2023/09/05 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にサウロさんが現れました。
■サウロ > (日も沈みかけ、海が赤く夕焼け色に染まる時間。
王都から神聖都市ヤルダバオートまで出掛け、その港から出航する船に乗ってやってきたのはセレネルの海を大きく横断した王国の東側。
魔族の国も近く、その魔族との争いの中心となっているタナー。砦、国の歴史に深く関わる神秘の九頭龍山脈。
その中継点とも言える港湾都市ダイラス。
有名な眠らぬ娯楽の街、この世の楽園とまで言う人もいる娯楽施設が充実した都市だという。
その船着き場で、サウロは盛大に船酔いした旅の相棒たる黒髪のミレー族の青年を前に腕を組む。)
「だから陸路でもいいと言ったじゃないか」
『うるせえうるせえいけると思ったんだよ、うっ……ォエ゛ッ』
(確かに海路ならそう時間はかからない。
海賊なども出やすい海域には国の海軍などが運行ルートを警備しているから安全だし、
せいぜい甲板に飛び乗ってくる魔物を冒険者や傭兵などが軽くしばき倒すぐらいの、比較的安全な船旅だった。
仲間から借りてきた精霊は相棒の頭に乗ってふよふよ浮かんでいる。)
「とりあえず、宿を探してくる。
俺も慣れないところだから、一時間後にはまたここで。あんまり無茶して動くなよ」
(そう言って、一先ず船着き場周辺で男二人休める宿を探すかと歩き出す。
遠目にも見えるひと際煌びやかな建物。あれがハイブラゼールなのだろう。
ここへ来た回数もそう多くはないが、以前泊まった宿はまだあるだろうかと、記憶を頼るが、道にはあまり自信がない。
船員たちが行き交う港を軽く見回す姿は騎士を思わせる風体ながら、このあたりには不慣れな様子。
倉庫しかないかと奥へ奥へと進んでいく。いずれ日も沈めば暗がりに呑まれそうな場所だった。)
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にイェンさんが現れました。
■イェン > (騎士鎧の背後から足音が近付いて来る。頑丈なブーツの底が石畳との接触で奏でるそれは軽量級の体躯を示し、それにもまして軽やかな駆け足は彼我の距離一気に詰めて―――追い越した。騎士の碧眼を擽るかの如く黒く艷やかな仔馬結びが揺れて、青林檎を思わせる独特の匂いが長く潮風に晒されてきた青年の鼻腔を優しく撫でる。この国の成人男性としては平均的な騎士よりも頭一つは小柄な体躯が棚引かせるのは背負い袋に抑えつけられた安物ローブの長裾と、黒色のニーハイソックスに包まれた脚線を惜しげもなく晒す短丈のプリーツスカート。そのまま数歩青年の前に駆け出た小躯が不意にぴたりと足を止め、熟達の武道家を思わせる隙の無い所作で振り返る。)
「――――サウロ、様……?」
(緩く傾げた小首が鈴を転がしたかの声音と共に向けるのは、目尻を色鮮やかに彩る朱の縁取り。目弾きと呼ばれる化粧で冷淡な双眸に苛烈を孕ませた少女は、以前、彼の相棒と共に酒場で顔を合わせたことのある女学生。)
■サウロ > (潮風や船員たちの喧騒に紛れて駆け抜ける軽やかな足音が近づいてくれば反射的に振り向いた。
長く艶やかな黒髪が横を通り抜け、爽やかな果実の香りが風と共にすり抜けていく。
倉庫街から街の方へと向かう道中の道だったか。小柄な身体を覆う外套の裾をなびかせながら通り抜けた人影は、
しかしスリの類でもないようで、ついで聞き覚えのある声がする。
隙を見せずに振り向いた少女。帝国風の顔立ちをした黒猫のようなしなやかでいて強靭さも垣間見せるその少女は、
サウロにも確かに覚えがあった。)
「イェンさん?」
(いつぞや酒場で、今は船着き場でぐったりしている相棒のジャミルが声をかけた少女がそこにいた。
名前は確かイェンという帝国風の名で、留学生で、冒険者だったか。
額面通りではない何ぞやを隠し持っているとは相棒の見立てであるが、20㎝ほど目線の低い彼女がこちらをみて声を掛けたと言うことは、
向こうもただ一晩の相席程度の知り合い以上には、記憶に残してくれているということだろうか。)
「こんばんは、こんな所で会うのは奇遇ですね」
(一先ず挨拶をしてから、学院から離れた港湾都市に彼女がいることを少し不思議にも思いつつ。
様、なんて敬称をつける様子も不思議そうに、サウロで良いよ、と返しただろう。)
■イェン > 「ええ、本当に。サウロ様は何故斯様な場所に?」
