2024/09/29 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 野営地」にシアンさんが現れました。
シアン > 空が紫色で染め上がる朝焼け。早朝。
森林地帯の中間地点に点在する野営地のうちの一箇所。
簡単な焚き火や調理器具に二~三個のテント、等、
数人パーティなら一晩二晩は過ごせるそこは今は一人。

「ふっざけやがってからにほんとにもぅ~……!」

血塗れで全裸の男が居た。

定期的に発令される、繁殖し過ぎた魔物の間引き。
普段はソロ活動している者からパーティを組んで活動している者迄、
所属ギルドの垣根なしに手隙の者であれば駆り出される大討伐指令。
――に、参加し、子鬼(ゴブリン)やら大鬼(オーガ)やらをど突き回していた訳だが、
その業務中に他パーティの魔道士がぶっ放した爆裂術に巻き込まれた。
近くの子鬼が爆発四散したものだから臓物から何から引っ被った。

怪我はなかったから良いにしても文句もそりゃあ出る、出まくる。

「くっさい! もう!」

周辺の目標を殲滅したあと急いで近場の野営地に駆け込んできたという訳だ。
衣類は脱ぎ捨てて全裸のまま、汚れた衣類を引っ掴んで全裸のまま、川辺に行き、
手桶で水を汲んでまずは汚れから異臭から凄まじいので頭から引っ被る。

「つめてぇ! もう!」

山間部もほど近い森林部でさらに時間帯も朝早く、ともなれると気温は低く水温も冷たい。
手持ちの石鹸を泡立てては塗りたくってごしごし拭って水を被って、としていると、寒い。
文句も止まらないというものであった。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 野営地」に枢樹雨さんが現れました。
枢樹雨 > 人々が目覚めるにはまだ少し早い時刻か。
反対に、夜を生きる者達はそろそろ眠りにつく時間かもしれない。
そんな、朝露の湿気に覆われた静けさ広がる森林地帯に、ひとつの声が響いた。

木々の上。霊体姿でふよふよと漂っていた妖怪は、その声に動きを止める。
長い前髪の下、蒼の双眸をぱちぱちと瞬かせると、声の出所を探して目線を彷徨わせる。
見つけたのは、木々の合間から覗くいくつかのテント。
人の子が居たのかと、テント上空まで移動して改めて見下ろしてみれば、そこに人影はない。
首を傾げた矢先、再び声が響く。

声の出所はもう少し離れた場所だったのかと、今度は川のせせらぎに誘われるよう、妖怪はふよふよと移動する。
そうしてようやく見つけた人の姿。
静かな森林地帯によく響く声の主。
泡まみれのその背中を眺めては、3メートルほど離れた背後に降り立ち、まるでその場にじわりと滲み出るかのように実体を顕わにして。

「火、つけてあげようか?」

なんの前触れもなく声をかける。
淡々と、抑揚なく。こてんと首を傾げ。全裸の異性体相手から目線を外すでもなく。

シアン > ふざけやがって! くせぇ! さみぃ! 云々。
遠くではいまだ冒険者の気勢や魔物の雄叫びもあるけれど此処いら周辺は静かなもの。
そこでこんなに大きな独り言を吠えていれば誰かしろ何かしろの耳に付くのも当然か。

「ん゛~~~……!」

そんなことを気にも留めずに、これでもかと手持ちのタオルをもこもこ泡立てごしごし拭って水被る。
河川に飛び込みたいぐらいなのだが下流に村々があっては水を汚すのは少々拙い、故、
川辺りへとどっかり尻を落として身体を洗ったあとは今度は衣類を手掴み……
と、したところで、散々文句を言ったり冷たさに唸った口が急に閉じて目線が動く。

それは“何か”がじわりと空間に染み出す、数秒前。

「……。ああ。悪いな。火ぃ欲しかったとこだ、そこにくれるか?
 引火しちまうと面倒臭ぇからなるたけ草地じゃねぇとこに頼む。」

そこ。と、掛かった声に、掌をゆるりと持ち上げると人差し指を隣へと向ける。
荒縄を撚り合わせたような造形の発達した背筋に筋骨で括れた腰回りに、尻やら、
背中を見せたままであるし声も気楽に仕草も緩くて急な来訪にも気が抜けた具合。

……いきなり出てきたな……声は女だが今回の参加者にこんな声居なかったような……?

