2025/05/05 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル >  冒険者ギルドでいつまでも片付かない、安い(報酬)遠い(目的地)見つけ辛い(討伐対象)なパーティ向けクエストがあり。
 ギルド側ではいい加減どうにかしたかったらしく。
 たまたまそこら辺で手頃な依頼にありつけず、あぶれていた連中が『お前ら暇だろ』とジョブを振り分けて適当に選抜され。
 雑に即席パーティが結成された。

 今回お初だったり、多少は顔見知りだったりと云った面々。連携に関しては期待値ゼロ。
 ギルド側の判断としては多分どうにかなるだろうとそれはもう大雑把な見立てで、『行ってこーい!』と半ば強引に蹴り出された。

 確かに真昼間からくすぶっていても仕方ない…と即席パーティ四名は渋々、出立したはいいものの……
 パーティで手分けして二名ずつで分かれ樹海を探索中。
 思わずため息を零してヒーラーは連れへぼやくように語りかけた。

「ぜーんぜん、見っかんないねー……。
 出没予想地点の範囲から大分広げてるのに……こんなんじゃ討伐はおろか今日中に見つかるかどうかも怪しいぞ……」

 広大な森林地帯の深部まで分け入って、討伐対象たる魔物が出没する確率の高い場所を探索しているが、ちっとも、微塵も、欠片もこれっぽっちも……出てきそうな気配がなくて思わず青々とした枝葉に切り取られた天を仰いだ。

 ――めちゃくちゃ本日は晴天なり。

 冒険やめてピクニックに趣旨替えしたい。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」にイディオさんが現れました。
イディオ > 連携の取れていないパーティ、と言っても、そこは冒険者最低限のロールプレイ(役割分担)という物はある。
人間男戦士前衛系は、パーティの生命線とも言われる、ヒーラーの護衛に入る名誉を請け負う事になった。

物理的な探索職のスカウト。
魔法的に探索ができるメイジは、二人で連れ立って、捜索。

「逆に言うと、俺らが一番そういうの、見つけることのできない職、だよな。
 まあ、今日明日の期限じゃぁないから、腰を落ち着けてやる、しかないよなぁ。」

ゾンビのように死んだ目をしている戦士。
今回の依頼だからと言う訳では無く、これが平時というか普通なのである。
前に、ゾンビ退治の依頼に出た時に、ゾンビに仲間判定されたときには、本人愕然したが。
それぐらいの勢いで、ゾンビのように光の無い目の男だった。

彼女の言葉に、同意を向けつつも。
諦めて探すしかないよなあ、と依頼書に書いてある目標を見やる。

「なんかこう、おびき寄せるとか、無いもんか……?」

ヒーラーなら、そういう、魔物除けの薬とか、魔物よせの薬とか、無いかなぁ?と。
期待を込めた目でみやる。
ちなみに、イディオのバックパックの中には、食料と回復薬とかだ。

ティアフェル >  新芽が茂った木々に切り取られてはいるが、充分に晴れ渡って爽やかさを覚える蒼天を仰いだ後。
 返答の声に空からそちらへすーっと視線を向けると。
 隣の人の目が、相変わらずめっちゃ死んでた。
 昼日中のまばゆい光とのコントラスト……えぐい。そんな彼の青い眸。

 どちらかと云えば夜の似合うタイプよね、と考えながら彼の言葉に肯いて。

「でーすーよーねー。
 うちらはそんな探知は期待されてないってか。無理して探し回るより、そこそこ体力温存しといて向こうの班が見つけだしたところに駆けつけてボコる役かなー」

 ボコる、と当たり前のように口にするヒーラーは自分が後衛ということを相変わらずちょっと忘れがち。
 片手にしたスタッフをスイングさせて足元に纏わりつきそうな藪をザシザシと払いながら進む途中。

 お隣からご期待の視線を感じ。

「あっはー、イディオさーん。あったらとっくに使ってるっつーね?」

 つまり、ない。回復以外はとんと無能なゴリラ系ヒーラー。
 見事な一芸特化型。回復となれば、そこらの神官を時に凌いだりしちゃったりしないでもないが。
 他は? お料理とかできるよ?って感じの残念さでお送りしている。

イディオ > 夜の似合うタイプと思われているが、悲しいかな、悲しいかな。
夜の帝王のような、闇世界の帝王とか、格好いいサムシングではなく。
ゾンビとかヴァンパイアとかそっちじゃないかと思うらしい。
初めましてな聖職者の方と出会うたびに、ターンアンデッド(不死退散)の魔法をかけられるのはお家芸。
ギルドの名物とか思われている節があるし、ターンアンデッド使わずに見抜いたら、むしろ有望株とかなんとか。
悲しい使われ方をする冒険者戦士男だった。

