2024/06/28 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート 酒場」にシスター・パッサーさんが現れました。
シスター・パッサー >  
 神聖都市内 夜間酒場

 夜を過ぎた頃。
 都市内はいくつもの宗教者が集う場所としてではなく、この都市に住まう者の貌を明確に見せる。
 酒場は典型的なもので、戦場に近しいこともあり商人や傭兵 擬態して酒に溺れる神父
 果てには男と密会する修道服を脱いだ馬鹿女まで様々。

 シスターは、酒場に入店するや一抹の視線を触れられていると感じもしない。
 霞磨きのような桃色の瞳は真っ直ぐカウンターを目指し、その服装はベルトブーツの装飾性を除けばだが
 少し形状を変えた修道服姿のまま 隠そうともしなかった。

 酒場の新顔は、まるで入りたての女が窮屈な場所からこっそり抜け出しコーラを飲みにやってきた
 そんな一場面を見るようなものだが、そんな光景すらももうこの都市では当たり前のようにある。
 もしいたら、酒を頼まないだけ良心と恐れと怯えが残っているだろう。


  「こんばんはマスター。
   今夜も暑い夜ですね。」


 短い挨拶の後 カウンターに腰を下ろせば蜜色の琥珀酒。
 それが蜂蜜を落として目の前に出される。
 注文もせずに出される酒は、この修道女の出入りが多いことを新顔にも悟らせた。

 酒と共に、懐から取り出した厚手の保護された布袋
 茶褐色の混ぜ紙で巻かれた煙草を咥え、彫りこまれたセイレーンが座する金無垢のZippo
 歯車を回し、火花が散ったことで染み込んだ軸から一条の火が音を立てて点火される。
 貴族が所持していそうなそれを手に、パチンッと鋭い硬質音。
 ふゥゥぅ、と甘い匂いが漂う紫煙を、目の前のマスターにかからないよう
 やや上を向いて細く吐き出した素振りは、擬態した飲んだくれ神父や男に溺れた阿呆よりも潔く見えるだろうか。