2023/08/26 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にルスカさんが現れました。
ルスカ > 夜を迎えてますます賑わう、奴隷市場の片隅。
とある商人が構えた店の天幕の下、大小さまざまな檻の中に、
それぞれ、見目麗しい売り物が収められている、そのひとつに。

異国のものと思しきキモノを身に纏い、両手を後ろ手に枷で戒められ、
胡坐をかいた右足首から、太い鎖と鉄球を繋がれているわりには、
ひどく太々しい表情で周囲を睥睨する、ひとりの少年の姿があった。

彼の正体は魔族であり、本来は、商品を買う側の存在である、と自身は思っている。
それなのにこんな所へ押し込められて、上機嫌であろう筈も無かった。

「……まったく、とんでもない街だよ、ここは。
 噂以上だ、宿にも安心して泊まれないなんて、人間の常識はどうなってるんだか」

ブツブツぼやく声は低く細く、行き交う客や商人の耳には届いていないと思われる。
泊まった宿の部屋から、眠っている間に麻袋を被せられて攫われてきた少年は、
だから人間なんか信用できない、今に見ていろ覚えていろ、なぞと呪詛めいた呟きを洩らしているが、
現状、反撃の糸口は見当たらず、少年の入った檻の正面には、お買い得品、なる札が貼られているのだった。

ルスカ > そうして夜が明ける頃、檻の中には人影は無く。
枷として繋いでいた鎖と鉄球だけが、空の檻の中に転がっていた。

中身であった少年の行方は、誰も知らず―――――。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」からルスカさんが去りました。