2024/08/04 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」にティアフェルさんが現れました。
■ティアフェル > 汗と血が止まらない。
昼日中。これだけ酷暑の陽気なのにガタガタ震えて、震えが、止まらない。
額が割れて滴る血を止め処なく噴き出す汗が流して。目の中にまで汗混じりの血が入って沁みる。
どくどくと脈拍は早く、ともすればはあはあと乱れた呼吸が洩れそうになるのを口を塞ぎ込んで耐え。
一方の手は紅く鮮血が滲む脇腹を抑え。
涼しい木陰を作り、蝉がやかましく喚き散らす大樹の陰で息を潜めていた。
――そうなった経緯は半刻程前に遡る。
危険な魔物は出没しないとされていた樹海の浅い区画で簡単な依頼をいくつか抱き合わせてこなしている最中に。
深部の危険エリアまで潜ったどこかの冒険者一行が、狩ろうとしていた大型魔獣を仕留めきれずに中途半端に手傷を負わせたらしく。
手負いとされて激高した魔獣がその冒険者連中を恨んで追いかけて来たところに――不運にも出くわしてしまった。
回復術士一人では無論手負いであろうともそんなものに歯が立つ訳もなく。
急に襲い来た魔獣から命からがら逃げ落ちるので精一杯。
不意打ちの初撃に致命傷を負わされたが即座に回復魔法を自らに施せはしたものの、咄嗟に魔力の制御が敵わず。その一度だけでかなりの魔力を消費してしまった。
そして逃れる最中に爪で裂かれた腹側部と割られた額の傷は癒しきれずにそのまま流血を余儀なくされ。
追って来る魔獣をどうにか撒いたかと思われたが、人間の身には酷く走りにくい森の中を逃げ回っていたせいで必要以上に消耗し、満身創痍でどうにか大樹の陰に隠れ潜んで。
まだ周囲を探しているかも知れない魔獣に見つからぬようじっと身動きもせず太い根が地中に顔を出す広葉樹の根元で蹲っていた。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」にウェパルさんが現れました。
■ウェパル > ふと思い立ちやってきた樹海。
主に、植生に変化があったのか、何か新しい品種の植物が植生し始めていないか、
どんな動物が生息しているか、そして、こちらも新種は発生していないか。
とにかく知りたいことで知らないことがあることが許せぬが故、大抵どこかしらに旅をしている放浪の魔。
清涼な森林の空気の中歩いていると、不意に血のにおいが混じる。
そこまで濃厚に立ち上っていないところ見ると、争いの後と言うよりも
「……手負いが逃げてきた、と言う方が妥当でしょうか。」
そんな分析をしていけば、清涼な空気にいきなり混じるということは、この付近に潜伏しているか、こと切れたか。
普段であれば、特に気にする異変でもないのだが、今日は不思議と興味を引いた。
故に、血の匂いが強くなる方向へと足を進めていく。
特に気配も足音も隠すつもりもないので、下草をかき分ける音が響くことだろう。
■ティアフェル > 夢中で逃げる最中に回復薬などが詰まった鞄も道すがらで落としてしまったらしい。
まだ探しに行ける状況でもない。
とにかく、見つからぬようにこのまま身を潜めてやり過ごせば――……
物音を立てないようにぐったりと木の幹に背を凭せ掛け、回復するために力は抜いていたものの魔獣の気配を察知すれば即座に逃走しなければならない為、気を抜かず半分目を閉じながら耳を澄ませていたのだが。
「………!」
声? 足音……?