「むしろ。俺らが今やるべきことってさ……。
 ティアフェルの言う通りに、見敵必殺(見つけた敵をぶっ殺せ)と。
 キャンプの準備じゃね?」

長期にかかる依頼であるなら、休息は大事だ。
冒険者の宿のベッドで休むほどに体力は回復できなくとも。
休息する条件が悪いとさらに体力が削られるものだ。
なれば、しっかり休める場所を作って、遠くに出ているシーフやメイジの体力を回復する手伝いをしたほうが良いやもしれない。
まあ、イディオが寝ずの番にになるかもだし。

ヒーラーさんの殺る気に関しては、何も言わない。
彼女とは複数回依頼を共にしているから、それなりに人となりは分かっている。

「そっかぁ。ないかー。」

残念無念。
まあ、基本的に考えるならば、攻撃と回復ができるなら十分だ。
そういうのは、盗賊とかの役割でもあるし。
イディオ自身、無いならないでしょうがないと思っているので。

「料理……。」

ふと、イディオは彼女の返答に言葉を止める。

「なぁ。美味しい匂いって、いいよな?」

冒険では、あまり褒められたことでは無いが。
匂いの強い料理は、魔物や魔獣を呼び寄せるので、敬遠されるものだ。
だから、水で溶いてすぐ飲める系のとか、乾パンとか、干し肉とかの保存食を食べる。
良いにおいを出したら、呼び寄せられるんじゃね?と提案。

美味しい匂いがあるなら、別に食べ物でなくてもいいかもしれないし。
どうよ?と提案してみる、料理ができない系冒険者。
料理ができるは、十分に有能だと、冒険者は思う。

ティアフェル >  そんな蒸留酒ロックで煽って葉巻フカしてガハハな夜の帝王微塵も想像してないけど。
 アンデット系と出くわしたら向こうから『ォッカ レ…サマ ッス…』と低いデスボイスでご挨拶されかねない。
 と思ってる。思ってるけど傷つけることは云わないよ。礼儀を軽んじないゴリラは。

 そもそもこっちはこっちで扱いづらい殴りヒーラーなので人様のことはとてもとても云えた義理じゃない。

「やっぱ、そっかな。
 だよね。野営の仕度をアテにされてた系ですかね。わたしも、そんな気はしてた。
 それに向こうの連中……意外と見つける気満々ではあったけど、それ以外頭になさそうだったし」

 一日ではとても終わらない、ある程度拘束されるパーティクエストならば索敵だけではなく、もちろんその下地が肝要にはなる。
 設営要員。その役割ならばそこそこ的確な二名だとは思われ。

「イディオさんが不思議な踊りを舞えばあるいは、何かおびき寄せられるかもよ?」

 何か、の点については明言しない。
 主にアンデット系が。とそこまでは、わたくしとても云えませんが、そう思いました。
 しかし、魔物を誘う方法について何か閃いたらしい彼の言葉に、ぴこん、とアホ毛を反応させ。

「おっ、それナイスアイディアじゃない?
 ちょうどお腹も空いてきたし――食材や調理器具なら最低限準備してきたよ」

 見た目を裏切ってがっつり大容量のウエストバッグ。
 とある魔女ご謹製のそれには結構な物量を収納できるので、野外で調理できる器具の類は装備済み。
 匂いにつられて余計なヤツも出て来るかもしれないが、それはこうやって探索しててもまあ似たようなものかもしれないし。
 それに怖気づいていては冒険者とは云えない。

「イディオさん賢ーい、ごはんは食べれるし運が良ければ出て来るかもだし一石二鳥?」

 そうと決まれば調理できそうな場所と焚火の準備か。せっかちに、何を作ろうかと考え始め。

イディオ > 大丈夫、心配いらない。もう、何度もご挨拶されたし。
リッチとか高位の知能あるアンデッドに、お前生きてるのかとか驚愕されてたし。
傷つくことはない、たぶんきっとメイビー。

イディオ的には、自分で自分の身を守れる系のヒーラーはとても嬉しい。
守るための負担が減るのだ、その分ダメージを減らせるから、ヒーラーの消耗も軽減できる。
良いことづくめなのである。

「まあ、俺がいる時点でなぁ……。パワー系、だし。
 それに、ティアフェルは料理が上手だし。
 二人とも索敵が上手くできない、となればなぁ……?」

うすうす感づいていたからこその、納得というか同意。
二人ともそれのために残っているんだろうな、となるなら。
探すものを変更しよう。

休息に適した場所、だ。

メイジがちゃんと、お互いの場所がわかるための魔道具を置いて行ってくれているから、移動も不安はない。
ちゃんといい場所を見つけられればそこに来てくれるだろう。
一応、適当に集められたとはいえ、退治のできるという事もあり、それなり熟練者が集まっている。

「俺が踊って、目標が来るなら、踊るけど……。
 来ると思うか?」

割と真面目に言う、ゾンビモドキ。
ちょっとの恥で目的が来て、それで依頼を達成できるなら、するよ。
ええ、アンデッドを無意味に釣るために踊っても仕方は無いのですが。
ただ、目標釣れなかった際は、どうしてくれるんですかあ?と問いかけました。

