2023/11/14 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にニルさんが現れました。
ニル > 「いーち、にーい、さーん、よーん……」

己の身の丈程もありそうな大樽の上に座り、膝の上に広げたハンカチに買ったばかりの実を置いて数を数える。
量り売りで買った実は、粒の揃いが疎らで大小さまざま。
小さい奴は今食べてしまって、大きい奴は持って帰るのにしよう。
そんな事を考えながら数えていた訳だけれど。

「!?」

どんっ、と誰かが大樽にぶつかって、膝の上に広げていた実が転がり落ちていった。
ぶつかった誰かは「ごめんよ!」だなんて言葉を残して後ろを見てもいないのだろう。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」にアーテルさんが現れました。
アーテル > バフートと言う名前の都市に行商の護衛の一人としてやってきた。
奴隷市場都市なんて恐ろしい名前に最初は警戒していたが、市場に近寄らなければ後は普通の街に見えた。
土地勘のない俺は今後の為にと自由時間の間に街を見て回る。

すると、どこかから綺麗な歌声が聞こえてきた。
音のした方へと辿り着くと、一人の少年の姿。

可哀そうに、誰かにぶつけられたのか。
足元に何かの実を落としている。
大樽の上に座ったままでは拾いにくいだろう。

「ちょっと待ってな。
俺が拾ってやるよ。」

少年に声を掛けてから、木の実拾いを始める。
大きいのやら小さいのやら、落ちてる実を目に付く範囲拾い集めて。

「これで全部か?」

両手に集めた身を、少年に差し出す。

ニル > 柔らかい種類の実ではないから、落下の衝撃で潰れたりはしていないだろうが、しょぼくれてしまう。
肩を落として大樽から降りようとしたその矢先、かけられた声に視線が持ち上がった。
言葉を返す間もなく、木の実を拾い始めた相手に瞳を瞬かせていたが、そのまま奪い去るでもなく、本当に拾い上げてくれたものだから、ほんの少し目を見開いた。
差し出される木の実は、先に数えていた数と一緒。

「ありがと~! 大丈夫、全部あるよ。」

ぱ、と笑顔に華やぐ顔でお礼を告げて木の実を受け取った。
それから、一番大きくて美味しそうな実を一つ選び、相手へと差し出そう。

「お礼にあげるー。 甘酸っぱくって美味しいよ!」

アーテル > 楽しそうに歌っていた少年が分かりやすい位に落ち込んでいた。
そらそうだ、俺だって似た様な状況なら嫌だろう。

だから拾ったのだけど、正直拾われる側としてはちょっと怖いかもな。
持ち逃げとか、どこでもありそうだし。
だが、ちゃんと数の一致したみたいだ。

お礼に可愛い笑顔と同時に木の実を一つ分けてくれた。

「えっと、これどうやって食えばいいんだ?」

俺は受け取った木の実を両手で持ったまま、角度を変えてみる。
普段似た様な安い食べ物しか食べてない立場なので、果物とかはあまり縁がない。

ニル > 受け取ってもらえれば嬉し気に笑みを深めつつ、然し、返された言葉に楽し気な笑い声を逃がす。

「端っこに枝とくっついてた場所があるでしょ? そこから皮をむくとね、中身が出てくる!」

ほとんど黒色をした赤い皮は、一見すると果実には見えないやも。
けれど、一度皮を剥けば薄い黄色をした、果汁を蓄えた果実が現れる。
子供の拳大ほども無い、小ぶりな実は彼が食べるのなら二口、三口程の量だろうか。
相手に手本を見せるよう、それよりも小さい果実の皮を、手本を見せるように手で剥き始め。

アーテル > 「なるほど…。」

確かによく見ると斬られた枝がついている。
黒ずんだ赤い皮を少年のお手本を見ながら捲る。
果肉は淡黄色と言うべきか。果実らしい食欲をそそる色だ。

匂いを嗅いでから、口にする。

「お、これは美味いな。」

果物なんて久しぶり。
俺は目を輝かせ、ガツガツと口にして。
気づけば果肉はなくなり、種と皮だけとなった。

「これ凄く美味いな。
高かったんじゃないのか?」

ニル > 彼に見本を、と思って剥いた果実は、中身を露わにした瞬間の瑞々しい香りにそそられて、見せびらかす間もなく口の中へと運ばれていく。
食欲が勝ってしまった。

「そうでしょう、そうでしょう~!」

相手の言葉を聞けば何故か自分が自慢げに、ふふん、とばかりに嘯いて、果実を食べ進めよう。
大きくはない果実は早々に胃の中へと吸い込まれ、残るは皮と種ばかり。
近くで屋台をやっている顔見知りの店主に強請って屑籠を貰えば、相手の方へと寄せ、ごみはここへどうぞ、と言外に。

