2023/12/17 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」から違法カジノさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にシェティさんが現れました。
シェティ > 煌びやかな照明に彩られたカジノの中、仕立ての良いテーブルの席に着いた男達に混ざる様に、
その内の一席に着いた侍女風貌の女は些か異質な雰囲気を纏いながらも、目の前に配られたカードへと視線を落として居た。

「――――………………。」

初めの内は遊興に耽る予定などは毛頭無く、唯その場の様子を遠巻きに眺めているだけのつもりだった。
されど其処へ従業員と思しき、ウサギの耳にレオタードという女からすれば奇妙な出で立ちをした相手に声を掛けられ、
気が付けばあれよと云う間に賭けのテーブルへと着く羽目となっていた。

周囲を見遣れば欲望に血走った男達ばかりのテーブルに花を添えたかったのか、或いは女が負けて身包みを剥がされるのが望みか、
相手の真意は定かでは無かったが、少なくとも不正を働こうという気配は無く幾度目かのゲームを終えた頃。
目先の欲に走った男達の中で冷静に堅実な判断を下しながら、成績としては勝ち過ぎず負け過ぎずといった処か。
そうしてまた新たに配られた幾枚かのカードを手に取り、淡々とした素振りで手許で開いた絵札を一瞥する。

シェティ > 実際にプレイするのは此れが初めての経験であったが、予め遠巻きに眺めて居た為に大体のルールは把握出来ていた。
無作為に配られたカードの中で役を作り、同じテーブルの中で最も強い役を作った者が勝ちというシンプルなもの。
隣の席の男が自信に満ちた様子でチップをテーブルに乗せてゆくのを横目で見遣ってから、
女もまた物静かな所作で、手許から取り出した同額のチップをテーブルに乗せる。
残りの参加者も思い思いにチップをテーブルに乗せ、或いは勝負から降りる判断を下した後、全員の手札が開かれる。

「………あら、負けてしまいました。」

勝ち誇り歓喜した様子でテーブルの上のチップを攫って行く男の隣で、
その言葉とは裏腹に、口惜しげな様子は微塵も無く抑揚の淡い声で芝居がかった嘆きを零す。
実際に負けた額としては然程手痛い程では無かったし、周囲の彼等とは異なり勝ち負けや一攫千金には然程執着が無い。
であれば、己に累が及ばぬ程度に勝ち過ぎも負け過ぎもせず、適度に場を盛り上げてやり過ごすのが得策だろう。
そんな事を考えながら、再び目の前へと配られてゆくカードを見遣る。
記憶が確かであれば、此れが規定されていたセットの中で最後の勝負である筈だ。

シェティ > 此れが最後であるが故か、周囲からは何処か緊張した空気が伝わって来るのを感じる。
先程勝利した隣の男の表情を一瞥すれば、欲望に血走った目で眼前の手札を一心不乱に見つめており、
かと思えば逆隣りの男は何かに祈るような面持ちで伏せられた札を一枚一枚捲ってはその中を覗き込んでいる。
彼が一体何に対して祈りを捧げて居るのか、女には与り知るべくも無いが。

果たして何が彼等をそれ程までに突き動かすのか少しばかりの興味を抱かないでも無かったが、
侍女風貌の女は変わらず淡々とした所作で、目の前に伏せられたカードを手に取り絵札に描かれた数字を確かめてゆく。
[5d13→4+5+5+7+9=30]
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にバランガさんが現れました。
バランガ > 商売仲間と共に訪れたカジノ、折角だからとあちらこちらに顔を出して、顔を繋ぎながら楽しんでいたひと時。
これが最後かのう、とカードゲームのテーブルで愉しんでいたところに現れたのは侍女服の女。
折角だからと、負かしてみようかと企んだものの、冷静なカード捌きはここまでそれを赦してはくれず。

「いやっはや、冷静沈着…とはこのことやのう」

なんて独り言をつぶやいてしまうほど。
男自身は勝ちと負けを繰り返しながらトータルではプラスだが、そのくらいのプラスははした金。
少しばかり小銭を稼いだところで面白くもなく。

「嬢ちゃん、どうだい、一丁勝負といかんかい」

自分のカードはまだ見ていないが、折角だとばかりに声をかける。
受けてくれても、受けてくれなくてもどちらでも構わない以上、声を掛けて受けてくれるなら得という判断。

ゲームの進行を妨げないように女の返答が来る前には自分に配られたカードを捲りあげ、数字を確かめていく。
[5d13→7+7+9+11+11=45]
シェティ > 己の手札は同じ数字の絵札が二枚――数も小さく、さして強い役でも無い。
此処は勝負には出ずに降りた方が賢明だろうと、一度はそう判断を下したものの―――。

