2025/04/27 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」に影時さんが現れました。
■影時 > 街道が人が踏み締め、均して己が域と示した場所ならば。そこから離れた土地はどうだろう。
宗教家や利口ぶった識者等は、そもそも天地に人が所有するものは無い等とも宣う。
その点は間違いなく正しい。同時に間違いでもある。
なぜなら、そこに魔物が跋扈し、人を寄せ付けぬならば蔓延るものこそがその土地の主――のようなものだろう。
人を愛するカミがあるなら、座すのならば、そこに人ならざるモノを置きはするまい。
――街道から離れた自然地帯、平原。
腰の高さまであるような草が生い茂り、灰色の岩が幾つも覗くそこに魔物の群れが現れ、街道に脅威を与えているという。
そういう時に先にお呼びがかかるのは軍隊、騎士団ではない。
軍を動かす程の規模でもなく、脅威には足りないと看做される場合、大体先に呼ばれるのは冒険者、傭兵の類だ。
今回もまた然り。初心者、経験者問わず、多くを募り、多くを放り込む。
運がないものは実力が足りず、及ばぬものから先に死ぬ。
故に経験者は少しでも生かそうと声を出すことが求められる。柄ではない?……いや全く以てその通りだが。
「……数ばかり、増えちゃってまぁ、と。そこ!余り前に出るんじゃアないぞ!疲れたら、濠の方に一端退け!」
刃が当たれば血が飛沫く。小柄なゴブリンの雑兵を切り倒しつつ、声を張り上げる姿がある。
異国風の仕立てをされた装束に防具を身に着けた男が、刀を振って血糊を払いながら近くで動くものたちに声を放つ。
敵の大半はゴブリンやオーク。雑多な構成で尚且つ数も多い。
実際に接敵し、その多さに呆れ混じりにぼやきつつ、当座で組んだ者達の技能を思い返す。
術者に深い濠を半円状に掘らせて作り、そこを即興の陣として術師と弓使い、盾持ちを配置。
投石や矢を盾持ちに守らせてカバーしつつ、支援を飛ばせるようにして、逐次対処にかかる構え。
切り込み役になれるものが、前に出る。不慣れな者は突出しないように気を配りつつ、少しでも敵を削る。
必然、腕に覚えのあるものの負担と面倒が増えるわけだが、仕方がない。
「死なれると目覚めが悪い……以前のハナシだからなァ、……っ!」
何分やはり数が多い。依頼が出されたより殖えたのか、それとも集まったのか。
己独りだけで事に当たるならまだしも、他者との協働は色々と気を配らざるをえない。
見遣れば、身が竦んだような駆け出しめいた姿がある。
その有様に袖口から落とす棒手裏剣を擲ち、接敵しようとしていた大柄のオークの脳天を破砕する。立ち竦む姿に退け、と叫んで。
■影時 > (――さて。ちと、“眼”が要るか)
平原とは厄介だ。地形として有意義な高低差がないだけに、敵状を知りたい場合は面倒だ。
櫓や見張り台があれば良いのだが、こんな時にひょいと拵えられるものではない。
魔法使いにその手の術法に覚えがあるのなら借りたい処だが、顔を青くしていた有様では余裕はないだろう。
腰の鞘に刀を収め、腰裏の雑嚢に手を突っ込む。
ごそごそと漁っていれば、ふわふわした毛玉が触れたような感覚と共に、一枚の術符を引っ張り出す。
指先に残るふわふわ感に思わず苦笑を滲ませつつ、術符を放り上げて印を組み、氣を走らせる。
「……行け」
四隅に朱墨で書き込みがされた正方形の漉き紙が、ぱたり、ぱたりと折られ、鳥のような形を取り、鷹へと化ける。
それを一瞥しながら左目を閉じ、念を篭めれば鷹が一声鳴き、羽ばたいて上空へと舞い上がる。
左目を閉じて鷹の目の視界を共有しつつ、即席の陣地を中心に周回する視点から眼下の風景を俯瞰する。
掃討すべき敵は多いが、大まかに3つの群れが集まっているように見える。
髑髏や奇怪な飾りをぶら下げた竿を旗印、シンボルとしているのは、親玉が居る証とでもしているつもりか。
動き自体としては至極単純。
即席陣地の真正面から押し寄せ、どの群れが先に平らげるかの勝負――なのだろう。
先程から倒しているのは先走った愚か者、とでも言った具合か。
「……駆け出し共がお荷物、とは言うつもりは無ぇンだが。だがー……もう一声位欲しいかね」
数とは力である。恐れに任せて魔力や矢玉を使い果たした場合、速攻で押しつぶされかねない。
人数はそれなりに居るにしても、敵にも術者が居る可能性が高い。
例えば己と組んで、敵勢を食い破る楔となれそうな腕利きでも居れば。面と範囲を吹き飛ばす術持ちでも居れば。
何せ、頭を潰せば烏合の衆になるなんて甘いことはない。如何に弱くとも、ヒトを殺せるが故にこそ魔物だ。
■影時 > 現実は無常である。そうそう容易く思ったように事を運べることは、あんまりない。
運良く、都合よくこちらの頭数が増えるようなものではない。
一通り鷹――忍術で作り出した式紙の目を介し、確保した情報から動きの算段を立てる。
自分独りだけであるなら、まだ良い。だが、誰かと組むとなると考えることが多くなる。
それが煩わしいとは、思うまい。
先達として後進を守り支える。実績を積み、冒険者としてのランクを増すことに伴い、求められる事項だ。
「……下手にここで踏ん張ってると、磨り潰されかねンな、っ、と!
