2024/01/08 のログ
■シェティ > 無論、下手に拭い去ろうとするのでは染みを広げてしまうだけとなるだろう。
侍女風貌の女も其れは心得た上で、極力染みの残らない方法で婦人のドレスを濡らす飲み物を拭ってゆく。
結果、如何しても近目には不自然な模様が残ってしまう形となったが、今この場で出来る対応としてはこの程度が限界だった。
未だ怒りの収まらぬ様子の男女の応対は駆け付けた別の従業員に任せながら、女は床に散らばったグラスの破片を片付けようとして。
不意に掛けられた声にその手を止めて蒼銀の瞳を向ける。
視線の先に居たのはこの場には些か不釣り合いな、異国の装束に身を包んだ獣の部位を有した少女。
先の給仕の様に大敗の末に借金を負わされる者も少なくないカジノの中で、
一目で見ても好調と判るその様子も相俟って意外なものを見るかの様に一瞬その瞳を瞬かせた後。
「……ご助言、有難う御座います。
嗚呼、如何かそれ以上お近付きになられませぬよう。まだ、グラスの破片が散らばっておりますので。」
彼女の方へと向き直り、緩やかな所作で挨拶と助言に対する謝意を述べながらも、
未だグラスの破片が散らばった侭の周囲には踏み入らぬ様、女からも制止の声を投げ掛ける。
■タマモ > と、まぁ、見てみれば、ほとんど拭き広げてしまった状況か。
そんな状況に、これは参った、と言わんばかりに額に手を当ててみせ。
もう少し踏み出した足が、逆に女の声でぴたりと止まる。
「ふむ…そうなっては、もう後の祭じゃのぅ。
まぁ、後学の為に、ちと教えておいて…って、おっと危ない」
言葉の途中で足を止め、とりあえず、片付ける様子をのんびりと眺めようか。
声を掛けた女が行うのか、他の者が対処するのか、どちらにしても。
「…せっかくの機会、聞いておいて損はない。
手が空いたら、付き合うと良いじゃろう」
その女に向けて、そんな言葉を掛けるのは。
まぁ、少々気になったから、と言うのはある。
似たような知り合いがいる為か、目の前に居る女が人でない、程度の事が分かったから。
後は、純粋な好奇心と気紛れだ。
■シェティ > 侍女風貌の女とて、ドレスに出来上がった染みを無闇に拭き広げる様な真似は決してしない。
傍目に見ていた少女からすればより良い方法があったのかも知れないが、己にとってはそれが現状取り得る最善で。
後は相応の処置さえ施せば、少なくとも目立たぬ様には出来よう。
やがてまた別の従業員がやって来たならば、未だ狼狽えた様相で立ち尽くした侭の給仕を連れて奥の方へと去って行く。
給仕の仕事が務まらないと判断された以上、別の方法で負債を返す形となるのだろうが――其れは女の与り知る処では無い。
「……一応、こうした際の対処法もそれなりに心得ているつもりではありますが。何か、至らぬ点が御座いましたでしょうか?」
今は目の前に現れた客人、異彩を放ったその少女の応対が優先と判断すると、
散らばったグラスの片付けを他の従業員に委ね、その場から離れる様に相手の方へと歩み寄ってから。
改めて、侍女服の裾を軽く持ち上げ緩やかな所作で一礼を向けて見せてから、彼女の言葉に応える様に問い掛ける。
■タマモ > 物事は、一手間加えるだけで、意外な効果を発揮する。
それを知っているか、知っていないかは、大きな差を生む時があるのだ。
…おばあちゃんの知恵袋とか、良い例だが、今、それを言い始めても。
いや、まぁ、それ以外の理由の方が大きいのだから、それは置いておいても良いし。
さて、そんな事を考えている間に、事を起こした給仕の女が連れて行かれた。
一度のミスくらい、大目にみれば良いものを…
そうは思うが、実は何度も繰り返している、とかオチがあったらあれなので、考えるのを止める。
更に、そうした事も考えていた後、先程の女がやって来る。
なかなかに律儀な性格なのか、己が客なので素直に従ったのか。
「うむ、至らぬって程ではないがな?