「んっふっふ。 一緒にいっぱい買うと、安くなるのです!」

ドヤ顔を晒してのたまう。
元より、代金は己の懐から出たものでなく、使い走りに駄賃で貰ったものだから、痛む懐はないのだが。

アーテル > 「いやほんと、これはすげえ美味かった。
普段からこういうの食べてるのか?」

屑籠を出されたので皮と種を放り込む。
あとは口元についた果汁を指で拭う。

少年はなんだか自慢げだ。
異国風の服装と相まって独特な雰囲気を見せている。

「なるほどなあ。
いっぱい買う予算がない俺には無理な話だな。

…ところで、あまり見ない格好だけど、異国の出身か?」

俺の興味は少年そのものに移った。
可愛らしい感じだし、さっきの歌声も綺麗だった。
男だとは思うが、同じ男でも俺とは人種が異なる様な気がする。

ニル > 「食べていると言えば食べてる……?」

選ぶ言葉が難しい。
お駄賃でもらう事もあれば、機嫌の良い時に姐さんや主がくれたりもする。
頭を緩く傾げながら、己も屑籠に皮と種を入れれば屋台の店主へ「ありがとー」とお礼を告げて屑籠を返しつつ。

「1個でも買えるからねえ、気になったら買うといいよ!」

なんて、果物屋の与り知らぬ所でアピールの一言を添えた。
再び膝の上でハンカチを広げれば、木の実を包み直し始める。

「生まれはー……よく分かんない! けど、このお洋服はお店の衣装~。」

包み終えれば、大樽の上へとハンカチを置いて、軽やかに地面へと降りる。
洋服の造りを見せるよう、両腕を開いて一回転。
して、にんまり、悪戯気な笑みを浮かべて紡ぎ。

アーテル > 「どういうこった?」

首を傾げて少し考える。
子供みたいだし、貰ったり貰わなかったりと言うことだろうか。
屋台の店主とも仲がいいみたいだし、俺よりはまともな食生活をしてそうだ。

「あ~、まあ、金があればな…。」

美味かったけど、ああいうのはそれ一個で普段の昼食代くらいだったりするんだよなあ。
いや、俺が貧乏なだけなんだけどな。

「お店? どっかの従業員で今は休憩中とかか?」

衣装と言われれば納得だ。
生地も良さそうだし、デザインも良い。
くるっと回って見せて貰たけど、ちょいちょい露出が凄いな。

「…どうした?」

なんだか意味ありげな表情をしている。
可愛いんだけど、なんか言いたそうだな。

ニル > 「毎日は食べてないけど、食べられる時は食べてる…?」

はたして、この表現であっているのかいないのか。
緩々、頭を捻って呟く声は、何処となく独り言めいていたのだろう。
果物屋へのアピールも、渋そうな様子であればそれ以上は勧めもせず、表情を緩めているだけで。

それより何より、己の告げた『お店』に少しでも興味を抱いてくれたらしい様子が見えれば、自分の意識はそっちが優先だ。
広げていた両腕は緩やかな動きで相手の左手の方。
避けようと思えば幾らでも避けられる、そんな動きだけれど、適えば、両手でその手をぎゅ、と掴もうと。

「おにーさんは、可愛いおねえさんとか、綺麗なおねえさんに興味……あるかなっ?」

営業である。

アーテル > 「お~~、凄い話じゃねえか。
ちょっと、かなり羨ましいな。」

こんな高価な食べ物を食べたい時に食べられるなんて。
貧乏冒険者の俺には考えられない話だ。
あまりここで豪遊すると帰りに支障をきたしそうなんて考えてしまう。

なんて話していると、柔らかくて小さな手に掴まれる。
初対面なのに随分と距離が近い。
いいんだけど。

「当然あるけど。
…高いんだろ?」

果物一個で苦労してる俺が出せる金額なんて本当に知れている。
たまに仕事ででかい報酬が入る時もあるが。
今日はそうじゃない。

ニル > 色を売りにしている店の客引きであれば、大概は距離感が近いだろうな。
己の場合、そもそもが他者に対しての距離感が近く、警戒心らしい警戒心を持っていない、と言うのも理由だろうけれど。
掴んだ手を逃がすまい、とでもするように、少年らしい力の強さで握る。

「お値段はねえ、ぴんからきりまでだよう。 でもねえ、色んなおねえさんもいるし――男のひともいるし、選びほーだいだよ!」

確かに、果物1個よりは当然高いが。
奴隷商が行っている娼館、とまでは今は言わないけれど、それ故の老若男女、人種を問わぬ人員の豊富さだ。
それに、払えなければ彼自身が、彼自身を値段にする事も出来る、とも思っている悪意のない悪辣具合。
どう?とでも言わんばかり、頭を傾いで。