「マジックバックか……良いな。」

見た目よりも多く入り、そのうえで、重量が変わらないというのがマジックバッグ。
冒険者としては、垂涎のアイテムだ。
だって、荷物が多く入るなら、色々入れられるし、お宝もいっぱい持って帰れる。
しかし、それだけに、超高価。持っているのはステータスだよなぁ、と思いながら、彼女と共に歩く。

「じゃあ、改めて。
 今のうちに、野草とかも集めつつ、拠点になるところを探して、料理、しよう。」

野草というのは案外捨てたものでは無い。
ハーブとか、薬草は、大体野草だし、料理に一味尽くし、かさも増える。
なので、それらを探しながら、料理できる場所を、と。

ティアフェル >  別にどれだけ目が死んでいようが、アンデッドと友情をはぐくめる素質があろうがそれは誰の迷惑にもならないし、能力値においての影響はないので、彼は問題のない冒険者と見做されているはずである。
 だけどね? うっかり暴れちゃうヒーラーは多くの場合嫌煙対象。
 むしろ殴ってくれちゃっていいよ~という神対応の冒険者仲間は数少ない。少なすぎて実質ほぼいない。
 だから今回、ペア分割されたのだろう。ジョブとか役割とかもあるだろうけど最たる理由は多分それ。

「そうなの、ティアフェルお料理がお上手なの。うふふ。何せ乙女ですもの。家庭的ゴリラで売ってるの。
 イディオさんはなんというか無茶しないし安定系の前衛だしね。
 わたしと真逆だから、個人的に楽ッスわ」

 ギルド側がどれほど意図したものか、その作為のほどは不明だけど。
 雑に組まれた即席パーティにしてはそんな悪くない。
 そして役割も把握した。
 
 向こうの班でこちらの場所探知もしてくれるなら好きに動いてやろう、そしてちょっと気の利く所見せてやるよ、という意気込み。

「思う。夜になると誘蛾灯に集まるかのようにその手のやつが、踊るあなたに寄ってくるとわたしは思う」

 その手の奴についてはやっぱり言及しない。
 討伐対象じゃなくっても、そこそこ経験値おいしい奴が寄って来て狩れたらその踊りはかなり有益だよ?とにっこり…とても穏やかに笑って問いにお答えしました。

「何せ発注から購入まで一年かかったもの。超貯金したもの。友達価格にしてはもらったけど」

 胸張れるご自慢の一品。マジで一年がかりで作成してもらった。でも道具がどんだけ凄くてもそれはなにも当人の手柄ではない。
 
「うぃうぃ。
 ほいじゃ……来た方角の南東から水の音がしたし、地図上でも湧水かなんかの取水場があるみたいだから、その近くはどうかな?」

 給水ポイントは冒険者でなくともなくてはならない必須項目。
 頭に入れておいた地図を思い出しつつ、バッグから取り出して広げた地図を確認して。
 そちらにも見えるように手近な取水ポイントを示し、そこら辺で木々が多少開けた平地を探さないかと提案し。
 同意いただけるようなら香草の類や草の実を探しながら向かおうか。

イディオ > ギルドの差配の理由は問わない、そこは考えてはいけない一線な気がする。
なので、冒険者は何も言わないし、何もしない。
彼女がどうあっても、彼女は有能な冒険者だし、そこに否やはない。

「ゴリラ……?いや、ゴリラじゃないでしょ。
 十分にかわいらしいお嬢さんだと思う。
 そりゃ、前衛と言ってもどっちかと言えば、防御職(タンク)だからさ。
 そこが無茶をするって、結構やばい状況だと思うぞ。

 真逆だからこそ、補い合えるっても言うし。」

 ゴリラと言う意味が分からない。
 確かに彼女は、少しばかり活発だがその程度、ゴリラのような容姿はしてないし、筋肉だって。
 ただ、少し気質が前衛的(アタッカー)なだけであって、それでゴリラというには足りないと思う。
 乙女だ、というのには納得している。

「うん、そこはかとなく、言いたいことが何となく伝わってきた。
 グーで殴りたくなる気分だ。げんこつ一発堕としたいな。」

言及をしてなくとも、やはり共通認識はある、つまるところそういう事だ。
まあ、気にしていなくてもネタにされてこすられれば、反応を示しておくべきだろう。
さわやかな彼女の笑みに対して、口角上げながら笑ってみるも、目が死んでいるせいで、にちゃぁ……とした、笑みにしかならない。
腐っているわけでは無いが、怖いかもしれない。
アンデッドで、良い経験値になるのがいただろうか、よくわからない。

「は!?オーダーメイド……!?まじうらやましいんだが。」

友情価格とか一年越し、とか。
それは、完璧に彼女専用に調整され切ってる様子のマジックバック。
ゾンビモドキの眼が開かれて、啞然とする、実際に、うらやましい。
てか、そんな逸品を作れる知り合いがいるという事自体がうらやましい。

