2024/01/05 のログ
■オーク > 火を露出させないのは、火を用いる存在に対し有利に対するため。
明かりは暗視能力を持つ存在には眩しく映る。
魔力によるものか、魔導機械によるものか。
『人間? 女1、 小さい』
オークは目を細め、小声でゴブリン達に告げる。
ゴブリン達は一瞬色めき立ったが、木陰に隠れた姿を捉えられていないようだ。匂いで存在はわかるものの、足取りは慎重だ。
成体のゴブリンと同じ程度の人間の女は仔をなすか不確かであることから、捕えるべき相手か迷っているようだ。
魔物学者として、目の前の研究対象を失うのは望ましくない。すべきことは――。
「私は敵意はない。 ゴブリンと仲良くできるなら別だが、立ち去った方がよいだろう」
人間の共通語で話す。岩が言葉を発しているような、ごつごつした声。
ゴブリン達にはオークが何を言っているかわからない。孕み袋を逃がしたと怒りを買うこともないだろう。
この野営地は人間というより魔物・魔族用だ。ゴブリンを恐れない相手かもしれない。
■ハク > 「っ?」
聞こえてきた人間の言葉に驚き、足がとまる。
逃げるほうが得策ではあるものの、聞こえてきた言葉が人間のそれであるならば話は通じるのではないか?と考えてしまう。
ただ、聞こえてくる言葉の内容は穏当ではないもの。
ゴブリンと仲良く……というのは、あまりできるという認識はない。
しかもわざわざゴブリンがいることを教えてくれる、というのはどういう意味なのだろうか、と考えてしまった。
ほんの2分か3分か程度。動きを止めて悩む様子は声をかけてきた存在には感じ取れるかもしれない。
だが結局ハクが考えたのは緩やかな撤退。奇襲もされないのであれば逃げるのがマシかと考えてさらに後ろに下がり……
「ぴあっっ!?」
不幸にもその場にあった、もしかするとオークかゴブリンが仕掛けたものかもしれないくくり罠に片足を取られ悲鳴をあげて倒れてしまう。
あわせて近くの仕掛けがギシギシと音を立ててしまえばゴブリンにも位置がしっかりとバレてしまうことだろう。
■オーク > 近づいてきた存在はオークが発した警告に対して、迷っているようだった。
周囲に他の存在は感じ取れない。ゴブリン達は匂いのする方向へ散開して移動する。
ひとまず囲んで捕縛してから考えればよいと思ったか、魔法で一網打尽にされることを警戒したか。
悲鳴のような音が聞こえると、ゴブリン達は走り出して武器――錆びた剣や石の斧だ――を向ける。
オークも軽く息をついてから立ち上がり、ギシギシと音がする場所へと移動した。
オークは人間との交流は比較的少ないが、それでも知っていることはある。
一般的な人間は夜に単独で森林内を歩き回らない。戦いの心得があるとみてよいだろう。
視界に入ったのは未成熟な個体だが、徒手空拳でも魔法などがある。警戒するにこしたことはない。
「――。変な動きはしない方がいい。君は一人か?」
ゴブリン達はがやがやと騒いでいる。戦利品として持ち帰るかどうか議論しているのだろう。
時折品定めするような視線を向けている。半径2mの包囲。
■ハク > 「い、った、ったた……っっ」
右足首に荒縄のようなもので作られた輪がしっかりと締まり、地面に縫い付けられてしまっている。
暗くよく見えないため、その縄のようなものを焼いたりできるか風の刃で切断できるか……それをするとまた別の罠が発動してしまうかもしれない、という疑心暗鬼に陥ったせいで完全にゴブリンに包囲されるだけの時間を許してしまう。
周囲からゴブリンの声が聞こえる闇の中、正面から再び声がかけられれば、少し息を吐いて立ち上がったのち両手をあげる。
大人化するには魔力がやや足りず、5秒か10秒かかるだろう。その時間を許してくれるかわからない。
人間の言葉を喋るということはカウンタースペルを使える可能性も考えて、下手に魔力を巡らせる事なく無抵抗のポーズを見せた。
「……うむ、一人でござる」
問われた言葉に素直に返事をする。
ゴブリンやオークが闇目がきくのであれば、羽織の下はほぼ全裸に見えるかもしれない。
明かりをつけた所で、胴体部分にほぼ全裸と変わらない魔力被膜に包まれている姿が見えるだけだが。
■オーク > 共通語を話す存在はゴブリンの倍ほどの身長があった。
