2023/12/16 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」に八蛟さんが現れました。
八蛟 >  
 王都北半島のバフート
 奴隷産業が主でも、それを担う者と買う者から搾取する店々
 物品に情報 そう、此処は寂れることは決してない地獄。

 正義を振りかざしても、それ以上の力で制圧されてしまうこの都市
 王族や魔族すら並ぶことがある場所は、一握りの金を持つ者の喉を鳴らし、舌を潤わせる。
 悲鳴や懇願、壊れた笑いが鬼の尖った耳に聞こえながら、鬼の八蛟は平然とその光景を受け入れる。

 力無き正義は糞であり、力無き悪もまた糞
 鬼としてはこの目の前の光景も、耳に聞こえる悪多も、当然であった。


  「相変わらず、居心地の良い場所さね。」


 鬼には、この地獄は肌に馴染む。
 王都や港湾都市よりも足を運ぶ機会が多いのか、ガランッと鳴る下駄歯の音はゆったり。
 この場所は変化が訪れやすい 弱肉強食を煮詰めた場所ならそれは店々も同じこと。
 眺め、目移りするものがないか赤い瞳は見て回る。

 そうする鬼の体付きはともかく、筋肉量 腰に巻かれた帯に差し込んだ金砕棒
 視線は獲物と見定める者より、仕事を頼む方が多い品定めのほうか。


   「っと、先に酒か。」


 ごぎゅ、ごぎゅっ、と水の代わりのように呑んでいた澄まし酒が切れた
 片手に携えていた焼きの壺徳利から滴るをそれを、伸ばした赤い舌で受け止める。
 パタンッと円を描いて八つに分かれた雫が王冠を描き、舌の上を濡らしただろう。 
 
 

八蛟 >   
 酒と煙 これがないと落ち着かないのは、鬼も人も同じだった。
 八蛟は、雫を受け止めた後、残りの酒カスを舐めとるような真似はしない。
 己の口に零れた酒以上を求めるのは無粋だ。
 酒場はいくつか心当たりがあり、八蛟は先ほどまでの観光気分から、求める足へ。
 速度は大柄な体躯に見合った歩幅 ガランッゴロンと此処では素足の音の方が多いだろう場所で
 その下駄歯の音を鳴らして、一つのまともな組み込みがされた酒場へ。


   「邪魔するよー。」


 いくつも梯子、又は呑みの場所を変える八蛟
 酒の量は金の量の比例する。 なら、店主も手を挙げて挨拶くらいは返す愛想という物は生まれる。
 呑みに来たかと思えば、カウンターに腰を下ろさず、どかりと太い腕を乗せて空の壺徳利
 それを並々と足してほしいと言いゴルドを綺麗に横一文字に、掌へ掬ってから並べた。


  「なんかおすすめはあるかい?」


 いつものような喉の渇きより、味と質を選ぶ様子
 店主は澄まし系ではなく、密閉された甕から柄杓で注がれた平盃を差し出す。
 中身は薄く黄色がかったもので、数年では出ない色合いだった、が。


  「ん(ちゅぴっ)。」


 味見をしろというのなら、遠慮なく。
 東よりもやや北西寄りの酒か。黄酒の類に珍し気にした。


  「いい味だよ。 どこの船のをかっぱらったんだか。」


 まともな仕入れでくる酒じゃあるまい、というと奴隷と引き換えに金と酒
 それの一部が降りてきたといった。
 うなずくとグッと飲み干し、それが注がれていく。
 金を足そうとしたが、次で飲み明かしてくれればいいと言われるとニッと鬼歯を見せ。


  「嗚呼、稼がせてやるさ。」


 そう言って店を出るのなら、酒徳利を撫でてから腰に下げようか。
 

  「好いもんに出会えた。」


 太ましい銀の手綱煙管に刻みを詰めると、カチンッと火打ちで燃えた火種をつけようか。


  「―――ふぅぅぅ。」


 さて、どこに足を運ぼうかと
 またカランッと下駄の音色はゆっくりとしたものになる。 

ご案内:「奴隷市場都市バフート」から八蛟さんが去りました。