2023/07/28 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にラディエルさんが現れました。
ラディエル > 某・貴人の邸から逃げ出して、はや数日。
一向に元に戻る気配も無く、こじんまりとした少女の姿のまま、
この治安のよろしくない街を訪れたのには、どうしてもそうしなければならない、
とてもとても大切な理由がある。
――――――というより、ここ以外、頼る当てが無かったと言っても良い。

異様な熱気に包まれた奴隷市場から、通り一本、二本、三本ほども離れた、
廃屋同然の古びた建物が肩を寄せ合う細い路地。
陽射し避けのストールを頭からかぶっているとは言え、
全体として、小柄な少女であることは隠しようもない、ので、
出来る限り見咎められないよう、早足で向かうのは、以前から懇意にしている道具屋だ。
前々から、護身用の道具や薬を安価で分けて貰っている、きっと彼ならば、
この状態を打開する知恵も持っている筈、持っていてほしい、という、
縋るような思いで歩を進めているが―――――

「……問題は、俺だ、って解って貰えるかどうかだな」

呟く声も、か細く、高い。
気難しげに眉を寄せ、解って貰えなかったらどうしよう、などと、
今更ながらに思い悩みつつ―――――。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」にファルスィークさんが現れました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からファルスィークさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にファルスィークさんが現れました。
ファルスィーク > 分かり易いくらいの欲望渦巻く都市であり、故に情報や珍品なども集まる場所という事で、足を向ける事も暫し。
昼間でありながら、活気に満ち溢れて入るが己の領地である都市とは違った類のものではあったが。
ゆっくりと眺めて回る市は細い通りへ行くほど怪しげになってくるのは何処の街でも同じらしい。
胡散臭そう者の出入りや、値引き交渉が行われ……そんな光景を眺めつつ、散り合えずの買い物と言えば、ここ最近の…特に王都の貴族に関する目ぼしい情報と、己の商業都市に関するもの。
価格交渉の末に代金と引き換えに何枚かの羊皮紙を受け取り……用事は終わったので後は物見遊山となる。

己の都市に関しての情報を買ったのは、どんな事が噂になっていたりするのか。
それに加え情報漏洩をしている輩が居ないかの確認も含めてだが。
そんな中でふと以前に記憶した事のある魔力の気配に首を傾げ…そちらへ向ける足は暫く後に見かける小柄な―――。

「…ラディエルだな?」

おもむろに背後から近付いていくと、気付かれなければその細い右肩へ左手がかけられると同時に声をかける事になるのだが。

ラディエル > 見た目だけで己を記憶している者ならば、まず、確実に気づかない。
何しろ見た目の性別、年の頃、着ているものの値の張り具合まで違うのだ。
色合いこそ喪服じみた黒ではあるが、生地も仕立ても上等で、
軽やかな靴音を刻む靴の踵も細く高く、一見して、お忍び旅行中の貴族の娘。
つまりは下手にこの近辺をうろつけば、奴隷市場の檻の中へご招待されかねない外見で、
魔力と呼べるものを内包してはいても、行使する術はもともと持たない身。
―――――無防備な背中へ近づく気配に、触れられて初めて気づく始末だった。

「っ、――――――――――!?」

彼の掌の大きさなら、すっぽり包み込めてしまうだろう華奢な肩が、びくっ、と大きく震えた。
悲鳴を上げて飛びあがる無様は晒さず済んだものの、振り返って相手を見上げる瞳は大きく見開かれ、
幼げな面差しと相まって、怯えている、と捉えられてもおかしくはない。
瞬きもせず、数秒、その姿を凝視してから―――――

「………ド、ドナタデショウ?」

面倒なことになりたくない一心で、人違いを装おうと決めた。
ただし声の調子が平坦に過ぎて、あからさまに怪しい。

ファルスィーク > こんな場所には不釣り合いと断言できる小柄な体躯は、背後からであってもまだ成長途中の年齢であるとの認識できる。
そして性別に関してもドレスを着ているのであるなら少女であるともわかる。
治安はあまりよろしくない場所、それなりに仕立ての良いドレスとなれば、迷い込んでしまったそれなりの身分の娘か、逃げだしてきた娼婦か…一見の印象ではそんな所ではあった。
だが、感じ取れる魔力と言えば……。
――己が知っているものとは容姿が違う。
だが、確か容姿変化をしているのはこの目で見ている訳で……半分以上の核心を以て声を掛けたのだが。

