2024/08/28 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」に幻燈蝶さんが現れました。
■幻燈蝶 >
神聖都市にいくつもある聖堂のひとつ。
月明かりが差し込む礼拝堂。
昼間ならばいざ知らず、夜も更けたこの時間ともなれば信徒の姿もあるまい。
閉め忘れたのか、あるいは深夜に訪れる者のために神の扉は開かれているのか。
半開きとなった扉から、暑気の名残を含んだ空気が流れ込む。
それに混じるのは、赤紫色の光の鱗片。
ふわり、ふわりと舞うように躍る薄片。
それを零しながら、夜に溶け込むような黒い蝶が、礼拝堂に迷い込んで来た。
音の礼拝堂を、音もなく舞う翅。
信徒席の狭間に、光の雪を降らしながらゆっくりと舞う。
祈りなど、人ならざる、あるいは生命なざらる者に理解できる筈もない。
祈りは知性ある者の、生命ある者の、魂ある者だけの者なのだから。
だから、きっと黒い蝶のその行為には意味などある筈もない。
ひらひらと、風に舞う紙片のように
ふわふわと、夜気の中に火の粉の雪のように光を撒き散らしながら
祭壇の手前、司祭が説教する台の上に、翅を休めても。
それは、まるでその場に宿る温かな光のようでもあり
あるいは、人を奈落に引き摺り込む人魂のようでもあった。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」から幻燈蝶さんが去りました。