2023/11/27 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にエルバさんが現れました。
■エルバ > 日差しは明るいのに、どこかどんよりと澱んだ空気の漂う路地裏。
昼夜を問わず、奴隷市が開かれている通りや中央広場と違って人気は少ないが、慌ただしい足音が響いている。
時折背後を確認するが、「あっちだ!」「回り込め!」と言った声が離れた位置から聞こえてくるのに、思わず顔を顰めてしまう。
「んもー……! しつこい…!」
勝手知ったる地域民には、流石に地の利では勝つのは厳しい。
進む道やら追いかけてくる誰ぞへの妨害に機転を利かせ、何とか捕まる事だけは避けているが、振り切れずにいた。
駆けるまま、進路の脇に路を塞ぐようにして荷物の積まれた細路地を見付ければ、碌にその先を確認する事もせず、速度を落とさずに曲がり。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にアーテルさんが現れました。
■アーテル > バフートの街は金払いも良いが、たまに物騒な事態に遭遇することがある。
どちらかと言うと人通りのないエリアの小屋の中で仕事をしていると、女性の声と足音が近づいてきた。
どうやら誰かに追われているのだろう。
この辺りでは割とよくある話だ。
「こっちだ!」
俺は女性が近づいてきた瞬間、扉を開き手を差し出す。
今いる小屋は窓を戸板で塞いでおり、扉を閉めれば追手の目をやり過ごすこともできるだろう。
問題は相手の女性が見ず知らずの男の手を取ってくれるかどうか。
■エルバ > 不意に響いた声と差し出された手に、双眸を見開く。
バフートと言う都市の特性も考えれば、平常なら絶対に取る事のないその手。
然し、執拗に追いかけ回されていた所為で、誰とも分からぬ人の手を、反射的に取る。
転がり込むように小屋の中へと滑り込み、扉を閉めれば、遅れて響いてくる誰かが駆け抜けていく足音。
それから暫く、息を潜めて沈黙を貫き――静まり返ったのを機に、漸く力を抜いて吐息を逃がした。
「――――あ。 ありがとう……?」
思い出したように顔を上げ、相手の方へと視線を向けて礼の言葉を告げる。
とは言え、多少なりとも不審がるよな視線と表情になってしまうのは、致し方のない事だろう。
■アーテル > 女性が手を取ると、すぐさま小屋の中に入れる。
そして扉を閉めた所で一呼吸。
程なくして声を荒げた男たちが扉の前を走り去っていった。
割とギリギリの状況だったと思う。
「危ない所だったな。
間に合った良かった。」
足音が聞こえなくなったところで俺は手を離す。
当然だが、女性はこちらを訝しんでるようだ。
「なにから話そうかな。
えっと、俺は冒険者のアーテル。
この小屋は俺の仕事部屋だな。
他に人もいないから安心してくれ。」
俺は女性の顔を見ながら、緊張した表情をしてたと思う。
こういう状況で人を納得させるのは難しいな。
■エルバ > 思わず転がり込んでしまったものの、まだ相手が先程の男達の仲間と言う可能性も捨てきれない。
手を離され、無意識の内に半歩身を引いて相手や室内の様子をそれとなく窺い見る。
「仕事部屋……えっと、アーテル、さん? 助けてくれて、ありがとう。」
他に誰かが潜んでいるような気配も、走り去った男達が戻って来る気配もない。
半信半疑と言った様子から徐々に気配を弛ませ、少しだけ疲労の滲んだ笑みを浮かべ、改めて礼を告げ。
■アーテル > 小屋の中は俺がバフート内で仕事を請け負う為に借りたもの。
奥にはベッドがあり、手前にはヒビの入った木製のテーブルや椅子、
一応流しの類があるので飲食もできるようになっている。
広さも人が一人二人過ごせる程度。
物も少ないので他に誰かが隠れられるような場所もないことは一目でわかるだろう。
「俺もこの街に来て日も浅いし、あまりこういうのにかかわるなって言われてるんだけどな。
やっぱり目の前でやられると見過ごせなくてな。
良かったらお茶でも飲むか?」
俺は流しで用意していた紅茶をカップに入れる。
安物なので味は正直微妙だが、他に出せる様なものがない。
相手に安心させるようにカップを二つテーブルに並べて。
「どっちでも好きな方を飲んでいいよ。
俺は余った方を貰うから。」
女性は少し表情が緩んでいく。
俺は自分の中で達成感を覚えつつ、椅子に腰かける。
■エルバ > 相手の台詞を耳に、ひっそりと安堵の吐息が洩れる。
どうやら自分は運が良かったらしい。
完全に信用をした訳ではないが、分かりやすく悪意を向けられている訳でもない。
用意される紅茶に双眸を瞬かせ、
「わ、ありがと――――やばい。」
表情を綻ばせてカップへと手を伸ばすも、安心した所で、己がこの都市へと赴いた用向きを思い出す。
追いかけ回されていた所為で無駄に時間を食ってしまった。
「ごめん! 私行かなきゃいけないところが――――ああっ、何かお礼……!
う~~……! 私、普段は王都の方で冒険者やってて、エルバって言うの。
次会えたら、何か奢らせて! 助けてくれてありがとうっ!」
伸びた手が忙しなく宙を彷徨って、腰に提げたマジックバッグへと伸びる。
今は碌な物が入っていない。
焦れた様子で紡げば、挨拶もそこそこに慌ただしく小屋を後に――――。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からエルバさんが去りました。
■アーテル > 相手は慌ただしく去って行った。
俺は人助けをしたという達成感を味わいつつ、一人でお茶を楽しむことにした。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からアーテルさんが去りました。