お主、あんな状態で率先して動けるたいぷ、みたいじゃからな、老婆心ながらのぅ?
後は、あれじゃ…」
迎えるように、ひらひらと手を振りながら。
まずは、ここで言葉にして、周囲に聞かれようと、問題無い言葉を伝え。
「お主のような者が、こんな事をしておる理由とか?
やはり、気になってしまうではないか…こんな面倒な仕事より、もっと良い場に就けそうであるのに。
なんて、そんな感じにな?」
にっこりと、笑顔を浮かべながら。
その言葉は、女にだけ聞こえるような、小声で伝えてみせた。
己からすれば、これが気になった大きな理由だ。
■シェティ > 目立たぬ様に、隠すかの様に、事を起こした給仕の女が裏手の方へと連れられて行くのを見送る。
既に不手際の常習犯であったのか、或いは一度目の粗相を働いた相手が悪かったのか、その辺りの事情は判らないが。
或いは、侍女風貌の女が取った対応は己にとってはそうであっても、傍目には最善とは程遠かったのかも知れない。
それでも、投げ掛けられた少女の言葉を賛辞として受け取ったならば、再び軽く頭を垂れて謝辞を述べようか。
「其れは……有難う御座います。
そうですね……此処で働き始めてからはまだ日は浅いですが、こうした仕事には慣れております故。」
それから、手招きをする様に小さな手を揺らす仕草に不思議そうに小首を傾げつつも、
数歩、相手との距離を詰める様に歩み寄ると先の言葉よりも数段声を潜めて投げ掛けられた問い掛けに耳を傾ける。
その質問に対しては、言葉を選ぶ様に少しばかり考える素振りを見せながら。
「理由、で御座いますか。確かに、先の方の様に負債を負ってやむを得ずと云う訳では御座いませんが……。
一言で申し上げるならば、情報収集を兼ねて――といった処で御座いましょうか。」
此方も声を潜める様にして答えを返す。
さりとて、何もこのカジノの裏側に隠された闇を暴く――などといった大それたものでは無い。
此処がどの様な場所で、どの様な人々が出入りしているのか、そうした見聞を広めるのが目的である事を付け加えようか。
■タマモ > あれやこれや、色々とあった訳だが。
とりあえず、後は目の前の女との一時を…楽しもう、そう思考を切り替える。
「いやいや、何かあった時、便利な知識はあって損はない。
日が浅くとも、今みたいに出来るならば、店にとっては十二分じゃろうて」
変わらずに、大小と二つの言葉を使い分ける。
そうした、声を大にしても影響ない、そんな会話で語り合うように見せつつも。
小の声に、少し間がある女の様子に、見詰める瞳を細める。
「………ふむ、となると、砦の向こうの者達か。
まぁ、そう言った事をしている、そんな者にも会った事がある…働き口は、違っておったがな?
それならば…良い機会、妾の遊戯に付き合うついで、もっと上の情報でも得てみるか?