明らかに動植物の奏でるそれらとは違う異音を感じとると下がっていた瞼を見開いてこちらへ向かってくる様子の足音に耳をそばだて。
追って来た魔獣…ではない。脚は二本…つまり二足歩行の……下映えを踏み分ける音はそんなに軽いものでもないが、身のこなしは重たげな感じはしないが女性……にしては少々大柄に思える。
手傷を負ったせいで逆に冴える感覚で獣や魔物の類ではない…とは察しがついたものの……さりとてそれが友好的な相手と軽々に判断できない。
足音を潜めてもいないようなのでこちらには気づいたいないのか? ならば逃げるか……いや、もう遅い、逃げ切るには迫り過ぎている……迷っている内に隠れるにも逃げるにも少し遅れて、仕方がないと身構えながらじっと茂みの向こうの人影を息をつめて凝視した。
対話が可能であれば、それを試みてみるしかない。
■ウェパル > 少女の隠れ方は巧みで、ざっと見ている程度ではそうそう見つかるものではなかった。
故に、暫くあちらへ、こちらへ、とさまよう所作に。
「間違いなくこの辺りなのですけれど……」
森歩きには明らかに適さない格好の姿が現れる。
圧倒的な存在感を持つ双丘で女性であることは確信を持てるだろう。
そして、女性にしては明らかな長身。
雰囲気的や顔の作り、表情的には穏やかで理知的。
緊張感は見られないが、隙もまたみられない。
こんな所をこんな格好で独り歩きをしているのだから腕は立つのかもしれない。
そのあたりの情報は容易く手に入るだろうか。
どうにも見つからないがゆえに、いっそ探知魔法でも使おうか、と思った時、
ふと誰かに見られているような感覚を覚える。
今一度視線を巡らせていれば、とある一点で視線が止まる。
大樹の影の茂み。
そこにいる、と思ってみてみれば、確かに気配を感じる。
恐らくは人型。まだ命はあるが、手負い。
凝視している様子から、強い警戒を持っているが、直ぐに襲ってくる様子もない。
正確かどうかはともかくとして、女自身がそう判断すれば、茂みの方へと向き直る。
そのうえで、その場にしゃがみ込み、茂みに視線を向けたまま口を開く。
「……恐らくは、困りごとがあると見ておりますが、そちらに近づいても?
多少は力になれるかと、存じますが。」
完全にしゃがみ込むことで、肉体を使って襲い掛かるハードルを上げ、そのつもりはないとの主張の代わりに。
そして、こちらから近づかないことで、害意がない事を伝える代わりに。
どこまで伝わったかどうかはわからないけれど、あまり刺激をしないようにしようとできる限りを試みて。
■ティアフェル > これ以上新手に襲われでもしたら今度こそ確実に詰む。
そのくらいの判断は当然つくので普段よりも警戒レベルを上げて。
とにかく何事もなく事態が己の都合のいい方へ向くことだけを願った。
逃げる余裕やそれこそ少しくらい反撃するくらいの余裕がある普段ならば、こんなに消極的に物事を進ませないのだが。
今ばかりは話が別。
何かが、誰かがいる、という事象はまだ見ぬ相手も感じ取れているらしいが、正確な位置までは把握できていないらしい。
夏の深緑、青々と目いっぱい枝葉を伸ばす草木は格好の隠れ蓑となってくれて魔獣からも、こちらを探す誰かからも存在を薄れせてくれているようだ。
このまま、このまま自分を見つけ出すことなく諦めて行き過ぎてくれれば――そんな風に思考を過ぎらせたその時。
また呟く声が聴こえた。
何故探されているのか解らない。まだ救助を呼んでもいない。己が魔獣に負われ怪我をして動けなくなっていることは誰も知らないのに。
無防備に姿を現してはいけないと判じて、一層呼吸すら小さく最小限に留めてぴくりとも動かぬように。石化でもしたかの如く大樹の陰に身を縮めていたのだが。
「………?」
一向に姿を現さないこちらへ投げかけられたかと思える声がした。
それは涼やかで穏やかな語り口の良く通る女性の声だった。
そんな風に何かに、誰かに投げかける口調をどこかで聞いた気がする――と気づいて思い当たったのは。
そうだ、手負いの動物に対してのそれだ。
気の毒に思って手当をしてやろうと仏心を出して近づく時に、人はそんな風な声になる。
今のわたしは、傷だらけの野良猫と同じか。
そう思い至るとなんだか妙におかしくて。
だから、憑き物がぽとっと落ちたように警戒心が緩んだ。
こちらへ訪ってもいいかと尋ねる声に返事をしようと、どうやら姿勢を低くして警戒心をさらに解そうとしている思いやりを持っている茂みの向こうの彼女へと。
「…こん、にちは……?
