2023/11/25 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にミオさんが現れました。
ミオ > “働かざるもの喰うべからず”

そのひと言で放り出され、女は往来に佇んでいた。
奴隷市場の異様な賑わいからは幾らか離れているものの、如何わしい店の並ぶ界隈。
点在する娼館のうちの一軒で働く女が道端に佇む理由は勿論、所謂“客引き”なのだけれど。
しどけなく肌を覗かせたドレス姿に薄手のストールを羽織っただけで、
ぼんやりと虚空を眺め、欠伸を噛み殺しさえしている女本人に、己を売る意志は皆無だった。
もしも声を掛けられたとしても、応じるかどうかは疑わしい。
いっそ腕でも掴まれ、その辺りの物陰へ引き摺り込まれてしまった方が、
“働く”気にもなろうというものか。

それにしても、と緩慢に瞬いた翡翠は、無感動にけぶる侭。
どうせなら若く美しい方が嬉しいとは思うけれど、果たして、
そんな者がこの界隈を通り掛かりなどするものかとも思うのだった。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」にユーダスさんが現れました。
ユーダス > 地面を踏みしめる靴の音を鳴らして、奴隷市場の中心部からは離れたその区画に現れたのは、黒服姿の男が一人。
点在する娼館とその軒先に立つ娼婦達が客引きに精を出す姿を横目に見遣りながら、ふとその足を止めたのはその内の一軒の付近。
馴染みの店という訳では無いが、その軒先に立つ一人の女性――艶やかなドレスに身を包みながら、
他の娼婦達とは一線を画す様に物思いに耽るかのようなその姿が目に付いて。

「―――失礼。貴女は此方で働いておられる方でしょうか?」

間違いであれば失敬、と付け足すように投げ掛ける言葉は、彼女が客引き中の娼婦である事を確認する為のもの。
同時に、手許に取り出してちらつかせた金貨は、もしそうであるならば彼女の一夜を買い付けたい、という意思表示。
無論、其れに応じるか否かと、支払うべき対価の如何については彼女次第であるのだが。

ミオ > もとより、客を積極的に引く気が無いものだから。
行き交う人の顔形、身形に特段の注意を払うこともせず、ただ視界を横切るに任せていた。
ゆえ、その“声”に対しても―――初めは、反応らしい反応も示さずにいて。
微かな、涼やかな、金貨の擦れ合う音を耳にして、ようやく、翡翠の視線がそちらを向いた。

「―――――― ?」

掌の中の金貨、その掌に繋がる腕、そこから肩、首、やっと顔。
手繰るように視線を擡げたところで、無言の侭、女は小首を傾げてみせる。
“わたしでございますか”とも声に出して尋ねない、主が見れば叱るに違いない態度を示し。
羽織ったストールを胸元へ、ゆるりと掻き合わせる仕草も気怠く、
興味薄げに目を伏せて、細く掠れがちな声で。

「先ずはその半額で、残りはご満足頂けたらで結構です」

ようやっと、それらしき台詞を紡いだけれども―――相手によっては、興が削がれていてもおかしくない。

ユーダス > ゆるりと向けられる翡翠の視界が映すのは黒服姿の長身痩躯。
気怠そうに緩慢に動く仕草を意に介した様子もなく、漸くその視線が男の其れと合えば、人の良さそうな笑みを浮かべて見せる。
その風貌は彼女の望んだ『若く美しい方』と呼ぶには叶わなかったであろうが。

「かしこまりました。それでは先ず此方を。………此処の館で間違い御座いませんね?」

傍から見れば到底客引きの娼婦らしからぬ振る舞いと、遅れて紡がれた細く掠れがちな声。
経験の浅い新人の娼婦――という風にも見えず、しかし其れは男の興を削ぐどころか余計に興味を示した風に。
彼女の言葉に頷くと、ちらつかせた金貨の内の半分を手渡してから、エスコートするかのようにその手を取って、
彼女の立っていた館の中へと姿を消して行くだろう―――

ミオ > 若い方が、と望んだのは、手荒にされる方が何も考えず済むからだ。
美しい男であればと思ったのは、その顔が醜い欲に歪むのを見たいから。
何れも、もしも叶うなら重畳、という程度の願いであり、
もっと言うなら、“客”の容姿が如何であれ、そこに金貨以上の価値を認めてはいなかった。

だから、相手の容姿に不満は無い。
妙に印象に残らない風貌だと、頭の片隅ででも感じたか、どうか。
緩慢に首を巡らせて、己の属する館を振り仰ぎ、

「ええ、……有難う御座います、旦那様。
 ようこそ、お越し下さいました」

平坦な声音で定められた口上を述べ、手渡された金貨を片手に握り、
しな垂れ掛かる風情で豊かな膨らみを、男の腕に押しつけながら。
俯き加減に微笑みすら滲ませず、若い女特有の甘い香りを男の鼻先へ漂わせ、
女は一夜の“主人”となった男を、館の奥へと招き入れ――――――

ユーダス > 【部屋移動】
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からユーダスさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からミオさんが去りました。