美少女は、本気で特なんだなぁ、と冒険者は感想を抱きました、まる。

「そだな。
 その辺り向かって野営地点を作っておこうか。
 地図にあるなら、他の冒険者が使ってるだろう、野営地跡とか。
 狩猟小屋のような休息地点もあると思うし。」

 小屋があるなら最上だと思う、雨風をしのげるし温かい。
 ここの森の中ではあるだろう、他の冒険者も沢山使うから。

「あ、野草とかは全然かまわないぜ。寧ろウエルカム。
 お料理は、ティアフェルに一任いたします。」

はい、料理が判らないので、その辺りは、出来る人の指示に従います。
ただ、この森の特性的に。危険な草(媚薬の草)があるらしいので、それは注意してほしいところ。
なんか、食えるらしいし。

ティアフェル >  ゴリラじゃないとの言にきょとん、とするゴリラは真顔で云いました。

「え? ゴリラないしボス猿として地元では鳴らしていたよ?
 もうそれでいいんだ……そもそもゴリラ自体かわいいじゃない…ゴリラは素敵な生き物だよ……
 あーね。
 逆に臆病で前に出ないタンカーとかいたよ。イディオさんはまずそれはないし、役割を把握して的確に立ち回るのがリスペクトだよ。
 わたしそれ、恥ずかしながら苦手なんで」

 多少無茶してもフォロー上手な仲間がいてくれるととかく安心感。
 だからって無茶していい理由はないが、周りにまた迷惑かけちゃうかな。という不安感は減る。
 たとえどれだけ生けるアンデッドでもその安定感は推したい。

「暴力反対。
 まずは話し合おうじゃないの。謝罪をご所望なら謝る。ごめんちゃい」

 今いち真剣みに欠ける謝罪を送ってお辞儀した。
 彼の笑顔は思いのほか凄絶に見え。とにかく詫びておく。
 20代男子じゃない笑い方してる。表情筋どうなってんの?とちょっとだけびくびくしてアホ毛が寝た。

「いいっしょ。あげないよ。友達もバッグも」

 へへら、と得意げに笑み。散々持ち物を自慢した厭な女は、しまいにケチなことをほざく。
 たまたま素敵な友人に出会えたのは顔の造作云々よりも、運がいいだけの話である。

「そうねえ……小屋かぁ…わたしのにはそこまでマーキングされてないんだけど……イディオさんのは?
 なんかあればマメにマーキングしとかないとね…今回の探索がてら拾った情報もちょっとは売れるかもだし」

 二束三文でも現金になればまさに儲けもの。
 目印になりそうな大樹などを見つけると地図に書き込み。

「じゃあ採取は任せよっかな。草苺がまだ旬だからそれは特にたくさんあると喜ぶ!
 魔物誘致用の料理は上手くいくか分かんないけどね、任せとけ」
 
 味のほどは現時点では何とも云えないがお腹壊したりはしないものを調理できると思うよ、と請け合って胸を叩き(ドラミングではない)。
 ミントやチャイブ、ディルにローズマリー……使いやすい香草とヨモギやカミツレなど一応薬用も依頼しておく。
 彼の剣でスタッフではかき分けられそうにない藪や茨を払ってもらうよう頼みながら地図を確認し、進んでいくとやがて水音が近づいて、滾々と清浄な湧水が岩から沁みだしている小さな水場に行き当たった。

イディオ > 「うーん……。

 そりゃ、守るために前に出るしかないからなぁ。
 臆病というのはそれだけ周囲に気を張っているという事でもあるけど。
 ティアフェルの言う通りに、役割をしっかりこなすのが一番だと思う。
 タンカーの役割は、全員が安全に動けるようにする、という物だしな。」

ゴリラだ、ゴリラじゃない、に関してはイディオは、言葉を閉ざすことにした。
だって、立場が似ているのだ、イディオもゾンビだゾンビだ、と言われている、否定しても彼女はあきらめている。
そこは、イディオも同じなのだ、というか、イディオに関しては否定してくれる人もいないし。
そういう立場なので、これ以上は、言う事をやめることにした。

タンクという物は、防御するだけが役割とは言わない、その重装で相手を押しとどめたり体制を崩したり。
色々とやれることが多いのだ、だから、それを全力で行い、仲間のサポートをするのが役割と考えている。
安定感を感じてもらえるなら、それ以上嬉しい事はないな、と男は思う。

「うむ。」

冗談交じりの謝罪、お辞儀には、鷹揚に一つ頷いてげんこつを解除。
まあ、じゃれあい、お笑い話程度の事だ、自分も本気ではないから。
表情筋は、目の光と共にお亡くなりになりました。永いお暇をいただいてるみたいです。

「ぐぬぬぬ、欲しい。
 羨ましい事この上ないな。」

本当に、心の底からうらやましい。
あげないよと言われても仕方がないが紹介くらいはしてほしいがまあ仕方がない。
縁が無いのだろうと、あともう一つ、殺してでも奪い取る、とかそういう選択肢はない。
魔法使いのオーダーメイドなんて、基本本人以外は使えないようになっているだろう、たぶん。
なので、それは意味がない、という物だ。