ええ、大丈夫、です……今……魔獣に追われてしまって怪我をして。困っています……
お力を貸していただけると助かります。わたしはティアフェル。冒険者です」
簡単に名前と身分を問題ない程度に明かす。有名でもなんでもないのだから名乗ったところでなんということもない。
息せき切って走ったせいで少し掠れた声でそう投げかけると身体に奔っていた緊張を少々解きながら身構えず彼女が現れるのを待った。
■ウェパル > こちらが投げかけた声に対し、暫くの時をおいて向けられている警戒心が緩んだように感じられる。
アプローチの仕方としては正解だったか、と少しの安堵と、新しい知識として心に留めつつ。
返ってきた言葉を耳にして、こくり、一つ頷けば。
「冒険者のティアフェルさん、ですね。私はウェパル。旅の者です。
魔獣に……もっと奥であれば納得ですが、ティアフェルさん自身が襲われたのでしょうし、迷い出てきましたか。
はい、少々お待ちくださいね。」
そう言葉を返してから立ち上がる。
そのまま茂みの方へと近づいていけば、しばしがさがさと茂みをかき分けて、初めて彼女の姿を目の当たりにする。
割られた額と引き裂かれた側腹部。血が流れているがゆえに、あまりゆっくりしているべきでもないだろうと判断した。
「なるほど、これは難儀しましたね。でも、もう大丈夫ですよ。」
状況を確認してから、そう言葉を紡いで、右手をティアフェルの割られた額に、左手を引き裂かれた側腹部へと当てて目を閉じれば、
その両手に集まる魔力。そして、発動するのは大回復の魔法を無詠唱で発動して見せた。
どちらの傷も癒えていくのがティアフェル自身にもわかるだろうか。
そのまま完全に傷が癒えるまで魔法を継続して、治療を終えれば魔力が消える。そのまま手を離したうえで、腰にぶら下げている水筒をティアフェルに差し出しつつ
「これで、傷は問題ないかと。ここまでよく頑張りましたね。まずは、一息。水しかありませんが、どうぞ。」
にこり、穏やかに微笑んだ。
■ティアフェル > こちらに害を成すのが目的であればもうとっくに強攻手段にでも出ているであろう。
極力刺激しないようにこちらとの接触を図ろうとする様子は、ほんとにぼろぼろのにゃんこを前にした時に似ていて。
でも自分は猫ではない。言葉を解する人間である。
であれば差し伸べられた手を引っ掻いたり跳ね除けたりはしない。
何より相手が穏和に語り掛けてくる女性であることは安心感を覚える。
「ウェパルさん……旅……?
あ、え。っと……もっと深層の奴が仕留め損なわれて暴れ出てきた、らしくて……
あの、撒いたはずだけれど、まだ近くにいないとも云えない、ので……」
どうか気を付けて、と続けかけた時、緑の茂みを割って長躯ながら艶やかな女性が姿を現すと思わず見惚れたように言葉を切って。
こんな森の中を通りかかるには違和感しかないので。精霊かなにかかと錯覚しかけるがそれにしては霊気が少し薄いか。
「え? あ、あ……――っ……」
意識が彼女の容姿に向いていたので、大丈夫と告げられる声と手を翳される所作に反応が遅れ。
そして気づけばその掌から魔力の流れを感じた。
自分の行使するそれとは僅かな異なりは感じるが、間違いなく回復魔法であることは理解でき、見る見るうちに何事もなかったかのように裂かれた肌が塞がって出血が止まり傷口が消え失せれば目を丸くして。
それから仮にも本職のヒーラーは少し敗北感を覚えた。その手並みが羨ましいような少しだけ悔しいような。それよりもありがたさと傷が消えた安堵が勝ったけれど。
「あ、ありがとう! ありがとうございました……! すごい…もう全然痛くない……ウェパルさんは魔法使い……?