こんな場所で、よりも、もっと良いものを得られそうな、そんな場所もあるしのぅ?」
情報収集をする、人でない者、ならば可能性は魔族が高い。
その理解を示す為の言葉であるも、己は人にも魔族にも関わる、中立の立場らしき事も含めて。
そして、それに続き女に向けた提案。
賭場のこの場所よりも、もっと上の方の者達が関わる、VIP専用の奥の部屋。
己に付き合えば、そこに向かえる伝手で共に行けるが、伸るか反るか、と。
■シェティ > 便利な知識は有しておいて損は無い。
相手のその言葉に対しては否定する理由も無く、白銀の髪を小さく揺らして頷いて見せる。
目の前の少女が人間では無い以上、外見の年齢は判断基準にならない事は心得ているし、異国の出で立ちをしているならば猶更だ。
侍女風貌の女が有していない知識のひとつやふたつ、持っていても何ら不思議では無いだろう。
声量を切り替えながら交わされる会話。
大の声の言葉には抑揚の淡い声の侭、恐縮です――と短く答えて見せるけれども。
続く小の言葉が語った少女の推察には僅かばかり驚いた風に蒼銀の瞳を瞠目させる。
砦の向こうの者。その言葉が示す意味は明白で。
今の外見のみで言えば人間と何ら変わりない女であったが、裏を返せば外見以外で見定める術さえあればその看破も可能であった。
「―――貴女様の遊戯……で御座いますか?」
暫し思案する素振り。
目の前の少女に対しては得体が知れぬというのが本音ではあったが、少なくとも先のやり取りから敵意は感じられず。
興味を引いたのは彼女の提示した対価が半分、謎めいた風体の少女自身に対するものがもう半分、といった様相で。
幾許かの間を要しながらも、侍女風貌の女は彼女の提案に対して静かに頷いて見せるのだった。
■タマモ > 今回のような時に便利な知識、それを教えよう、そう思ったのは嘘ではない。
だが、女の事を確かめる為に小声で伝えた言葉、その反応に、別の考えも頭を擡げた。
今この時に己の考えは、それによって後者に傾く。
…いや、まぁ、後でちゃんと知識の教授はするつもりだが。
ともあれ、己の提案に、女は頷き乗ってくる事を示した。
それを見れば、笑顔のままではいるも、その心の内は…
「よし、ならば、お主は妾に付き合うが良い。
そのついでに、色々と教えてやろう。
それでは…ついでにもう少し、大勝負といこうか、のぅ?」
その言葉を、女の向けて、そして付近の従業員にも伝わるように向ける。
女に対すしては、純粋に言葉のまま、己に付き合えと言うもの。
そして…従業員には、また違った意味で伝わるものだ。
日の浅い女には、きっと分かっていないだろう。
合図と共に、給仕に付き合わせる事が、どんな意味を含めているのかを。
そして、己が遊戯と伝えた事の内容が、どんなものであるのかを。
その言葉と共に、数人の従業員が動き出す。
スロットに置かれたままの、大量のメダルを運び始める者。
何かしらの準備の為か、奥の部屋へと向かって行った者。
己はと言えば、それを伝えると共に、傍に居て会話を行っていた、目の前の女に手を伸ばし。
その腕を女の腰に回し、抱き寄せるようにすれば。
その奥の部屋へと向かい、歩き出すのであった。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からシェティさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からタマモさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にイリーナさんが現れました。
■イリーナ > 眠らぬ街ダイラスの歓楽街ハイブラゼール
街の賑わいは季節すらも関係なく。
「さーて、どこで遊びましょうか……」
ロングコートのポケットにはいつもよりわずかに重みを感じるゴルド。
重みがあれば余裕が生まれ、気持ちもわずかに大きくなる。
賭け事や闘技場……もしくは自分の身体でもう一稼ぎか。
それとも常に空いている飲み屋で潰れるほど飲むのもいいかもしれない。
どこぞのお店が賑わっているだろうかときらびやかなお店の光を目で追いながら大通りを女が歩く。
■イリーナ > 目的を定めずにふらふらと大通りを歩いていたせいか、どのお店も足が向かないまま一往復。
「うーん……先に宿、か」
もう少し時間が経ってより賑わってからの方が面白いか、と。
手近な酒屋と宿屋を兼ねているお店を滞在の拠点とするべく足を進めることだろうか。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からイリーナさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にイグナスさんが現れました。
■イグナス > もう夜で冬で、外ともなればひどく、さむい。
ひゅう、と凍える風が吹き抜けて、ぶる、っと身体を震わせた。
カジノの前、たくさん行き来する楽し気な人々を尻目に大きな大きな大男が、ベンチに座ってうつろな目をしていた。
「ぐう。………かけごとなんて嫌いだ。」
ぼそりと呻いた。いや、賭け事もお酒もなんだって大好きなんだが。
ギャンブルは、酷く弱い。たいへん弱い。LUCK値は高いはずなのに。
賭け事だけはたいそう弱くて、熱くなって、今日もすってんてんなワケである。
「ぐう。」
もっかい呻いた。
宿代も飯代も使ってしまった。いやはてどうしたものか――。