肩に置いた手はそのままに、何気に逃げられないようにする為の位置取り。
大きく跳ねた肩と振り返るその顔にはやはり面影が見て取れ――何より己を見た瞳が大いに事実を物語っているのだが。
………しばしの沈黙の間は分かり易いほど不自然な上、感情の籠っていない棒読み…しかもカタコトの様な発音であれば、呆れた様な目線と言葉で返してみるのだが。

「……相変わらず嘘が下手だな。
その姿の経緯は何となく察しは付くが――こんな場所うろついていると攫って欲しいと言わんばかりだ。
それこそカモネギなんだが……」

いつの間にか姿をくらましていた事を咎めるつもりは全くないのだが……片方の口元を上げての笑みは、少女にとっては「捕まえた」と言わんばかりに見えるかも知れない。
あの時、連れて帰った負傷兵は、己が都市で引き取り衛兵として働いてもらっていると、その後の様子を伝えつつ…。

「それで……また、どこからか逃亡中なのか?」

ラディエル > ―――――この男の手は、こんなに大きかっただろうか。
がっちりと捉えられてしまえば、振り解くのも難しそうだ。
腕や足の長さを考えても、単純に逃走を試みるのは無謀に過ぎる。
だからこその、他人のふり、だったのだが―――――。

「―――――――― ひとを、逃亡奴隷みたいに言わないでくれない?」

男の側の認識からすれば、正しくその通りなのかも知れないが、
己としては、あんなもの、騙し討ちの結果だったのだと主張したい。
眇めた双眸を心持ち、下方にずらして視線がかち合うのを避けるのも、
過日の失敗を繰り返したくない気持ちの表れだ。
頭からかぶったストールを、ギュ、と胸元で掻き合わせて握り締めつつ、

「あの時の契約はもうご破算だ、あんたが奴らを活かそうと殺そうと、
 もう、俺にはなんの関係も無いよ。
 二度と会うことも無いだろうし、興味も無いし……」

もともと、金で雇われただけの関係である。
生きて無事に働いていようが、何処かの墓の下であろうが、
特に何かを感じることも無い。
そういう意味では―――――と、肩にかかる手を振り解くべく、
ぐい、と身を捩ってみながら。

「そういう意味では、あんたについても、同じことだ。
 関係ない、興味も無い、……あれが取引だったというのなら、
 もう充分、支払いは済ませたと思ってる。
 だから、もう、ほっといちゃくれないか……?」

ファルスィーク > 手を置いた肩は以前よりも細く華奢で、無暗に力を籠めれば壊れてしまいそうなほど儚く感じる。
そして、反論するような声は今の容姿によく似合う高めの声ではあるが、ぶっきらぼうな口調とのギャップがあって仔犬が大型犬に咆えているような感覚にもなる。

言いたい事は山ほどあるようだが、面と向かって言わないのは警戒しての事なのだろう。
主張はそれぞれの立場で違ったものになるのは仕方が無い事ではあるが。

「奴隷とまでは言っていないのだが、現在の身分はそうなのか?
――あの時の契約は、破算ではなく遂行と思っている。
その為に自分の躰を張ったのだから義理堅い。

まあ、確かに支払いは澄んではいるな。
なので別段取り立てようと思っている訳ではない」

折角、手に入れた資産でもあるし、正規の訓練を受けた兵士というのは貴重であるし、言葉の通りその分の対価は貰っている。
なので、追手もかけないままで放置していたのだが、見かけたので確認のために声を掛けた――というのが現状。
ストールを握る胸元へは自然と目が向けられることで、抱く欲情は男としては当然の摂理ではあるが。

逃げる様に躰を捩られるのなら、一歩踏み出して距離を縮めて今度は肩ではなく腰を抱く様にしてみようか。

「先日より若くなっているようだが、ふむ…元が良いので、これはこれで悪くはない。
で……リスクを冒してまで、こんな所を徘徊しているのは何か理由があるのではないか?
――相談にも乗るし力にもなってやるんだが」

ラディエル > 「ちっがうわ」

現在の身分がどうの、という台詞に対し、叩きつけるようにまずはひと言。
声音にも剣呑な響きが混じり、俯き加減に視線を合わせはしないまでも、
不機嫌そうな顔になっているのは伝わるかと。
ストールを握り締めた白い指にも、色が失せるほど力が籠り。