と、内心ではしきり首が捻られているのだが。

枢樹雨 > 貴方が離脱した戦地は、ちょうど妖怪の漂ってきた先とは逆方向だったか。
それは妖怪にとっては幸いか。それとも新たなる刺激に出会う機会を逸した不幸せか。
なにはともあれ、貴方は応えた。
妖怪の肉体とはまったく違う、育て上げられた筋肉。
繋ぎ合わさった肩のそれが、二の腕、前腕のそれが動き、その先の指が場所を示す。

「そこ…」

前髪の隙間から覗く仄暗い灰簾石は、指先を辿って貴方の傍らに視線を落とす。
なるほど確かに。ひとたび制御できぬ火が灯れば、山火事にも繋がりかねない。
ひとつ頷き一歩二歩と貴方に近づけば、妖怪は貴方の傍らにしゃがみ込み、貴方の示した辺りに左手を差し出す。

まれびとの国では珍しいであろう、異国の衣装。
長い濡羽色の頭部を隠す、白絹。
差し出した手は同じく白く、苦労のひとつも知らない貴族の其れに見えるか。
その掌から、不意に炎が生まれる。 蒼く、小さな炎。
それは確かな熱を持ち、貴方の側面をほんのりと温めて。

「…火、小さい?もっと燃やす?」

しゃがんだことで近づいた目線。
叶うなら、貴方の双眸を見ようと其方に視線を向け。

シアン > 「助かる。ありがとう」

すらりと細く白く華奢な指先。
ふわりと灯る鬼火。
身動ぎ一つで柔らかく揺れる白絹。
目線と顔上半分が隠れる黒艶の髪。
北方、よりさらに向こうの衣装。

傍らへとやってきた姿を視線が順々と捉えていく。

途中、彼女の目にもその鋭い作りの眼窩とそれをさらに厳つく見せる赤化粧に金の瞳が映るだろう。
海辺から浜辺に打ち上げられたわかめのような有様になっている黒髪や、彫りのある顔立ちも、諸々。

「こんなナリで悪ぃな。ほれ、ご覧の通り服があの様で格好悪ぃことこの上ねぇが勘弁してくれ」

褥を共にするような間柄、で、あったとしてもいきなり真っ裸というのは非常に格好が悪い。況して、初対面。
血液やら臓物やらでぐっちゃぐちゃになっている衣類に一度目配せしてから、ばつの悪そうな顔で肩を竦めて。
外気に水温にと冷えた体躯をじんわりと温めてくれる火への礼と謝罪もあわせて胸板の前で手を立てる。

「……で。何だぃ、お嬢ちゃん。人じゃねぇのは解るにしてもまぁ妙なとこの妙な時間に出会すが……。
 ああ。先に名乗んのが礼儀だわな、シアンだ。シアン・デイエン」

格好もそうだが気配が殊更、妙。人ではない、魔物でもない、魔王や魔神の類ともまた違うし……と、なれば、幽霊? と、あたりをつけても、そういうのは戦場やら深夜にでも出会いそうなものだが、とどうにも湧き出て止まない疑問は考えても埒が明かなかったのですっぱり口に出した。

枢樹雨 > 他者を温める為にと使うのは、初めての力。
燃料となる薪が爆ぜる音もなく、ただただ掌の上で燃え盛る蒼の炎。
時折早朝のひやりとした風に揺れながら、その様を前方の川に映し。

「いや…、それにしてもまた…、随分と酷い有様だね。空から死骸でも降ってきた?悪戯っ子に狙われた?」

こんなと、貴方の言う姿。
強靭に引き締まって見えるその体躯は、果たして"こんな"と称するようなものなのだろうか。
不思議そうに首を傾げた後、今度は貴方の視線が示す先、もはや着られるのかも怪しい衣服を見つけ、瞬きを数度。
赤が飾る金の像棒を再度見上げれば、どこか愉快そうに少し口角を持ち上げ問いかけよう。
動物の死骸を降らせる妖怪もいたな…なんて、遠い記憶を思い出しながら。