……あは、いや、頑張った、のかな…もうただ死に物狂いで……重ね重ねお気遣い痛み入ります……」
施術後に水を差しだしてもらって恐縮しながらもありがたく受け取り蓋を取って、こくっと一口飲むと思ったよりも喉が渇いていたらしくそのままごくごくと勢いよく半分くらいいただいてしまい。
「うーまー……水が沁みる…沁み渡る~……っは……遠慮なく飲み過ぎた……ごめんなさい……っ」
慌ててぺこぺこと頭を下げて飲み口を拭って蓋をし、頭を下にしながら掲げるようにお返しようとしつつ。
■ウェパル > まずは治療、と考えていたため先の言葉に返事は返さなかったが、その部分ももちろん聞いていた。
そして、治療を終えて、何やら安堵の奥に複雑な感情が見え隠れしているような。
とはいえ、本人から語られなければ、悟りでもない己ではその複雑な感情を紐解くことは適わずに。
「いえいえ、偶然ですがここを通りかかってよかったです。
そうですね……どちらかと言うと魔法の方が得意、ですね。
ええ、頑張ったのですよ。魔獣に襲われて命があった。
これだけでもティアフェルさんがどれだけ頑張ったのかが知れますから。」
そして差し出した水を一口飲んで、そこから更に飲み進めるのを穏やかな笑顔で見つめていれば
「ふふっ、いえいえ、いいのですよ。だいぶ苦労されたのです、喉も乾いていらっしゃったでしょう?」
返される水筒を受け取って、もう一度腰に吊り下げてから立ち上がり
「そして、まだこの辺りにその魔獣が徘徊している可能性があるのですよね……ちょっと失礼。」
そう言葉を紡いでから、先ほど直接手で触れたことにより己の手についていたティアフェルの血。
それを弄ぶように手を動かしてから目を閉じる。
『………………』
そのまま何かの詠唱を始めるが、ティアフェルが魔族の言葉を理解できなければ何を口にしているのかはわからないだろう。
ただ、両手に着いたティアフェルの血が仄かに光り、その光がティアフェルが逃げた道に沿ってぼんやりと広がっていく。
そのまま一度手を胸の前で合わせて、ゆっくりと両手を広げていくことで、そのぼんやりとした光が線から面へと変わるように広がっていって。
その光の床にはウェパルもティアフェルも乗ることになり、そして、ティアフェルは心のざわざわしたものがだんだんとおさまっていくことに気付くだろう。
闘争心が、戦闘の興奮が、ゆっくりと収まっていくかのように。
知識にあれば知れるだろうが、いわゆる『戦意消滅(テイミング)』の魔法術。
そして、程なく広げた両手をそのままおろせばしばし、森の奥を見つめて
「……これで、余計に刺激をしなければ自然となわばりに戻っていくことでしょう。
詳しく教えていただいてありがとうございました。
魔獣が不要な命を奪うことも悲しいことですし、魔獣とは言え、理由なく殺されるのは悲しいことでしょうから。」
■ティアフェル > 不意に現れた艶やかな女性に鮮やかに治癒してもらってしまった……
今日は最悪の日。厄日である!と思えて仕方がなかったが……そうでもないような気がする。
少なくとも今猛烈に挽回している気がする。
負傷を癒してもらいすっかり活力も戻って。
「魔法使いの……旅人さん? なんか良くいるようで珍しいような……
死にたくなければ頑張るしかないって感じで。わたし生き意地は汚いんで。
でも、温かいお言葉、重ねて痛み入る所存」
思わず無駄に大仰に低頭してしまう。
好意でいただいた水をごくんごくん飲んでしまい、大分気まずい思いに陥ったものの。
非常に鷹揚な対応をいただき。
「女神様ですか……?」
その容姿と相まっていっそそんな風に緑の目には映った。後光が。眩しい。と眩げに目を細めながら立ち上がる女神を仰ぎ。
「あ、うん、はい……もしかするとまだ……
……?」
手負いの魔獣が彷徨っているとも知れないと肯いていれば、彼女の白い繊手に付着した紅い血。
それを弄るように見えていたが、やがてその手の血から森の中に点々と散っていた血痕が光を放つので驚いて目を瞠り。
なんだか本能的な不安や恐怖勘といった暗い物が宥められていくような感覚。
魔法に関しては回復魔法にしか特化しておらず、他の呪法に関しては門外漢なのだが。
彼女の説明でどういう施術であったかはなんとなく理解した。
大事なのはもうあの魔獣が荒れすさんで見境なく牙を剝いて襲ってこなくなったというのが分かったこと。
「すご……マジ女神……」
魔性に属しているらしいのだからどちらかといえば相対する存在なのだろうけど。
彼女は今まさしく女神のように双眸に映っていた。