「ああ、一応。マークはあるけども。
 少し前の情報なのとこういう場所だから、壊されたりしてる可能性も0じゃない。」

冒険者として何度も来ている森だから、マークはつけている。
ただし、壊されてる可能性だってある。山賊のねぐらになっている可能性もある。
だから、一応という形にとどめておく、自分たちで寝るためのテントなどは持ってきているから。
今はマーキングは彼女に任せることにした。

「魔物誘致は兎も角。
 上手い飯は心も踊るから、任せた。
 採取は任された。」

胸を叩く彼女、今は聖母だ、旨い飯というのは冒険中は余り縁がないから。
食べられるなら、いくらでも。草苺を多くほしいというなら、判ったと頷く。

「……うーん……と、あれか。」

湧き水があり、小さな水場。
地図にはこの辺りにと目を巡らせてみる。
そして、少し離れたところに、小屋が見える。
すぐ隣では無かったのは、小屋を作るほどの広さがなかったからだろう。
ただ、其れでもすぐ近く見える場所なので、問題はなさそうだ。
小屋があるなら、テントを作らなくてもいいし、小屋の設備には基本煮炊きできる炊事場があるはずだ。
質の良い睡眠がとれそうだ。

ティアフェル > 「裏声で悲鳴を上げて裸足で逃げだすタンカーとか存在していいと思う? 思えないよね。
 ヒーラーの分際で殴りに行くわたしが云う筋合いは心底ないんだけど。
 イディオさんはがっしり盾になってくれる感がね。もうね。
 当たり前のことがちゃんとできるってほんとにわたし、とても立派だと思っているんだよ。案外それが一番難しかったりする……」

 ポンコツによるポンコツな心情。当たり前のこともできねえで独り立ちしてるとかアホが。とは自覚済み。
 年齢が多少上なだけではなく安定安心のタンカーさんは尊敬できる。できるけど目は生き返って欲しい。
 短所が自覚できている、という。ゾンビとゴリラの哀しい共通項。こんな哀しい共通点ないと思う。

「っふー。闇の世界へ誘われるかと思った……」

 半ば冗談だけど半ば本気である。
 彼の笑顔は普段はほっと安堵するようなものだけど、稀にそこらのスジもんでもちょっと下がってごめんちゃいと失言を詫びそうな程、凄みがある気がする。
 
「もっと云うとこれは軽くて丈夫なアリアドネの糸を紡いで織った布製です!どうだ、参ってくれ。
 うふふ、自慢できてうれしー。リアクションありがとう。あげないけどありがとう」

 大事なものだからそうやって羨んでくれてとても喜々とする。
 自慢して見せびらかすのは下品だけど、友達の作ってくれたものだから嬉しくて、腰の薄緑の鞄をぽすぽすと撫で叩いた。
 彼の推察通り専用品であるし愛着しかない。

「なるほどー。どこどこ? わたしの地図にもマーキングしとこ。写させてー。
 なけりゃないで、もともとだしね」

 下手をしたら長期戦という依頼。
 簡易な天幕くらい設置する装備は出立する前に誰が担当するという話はついているし。
 その担当者が慎重派タンカーな彼なので大した懸念はない。
 取り敢えず、彼の地図と照合してこちらにないマークは追記させてもらおう。

「そう云われたら腕を揮わない訳にいかんなぁ……わたしも敢えて不味い物は食べたくないし今日は張り切ろっと。
 あ、イディオさん、あっち、あっちに苺!苺!摘んで摘んで!」

 と道中草苺の群生地を見つければ採取をせがんで、真っ赤に熟れてはいるけれど酸味が強そうな苺に目を輝かせ。
 そうして程なくして水場を見つければ続けて小屋も発見した。とんとん拍子な事の運び。
 今回始まって以来の順調さ!とちょっとテンション上がる。

「やったー、食住そろえばなんとでもなる!
 じゃあ、わたし先に小屋の方行ってていいかな? 水汲み頼んで大丈夫?」

 力仕事は快く引き受けてくれそうだったので、先に小屋の方で食事の支度をしようかと。
 身長差から軽く見上げるようにして確認し。
 応の返答が聴ければ小屋の設備を改めて、調理の段取りをするのだ。

イディオ > 「ないわー。それはないわー。
 一寸、擁護できかねるな、そのタンカーは。

 ま、俺も俺で、色々と普通じゃないところあるし。」

そう。この目……というのは冗談で。
武器には古代の魔道兵器を持ってるし、これでドカーンとすると結構いい感じに吹っ飛ぶ。
タンカーしてるなら、純粋に防御とカバーリングしてろよという所だし、当たり前じゃないこともできる。
立派と言われて、少し面はゆいな、と笑って見せるのだ。

