2023/10/22 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にプラセルさんが現れました。
■プラセル > 基本は、『珍しい毛色をしたミレー族』として鳥籠を模した鉄檻に入れられ、店前で客寄せになっている事が多い日々。
それが、珍しく店の外ではなく、淡い灯りに彩られた天蓋を視界に捉えていた。
無論、外の空気が冷えてきた事で館の主人が自身の身体を慮ってくれた――等ではなく、己の身を一夜分、買った客の為、だ。
その客も、今はまだ部屋に来ていないからか、甘い香りの満ちた部屋は静まり返っている。
「――――――…………。」
細やかな細工のされた香炉に視線を向ければ、身動ぎに足首とベッドを繋ぐ鎖が小さく音を立てた。
ほんの一瞬、視線はそちらへ。
煩わしくあったはずのそれも、今では慣れてしまった。
淡く吐息を逃がし、再び体の力を抜いてベッドに沈み。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にロレンツォさんが現れました。
■ロレンツォ > 奴隷市場都市バフートの館。
淡い明かりと、香炉から立ち昇る甘い香りに包まれた一室のベッドに身を沈めるミレー族が居るばかりのその部屋に、足を踏み入れ姿を見せる存在が新たにひとつ。
男の深紅の双眸はベッドの上に横たわるその姿を、爪先から髪の先まで順番に、緩慢な動作で眺めたかと思えばその表情を笑みの色に形作り、小さく頭を下げて会釈をして見せん。
「―――……こんばんは、愛らしい金色の御方。今夜一晩、どうぞよろしくお願い致します。」
凡そ場違いとも取れる程に恭しい態度の挨拶を投げ掛けながらも、最後に告げられた一言は紛れも無く、今相手の目の前に立っている片眼鏡の男こそが、今夜一晩その身を買い上げた相手である事を示唆していた。
■プラセル > 扉の開く音がする。
一度は沈めた頭が持ち上がり、現れた姿を視認した。
――館の人間ではない、見慣れぬ顔だ。
彼の視界には膝丈のスカートから伸びる生白い素足と、右足首に填め込まれた無骨な鉄の枷が目に入るだろうか。
軈て、順繰りに上る視線と交差すれば、紡がれた言葉と、柔らかに見える物腰に双眸が瞬く。
緩やかな動きでベッドに手を突き身を起こし、ことり、と、落ちるような挙動で頭を傾がせ。
「こんばんは、旦那様。 どうか、可愛がってちょうだい、ね。」
抑揚の薄い声音と表情は、いっそ、愛想がないと罵られかねないものだろう。
然し、拒絶の色を微塵も含まぬ、静かな声音で嘯いて。
■ロレンツォ > 細い睫毛に隠れた空色の双眸が此方を見遣るのを認めてから、会釈の動作で提げた頭を上げて、深紅の双眸を僅か細めながら男は微笑む。
そうしてから、部屋の入口に立った侭だったその足を進め、ミレー族の少女が身を横たえるベッドへと歩み寄り、寝台の軋む音色を響かせながら身を乗り上げて――緩慢な動作で身を起こした少女を再びベッドの上へと横たえるように、その上から男の身体が覆い被さってゆく。
「はい、可愛がってあげますよ。―――先ずは、貴女のお名前をお尋ねしても?」
抑揚の薄い、ともすれば人形か何かと思わせる程の淡い表情と声音。
目の前に横たわる少女の体躯が作り物で無い事を、鼓動と体温の存在を確かめようとするかの様に、片方の掌をワンピースの布地に覆われた胸元へ、その膨らみを包み込む様に宛がいながら、囁く声で男は彼女の名を問い掛けん。
■プラセル > 相対するべく起こした体は再びベッドへと沈んでいく。
柔らかな衝撃の後には、先とは異なり、秋日を思わせる色合いが視界に広がった。
「――――プラセルよ、」
問い掛けられ、己の名前を紡ぐ。
変わらず、声も表情も揺らぎは薄い儘――然し、相手の掌にと包まれた胸は発する色とは裏腹に、薄布を一枚隔てただけの柔らかな弾力を、その奥で脈打つ心臓の存在を伝えるのだろう。
■ロレンツォ > ベッドの上で覆い被さる様に身を寄せれば、香炉から立ち昇るものとは種類の異なる、仄かな甘い香りが男の鼻腔を擽るのを感じ取り乍ら、其れと同質の甘く澄んだ音色が短く名を告げるのを聞き取って。
「―――プラセル。良い子ですね。もしかすると貴女には不要かも知れませんが、念の為に此方を着けさせてもらいますね?」
ミレー族の少女の耳元へと口許を寄せて、男が甘く囁く。
しかしその囁きと声音の穏やかさとは裏腹に、男が手を伸ばすのは天蓋を支えるベッドの柱――恐らくは少女にとっては耳慣れた金属音を伴いながら、男が手に取ったのはその足首へと嵌められたものと同じ金属製の鎖と枷。
其れを、少女の右手首、左手首へと順番に嵌めていってはベッドの上に横たわる彼女から手足の自由を奪い去ってしまおうとするのに加えて、最後にはするりと取り出した黒布で空色の双眸を覆い目隠しを施す様に、視界の自由すらも奪い去ってしまわんと―――。
■プラセル > 念の為、との言葉が耳に届くや否や、後を追って響く耳慣れた音に、思わず肩が小さく跳ねた。
この部屋で相手を待つ為に着けられた鉄環は既に体に馴染み、温度も鈍い。
然し、新たに嵌められていく枷は、無機質な温度を伝えてくる。
己の手足の動く幅を確認しようと手を動かし――
「――――、」
新たに取り出される黒布に、伏しがちな瞳が僅かに見開かれた。
手足の自由を奪われただけでなく、閉ざされる視界に、情動の薄い表情へ、先よりも分かりやすく動揺の色が乗る。
碌に動く事が出来なければ、何が起こるのかも予期できぬ状態に、腹底がざわめく。
それを誤魔化すよう、極々小さな動きで身動いで。