「――――……勝負、で御座いますか?あまり自信はありませぬが、お望みとあらば。」

不意に、掛けられた声の方へと蒼銀の瞳が向けられる。
視線の先に居たのは己と同様、先程から勝ちと負けを繰り返しては小規模な勝ちを稼いでいた男。
元より、手許に残ったチップにはさしたる執着も無ければ、此処は勝負に乗り適度に相手を愉しませてやり過ごすのが無難であろうと、
手許に残ったチップの大半をテーブルの上へと乗せてゆく。

結果、小さな数字が一組の女に対して相手はそれよりも大きな数字が二組。
彼の許へと流されてゆくチップの山を、口惜しげな周囲の男達とは異なり特に感慨も無く見送ってから、
最後の勝者である男にささやかな賛辞を贈るのだった。

「おめでとう御座います。最後の最後で負けてしまいました。」

バランガ > 「おっ、ええねえ、断られるか思うたが…楽しなるわ」

かっかっか、と笑う。
受ける必要は皆無の勝負だが、だからこそ受けてくれたかねえ、なんて思いながらカードを捲っていく。
十分すぎるカードの強さであれば、手元のチップをひょい、と押し出す。

全員の選択が終わり、カードを公開すれば結果は露になった。
他の連中の分のチップも含めて手元に戻ってくれば、最後の勝負の分まあまあのプラスで。

「いやァ、運が良かったわ。けど、アンタが勝負受けてくれたおかげで面白うなったな。
 勝ったことやし、一杯付き合うてもらおうかね」

勝負はあくまでカードゲームのこと、賭けられていたのはチップだがそれを明言していたわけではない。
なので、そこは自分に都合よく、勝負に勝ったから一杯付き合う、という話にすり替えようと。

シェティ > 最終的な結果として、女の成績はゼロに近しく。
それでも、微々たる儲けや或いはマイナスとなって苦虫を噛み潰した様な表情でテーブルを離れて行く男達に比べればまともな方だろう。
彼等の後ろ姿と、最後にディーラーへと一礼して侍女風貌の女もまたその場を立ち去ろうとしたのだが。

「………然様で御座いますか。一興の足しになったのであれば、幸いですが。
 一杯……?、……いえ、その様な約束をした覚えは御座いませんが………。」

最後にその場に残ったのは、勝者となった中年の男。
身形から察するに貴族か商人の類であろうか――密やかにそんな分析を行った後に、
掛けられた声に応じる様に侍女服の裾を軽く持ち上げて優雅な所作で会釈を差し向けて。
されど、その口から出た覚えの無い約束に女は不思議そうに小首を傾げる。
その誘いに応じる義理は無いが、無碍にあしらって面倒毎に発展するのは避けたい処。
僅かばかりの逡巡の後に、女は相手に気取られぬよう小さな溜息を零しながらも、その言葉に頷いて見せるのだった。

「………かしこまりました。では、一杯だけでしたらば。」

バランガ > 侍女との勝負の分と最後の一戦に賭けた連中の賭け金全てを総浚いした分稼ぎとしては相応の額。
肩を落とし、苦虫を嚙み潰す連中には申し訳ないが、損したいわけでもないのだからありがたくいただく。

「おう、あのまんま終わるよりか嬢ちゃんがノってくれた分他の連中も勝負に出れたしの。
 勝負して負けんのやったら、まァ納得も出来るやろ…お?そうやったか?」

約束をした覚えはない、と言われればその通りなのだが、そ知らぬふり。
侍女服を着たまま参加したということは、何らかの事情があると踏んでいて。
客である自分を興じさせる義務とは言わずとも義理程度のものがあれば、面倒ごとを避けるために受ける可能性もあるとみていた。

「なあに、勝った分嬢ちゃんの酒代はワシが出すからよ。
 酒の種類に注文はあるかい?」

最終的に頷いて貰えれば経緯や経過はその時点でどうでもよくなる。
カウンターバーへと向かって移動しながら声をかけ、注文があるならばそれを、なければ出されるのは男と同じ酒精の強い代物。
一息に飲み干してさようなら、とは言い難いものが供されるはずで。

「いつまでも嬢ちゃんと呼ぶのもなんやな、ワシゃあバランガや、なんていうんじゃ?」

シェティ > 「そう……でしょうか。こういった賭け事は不慣れゆえ、そういった機微はよく分かりませぬが。」

されど思い起こせば確かに男の申し出に女が乗った瞬間から、他の面々も強気の勝負に出た節があったやも知れない。
カジノの従業員に誘われるが侭にテーブルに着いただけの、勝敗への執着に薄い女に彼等の心情を推し量る事は叶わないが。
最終的に侍女風貌の女をテーブルに着かせた彼女の意図は判らず仕舞いだったけれども、
女から身包みを剥ぐのが目的だったのであれば失敗に終わり、純粋に場を盛り上げるのが目的だったのであれば功を奏したと言えるだろう。