「それは、引きずり込まれるという意味に聞こえるけどな?」

闇の世界というのは、どう考えても、テキーラでガハハでは無くて。
おどろおどろな、死後の世界の方面に聞こえる。さっきまでその話題だったし。
冒険者という事もあり、冒険者ではない単なるスジモノ程度、威圧で何とでもなると思う。
それを出すか出さないかと言えば、出すつもりはないので安心してほしい。

「畜生自慢し腐って。
 羨ましいぞこの、参ったと言えばいいんだな!参った。」

子供のように騒いで見せつけてくる、可愛らしいものを見る目で見やるゾンビモドキ。
本当にいいものだからこそ、うらやましいし、欲しく思う。
何時か金を貯めて自分もそういう鞄を手にしたいものだと。それはそれとして軽口には乗る。

「ああ、後でな。」

はい。今はさすがに写すには一寸いろいろ忙しい。
警戒とか周囲の探索とか、安全に休憩できるときとか、若しくは戻ってからでお願いします。

「あいよー。」

軽く返答。
料理担当の言葉、料理に関していうなら彼女が司令塔。
美味しいものを食べるために、労力を惜しまない人はいない。
という事で、彼女の指示に従い、イチゴを摘んで、未だ空の革袋にポイポポイ。
そんで、水汲み用のバケツを持って、水源へ。

「こん位で大丈夫か?」

バケツ二杯、並々に注がれた湧水をもって、先行した彼女の元に。
美味しいご飯の為なら、である。
まあ、バケツ二杯の水など、軽いもんだ、自分の盾に比べれば。

ティアフェル > 「だよねぇ? だからそいつを敵の前に蹴り出した、わたし悪クナイ…と信じてる。
 ああ……大丈夫だよ、自分の普通じゃ無さを理解できている人は割と冷静だから。
 どこかしら普通じゃなくっても多分周囲は困らないよ、きっと」

 目かな、と思わず青の双眸を見やってしまうことに…悪意はありません。
 まさしく秘密兵器を持っているらしいが、そこら辺は認知していないので。
 なにかしらこの人もやばいのかも、くらいの認識で留め置かれた。
 はにかんだように笑う顔は、さっきのごめんちゃいしてしまう笑顔と違って、自然と笑い返せた。

「ニイサン、勘弁してください」

 食い気味に言葉を被せた。真摯に訴えた。
 そっちの世界に行ったらアンデッドゴリラが仕上がってしまうではないか。
 それは救いようがなさすぎる。これ以上そういう称号要らない。
 
「へへへ。わーい。参ってくれた。痛み入る!」

 凄いのは製作者当人でしかないけど。何故か自己顕示欲が満たされた。
 ノリのいい反応にすっかり満足して締まりなくへらへらして。アホ毛もゆらゆらご満悦そうな揺れ方をし。そんなヒーラーはちょっと気持ち悪い。

 うぃ、と書き写す手間やらなんやらは確かにロスなので素直に首を縦にし。
 その代わりぱぱっと口頭で確認できるポイントだけ抑えておく。

 そして採取と水汲みを任せた彼とは反転して小屋の様子を窺い。
 小屋の中に囲炉裏に似た暖房を兼ねた炊事設備を見つけ、これならいけそうだと肯いて。
 鞄の中の干し肉や干し野菜、岩塩などを確認し、採取できた野草などとあわせて何ができるか考えていれば。
 水を汲んだ彼が戻ってきた気配に、出迎えがてら一旦小屋の外に出た……途端、

「あ、お水ありが――ひぃあ!」

 悲鳴が上がった。彼の数メートル離れた後方にふさふさ尻尾と尖ったお耳、毛むくじゃらの――獣の姿が茂みの間から見え隠れしていた。
 どこから近づいてきていたのか不明だが……気配を殺していたのかどうなのか。群れずに一匹はぐれた奴が近づいていて……ともすれば緑林に紛れて気づかないレベルではあるものの。
 苦手な奴は変に感覚が鋭くて見つけるのが早いのか。イヌ科の気配に飛びあがった。

イディオ > 「蹴り出しに関しては……状況にもよるが。
 そこを売りにして、冒険者ってのは覚えてもらう物、だろうし。」

そう、蹴り出して、タンカーを含めてチームが危険になるならそれは、めっ(拳骨)する案件。
ただ、そうで無いなら……彼の為(タンカー)の行為と思う事にする。
それに、普通すぎると、その他に紛れ込んで、チームを組むことも難しいし、覚えてもらえないので指名依頼などがなくなる。
それを考えると、自分や彼女のように、何か目印になるようなものは、有って良いのだろう。
周囲が困らなければいい、彼女のいう事は、至言とおもう。

「その食い気味がちょっと傷ついた。
 ダメージ1くらい。」

真摯な訴えだからこそ、茶化すように返答して見せる。
気にしてないというポーズではあるが、伝わってくれると嬉しい。
彼女をこれ以上どうするとかそういうつもりもないので。

「まったく……。」

楽しそうにしている彼女、そして、ゆらゆら揺れるアホ毛。
実際楽しいので、まったくとあきれているように見えるがリラックス中。
気の置けない雑談というのは良いものだな、と感じる今日この頃。

