2023/08/27 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にネリさんが現れました。
ネリ > 祭壇の前に跪き、胸の前で指を組んで瞑目する。
神聖都市に在る小さな教会の礼拝堂にて、静かに祈りを捧ぐ修道女の姿が其処には在った。
ステンドグラスから差し込む陽光を受けながら、静謐に包まれた時間が長らく続いた後。

「 ............ 」

祈りの姿勢を解いてから、緩やかな所作で立ち上がる。
祈りを捧げに来る者や胸の内に抱えた悩みや後悔を打ち明けに来る者、聖職者達の扱う奇蹟に頼るべく足を運ぶ者。教会に訪れる人々の目的は様々であるが、今はその何れの姿も無い。

それでも、いつ何時でも彼らが教会の門戸を叩いた時にそれを受け入れるのが今の修道女に課せられた役目で。
今はもう少しの間、この場を包む静寂の余韻に浸りながらも、それが破られた時に備える為、修道女は佇まいを直してから入口の扉の方へと向かうのだった。

ネリ > けれども、神聖都市の中心部に在る大教会とは異なり、外れに位置する小さな教会を訪ねる者は日頃からそう決して多くは無い。
暫くの間へ扉の傍で控える様に佇んで居た修道女も、未だ静寂が続きそうである事を察すると、その場を離れて教会内の雑事に手を付け始めんとする。

礼拝堂内の清掃は先刻既に済ませた後だったが、保管された祭具の手入れに、祭壇の傍らに設置されたオルガンの確認など、人手の少ない小教会では残された雑務に事欠かない。

「 ... 後は ... 庭の手入れもしなくてはなりませんね ... 」

思い立ち、教会の扉を開いて外に出る。
照りつける陽光に菫色の双眸を細めながら、教会の扉から敷地の正門までの間に在る僅かな庭地へと視線を遣る。
正門へと伸びる石畳の道は礼拝堂と同様、既に清掃が済んでいたものの、その両脇に広がる草地は幾らか雑草が生い茂っているのが見えた。

人知れず、小さく息を吐いてから。緩やかに歩を進めると編み上げブーツの靴底が雑草に覆われた庭地の土を踏みしめてゆく。

ネリ > 夏の陽光と暑気に汗を滲ませながら、庭先で身を屈めた修道女は草むしりに手を付け始める。
正門へ続く石畳の道を挟んで右側が終われば次は左側。
両方が終わり庭の外観が見苦しく無い程度に整った頃には、既に陽は傾き空は赤く染まり始める頃合いだった。

その間、小さな教会を訪ねる人物が現れる事は終ぞ無かった。

それは普段からよく有る事であったし、悩める者の拠り所である教会を必要とする者が少ないのは、喜びこそすれ悲嘆する事は何ひとつ無いと修道女は考えていた。

屈めていた身を伸ばし、修道衣の長裾に付いた土を軽く払ってから、教会の中へと戻ってゆく修道女。
閉じられた扉の奥、変わらず静寂に包まれた礼拝堂の中で、ひとり静かに一日の終わりの祈りを捧ぐのだろう。

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からネリさんが去りました。