「ご破算じゃないのなら、もう完了、ってとこだろう。
 どっちにしても、俺があんたに支払うべきものは、もう、無いってことだ。
 だから、――――――――… っさ、わるな!
 近い、近いんだよ、あんた!」

ドレス姿のためにひときわ細く縊れた、腰へと回される腕。
今度こそ、己は小柄な躰を勢い良く捻り、男の腕を避けて逃れた。
そんな反応も、今の体格差では小型犬の無駄吼えのように感じられてしまうかも知れないが、
捕まる気は無い。 目の前の男に、だけでなく、他の誰にも。

「あんたと、取引すんのはもう、ごめんだ。
 だから、……ほっといてくれ」

男の言葉を全くの善意だと信じることは、とてもできない。
この男との前回の取引を、その顛末を思い出せば、
安易に手を取る気になどなれる筈も無かった。

男の足許付近を睨みつけたまま、更に、一歩。
後退って、それから踵を返すつもりだ。
背を向けて立ち去ろうとするのは、あまりにもリスキーかも知れないけれど―――――。

ファルスィーク > 隠す事のない感情を含んだ否定の短い言葉は、相変わらず顔を上げないままではあったが徹底しているのは、対抗手段だと認識しているからだろう。
そんな反応も可愛い所ではあったりするが――するりと舞う様に腕を避けられると竦ませる肩。
適度に距離を取る様に2歩3歩と後ろに引くのならば、今度は特に歩み寄ろうとはしないままに見やり。

「コミュニケーションは近い方が良いのでな。
ふむ…そうか。であれば、尊重しよう。
もっとも…私の魔力を受けている以上、疼きを癒せなくなる時はあるだろうが」

前回の取引で言えば、リスクの大きさは身に染みているのだろうが…その時に強制的に与えられた恩恵と対価は身を縛ってているのか。
多少、悪戯めいた笑みを浮かべて、顔を上げないままの少女の胸元辺りへ緩く投げてみるのは手の平よりも大きめの布袋。
受け取るか受け取らないかは少女次第ではあるが…中に入っているのはそれなりの額の金銭。

「一度は情を交わした仲ではある。
そのまま放置というのもな。
まあ、使うも使わないも君の勝手だが」

そう言えば己の方が背を向けて手を振るのは、己に警戒し過ぎて他に攫われない様にとの事でもあり。

ラディエル > 「うる、っさい、だま、―――――…っ、…?!」

男に指摘されるまでもなく、実のところこの躰は、色々と厄介なのだ。
色を含んだ眼で見つめられるだけで、火照ってしまうこともあるぐらいで、
―――――だけれども。

投げられた何かを、反射的に両手で受け止めた。
じゃらり、布袋の中で響く金属音に、はっと息を呑む。

投げ返してしまうのは容易い、むしろ、そうしてやりたい。
しかし、―――――以前のように稼ぐのも難しくなっている今、
怒りに任せて行動を起こすのは、いささか躊躇われた。
半ば無意識に、ぎゅう、と、懐へ握り込んでしまう始末で。

「――――――― 借り、だなんて、思わないからな」

ぎりぎりと奥歯を噛み締め、そう、憎まれ口を叩くのが精一杯。
男が先に背を向け、立ち去る素振りを示すなら、己は内心ほっと息を吐き、
当初の予定通り、踵を返して駆け出した。

目当ての道具屋が、己を己だと理解してくれなくとも、
金があれば取り敢えず、追い出されはしないだろう。
そんな思惑を頭の隅で転がしつつ、西日が斑に照らす通りを、奥へ――――――。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」からラディエルさんが去りました。
ファルスィーク > 投げたものは上手くキャッチしたようだ。
そして、金銭はあって困る物ではないのは、よく理解している。
自尊心が勝ち投げ返されるのなら、音を聞きつけた不埒な輩がかっさらって逃げていくだけだろう。

どうやらそれは免れた様で…返ってくる声に背を向けると、安堵した雰囲気が伝わってくる辺り、過度な緊張状態であったのも分かる。
去っていく気配と同じくして己も歩き出しつつ楽しげに笑いつつの独り言。

「相変わらず可愛い奴だ」

途中、珍品を扱う店で脚を止め、品物を吟味しながら値切り交渉を始める姿があったとか。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」からファルスィークさんが去りました。