2023/09/01 のログ
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ご案内:「セレネルの海 浜辺」にジギィさんが現れました。
ジギィ > 今宵は風が強く、打ち寄せる波音も猛々しいものが混ざる。
丸い月からは月光が燦燦と降り注ぎ、浜辺にいる生き物や漂流物の影をくっきりと浮かび上がらせている。

王都からほど近いレジャービーチから、少し離れた岸壁のほうへと続く砂浜に、点々と続く足跡もくっきりと浮かび上がる。
寄せては返す波のぎりぎり届かない位置を蛇行するように続いている、その足跡の主は今、波打ち際にしゃがみこんでいた。

「あー…… コレきれいかも」

熱心に足元を見つめ、指先で砂を探って取り上げるのは貝殻だ。
銅色の肌をしたそのエルフの人差し指の先ほどもない大きさの巻貝は、つるりとした表面に白と橙の入り混じったような色をしている。

「ンー… でもなぁ… …」

悩む表情をするそのエルフの背後には、似たような大きさの貝殻が陳列されている。しゃがみこんだまま膝に頬杖を突く、エルフのくせ毛の先から時折しずくが垂れる。物好きにも、先ほどまで泳いでいたのだろう。

ジギィ > (もっと、『貝殻!』っていうのないかなー…)

そんなことを思いながら立ち上がって、崖の方への散歩を再開する。陳列した貝殻はそのままだ。帰りしな、また眺めて気に入ったものがあれば、持って帰るかもしれない。

海は何度か訪れたことはあったが、泳いでみたのは今日が初めてだ。
予想通りの苦戦具合に、一人で来てよかったとしみじみ思う。どうにも『打ち込む』癖がある自分としては、連れがいた場合放ったらかしになってしまったろう。
…断じて同姓のお友達がいないわけではない。

足元を少し波にさらわれながら、寄せては返す波を追った視線は暗くたゆたう海へ、それから月光を落とす月へとたどる。
強い潮風に髪を嬲られて目を細めるが、ぽかんと暗闇に浮かんだ月は静かで、『あちら』と『こちら』が如何に遠いかという事を思い出させる。

「…―――――ふわ…」

足元へ視線を戻して歩みを再開するが、ほどなくして欠伸が漏れた。同時に、身体がどれだけくたくただったのかを思い出させるようにエルフの足どりが重くなる。

ジギィ > 「んぁ―――…戻るかぁ……」

ごしごしと瞳をこすると、来た道をたどろうと反転。それに驚いたのか、背後を通り過ぎようとしていた蟹が慌てたように波打ち際を駆けていった。その横を、悠々とヤドカリが地面を探りながら歩いている。

背後で崖に波が砕ける音を聞く。本当はその様子を眺められる場所まで行きたかったが

(……また、今度にしよ)

3分の一は霞みがかったような脳裏にそんなことを思った、ような気がする。

エルフは半分夢見心地。砂の上、波に洗われつつもまだ点々と残っている自分の足跡を律儀にたどるように
月明りの下を、今宵の寝床のほうへと歩いて行った。

ご案内:「セレネルの海 浜辺」からジギィさんが去りました。