2024/02/26 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にフォグさんが現れました。
フォグ > 安価で多様な目的の人間を調達するならば断然、この奴隷市場都市バフートだ。
多くは文字通り性奉仕の為の奴隷、単純に家事労働を使役する為の格安の労働力、
酷いケースでは戦場に連れ添っていずれ死ぬ前提で性処理や後ろ暗い仕事の尻拭いすらさせる。

彼らがどんな扱いを受けようと世の中は悲しまず何とも思わない。
何故なら奴隷とはそういう存在だから。失脚、犯罪、何かしら文明社会の中で落ち度があって
そうなった者達だから。
……全ての奴隷が、自分の隙や甘さが仇となって奴隷となった訳ではないのだが。

「どれどれ、今日は収穫があるかな……」

あちこち傷んだ黒い外套姿の男性が、物見遊山で訪れたのか市場で商品のように値札つきで
表に並べられている奴隷たちを品定めしながら、歩いていく方向を見ずよそ見して進んでいく。

……大荷物を必死になって運搬中の貴女の事などまるで意識しておらず。
そのまま前方不注意で、無意識に歩みを進める男の速度は歩行ながら結構な速度で。

「え……!?うわーーーっ!!!」

気付く頃には、衝突寸前。
完全なる不注意か。

それとも、貴女といずれぶつかる事は想像していたが当たり屋行為でケチをつける為か。

とにかく、目と鼻の先までよそ見をして歩いていた男が、大事な大事な荷物を抱えた貴女めがけて
ぶつかりに来た恰好である。

もしも中身を破損でもすれば、奴隷の貴女に対しどんな叱責や罰を与えられるか想像もしたくない。

ルーシア > こちらとしては荷物が邪魔になって正面をまともに見る事が出来ない。
それでも何とか進めているのは、慣れた道なのと、少女を知っている者は邪魔をしないからだ。
常連等でよく来る客達、そして他の奴隷商達は知っている。
彼女に下手なちょっかいを掛けたならば、魔術で手痛い目に会うのだと。
そうした事が出来るのは、彼女を抱える奴隷商の関係者と彼女を借りた一時的な主のみなのだと。

「はぁ…とりあえず、さっさと終わらせて…」

そんな彼女が溜息混じりに行く先を再確認をしようとした、その時。
不意にあがったのは正面からの叫び声だ

「……っはぁ!?ちょ、ちょっと待っ…!」

荷物に隠れ、分かっているのは正面から聞こえた声と、荷物の陰からチラッと確認出来る体の一部。
こちらが出来るのは荷物を抱えたまま足を止めるだけ。
目の前からやって来た誰かが回避出来るか出来ないか、それが運命の分かれ道だろう。

回避出来れば問題はないし。
回避出来なければ、荷物を抱えたまま少女は後ろに飛ばされて尻餅を付く事となるか。
その衝撃で中身はどうなるのかは分からないが、それを確認する術はなし。
少なくとも陶器の類ではなかったのか、衝撃を受けても中から割れた音がしないのだが、それが唯一の救い。

フォグ > 男の叫び声と、貴女の慌てふためく声。
周囲からその光景を眺めていた者は、あああ…… と諦めるような声を小さく響かせる。
悲しいかな、その暗いムードが予見した通りの結果……衝突は現実のものとなってしまう。

―――……ゴッ

荷物越しに、伝わってくる鈍い音と割かし強い衝撃。
華奢な体格のうえ、もとより不安定な態勢だった貴女はそのまま後ろに跳ね飛ばされる格好となり、
男も胴体へ鈍器による打撃を受けるようにして怯み、その場に転げるといかにも痛そうな呻き声をあげる。

「っっうぁぁ……痛い痛いぃぃ……。……き、キミー!大丈夫っ!?」

いたたたた と地面に打ち付けた手……左手首を大袈裟に右手で固定しながら痛々しい表情のまま、
歯を食いしばりながら貴女へ近づいていき声をかけるが……

「あちゃぁ……。……まずいね、ケガしてたらご主人様にお詫びしなきゃボクが値札付けられちゃうかも」

ふと、貴女につけられた首輪が視界に留まれば単なる奴隷ではなく、主の命令で仕事中だったと察する。
男は冗談なのか本気なのか分からないような事を、軽い口ぶりで話しながら人様の”商品”である貴女を案じる。

貴女と男が実際に接点があったかは定かでないが、もしかしたら別の奴隷は彼の噂をこっそり貴女に話していたかもしれない。
日に焼けた黒づくめの若い男から上手い話を持ち掛けられ、売り物としてここに流されたという者の話を―――