「―――それでは、お言葉に甘えてご馳走になりましょうか。……出来れば、酒精の余り強くないものを。」

促される侭にバーのカウンターの在る方角へと足を進めながらも、付け足す様に注文を投げ掛け、
お互いの飲み物が提供される迄の様子を蒼銀の瞳が慎重に見詰めてゆく。
それでもその横で、名乗りを告げる男の声を聞けば、それに応える様に彼の方へと向き直り、緩やかな所作で頭を垂れながら、

「申し遅れました。私の事はどうぞシェティ、とお呼びくださいませ。」

バランガ > 「負けてる連中は取り戻したいと思うとるさかい、皆がフォールドしてしもうたら勝てても稼げへんからなあ。
 嬢ちゃんやワシが前に出たから、それならと博打が打てるわけや」

賭けた金に対して戻ってくる可能性のある額―――オッズが良くなる、そんな話をつらつらと。
カジノの従業員の狙いは分からないが、勝負への執着の薄そうな女だからこそ皆が必死になった側面はある。
その点ではどちらにせよカジノ側の狙いは一部でも当たったということだろう。

「あんまり強おないんかい、ぱっと見は酒なんぞじゃ酔わんような雰囲気やけどな。
 シェティ、な。侍女服着とるが、別にこのカジノの従業員ってわけやないんやな」

バーカウンターにつけば、自分のは強めのもの、シェティの分は要望通り酒精の強くない、その分味の良い代物が供される。
アングラさも兼ね備えたこの場では多種多様な魔術、魔力が漂っている。
それを良いことに懐にあるクズ宝石の魔術を開放してみる。
目の前の侍女は只者ではなく、効くか効かないかは分からないが、魅了の効果のある魔術を発動させて様子を見ることにして。

「ほい、そんじゃあ…ま、ワシの勝利に…ちいうと角があるからな、ええ勝負に乾杯ってところか。乾杯」

シェティ > つらつらと語られる男の言葉に、小さく相槌を打ちながら聞き留める。
勝負に対する執着にも、他者の感情にも些か疎い侍女風貌の女にとっては容易く理解の及ぶ内容では無かったが、
それ故に、彼が語る心情めいた知識は決して無益にはなるまいと、胸の内の片隅に留めておきながら。

「………流石にそれは買い被りで御座います。この様な場所で、酔い潰れてご迷惑をお掛けする訳にも参りませんし。
 えぇ、此方へは仕えている主の命で下見に――といった処で御座いましょうか。」

事実として、この様な遊興の場に興味を示した貴族の子女の為に、従者が予め下見に足を運ぶ事例は少なくないと聞く。
己の場合はそういったケースとは事情が異なるのだが、其れを態々明かす様なリスクを犯す必要も無い。
偽りの無い、されど当たり障りの無い答えで相手の問い掛けに答えを返しながら、やがて提供されたグラスを手に取る。

「はい。では―――バランガ様の勝利に乾杯、と云う事で。」

多種多様な魔術や魔力の気配が絶えず漂うこの場所と、悪趣味な程に煌びやかに周囲を彩る照明の所為で少々感覚は鈍っていたが、
それでも手に取ったグラスの中に異物の類が無い事を用心深く確かめてから、相手のグラスの淵と小さく合わせ、
注文通りさして酒精の強くない、品の良い味わいをした其れを口に運んでゆく。
雑多に漂う魔力の流れの中、己へと向けられた『其れ』が齎す違和感には未だ気付かぬ侭―――。

バランガ > 商人らしく、普段からつらつらと能書きを垂れるのは得意技。
まして今回は相手が物静かな、言葉少なな印象であればより口数は多く。

「ははァ…主さんの命令で来とるなら、流石に失態は犯せんわなあ。
 主さんがどないな人か知らへんが、ここに来るんやったらもの知った従者は欲しいしな」

よう考えてはる主さんやな、と丁重に相手の主を褒めておこう。
主に対して敬意を抱いてるような相手だ、丁寧なくらいで丁度いいと踏んだ。

「おう、乾杯!――――――っかァ、いや、美味いわ。すまんがもう一杯貰えるかい」

乾杯から杯を開け、次の一杯を要求する。
シェティはゆっくり飲むにせよ、自身がへんに遠慮しても仕方がない。
周囲の喧噪と魔力の奔流は男にとって都合がよく、何も仕掛けられてないお酒を警戒するのも都合がいい。
時間をかければかけるほど、従者に向けて放たれた魔術が与える効果は高まっていく。
魅了の宝石の効果がなくなれば、また次の魅了の宝石の効果を。
幾度かに分けて重ね掛けして、合間に催淫、酩酊、発情と言った効果をブレンドさせることでバレづらくする。
仮に違和感に気付いてもその頃には効果が十分以上沁みこんでいる、というのが男の理想で。

「これは聞いてええのか分からんから、答えれんかったら答えへんでもええんやが。
 シェティの主さんゆうんはどないな人なんや?こう見えて宝石商しとるさかい、単純な興味程度やが」