2023/11/23 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にグァイ・シァさんが現れました。
■グァイ・シァ > 寒くなると市場の品数というものは少なくなるのが常だと思っていたが、この市場はそういう事もないらしい。
(…気のせいか、増えているんじゃないか)
冬晴れの空の下、広大な広場にいくつものテントがひしめき合ってまるで迷路だ。そのテントの合間を、客なのか出展者なのか判然としない人々が如何にしてか交差して行きかっている。
露店で売られるような奴隷たちだから、さぞ…と思いきやそういったこともないのか、あるいは只の物好きか、行きかう客と思しき中には貴族の姿もちらほらと見かける。
(…暇な奴らだ)
行きかう人に混じる紅い髪の女は、人々をひとしきり観察して内心吐息をつく。近くの広場のはずれでは競りでも始まったらしい、未だに理解できない符牒が聞こえてくる。
この都市では死の香りよりも血の香りよりも、何か別の執着のような感情が女の形をした悪魔の鼻につく。
正直この女にとって得意な場所ではないはずだが、その不得意の正体を突き止めるのもよかろうと思ったのか、只戦場に少し飽いたのか。
当の本人も判然としないまま、迷路然としたテントの合間を歩く。
女の格好は、奴隷商の客となりそうもないからだろう。あるいは難癖をつけるチンピラの類と思われているのかもしれない。
兎も角露天商から声を掛けられることもなく、途中何か気に留めたように足を緩めることはあっても足取りは止めず、人波に紛れるようにして歩いていく。
■グァイ・シァ > 日暮れが近づくと街頭が灯り、各テントも軒先に灯りを吊り下げる。
まだまだ商売は続くらしい。
いつものことながら半ば呆れ、半ば感心して
結局、得るものは少なく
女の姿をしたそれは市場から離れて、姿を闇の中に溶かして消えた。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からグァイ・シァさんが去りました。