どういう訳かゴブリンと意思疎通ができているようだ。
「そうか。君と彼等との間で血を流すことにならなければよいと思っている」
単独と聞くと、少し安心したように息をついた。複数人いてはいくら暗闇の中とはいえ分が悪い。
ゴブリン達は少女に近づくと、確認するように身体をまさぐる。
腕、胸、尻……仔をなせる雌なのか、そうでないのかを調べているようだ。
しばらく6つの手が身体を這い回った後、ゴブリンが口にした。
――『大きさ、女、孕み袋、ならない』『食べ物くれ。これ、やる』
ゴブリンには書物や口伝はない。過去捕えたものからの経験知しか存在しない。
獣の耳や尻尾があることから明らかに人間とは別の存在なのだが、それを区別することはできなさそうだ。
事実がどうあれ、ゴブリンは少女を必要なものと判断しなかった。ゴブリンはオークを見上げ、期待するかのような視線を向ける。
先程のオークの動きから、会話ができることはわかったようだ。通訳を頼もうとでもいうのだろう。
オークは背負子をとりに戻ったゴブリンの背中を見遣ると苦笑する。
「食べ物を持っていたら、彼等に渡してくれ。そうすれば彼等は帰る」
■ハク > 暗くてよく見えないものの、掛けられてくる言葉は頭より高い位置。
ゴブリンと似たような体躯のハクからすると見上げるようなサイズの存在からの言葉に、息を呑む。
再び言葉をかけられた後に体を弄られ、その刺激に思わず甘い声を上げてしまう。
だがその程度ではゴブリンたちの食指を唆るほどでもなかったのだろうか……その手も止まり、離れていった。
「……っは、っふぅ……」
多少の発情の吐息を漏らしてしまうのはゴブリンたちの濃い体臭のせいか。
そういう存在の苗床になるべくイジられた体のせいで興奮してしまっていることを悟られなかった事に安堵しながら、続くオークの言葉に耳を傾け。
むぅ、と少し悩んだ後に敵意がないことを示すように両手を振ってから手の先に魔力を貯める。
「……これでいいでござるか?」
空間魔法を開き、そこから3日分程度の非常食になる干し肉と硬パンを地面にぼとぼと、と落とす。
それで見逃してくれるのなら幸いだ、と見えづらいオークの顔に視線を向けて。
■オーク > 身体を撫で回すゴブリン達と、それに対し吐息を漏らす少女。その反応に気付かぬゴブリン。
不思議な光景を眺めるオークの表情は、笑っているのか困っているのか判別しづらい。
背負子や籠を持ったゴブリン達は、非常食を得ると小躍りして立ち去って行った。
「あぁ、大丈夫だ。――彼等を傷つけないでくれてありがとう」
奇妙な言葉を言いつつ、オークは少女のすぐ近くで片膝をつく。
目を細めると腰のナイフを取り出して縄を切った。隙が多い格好。
「君は――ミレー族のようにも見えるが、少し特徴が違うようだ。興味深い。
無理に引き留めはしないが、この野営地でしばらく休んでいかないか」
石を組んで火を隠した焚火を指さすと、返事を聞かずに歩き出した。
背中を向けているのは、攻撃してこないだろうという判断か、容易に対処できるという自信なのか。
オークについていくならば、朝までは安心な場所を提供するだろう。
■ハク > とりあえず残っていた非常食をすべて差し出したおかげか、ゴブリンたちはそれに満足した様子でこちらに対する意識を弱めた。
ほ、っと安堵しながらゴブリンたちが立ち去ったのち、残っていた1人が近づいてきて足の拘束を斬る。
あわせてお礼もしてきたなら、ふむ、と緊張を少し緩めて足を軽く動かし。
「……まぁ、それがしも戦闘はできれば避けたかった故」
こちらをミレー族ではない、と見抜いておきながらも特に何もしない様子。
それどころか休憩の許可ももらえるのであれば、少し悩んでから頷き。
「わかったにござる。では、明日朝まで。
敵対はせぬこと、ここに誓うにござるよ」
男――オークの指さした先、かすかに見える焚き火を見ながらかけられた言葉に頷き。
そのまま彼についていき、一晩の休息を頂くことになるのだった。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 野営地」からオークさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 野営地」からハクさんが去りました。