詳細を彼女に教えたことなど何もお礼をいただくことではないのでふるふると首を振り。
そして魔獣の命にも慈悲を注ぐ声には。感銘を受けたように思わず跪き。
「信仰して、いいですか……?」
なんか大分とち狂ったことを口走っていた。
■ウェパル > ひとしきりの術式を終えたあと、彼女が跪き向けてきた言葉にしばし目を瞬かせて、
くすっと小さく笑いをこぼせば、己も膝をついて目線を合わせてからそっとティアフェルの頬に手を当てて
「ティアフェルさんの心根を否定はしませんが、私を信仰すると人の道を外れてしまいますよ?」
信仰と言うものは心の奥から出て来るもの。
故に、ここで一度打ち消すか、迷いを持たせなければ本当に知らず知らずのうちに道を外れてしまうかもしれない。
なにせ、実際に信仰し始めたら彼女は魔王信仰をすることになるのだ。
出来てしまうから、ここで止めておかなくてはならないと。
そして、それを口にしたということは、きちんと口封じもしなくて張らないということでもあって。
「でも、そういうことは出来れば内緒にしていただけると助かります。
私は色々なことを知りたいので、色々な場所に姿を現します。
勿論、王都にも。
その時に、剣で、魔法で追われてしまうと、私も悲しいことですから。」
でも、性根が優しそうだとティアフェルのことを判断すれば、口封じの手段は『お願いする』に決めた。
言わないでいてくれるなら、別にこれでも十分なのだから。
■ティアフェル > 神気くさい感じはしないものの……窮状に陥ったところで出会ってまさしく神対応をいただくと。
もうすっかり信心深くなってしまいそうになっていたが。
跪いてバカ云ってしまった己へ同じく腰を落として彼女の手が頬に触れると、やや気恥ずかしいように目を泳がせつつ。
「………ふむ! 了解! 分からないけど分かった……!
じゃあ、じゃあお姉さま…! せめてお姉さまと呼ばせてください……!」
血迷いその2
諭すように語りかけられた声に大きく肯いてアホ毛をぴっと立たせて、女神よりは大分俗っぽいものの。
これまた痛々しいこと云いだして祈るように、というかお願いモードで両手を組み合わせた。
彼女の正体に関しては深く追求しない方がいいのかもとは思いつつ、今見当をつけているのは経験値カンストした大魔法使いかなにかと云ったところ。
人の道に背くというくだりは分かってなさげ。禁呪の研究でもしちゃってたりするのだろうかという想像をする程度。
「んー……訳ありとかはそれぞれあるかと思うしー……お姉さまを追い回すなんてわたしが許さんけど。
分かったわ。やたら人に吹聴したりしない。黙っているべきなら誰にも云わないわ。約束する」
右掌を見せるようにして肩まで上げて宣誓。
彼女と出逢ったこと自体内緒にすると厳重な姿勢を見せた。
助けてくれた通りすがりの優しい美人さんの迷惑になるなんてもってのほかだ。
生真面目な表情を作って誓うのだった。
■ウェパル > 本当にまずい部分は突拍子もない話だからすぐに思い至らないことも多いだろうし、
そもそもそんなことが起こるとすら思わない事でもあるだろう。
結果として、信仰対象からは外れることが出来た様子。
代わりに向けてきた言葉には、ぱぁっと表情が綻ぶ。
「まぁ、ティアフェルさんは、私をお姉さまと呼んでくださるの?
そちらなら喜んで。縁が結べるのは嬉しいことですもの。」
お姉さま呼ばわりはOKらしい。
両手を汲んだティアフェルの両手をさらに包み込むように両手を重ねるほどに。
そして、秘密の口封じにも応じてもらえる言葉と所作。
少し安堵の表情を見せてから、小さく頭を下げて。
「ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいわ。
ビックリする出会いだったけれど、素敵なお友達が出来て私も嬉しいの。
……いえ、お姉さまと呼んでいただくと乞うことは妹が出来た?」
はて、と少し考える所作。
頭の回転が速く、しっかりしている所も多いが、この女、どこか天然な部分もあるようだ。
■ティアフェル > 魔族の友人知人など、冒険者なんかとしていては時折縁を結んだりもしなくもない。
故に正体を聴いたところで「ふむ…!」と大きく肯いて理解はするけど。
まさかいきなり看破するほどの探知力はない。云われて「あーそうなんだー」と納得するくらいで。
ともかく、女神様よりもお姉さまの方がぐっと近しい気がするし、それを許諾していただけたのなら。わあーい、と屈託なくはしゃぐ。
「いいんですか? いいんですか?? きゃー、嬉しーっ。
お姉さまだーウェパルお姉さまー!