(貴族然とした生まれの良さを匂わせながらも傲慢な気質を感じさせることのない柔和な態度。対する女学生はにこりともせぬ真顔。その顔立ちがエルフにも比肩する程の整いを有しているだけに、相手によってはそれだけで怯む事のある冷淡さ。それは、続くセリフにも影響する。《詰問》などというつもりはないだろうが、細剣の切っ先を思わせる双眸の鋭さと、感情の感じられぬ怜悧な美貌は日常会話のきっかけにさえ愛想という物を付加しない。敬称の不要を告げる友好的な言葉すら、若干の逡巡の後とは言えども「いいえ。許されるのであればこのままで」と一刀のもとに切り捨てるのだから、この女生徒には顔立ちの良さに反してほとんど友人と呼べる相手がいないというのも納得出来よう。)
「…………………………ッ」
(そんな対応にも惑わされる事なく落ち着いて少女の様子を見ることが出来たなら、どこまでも冷静な声音とは裏腹に、トイレでも我慢しているかの様なそわそわとした空気を漂わせている事に気付くはず。ちらり、ちらりと走る紫瞳が気にするのは、立ち止まって会話をする二人を追い越し、宿と思しき建物へと入って行く旅人達の姿。)
■サウロ > 「僕らはさっきの船でついたばかりで。ああ、ジャミルもいるんだ。
……まぁ、巡回の旅のようなものと思って貰えれば。それで、今は宿を探してる」
(前回とはまた雰囲気が少し違うように感じるのは場所柄かあるいは日暮れの薄暗がりなせいか。
表情を変えぬまま淡々と紡ぐ声は冷ややかさを帯びているようにも聞こえる者は聞こえるだろう。
が、そう言う人間が果たして一度、たった数時間相席しただけの男を相手に顔と名前を覚え、呼びかけるだろうか。
少女の怜悧で美しい面差しと、抜身の刃のような鋭い視線は、流石戦う者というだけあって、肌が粟立つ程の雰囲気がある。
こういう場合、相棒なら場の空気を読んで敢えて壊すことすらするのだろうが、真面目なサウロには難しい芸当だ。
敬称に関してもそう言うのであれば無理強いはしない。
彼女の交友関係については知り得ないし、女性のプライベートなことに深く尋ねる無粋な真似も、この男はしない。
真摯に向き合い、こちらの事情を気分を害した様子もなく簡潔に伝える。
そして少女の様子や視線が他の場所へ向けられる様子を見れば、軽く首を傾げた。)
「もしかして、同行者と合流する予定だったのかな?
それなら、気にしないでくれて構わないよ」
(彼女については、シェンヤンからの留学生であり冒険者業をしているということしか素性を知らない。
故に、サウロが思いつくのはその程度のこと。
もし仲間に追いつく為に走っていたのであれば、気にせずに行ってくれていいと。)
■イェン > 「そうでしたか、ジャミル様とご一緒に。 ――――なるほど、自由騎士……。その肩書が示す通り、活動範囲もまた広いという事ですか」
(青年の返した答えで王都で出会った騎士との他都市での邂逅に覚えた疑問が融解する。元よりあまり愛想という物を持たぬ仏頂面を常とする留学生が、先の出会いにも増して鋭い気配を滲ませるのは、ここがそれなりに馴染み始めた王都ではなく、数度訪れたことがあるとは言えども勝手の分からぬ他都市であり、大歓楽街を有する港町という荒っぽい気風に対する警戒があるからだ。ただの女子生徒としても、駆け出しの冒険者としても、それらしからぬ警戒を滲ませる少女が青年の紡ぐセリフの『宿を探している』という言葉にぴくりと細眉を震わせた。キッと持ち上げる双眸の孕む妙な迫力は、荒くれ水夫でさえ思わず数歩後ずさろう代物。)
「サウロ様。何も問わず付いて来て下さい。お早く――――ッ!」
(無造作に伸ばす純白の繊手が、たおやかな見た目を裏切らぬしっとりと柔らかな感触で青年騎士の手を取った。次いでぐいと引かれれば、怠る事なく日々鍛錬を続けているだろう彼の身体が前方に泳ぎ、倒れ込むのを回避しようと踏み出した足がそのまま駆け足の一歩となって、先に駆け出した小躯を追う形となる。《合気》。東方の島国で密かに伝えられる体術を祖とする高度な術理を用いた乙女の手引きが、人波を縫うようにして青年騎士を先導する。その様子は両親の追跡を振り切ろうとする駆け落ちカップルめいても見えるだろうが、大通りを真っ直ぐに駆ける小躯は抜身の刀の如く真剣そのもの。会話の合間にも気を向け続けた人の流れ。あの宿に入った者達は、皆が皆落胆と共に通りに戻っている。隣も同様。斜向いもまた同じ。しかし、そこから数件離れた場所で5階建ての堂々たる佇まいを見せる老舗宿は別。)
■サウロ > 「まあ、そう思って貰って大丈夫だ」
(彼女の考え、言葉の通り、大した相違はないので頷いた。
どこか緊張した面持ちにも見える様子ではあるが、此方が宿を探していると伝えると途端に鋭く射抜く双眸とその気迫には、
その小柄な身のどこにそんな胆力があるのかと問いたくなるほど、彼女の武人としての性質を垣間見させて、