「私は枢(くるる)。…たしかに夜に生きる存在ではあったけれど、こうして肉体を得たから。
 気になることがあればいつだって顔をだすよ。……今日は君が気になった。朝から随分と、元気だから。」

貴方が名をくれるのなら、妖怪もまた名を返す。
川辺に並ぶまま、少しずつ青が滲む空を見上げ問いに答えると、海藻のように貴方の額に貼りつく髪を、指先で摘まみ上げようとして。

「此処へは狩りにでも来たの?」

シアン > 炎関連で痛い目ならぬ臭い目を見たばっかりだが炎も使いよう。
じわり、じわり、肌から染み入るような温さはほっとして吐息も零す。

「そっちのがまだマシな大ポカ食らったんだよ。
 ったく、人のそばで発破掛けやがってからに……」

おかげさまでこの有様とは事の経緯をかいつまんで話す。
間引依頼、他パーティの大失態を文字通り引っ被って、云々。

「おかげさまでこのザマよ、そりゃこんなだ。
 見られて恥ずかしいようなガタイしてねぇが床でもなけりゃ温泉でもねぇとこでよぉ……
 女の目の前でいきなり素っ裸ってのはどうもな。枢ちゃんだって裸で人前出たかねぇだろ」

彼女の目線は黒艶に隠れちゃいるが何処に向いているかは分かり易い。
自分の目元や色が物珍しい、らしい。まあ物珍しかろうとは解る。
唇に静かに浮かんだ微笑みを見留めるが気にした風もなくまた視線を川面にでも移した。
教えて貰った名前を早速気安く呼びながら、分厚い胸板を親指で指しながらも肩を竦める。

「なるほど受肉か。にしてもまぁ、随分と離れたところに来たもんだな?
 北のさらに向こう。ああ、いや、さらに東だろう、その装束、たしか……着物っつったっけな、て、こらー? 打ち上げられたワカメじゃねんだよ、遊ぶな」

北東の果てには北方の帝国と通ずるところはあれどまた違った文化を形成する民族が居ると聞く。
彼女の格好はたしかその、島国だったか山国だったかのものだ。
『人の髪で遊ぶんじゃありません』、と、しっとり濡れた髪を摘む指先に手を伸ばせば、
小さくて力を入れれば折れかねない手指を大きな大きな掌ですっぽり包み隠すよう掴んで握る。
握って、にぎにぎ、加減はしつつも揉むに近い手付き、咎めはすれど怒るでもなく軽く笑った。

枢樹雨 > 聞いてみればなんとも災難な話。そして存外賑わっている様子の森林地帯。
先ほど見た野営地よりもさらに先。離れた場所ではまだ人の子とと魔物が相対しているのかと、好奇心に視線が遠くを見遣る。
うっかりこの場から駆け出しそうな気配を背負いつつ、それでも妖怪は貴方の傍らで炎を灯し続けて。

「魔導と言うものは結構な威力を持っているんだね。
 この国に来て、色々な力がある事は知ったけれど、はっきりと目にしたことはまだないから。」

自身が人ならざる力を扱えることは棚に上げての発言。
妖怪の知る人の子はあくまで人の子であり、魔や妖に通ずる力を扱う者などいなかった為、平坦な声音に驚きを滲ませる。
しかし裸の話となればきょとんと首を傾げ。

「裸くらい別に―――いや、…うん。裸は、駄目。…恥ずかしい、だ。…見て、ごめん。」

数ヶ月前であれば、別にどうということもなかったであろう。
しかしふと、思い出す。己の肉体を他者に晒すということを。
思い出し、思い返し、そっと目線を手元の炎へと落とせば、頷き答えよう。
そして素直に謝るも、貴方の顔を覗き込もうと伸ばした手は貴方の髪に触れる。
体温の低い妖怪の手には、冷水を浴びた貴方の手も温かく、じんわりと伝わる体温に金の瞳孔を見つめ。