ありがとうございます! どうぞよろしくです」
男姉弟の長女。お姉さま…それは憧れてやまない存在。
尊いものを見るようにうっとりしつつ、組み合わせた両手をそのしなやかな手で包んでもらうと。
きゃー。といちいち喜んで小さく洩らし。
「いやいやお礼はわたしの方が云うべきで……
っふふ、お友達でお姉さまってことでわたしはよろしくしてほしいでーす。
はあぁ……理想のお姉さま過ぎて逆上せそー」
自分にも優しくてきれいでちょっぴり天然でかわいいお姉さまがいたらな…と子供の頃飽きるほど妄想した。その妄想の権化のようなお方が目の前に顕現あそばされてしまっていて。
夏の暑さもあるだろうが、頬がぽーっと紅く熱くなってなんだかふわふわと嬉しい。
今日は厄日なんかではなく最高にいい日に転じてしまった。
■ウェパル > お互いに喜ぶ縁が結べたのは良いことなのだろう。
とても喜んでもらえれば、その分自分も嬉しくなって。
そして、自分の迷いについてはすぱっと明快な答えをもらうことが出来て
「ふふっ、そうですね。お友達で、妹。それでよいですね。
あら……私、そんなにティアフェルさんの理想のお姉さまなのですか?」
この部分については目をぱちくりと。
それはそれでとても嬉しいことなのだけれど、理想と言われると少し不思議にも思う所があって。
そんな会話をしていれば、森の中、分かりにくいけれど、だいぶ日が傾いてきたことに気が付いた。
立ち上がってそっと彼女に手を差し伸べて
「ティアフェルさんは王都の方に帰られますか?
今宵はそちらに宿を取ってあるので、もし方向があっていらしたら、帰り道をご一緒していただけませんか?」
そんな問いかけとお願いを。
もし応じてもらえるならば、帰り道の道すがらも楽しい会話は続いていくはず。
もしかすると、どちらかがどちらかをお招きしたりして更に長い一緒の時間を楽しむかもしれないけれど、
それはこの後の二人の物語。
ただ一つ確かなのは、人間のお友達であり妹を得た魔王と、魔王と知らずにお友達であり姉を得た治療師が今日生まれたということだった。
■ティアフェル > 麗しい女性は、同性でも隣にいてくれれば無条件で癒されるものである……
女神めいた容色を有した彼女がさらにお姉さまになって下さる。
最高かよ…と内心で激しく万歳三唱しながら。
「ええ!ええ!ええ!
わたしの妄想から抜け出していらっしゃったイマジナリーなフレンドじゃなくって?と誤解したくなるほどには……いえ、むしろその妄想以上!
わたしの妄想力には限界があったので、理想よりずっとずーっと上でした」
お姉さまがそろそろどん引きしそうな言動を調子に乗って連ねてしまったが。
は、すみません…とさすがに我に返って深呼吸し、平静さを取り戻すと、差し伸べられた手に従って立ち上がり。
自然見上げるような上背の相手に目線を向け。
「あ、はい、その予定……もう夕方か……早く帰らなきゃ……
わ。やった、ぜひぜひ! 一緒に帰りましょ。その方が嬉しい」
安心でもあるけれど、単純にありがたく喜ばしいお申し出だったので即答でお受けさせていただき。
先刻魔獣に襲われたことなどけろっと忘れて、にこにこと上機嫌な笑みを湛えながら声を弾ませていろいろとたわいもない会話を楽しそうに交わしながらそれこそ姉妹のように親し気に帰途に就くのである。
魔王とは知ってても知らずともお姉さまーと暑苦しく慕うのは変わらない。
非常に厚顔不遜なヒーラーは今日から魔王信仰…ではなくお姉さま崇拝者になりましたとさ。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」からウェパルさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」からティアフェルさんが去りました。