あー、聞けお前ら。俺は右手側の方から回り込み、敵の後ろから派手にやる。
……浮足立った処に範囲魔法を放て。弓や杖を構えてる奴が見えたら、優先して仕留めろ。
前衛と盾持ちは、近づいてくる奴らを討て。逆に陣の後ろに回り込まれねぇよう、気を付けろよ?」
身を屈め、大きく後方へと跳び上がれば、即席の濠で囲われた陣の中に飛び込める。
中に立てこもってた者達が驚く中、落ち着けと手を上げて見せては指示を出す。
見える顔は青かったり、強張っていたりするが、奇声を上げて逃げる様な惨状を呈していないだけ立派だろう。
自分だけ逃げるのか?とも言いたげな顔付きも見えれば、腰の雑嚢に手を入れ、取り出すものを足元に置く。
――布製の肩掛け鞄だ。重々しく、中から響くがちゃつく音の正体は中身を改めれば直ぐに分かる。
弓を下ろした少年が鞄の蓋を開ければ、喜色を見せるのは何本も入った水薬入りの瓶だ。
体力回復、治療用、毒消し等々。これらのある無しは、戦闘継続にあたって大きく響いてくる。
「使い惜しまなくていいからな? まずいと思ったら、構わず使って逃げろ。
んじゃぁ……――ちょっと行ってくるから、留守番頼んだぞー」
この場に残る中で、一番年長に見える魔法使いに後を任せて濠から飛び出す。
空を飛ぶ鷹に意識を飛ばし、一番奥側に見える群れで一番偉そうにしているゴブリンに突進させつつ、走る。
肩を揺らさず、身体を前に傾けながら走る姿は速い。にもかかわらず、気配が薄く、微か。
ハッと気づいた時にはもう遅い。
敵の群れのうち左側となるゴブリンたちは、不意に現れたように見えるニンゲンが投じた何かを見る。
火が付いた導火線が繋がる丸い陶器が、幾つも幾つも。爆音と閃光と共に爆ぜ、陶片や内包されていた金属片を撒き散らす。
爆発は続く。注意を向けてしまえば、死角側から攻撃が向けられ、対応しようとすればまた新たな爆発物――手製の手投げ弾が投じられる。
■影時 > 手投げ弾、手榴弾相当に使える忍術はある。だが、使い惜しむ。
如何に消耗が少ない術であっても、使い捨ての道具として代替できるなら、それを使う方が良い。
人目を気にすることもあるが、余力をストックしておけば不測の事態が起きた際の対処に回せるのだから。
「それに何より、作り貯めてた分は適度に捌かさねぇと……なァ!」
導火線は氣や魔力に反応するよう、工夫している。故に氣を篭めるだけで直ぐに火が灯る。
雑嚢から取り出した傍から点火してタイミングを計り、投じて更に取り出す。
浮足立ったのなら、そこで刀を抜いて切り込む。
優先して斃すべきは術使いと射手。機動力がありそうな騎乗者の類は、今回の戦いでは居ないらしい。
刀を振り回した傍から、流血と悲鳴が上がる。斬るべきものには、今この場では事欠かない。
「適度に斬ったなら退いて、また当たって、だ。
後ろを引っ掻き、間引いてを繰り返していれば……――駆け出し交じりでも生還できる目が出るだろうよ」
難点を云えば疲れる点だが、気疲れするよりはまだ負担が少ない。
己が敵の群れにとっての最大の脅威、たんこぶとなるように認識されれば、その分だけ他の味方の負担が減る。
昼間から戦いは始まり、全て片付いたのは夕刻――死屍累々を残し、怪我少なく揃って帰途に就く。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」から影時さんが去りました。