……もしかしたら周囲の奴隷商の中にはこの男を知っている者がいるかもしれないし、
何なら彼から商品を仕入れた人間だっているかもしれない。

ルーシア > 世の中はそう上手くいくものではない。
避ける以前の少女と避ける事の出来ない男、二人は見事に正面衝突をする事となった。
こちらに伝わってきたのは荷物が受けた強い衝撃。
落とす事だけは何とか避けられたが、荷物を両手に持ったまま尻餅を付いた状態から動けない。

「やっば…いや、そうじゃなくって!
アンタさぁ、どこ見て歩いてる訳?荷物に何かあったら面倒な事になるんだけど、どうしてくれるの?」

荷物から響いてくるのと尻餅を付いた衝撃を体には受けているも、色々とあって痛みには慣れている。
少女の口から付いた言葉は、自分の事よりも相手の事よりも荷物を心配するものと。
こんな状態を作り出した相手への文句の言葉。
普通に考えて、奴隷として暴言ともいえるようなありえないものだった。
ただ、そんな言葉を吐いてはいるも、両手で荷物を持ったままの格好なので威圧感も何も無いのだが。

そんな言葉を投げ付けた後に、耳に届くのは彼からの言葉。
奴隷を相手にしているも下手に出ている雰囲気を感じとれば。

「怪我なんてどうでも良いのよ、そんな事よりも、この荷物よ、荷物。
まったくさぁ、何もなければ良いけど、何かあったら私がお仕置きものなんだけど?
責任取って貰うのは当然として、まずは立たせてくれない?」

やはり口から出るのは奴隷らしからぬ偉そうな物言いで、それを伝えながら抱えた荷物を抱えて示す。
普段冷静な状態であれば彼の噂でも何でも色々と思い出したりして浮かんだのだろうが。
少々頭に血の昇った状態だからか、相手が誰かよりも、現状をどうにかしたいとの思いが強かったみたいだ。

フォグ > 「それは本当に申し訳ないよ、ゴメンねゴメンね」

男は相変わらず左手首が満足に動かない様子で、引き攣った表情のまま平謝りする。
自分の身を二の次にしてでも、荷物の安否を心配する様はさながら運び屋のポリシーに通じるものがある。

無理もない、貴女はこの明らかに適材適所という言葉を知らないような無茶な重労働であろうと、
拒否するという選択肢のない、そして失敗は許されない立場にあるのだから……

冒険者ギルドの無茶な依頼でさえ失敗時の保険があるものの、奴隷にそんな保障など与えられるはずもなく。

「そっかぁ……そう言えばキミ達ってそういう立場の人なんだったね……ゴメンねぇ本当に」

何となく癇に障る言い回しで理解を示しながらも、ただヘコヘコと弱弱しい声で謝罪を繰り返すだけの男。
箱の中身の価値は知らぬが、貴女が頭にきているのは自分の明日さえ危ぶまれる出来事なのだから無理はない。

「あ、そっか!ゴメンゴメン、謝ってる場合じゃないや。早くお仕事終わらせないとねぇ?
 とりあえず、その箱重いだろうから、一緒に持ち上げようね。危ないからさ」

貴女に、立たせてほしい と頼まれれば、そのままの態勢で貴女の上体を引っ張り上げて立たせるのは
あまりに酷と判断して自身も支えになろうと名乗り出る。

「いきなり離さないでね。よい……しょ!どこか痛めてたら一度降ろそ……」

貴女の正面へと戻り、抱えたままの箱の下方の隅に両手を引っ掛ければ、成人男性相当の筋力はあるようで
心なしか貴女の感じている負荷は軽減されていく……と思われたが

「あっ」

貴女が尻もちをついた状態からある程度持ち直し、腰近くまで持ち上げられたところで男の情けない声がポロリ。
そして、貴女から見て右手方向へ猛烈に重心が傾くのを感じるだろう。

貴女ではなく、男が痛みのあまり手を放してしまったではないか!

ルーシア > 彼女からは、男は相当卑屈で情けない男に見えたのだろう。
謝ってばかりの様子に大きな溜息を吐けば、この状況を作り出した男にジト目を向ける。
…が、彼が続いて紡いだ言葉、その一部にピクンと眉が動く。

「こっの…あぁもういい!手伝うなら手伝うでさっさとやって!」

更に何か言いたそうな雰囲気は見せるも、今は怒りをぶつけるよりも優先する事がある。
持ち上げるのを手伝うのだと、正面へと移動して箱に両手を掛けて持ち上げる…持ち上げようとした。
だがしかし…