水を汲み、戻っている最中。
彼女が自分の持っているバケツと、水の量に対する返答を聞きつつ。

「ん?」

ひぃあ?
どういう返答だろうと思ったが、視線を見て、後ろを見て。
イディオはタンカーであり、全身鎧というのもあってがしゃがしゃうるさい。
それもあってか、こっそり近づかれるときが付きにくくて。
とはいえ、数メートル後ろ、未だ、運がいい。
水の入ったバケツを下ろす時間がありそうだ。

そして、犬系の魔獣は、警戒しているのか、未だ襲ってくる様子はない。
それなら、と、ゆっくりバケツを下ろす。

「まだ、飯は作ってないみたいなんだけどよ。

 ―――装着。」

イディオの盾は、普段は魔法で異空間に収納されている。
イディオのコマンドワード一つで手元に出てきて装備。
盾にマウントされているロングソードを引き抜いて、魔獣の方へ。

「ほぅらワン公。
 こっちだこっち。」

ソンビモドキは、犬に向かい挑発。
美味しいごちそうを作ってくれるか弱いヒーラーの方に行かせる積りはないし、逃がすつもりもない。
イディオを食い殺してから、奥に行くんだなと言わんばかりに、犬の方へ。

ティアフェル > 「……イディオさんは……常に冷静なご意見だね。まったくその通りだと思う。
 それが卒なくできないものなのですよ……もう発言が師匠すぎる」

 多分この人はリーダーとかまとめ、調整役に最適だと思われた。
 そういう管理者めいた役割がこの上なく向いてない立場からすると、尊敬とともに謎にしょんぼりする。
 お説教くらった時のよう、というか現行で食らってるのか。
 いろいろと胸に覚えがあるやんちゃが過ぎる迷惑ヒーラー。
 周りを見てくれる人がいると周りを見なくなってしまう悪癖もあって、何かに謝罪したくなる。

「ごめん…でもさすがにアンデッドゴリラ化したら、ママが泣く」

 母は無駄なくらい元気なメンタル強だけど、娘がゴリアンデッドになったらさすがに頽れる。
 茶化した返答をいただいたが、つい真面目に考えてしまった。
 余計なところで真面目。

 結構兄貴肌だなー、と不意に感じた。
 『まったく……。』と一見呆れているようだけど、仕方なさそうに苦笑してるような…どちらかと云えば柔らかい雰囲気に抱いた感想。

 だが、そんなどこかほのぼのとした空気も――犬恐怖症が見つけたイヌ科の影にすっかり霧散する。
 ただの野犬か狼ならばフルアーマーな人間になど分が悪すぎて、少なくとも一匹では近づかないだろうけど。
 既に人間を何人も食い殺してきた実績か人の匂いで近づいてきたらしい。
 人食いの魔狼。
 そんなの怖すぎる、とイヌ科に関してはとことんヘタレヒーラー。
 半泣きで早くも腰が抜けそう。
 
 しかし、無論魔狼の一匹や二匹で頼れるタンカーさんは引くわけもなく。

「たたた、頼もしいしかない……っ!」

 剣盾を召喚して装備し、魔狼を煽っている。これは素敵に無敵。
 こちらは身体を引き攣らせながら見守るしかできません。

 ゆっくりと狼より一回り近く大きな体躯を揺らす様にして挑発が薄ら分かるのか、苛立ったような唸り声を洩らして。睥睨するような鋭い眼光で対峙する。
 刃物のリーチも気にせず飛び込んでいく程の低能でもないのか、身を低くして跳びかかる隙を伺い。
 
 しかし、徐々に挑発に苛立ちが募ったらしく。そもそもの隙のなさに余計短気を起こし。
 ダッ!!と強靭にてバネのある四足で走り込み。
 一気に距離を詰めて盾持ちの数歩手前で大きく跳躍し、右側頭部へがっぱと(あぎと)を開いて鋭い牙で食らいつかんと肉薄した――

イディオ > 「タンカーは、基本的に、誰を優先に守るかを見ないといけないから、さ。
 冷静に、平静にしないといけないのさ。
 治療中のティアフェルのような心持だと考えてもらえれば。」

リーダーの資質として足りないものがある、仲間を引っ張るための率先性だ。
どちらかと言えば、調整役の方が、性に合う気がする。
お説教のつもりではなかったけども、お説教になっていたとしたら、きっとイディオの資質なのだろう。
すまんて、と。男も謝る。
ただ、彼女だって患者やけが人の治療中は、素晴らしい技術を持っている、特化型と言って納得できるぐらいの腕前。
その時の彼女だって、同じような状態だよ、とも伝える。

「確かに。
 両親は泣かせるものじゃないな……。」

アンデッドと、確定されているがそこはそれ。
確かに彼女がアンデッドゴリラと言われたら両親が泣くだろうし、それはよろしくはない。
真面目に返答続ける相手に、茶化し続けることはよろしくないので、まじめに返答した。


