2024/11/04 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場」にグァイ・シァさんが現れました。
■グァイ・シァ > 焼野原となった戦場の夜
まだあちこちからくすぶっている煙が星が散った黒い空へと立ち上り、焦げた匂いと独特の温かさが漂っている。
見渡す限り台地は黒く横たわっているだけに見えるのは、相当な火力で焼き払われたからだろう。
両陣営からも遠く、今は何処からか虫の音だけが聞こえてくるところにぼうと漂う明りがある。
青くちらちらと瞬くそれは、戦場で夜を過ごしたものなら見たことがあるであろう、鬼火だ。
ひとつ、ふたつ、みっつ―――
灯ったりは消えを繰り返し、惑うように宙で頼りない円を描く。
その青い光に照らされる影がひとつ。
朱い髪の女が、地面に座って握り飯を食べている。特段美味そうという表情でもなく咀嚼して、口の中が無くなれば次を口にしている。
視線はぼうと漂う灯りの方をみているが、そこではないどこかを見ているかのように虚ろだ。
■グァイ・シァ > 身体を維持するのに食事は多少は役に立つ。しかしヒトと慣れあうのはどうにも性に合わない。
結果持ち出し出来る食料を持って、こうして戦が終わった場所でひとり食事をするようになった。
漂う鬼火に思う所はあまりない。ただ、自分が決して成ることができないものの一つだろうということで多少の興味はある。それ程度だ。
食事をするペースは速くないが、高々握り飯ひとつだ。
最後の一口分を口に押し込むと女は立ち上がる。鬼火はそれを畏れるようにふわりと一度散って消え、女がなにもしないでいるとまたぼうと灯る。
「… 難儀だな」
それがヒトの魂だと聞いたことがあるが、女は眉唾だと思っている。だが何か、死したものと関連があることではあるのだろう。言葉もなくそれでいて何か言いたげな様子に、いらだちなどはこれらにはないのだろうかと、思う。
最後の一口を嚥下すると、女は自分が属していた陣の方へ歩き出す。急ぐでもなく、ことさら鈍い足取りでもなく。
そろそろ、やかましい戦勝の宴も終わっているといいのだが―――
ご案内:「ハテグの主戦場」からグァイ・シァさんが去りました。