「ったく、どっちかってと、どっか痛めてるってのはアンタでしょ…ああっ!?」

そうした部分は目敏い、男の左手の違和感に気付いてはいるも、とりあえずは持ち上げてから。
そんな考えが甘かったに違いない。
何とか持ち上がってきた、その途中、少しは軽減していた重みが一気に戻ってきてしまう。
余裕の無い重みであれば、間違いなく手放して落としてしまうだろう。
そこは少しでも余裕があったので助かったのか、男が持って重心の傾きのあった荷物だが。
何とかこちらが落とすのを堪える事で、完全に落とす事には到らずに済んだ。

「っ…この…っ…!」

ただ、そのせいで持ち上げている事の余裕が無くなってしまった。
両手で傾いた荷物を一人で支える、お尻を突き出すような半腰の状態に。
殊更に何かを言いたそうに男を睨み付けるのだが、その状態を維持するのに必死なようだ。

フォグ > 「ひえぇ!今すぐやるよー!!」

奴隷相手に、このナヨナヨとした低姿勢の男は次第にイライラを募らせていく貴女に
急かされるようにしてすぐさま荷物を持ち上げる手伝いをする。
そろそろ感情が爆発しそうである貴女のピリピリとした雰囲気を察してか、急ぎ足で正面に回れば
声かけをマメに行いながら責任問題にはするまいと必死な様子。

「ふぬぬぬー……!」

この程度の箱であれば、男がよほど魔術師をはじめ頭脳労働に特化していない限りさほど持ち上げる事に
難儀はしない……はずだった。

そう、貴女がふと気づいた通り男は左手を負傷したまま貴女に駆け寄り、急ぎ荷物を持ち上げようとしている。
途中までは危なげなくみるみる箱が地面から離れていき、一度は持ち直せたかもしれない実感を与えたのが
尚更たちが悪かった。

「っひゃぁ!!申し訳ない!ボクも左手が……」

上げて落とされるような思いに、貴女のフラストレーションはもはや限界に近いだろう。
男は相変わらず、どこか無神経を漂わせる呑気な声調で謝るが、そろそろ謝られる事が神経を逆撫でされる頃だろう。
不意に貴女の姿を見れば

「……プフッ!!!!」

男は思わず笑いを堪えようとしたが、堪え切れず噴き出してしまう。
お尻を突き出すようなポーズで、脚をがくがく震わせながら芸術的なバランス感覚を保つ貴女の姿は芸を見せられてる思いだった。

「失礼、大丈夫??ボク、もう帰った方がいいかなぁ?」

ぶつかっておいて、持ち上げようとして落としかけて。
その上、あんまりな姿を見て噴き出してしまった男はこの期に及んで「帰る」などと無責任極まりない言動を行う。


「このままじゃ門限過ぎちゃうかな??ご主人様にお仕置きされちゃったら、その時はごめんねぇ?
 まぁこういう事もあるからさ。お互い気を付けよう、ね!」

そう言って、とことこと貴女のすぐ隣を歩いていくと、「頑張れ~」と能天気な声をあげながら
”左手で”貴女がぐっと堪えている後ろから、からかうようにしてお尻をぺちぺちとはたこうと。
思いっきりスナップも利かせた左手は元気そのもの。

……弄ばれた 貴女はこの男に対して殺意めいた感情を抱いても何らおかしくはないが、
荷物のピンチに比べればそれも些末な問題か。

ルーシア > ぶつかっておきながら、人の神経を逆撫でし続ける男の言動。
ギリッと音を立てて歯軋りさせるも、いい加減に彼へと向けるのは言葉よりも魔術の方が。
そんな危険な方向に思考が傾き始めていた。

そんな最中、荷物の持ち上げを手伝う事を装う…少なくとも、彼女にはそう見えた男の行為。
更に必死に支えている自分を笑い、帰ろうなんて言い出す始末。
我慢の限界だ、荷物を下ろして魔術の一つでもぶつけてやろう。
そう思って、黙って荷物を下ろそうとした、そのタイミングか。

「ひゃんっ!?」

お尻を突き出すその格好のままで荷物を下ろしたのだ、そこは完全に無防備になっていて。
彼がからかうように、痛めていたと思われていた左手でお尻を打ったのならば。
油断もあったのだろう、叩かれた場所も悪かったのだろう。
軽くとも叩かれた衝撃に素っ頓狂な声を上げてゴトンと荷物を地面に落としてしまった。
正しくは下げ掛けていたのが幸いしたのか、荷物自体は地面に置いた様になったのだが。
寧ろ問題なのは少女の方だ。
叩かれて怒り心頭で再び睨み付けてくる、と思われるも、押し黙った様子で小さく震え何かに耐える。
もし彼が目敏かったりしたのならば、彼女が痛みではなく刺激に耐えている様子と窺えるだろう。

フォグ > 【移動いたします】
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からフォグさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からルーシアさんが去りました。