2023/10/05 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にシェティさんが現れました。
■シェティ > 人間の堕落と悪徳を体現したかのような市場の中を、一人の女が歩いて行く。
其処彼処で奴隷の売買や退廃的な見世物が繰り広げられる只中で首輪も鎖を引く飼い主の姿も無く、
姿勢を正した優雅な所作で足を進める侍女風貌へと注がれる奇異、或いは好奇の視線には女自身も当然気付いていて。
「――――……必要以上の長居は無用、ですか。」
誰に聞かせるでも無い小声で再確認するように呟くと、彼等の視線を振り切るように歩みを早め。
程無くしてその視界に入った、一際規模の大きく目立った様相の天幕の方へと迷う事無く足を進めて行く。
その入口に掛けられた布を潜り、蒼銀の瞳が中の様子を一瞥してから、失礼――と中に居るであろう人物へと短く声を掛けて。
■シェティ > 女の視界に入るのは先客か従業員と思われる幾つかの人影と、檻に入れられ、或いは鎖に繋がれた幾多もの『商品』達。
一瞥した限り、その中に女の目的は存在しない事を悟ると、やがて奥の暗がりから姿を現わした一人の男へと視線を投げ掛ける。
見た所、彼がこの天幕の主たる奴隷商で間違い無いだろう。
人の良さそうな笑顔の裏側で、侍女風貌の女を品定めするような視線には敢えて気付かぬ振りをしながら、
エプロンドレスのスカートの裾を摘み優雅な所作で一礼をして見せてから、女は手短に本題を投げ掛ける。
「………先日、此方で若く見目麗しい魔族の奴隷を仕入れられたと伺いまして。
我が主が、是が非でも己が元へ迎え入れたい、と。………お譲りいただけますでしょうか?」
その言葉に嘘は無い。
主人の命令により、数日前にこの市場の『商品』に加わった或る魔族の奴隷を買い上げ連れ帰るというのが今回女に課せられた役目。
尤も、侍女風貌もまた魔族であり、人間の手に落ちた同胞の救出というのが、その裏に秘められた真相ではあるのだが―――。
■シェティ > しかし奴隷商の口から返された答えは、悪い可能性のひとつとして女が危惧していたもの。
『その奴隷ならば、つい先程買い手がついて連れて行ってしまったばかりだ』と。
「然様で御座いますか。………その御方は今何方に?直接お会いして交渉がしたいのですが。」
それでも動揺の色は無く、抑揚の淡い声で女は問い掛ける。
『此処を出て中央の方角へ去って行ったよ』と、笑顔で答える奴隷商の言葉の真偽は疑わしかったが、今はそれに頼るより他に無く。
今一度、深く腰を折って謝礼の言葉を投げ掛けてから、侍女風貌の女は踵を返すと元来た天幕の入口を目指し足早に進んで行く。
■シェティ > その間際。女を組み伏せようと襲い掛かった男を魔法による一撃で迎え撃ち。
苦悶の表情で崩れ落ちる男と、その奥で苦虫を噛み潰したような様相の奴隷商にはそれ以上一瞥もくれる事無く、侍女風貌の女は天幕の外へと去って行った………。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からシェティさんが去りました。