2023/10/23 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にミア・コレットさんが現れました。
ミア・コレット >  
路銀が心許なくなれば、ちょっと儲けたくなるもの。
というわけで今日はカジノの新人バニーガールというわけ。

私の受け持ちはダイス・ゲームの周辺で飲み物係。
別に借金を背負わされての強制バニー業ではないため、
私にとってはただの夜の給仕、って感じかな。

ダイス。
羊や牛の足先の骨を削って印をつけたのが起源とされる原初のランダマイザー。
ダイスが転がれば、人の運命も変わる。

それは好転ばかりじゃないことを私は知っている。

ミア・コレット >  
短い悲鳴のような声が聞こえた。
勝てば夜のお大尽、負ければ悲しき素寒貧。
そういう勝負をする人は結構いる。

「お飲み物はいかがですか?」

声をかけると笑顔で受け取る人もいれば、
凶相で睨みつけてくる人もいる。

悲喜交交、これが私の今の仕事。
それにしてもウサミミが可愛いけれど。
このスーツ自体は露出が多くてちょっと恥ずかしい。

ミア・コレット >  
ガシャン。大きな破砕音が響いた。
飲み物を地面に叩きつけたのかなぁ。
後で掃除するの私なのにな……
そう思いながら人垣の間で背伸びをして覗き込む。

すると。
男の節くれだった手が伸びてきて私の細い首を引っ掴んだ。
「ぐえ」
ぐえって。ミリも可愛くない声出したな私!?

私の首を掴んだ男はダガーを持ってがなり立てている。

ミア・コレット >  
彼はイカサマだ、支配人を呼べと叫んでいる。
こうなる前から破滅は確定だったようだけれど。

もう少しスマートになれないものだろうか?

「ああ、お客様。白い衣装のバニーガールへのお触りはご遠慮ください」
「お触りは赤、黒、紫。白のバニーガールはただの従業員ですので」

そう言うと激昂して男はさらに騒ぎ立てた。
ああ。説得スキルゼロぉ。

ミア・コレット >  
警備兵も手を出しかねる状況。
仕方ない……すぅ、と息を吸って。

エトランゼーッ!!」

と叫んだ。
あまり戦う精神状態ではないけれど。
私のエトランゼ能力は。

今の心境を具現化する!!

真上に現れた力ある幻影。
それは……でっかくて苔色をした…スライム、だった。

「ふぎゃー!!」

それはドスンと落ちてきて人質(この場合、私だ)もろとも犯人を押しつぶした。
ふぎゃーって。ミリも可愛くない。

そのまま脱力すると、エトランゼで召喚したスライムは消える。
気絶した犯人は引きずられていった。

ミア・コレット >  
うう。ひどい目に遭った。
とりあえず立ち上がって掃除をしなきゃ。

立ち上がって身体についた埃をパタパタ叩いてから。
妙に注目が集まっているので、とりあえず言ってみる。

「……なにか飲み物をお持ちいたしましょうか?」

喋ると同時に周囲から視線が散った。
あっ微妙に引かれてる!!

そのままさっきの人がフロアに叩きつけたガラスと飲み物を掃除しよう。
私の仕事はまだ、始まったばかりだ!!

ミア・コレット >  
私はミア・コレット。
こんな日常を送ってこそいるけれど……
素敵な恋をしたいだけの。

ただの女の子だ。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からミア・コレットさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」に香紫さんが現れました。
香紫 >  
きっかけはそう、少しだけ羽を伸ばしに来ただけだった。
この身が人の姿を執り、人間達の中に混じるのは、ただ見物の為だ。

何を?

人間の表情(かお)に決まっている。

賽子。
羊や牛の足先の骨を削って印をつけたのが起源とされる甘い誘惑(混沌の六面)。

賽子が転がれば、人の運命も変わる。
付随して、運命が変わる人の表情は――そう、格別だ。

要するに、人生を賭けてこの場で賽子を振るう人間達を
ちょっぴり揶揄うつもりで――妖は此処を訪れたのである。

香紫 >  
『お飲み物はいかがですか?』

地獄極楽渦巻くこの場に、一滴の澄んだ雫が落とされる。
それは、兎を模した姿をした少女の発する音であった。
その音は、この場に渦巻く騒音を掻き消してしまうほどに、
何とも可憐で、無垢な音であった。

従って。
先まで、この身に纏う服を全て剥ぐなどと息巻いていた男が
卓上の賽子の示す数字に息を呑んでいる様子など――いつしか
意識から飛んでしまっていた。
元は、そんな様子を愉しむ為に足を運んでいた筈なのであるが。

「……斯様な深淵の苦海に臨む雛鳥。
 あれほどまでに無垢な者は珍しいですねェ」

誰に発するでもなく。
賽子勝負の最中に、女はふとそんな言葉を放つ。

『――負事の最中に――見たぁ、余裕じゃねぇか……』

男の発した声は、一瞬。
言葉として認識ができず、途切れた音として女の耳に届いた。

『調子乗ってんじゃねぇぞ、次だ……今日の俺はツイてる……
 さっさとひん剥いてギャンギャン泣かしてやらァ……』

ふっ、と。対面する形で座っている男の発する音で、
喧騒の最中に再び意識が連れ戻されることとなった。

「ふふっ、それは楽しみですねェ……」

香紫 >  
さて、暫し。
懸命に賽子を掌の内で転がす男の表情を、
須臾(しばらくの間)に味わっていたところであったが。

卓を取り巻く騒音が、より一層その勢いを増す。
別卓の男が躍り出て、先の少女の首に掴みかかったのだ。

一見物人の妖は、その様子を口元に手をやりながら見守っていた。
今宵は思っていたよりもずっと、愉しいものが見られるかもしれない、と。
妖の心は踊っていたのである。

そんな妖の表情だが、次の瞬間には興味深げな色に変わっていた。

少女が呼び出した、召喚物、否――幻術であろうか。
定かではないが、見たことのない系統の術を目にした妖は、
どうやらまた別の興味を抱いたようであった。

――いずれ機を見て、探りを入れてみますかねェ。

珍しい術に、あの無垢さ。これから彼女はどのような道を辿ることになるのだろう。
その道に少々、顔を出しても良いかもしれないと考えたのである。


健気に給仕を続ける少女を見て、
妖が一つ愉しい思いつきをしたことなど、
この場の誰も、知る由無きことであった。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」から香紫さんが去りました。