「俺らは残念ながらご飯じゃねぇのよ!」


殺気がビシビシと伝わってくる。
全身鎧に気後れしてないというよりも、食い殺すつもりが見て取れる。
つまり、そういう相手と戦い、食い殺してきたのだろう。
ゾンビモドキは、おいしくないぞ、むしろ食えないぞと、男はニチャリと笑いをこぼして見せる。
ここで前に出なければ、タンカーではないし、男ですらない。

「ティアフェルは、中で、防御を固めておいてくれな!」

万が一という事もあるし、安全とは限らない。
それを考えれば、小屋の中で防衛線を張ってもらえれば後顧の憂いもなくなる。
おびえて動けなくなる、は分からなくもないが―――自分の身も、ちゃんと守ってもらおうか。

「よーし、よしよし。」

此方に向けられる、敵意、そして殺意。
お犬様は、此方をターゲットにして、飛び込んでくる。
しかも、最高な事に、跳躍攻撃と来たものだ。

イディオは、ロングソードを握った右手を、前に突き出す。
タンカーとは壁である、壁に突進してくる狼の口に、大きく開かれた(アギト)に向かう剣。
地面に到着しているならよけられたであろうそれを、口の中に鉄の塊がずぶり、と突き込んでいく。
ついで、とばかりに、重装盾を左手で犬の腹にぶち込んで、引き金を引く。

   ―――ドズン―――

と、地面に固定するための杭打機構が作動し、犬の柔らかなお腹を突き破る。
とどめとばかりに、口の中を突き刺した剣を引き抜き。
その首を断ち切ってみせる。

飛び散る血を浴びて。
ドロドロになった男。

「とりあえず、洗ってくる―――」

食事用のバケツはちゃんと守ったけども。
自分はどろどろになったので、ちょっと洗わないと色々きちゃない。

バケツは入り口に置いて、男は、狼の死骸と共に、近くの水場へ。
その後、ちゃんと戻ってきましたのでご安心を。
狼の死骸は、ちゃんと素材になって、お金の元になったのは、間違いない。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」からイディオさんが去りました。
ティアフェル > 「ぶっちゃけそれはこっちもあることよ……誰を優先して回復させるか、ね。
 ――イディオさんの背中を見て学ばせてもらことにするわ。
 これでまた一皮むけてやるー」

 負けん気は無駄にある。
 だから、自分の出来なさを嘆くよりも出来るようになることを考えよう。
 短い謝罪の声に、少し自嘲気味にううん、と首を振って。

「いや、あのメンタル強な母の泣きっ面若干見たい気もしてきたわ……親不孝な娘である」

 なんだか真面目にしなくていいところで真面目にしてしまったので、いっそ真面目にボケてみる。
 こんな奴にマジレスはきっと勿体ない。

 ――いろいろとイヌ科がくると冷静ではなくなる、これもまたこの特攻ヒーラーのポンコツ面。
 他の魔物であれば、即座に反応してフシャーするが。そして即座に備えて回復魔法の術式を組み上げておくところだが。
 これは無理。これは無理。
 幸い、優秀なる前衛殿は魔狼程度、物の数でもない、といった構えである。
 安心して腰抜かして……おいちゃ駄目らしい。
 小屋に引き下がる様指示が出て。

「わ、わ、かった……!」

 危うくスタン状態になりかけたが、半泣きながら背を向けず、むしろ狼と対峙する彼の背を見るような形で後ろずさっていき。
 小屋に入るなりばたんと扉を閉めて中に引き籠ると、閂を降ろして扉の前ほんのわずかな隙間から外を覗いて物音に耳を澄ませた。

 見えた光景に、ぅっ、ひぃっ、きゃあっ…と押し殺しきれず小さく悲鳴が漏れる。
 狼に躍りかかってこられた瞬間目を閉じたくなったが堪え。
 口を手で塞ぎながら目を見開いて長剣が狼の口の中に埋まっていき、あっさりと屠られる光景に立ち竦んだ。

 その後、鮮やかな手並みで立ち動き、きっちりとどめを刺し確実に仕留めた様子にほぉう、と大きく息を吐きだし全身に入っていた力を抜いた。
 
 そして毛むくじゃらな首がごろんと転がり、しーん…と刹那森閑とする一帯。
 時がほんの僅かとまったようにすら感じた。

 っは、と我に返ったのは無傷だが血みどろになった前衛が、身を清めることを告げる声で。
 閂を外して、外へ出たが。短時間で目まぐるしく巡った凶事に言葉を失って、なんと返事をしたものか分からずに見送るのが精々で。

 やがて血を洗い落として戻ってきたところを「お疲れ様でございました…!!』と平身低頭丁重に出迎え。
 気を取り直すと当初の予定通り調理に取り掛かったのであった。

 その後そもそもの討伐目的である魔物を首尾よく狩れたかどうか。
                               それはまた、別の話となる。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」からティアフェルさんが去りました。