2023/11/10 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場」にグァイ・シァさんが現れました。
グァイ・シァ > 夜明け間際から始まった戦闘は、日暮れ近くまで続いて枯野の焼土を広げることになった。

陽の色が変わると冷たく吹く様になったはずの風が、まだ熱をはらんで丘を渡ってくる。同時に運ばれてくるのは土を焦がす香りと戦場特融の火薬の匂いと―――

(血の匂い)

わざわざ探ることもなく解る。
陣営が天幕を張る辺りから、少し離れて巡回する女が視線を向けるのは戦場跡の方だ。陣地にいるはずの負傷者は、すでに手当をされたかそもそも軽症者しかいなかったのか、そちらに興をひかれるものはなかった。

女は頬を腫らせている。
先ほど傭兵部隊の上司となる男に床へ引っ張り込まれ、抵抗した際にできたものだ。
天幕毎めちゃくちゃにして逃げ出した後、回復させることはしなかった。
聡いものに妙な術を使うと不審を買うことを避けたのと、顔を腫らせた女に妙な気を起こす相手が少ないからだ。

そのまま兵舎に戻ることは避けて巡回を交代した。後退した相手は、今頃は明日の気力のためにすでに床の中か、英気を養うために酒宴を開いている仲間の所へ行ったか…とにかく女には関係のないことだ。

簡易的な木の柵を巡らした陣地の外側は、そこで起こっている兵士たちの喧噪も遠くに遮られたようで耳に着くのは松明の爆ぜる音くらい。
女はその松明の明りを振り返ると、闇に沈みつつある場所との境界を辿るように巡回を再開する。

グァイ・シァ > こうして闇とのあわいを辿る巡回は大抵、見張りの役目というよりは撒き餌にちかい。
傭兵にそういった仕事が宛がわれるのは当然なのだと知ったのはいつの事だったろうか。

それに感慨はない。ただ生き延びれればよいと思うだけだ。
腫れた頬が熱いので、風が冷たくなればとも思うが、それがすっかり焼土の熱を取り払うのには深夜まで掛かるだろう。

(―――そろそろ、河岸を変えるころかもしれない)

次に行くならば、どこだろうか。
血の匂いに誘われるのでもよし、兵舎にもどったら、新たな災禍の種を拾うためにヒトに話しかけてみるか

ヒトには見通せない闇に沈んだ焼土では今頃、あちこちで女の同類である魔物が餌をあさっているころかもしれない。
彼らを少し思ってから女はまた戦場跡へと視線を投げる。

その巡回は交代まで無事勤めあげられたのか
はたまた夜襲があったのか

どちらであっても、戦場ではいつもの風景で、過行く日の一幕であったことは確かだろう

ご案内:「ハテグの主戦場」からグァイ・シァさんが去りました。