2023/07/30 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にレベリオさんが現れました。
■レベリオ > 潮の香りを含んだ夜風が人気のなくなった埠頭を撫でる。
風のせいか、普段よりは僅かに波の高い黒い海。
ほんの少し視線を流せば、停泊した船がいくつも並んでいる。
夜も更け始めた時間だ。もう作業を行っている船はない。
そんな夜の中、彼は一人、波止場を歩いていた。
「――今回の取引は、まずまずだったな。」
毀れる言葉は、そんな独り言。
この港町を訪れた用件は、つまり、そういうことだ。
倉庫に眠らせている商品を引き取りたいという申し出を受け
出荷の手続きを済ませたのが、今日の夕刻の出来事。
船着き場にいくつも並んでいる船のひとつに商品は詰みこまれていることだろう。
そして王都に戻る前に、今日は港町に宿をとった。それだけの話だ。
耳を澄ませば、喧騒が聞こえてくる。
ほんのしばらく歩けば、酒場や娼館、賭場にすぐ辿り着ける。
今日の仕事を終えた船員や、護衛の冒険者達が船旅で溜まった欲を発散するように酒場で騒ぐ音。
運ばれたばかりの奴隷達が早速市場に並んで、売られ、買われる声。
膨らんだ懐を早速娼館で発散しようとする者や、賭け事に興じる声。
それらの熱気は、猥雑で、人によっては不快だろうが、彼は決して嫌いではなかった。
だから、その声や空気を味わいながら、取引相手からの土産――異国の葉巻を銜えて火をつける。
海風に混じるのは複雑な芳香。吸い込んで、吐息と共に吐き出して。
■レベリオ > 異国の葉巻からは、仄かな芳香を漂わせる紫煙の香。
ふんわりと潮風に紛れて消えていく。
昂揚させる成分が含まれている――と取引相手は言っていた。
もっとも、この身体は酒に酔うこともなければ
そんな薬効に惑わされることもない。
下種な魔物には、酒も煙草も似合わない。血に酔うのが似付かわしい。
次いだ刹那、手の中で、微かに焦げるような音。
葉巻を唇から離して、握り潰す音だ。
――もう少し、歩いてみるか。
そんな言葉を口にせずに、思う。
火の消えた葉巻を、懐から取り出した紙に包む頃には
掌に負った火傷はもう幻のように消えている。
年季の入った不死の呪いも、こういう時は便利なものだ。
少しだけ、苦笑めいた笑みを浮かべると歩き始める。
向かう先は、酒場や娼館が並ぶ繁華街。
潮風に彼の足音は響きはしないけれど
喧騒や、客引きの声が徐々に混じり始めていく。
■レベリオ > そうして、夜の生き物は喧騒の中に姿を消していく。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からレベリオさんが去りました。