「離れている…のか、…それもよくわからない。気がついたらこの国に居て、この身があった。
 私もね、わかめみたいになるよ。先日水に潜って顔を出したら髪が全部顔に貼りついた。」

気が付けば半年近く前のこと。
この国にやって来たその日の事を思い出しては、大きな手に包まれた己の手を上下に軽く揺らす。
貴方が己の手を握るままなら、そのまま己の目許迄引き寄せ、長い髪に触れさせて。

シアン > 「やめとけ。あぶねぇから」

夜行性の人も獣も魔物も眠りに着くような刻限から始まった、奇襲の討伐作戦。そろそろ決着も付く頃合だろうが……パーティメンバーではないとは言えど同業者の近くで爆発させる見境なしなのも居るから、“このザマ”になる危険性有り、害意・敵意関係なしに襲いかねないような者も居かねないからそういう意味での危険性も有り。
好奇心のままにふらりと赴きかねない様相に、手も首も横へとゆらゆら、警告。

「ああ。結構なもんだ。乱戦状態で使うようなもんじゃねぇな。使われたけど。ド三流め」

顔も戦術も戦略も見知った仲でもあんまり宜しくないのに烏合の衆が寄り集まったところをドカン。
わざとやった、ではないにしても、それはそれでたちの悪い話なのだからそりゃあ悪態も口に出る。
汚れで済んだからいが怪我もしかねなかった状況は思い返せば腹が立って仕方ないが、
眉根は寄るし口元も八重歯が覗くぐらいの不機嫌顔も『まぁ済んだ話だけど……』と、
気を取り直して長い溜息と一緒に顔面に篭った力ごと吐いて抜いた。

「うん? おお。そーゆーのわかんのか。いや、まじまじ見てっからあんま解らんのかと、んははは」

脂肪をごっそりと削ぎ落として筋肉の張りを荒い肌をくっきりと盛り上げた凹凸の筋肉質。それも。顔も目元も。じぃ~~~っと、まじまじと、男の裸だのに見ていたからあんまり羞恥だの何だのという概念はないかと思えばあるらしい。覚えて間もない、のか、急に視線を逸らすのだから可笑しくって肩は揺らすし喉も笑気で震わせた。

「結え、それは。その髪でそのまんま潜ったらそりゃあワカメになっちまわぁな」

大きな手ですっぽり握った小さな手は思ったよりもかなり冷たい。

「つーか手ぇ冷てぇ。なんか髪まで冷たくね? これ大丈夫か。向こうで焚き火起こすか?」

彼女の来歴に相槌を打ちながらも、触れる手指や触れさせてくれる黒艶はいっそ心配になる程だ。
彼女自身は彼女が起こす鬼火では温まらないらしいし気温はやはり低い。ので。
首をぐるりと巡らせればその目線もそうだしもう片方の手でも野営地の方を指差して示す。

枢樹雨 > 存在した年数だけ言えばきっと己の方が長い。
けれど経験ならば間違いなく貴方の方が豊富。
やめとけと。その一言に止む無く、尾を引かれつつも、ひとまず好奇心を落ち着かせれば、
遠くにあるだろう戦地に向けられた意識は貴方のもとへと帰ってくる。
そうして握られる前の手で貴方の肩をぽんぽんと、慰めるように、ご苦労様でしたとでも言うように叩いて。

「あまり晒すものではないと、教えてもらった。それに…、恥ずかしいという感覚も、少しわかるようになった。
 ただ、自分以外もそうであると言うことは考えていなかったから。裸を見られて恥ずかしいという男もいなかった。」

目線の端で揺れる肩を見つけてしまえば、前髪の下の双眸がじとりを貴方を見つめる。
それでも意識的に首より上を見つめているのはひとつの成長か。
異性と分類される相手の裸体を"見る"ことへの恥じらいはまだ持っておらず、素直な申し訳なさと少しの恨めしさで、
左手の炎が風に関係なく揺れたのは妖怪も気が付いていないこと。

