち手で伺える。
(成程)
先ほどのウェイターの視線も頷ける。要するに、己のような薄汚い傭兵の見てくれのものが、おいそれと足を踏み入れて良い場所ではないと言いたかったのだろう。
ここでさして注目を集めたいわけではない。女はその身なり以外では何ら人目を引くことが無いように、努めて優雅に紅茶に口を付ける。
味など比べようも比べようとも思わないが、口腔から鼻へ抜ける悪くない心地に翠の瞳が細められた。
それを飲み干すころは時間はきっかり夕暮れちかく。
席にやや過分な金貨を置いて、女は音もなく立ち上がって席をあとにする。
果たして見切りをつけて『狩り』に遺跡へ向かったのか、お目当てのものをみつけられたからか
少なくともそのカフェには、平穏な時間が戻って来てまた一日が暮れていくのだろう。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からグァイ・シァさんが去りました。