びり、と肌が軽く痺れて粟立つような感覚が抜けていく。
その一瞬、彼女の希薄に押され、気づけば手を取られていた。
グローブごしでは伝わりにくいだろうが、体躯に見合う美しい手。武器を持つ手にすれば白く嫋やかで柔らかい気もするが、
それを気にする間もなく引かれれば足を踏み出す。)
「っえ、ちょっ……!」
(声を挟む間もなく、サウロの歩調に合わせたように先導する彼女の後を腕を引かれる形で最初は走り、
次いですぐに持ち前の体幹の良さで立て直した身はすぐに彼女に並び、駆け抜けていく。
安めの外套で隠した体と、騎士風の男と、美男美女と顔の良い二人が駆ける姿は目立っただろう。
大通りを走り、人波をかいくぐり、足を動かしながらよくわからないまま彼女についていっているが。
現状サウロは彼女が何を見ていて、何を目的にして、何の為にサウロの手を引いて走っていってるのかさっぱりわからなかった。)
■イェン > (初めのうちこそ引かれるがまま。暴漢に攫われる乙女の如くであった青年が、すぐにこちらの意図を察したのかイェンの隣に細身を並べた。ちらりと持ち上げた紫瞳が声なく伝える増速は、一陣の風の如く二人の旅人を目的地たる大宿へと運ぶ。凄まじい勢いで流れゆく往来の人混み。跳ねる仔馬結び。香る青林檎の匂い。鬼気迫る勢いにぎょっとしつつも、先行く少女の目弾きに彩られた一視に命じられたか、慌てて扉を開くドアマン。その隙間から駆け入り、エントランスをのんびり歩く旅人を追い越して、カウンターに体当たりするかの勢いでゴールイン。)
「――――部屋を。出来れば二部屋。シングルとツインでお願いしたいのですが…………そう、ですか……。ダブルが一部屋……」
(ばくんばくんと跳ねる鼓動も無いかの如く、息を乱す事すら無く淡々と紡ぐ部屋確認。しかし、受付から返されたのは『ダブルの一部屋だけならば用意出来るのですが……』という言葉。しゅん…と黒の馬尾も消沈させて、ちらりと見上げる斜め後ろ。訳も分からず拉致されてきた青年騎士の人の良さと育ちの良さが伺える顔立ち。)
「―――――……では、その部屋をお願いします」
(差し出された宿帳にさらさらと達筆で名を記し、腰の巾着から取り出した王国貨幣と引き換えに手渡された部屋鍵を取る。傍らの青年に確認する事なく部屋を取ってしまった事には若干の申し訳無さも覚えたが、彼のすぐ後ろにはぎりぎりで追い越した旅人が順番待ちで並んでいるのも見えたので他の選択肢は取り得なかった。ここを逃せば次に空部屋を見つけるのにどれほどの時間が掛るか分かった物ではない。下手をすれば何も知らずにこの街に訪れたかつての如く、全ての宿から満室を理由に断られ、教会の軒下で侘びしく野宿の一夜を過ごすなんて事にもなりかねなかったのだから。)
■サウロ > (小柄な少女に振り回されるように引かれていた青年も、彼女と並んで走り抜けた。
身軽な彼女と違って鎧と剣盾を持っての疾走は、それなりに速度に枷をつけたが。
それでも普段から鍛えていることが分かる身体に、男という性が持つ体力の高さ、サウロの膂力が何とか、
合わせて貰うことで、躓くこともなく目的の場へとたどり着けただろう。
大宿らしき場所、娯楽都市とも名高いだけあって観光客向けの宿はどうやら多いようだが。
カウンターに到達した少女が部屋のやり取りをする間、流石に少しばかり乱れた呼吸を整え、額に浮かぶ汗を拭う。
そして見上げる紅い目弾きが施された、鋭い紫紺の瞳が見上げてくるのに、サウロは穏やかな碧い目を向けて、しばし視線を合わせて。
部屋を決め、貨幣をはらって鍵を受け取る流れまで見て、ようやく彼女の行動に合点が言ったようだ。)
「……もしかして、宿の部屋を取りたくて急いでたのかい?」
(いくらか呼吸も整い、まだ汗は滲んでいるが落ち着いた様子で彼女へと問いかける。
一先ず部屋を借り受けた彼女に、部屋はダブルだと言っていたのを思い出す。
部屋を決めたこと自体は怒る事などしないが、一先ず後ろにならぶ旅人や観光客たちの邪魔にならないよう場所を変え、
エントランスの方へと軽く場所を移そう。
さておき、無事に部屋が取れたことを思えばありがたいが、眉尻を下げて微笑み。)
「このあたりの宿は軒並み埋まってると知ってたんだね。
そういうことか……。連れてきてくれたのはありがたいけれど、」
(知り合いとは言え男女。一つ同じ部屋でとなると彼女に申し訳ない気持ちになる。
サウロは誓って女性の寝込みを襲うことはしないが、相棒の方はどうか、と。
いっそ縛って床に転がしておけば……なんてことまで色々と考え込むように顎に手を当てている。)