「結うのは、面倒くさい。……ん?そんなに冷たい?…別段冷えているわけではないけれど、…行こうか。
 私より、きっと君がきちんと温まった方が良い。人の子は寒さで簡単に死ぬから。」

ワカメ事件をそれほど憂いていないのか、そもそもの怠惰気質か。ぼそりと面倒である旨呟けば、不意の申し出に首を傾ぐ。
思えば他者から体温の低さを指摘されたことはなかった。
そんなに自分は冷たいのかと不思議そうに首を傾げては、提案には頷きでもって答え。

シアン > 「うん? あー。ありがと」

労いで叩かれる肩へと視線が向いて、はて? と思ったのも束の間に一つ頷く。
体躯はひとまず見目の汚れも落としたし匂いも石鹸の活躍で凡そは取れた。
問題は、服だ、色から何から染み込んでいるからどうしたものか……
洗濯でどれだけ綺麗になるかも賭けでその苦労は今疲れているし、したくない、後回し。
そういう心境も多少なりとも含んでいないとは言えない焚き火への誘いと尻を持ち上げ。

「男は女程恥ずかしがらんな。それに、俺はまぁ特にかも、ふふん、いい身体付きだろ。
 こーゆーときじゃなかったら何ならポーズも決めてやりたいとこだがなぁ」

性差と自負をちょくと語りながら、ふわり、不自然に揺らいだ鬼火と視線にまた口が開いて笑気が溢れた。

「枢ちゃんはちょこっとどんくせぇんだな? んははははは!」

おまけに、おまけなんてつけずともよいのに、余計に誂って余計に態とらしい笑いまで起こす始末である。

「んじゃ、行くか。いや、かなり冷てぇな、お節介焼きたくなるレベル。
 俺もまーいい加減流石に寒くなってきたしちゃんと火に当たりてぇわ。ああ。あと、あったけぇ汁でも啜っか」

めちゃ冷たい。と、首肯しながら、石鹸でまだ多少泡立っているがタオルを腰に巻いて股間は隠しておく。
彼女も付いてきてくれるというから川辺りから移動すれば、先の鬼火をまた使ってもらって火起こしと、
持ち込んでおいた乾燥させた野菜やら肉やらと調味料でも使って鍋で簡単に汁物でも作るとしよう。

外側から、内側から、暖まるために、こっちこっち、と手招きしながら歩きだして。

枢樹雨 > 「身体はそうだね、すごいと思う。私の身体と全然違う。何故こんなにも違うのか。
 触って良い?ぽーずとやらも決めても良いよ。」

裏表のない素直な感想。
着物の袖に隠れた己の二の腕を見て、貴方のそれを見て、なんならまじまじと見て。
ごめんと謝ったはずが、気になってしまえばついつい見てしまう。
幼子の好奇心で持って触れて良いかと確認しては、返事を貰う前にわかり易く笑う貴方の二の腕をぺちりと叩いた。
炎をぎゅっと握りつぶした手で、その温もりが少し残る手で、ぺちりと。

「どんくさくない。知らない事と出来ない事が多いだけだ。」

だからどんくさいと言われればそこまでな言い訳。
前髪の下で眉間に少し皺が寄っているも、貴方からは見えないか。
しかし握られた手はそのままに、その手を借りて立ち上がれば、同じく立ち上がった貴方の上背の高さを改めて知る。
自然と自分よりも高い位置にある横顔を見上げては、貴方の言う"あったけぇ汁"とやらに好奇心が擽られる。
白絹に隠れた角が獣の耳であるのなら、ピンと立って小さく震えていたかもしれない様子で。

「汁?どんな汁?美味しい?」

手招く先、ひょこひょことついて行く無警戒の妖怪。
野営地へと戻れば調理してくれる貴方の手元を興味津々に覗き込み、出来上がった汁物を嬉々として頂くのだろう。
支払うお金は一切持っていない旨、堂々と宣言するのはきっとお腹を満たした後。
許されるならば、妖怪は上機嫌で貴方に別れを告げ、霊体となって貴方の前から消え去るのだろう――…。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 野営地」からシアンさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 野営地」から枢樹雨さんが去りました。