アーテル > なんだかグイグイ来るぞ、この少年。
店の衣装とか言ってたしこの子が客引き係だったのか?
結構強めに握ってくるし。

「いやいや、選ぶにしてもなあ。
まさか足りない分は身体で返せなんてことならんだろうな?
俺にできることなんて皿洗いと力仕事くらいだぞ?」

ここが奴隷市場のある街であると知ってたので、流石の俺でも構えてしまう。
俺自体が体を売るって展開はかなり嫌だ。
この子はその辺りどう思ってるのだろうか。
手を引っ張られたまま、足に力を入れて粘っている。

ニル > 勘の良いお兄さんである。

「…………。」

にっこり。
今日一番の、整えられたお客様向けの笑顔を浮かべて、明言を避ける事でやんわり誤魔化した。
他人の一夜を買うのだから、対価は自分の体で一夜分――もしくは、それに見合う分、皿洗いや力仕事、には勿論なるだろうけれど。
いきなり奴隷に落とされたりしないだけ、この都市では良心的な店である事は間違いないだろう。
とは言え、引っ張った所でこの体格差ではそれ以上動かす事も出来ず、手を離し、ちぇ、と小さく声を上げた。

「あとで『やっぱり行けばよかった~!』ってなっても知らないんだから」

アーテル > どうやら、俺の読みは当たったようだ。
なんていうかこの輝くばかりの可愛い笑顔がそれを物語っている。

「まあ、分かりやすすぎたな。
おまけに君の笑顔が完成度高すぎるんだよな。
俺みたいな貧乏人はあまり質が良すぎると警戒しちゃうんだ。」

手が離される。どうやら営業活動は終わったようだ。

「にしても、本当に可愛いよな。
客引きだけなのか?」

男の子相手に何言ってんだと、自分の中で突っ込んでいる自分がいた。
でも本当に可愛らしい。
さっき衣装を見せてもらう時のやりとりからそう思っていた。
こちらから手を振りほどけなかった理由がそれである。

ニル > 「いきなり奴隷になったりしないのになあ。」

事も無げに告げるが、裏を返せば、『段階を踏めば奴隷になる可能性もある』と言う事でもある。
なんてぼやいていたのも束の間の事。
続けられた言葉に、双眸が瞬いた。
唇の端が緩々と持ち上がって弧を描き、溌溂とした少年、と言うには過ぎた色が表情に乗る。

「男のひともいる、って、言ったでしょう?」

頭を傾いで青年を見上げる仕草とて、先までの仕草と明らかに種類の異なるもので。

アーテル > 「おいおい、倫理観が完全に奴隷市場じゃないか。」

流石バフート。子供ですらこんな感じなのか。
などと突っ込んではいるが、これはこれで新鮮で楽しい。
…奴隷にはならないけどな。

俺が何気なく口にした言葉を少年は聞き逃してなかった。
表情が変わり、急に色気が溢れてくる。

「なるほどな~。
君もその中の一人か。
金額次第ならこのまま付いていこうかな。」

俺の方も少年をまじまじと眺める。
買い手と売り手になろうとしつつあった。

ニル > それは当然である。
何せ、ここはバフートなのだから。
色を乗せて浮かべていた笑みは、瞬きの内に崩れ、年相応のものへと戻る。
再び、くるりとその場で一回転して身に纏う衣装の様相を改めて相手へと見せ。

「そー。 お洋服、可愛いよねえ。」

それから、耳を貸して、とでも言いたげに手招く仕草。
彼が屈んでくれれば、己も軽く背伸びをして吐息を含んだ耳打ちをする。
吹き込むのは、この辺りの娼館の相場で言えば安過ぎず高過ぎず――ある程度、誰の手にも届きそうな金額。
するり、と、相手の首裏へと腕を回し。

「どうする? 僕とえっちなこと、する?」

なんて嘯く顔は、先にも見せた悪戯気な笑みで。

アーテル > 少年はあっと言う間に子供の表情に変わった。
ころころと良く変わる表情である。
元々の可愛らしさもあって、翻弄されてしまいそうだ。

「そうだな、本当に可愛い格好をしてると思う。」

俺は誘われるままに耳を傾けた。
耳打ちの際に届く吐息がちょっとくすぐったい。
提示された金額は多少遠慮してくれたのだろうか。
俺でもなんとかなりそうな金額だった。

「いい機会だしな。お願いするよ。」

口の端を伸ばし。
上機嫌に少年とどこかに消えていくのだった。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」からニルさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からアーテルさんが去りました。