2023/12/02 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 洞窟」にエルバさんが現れました。
■エルバ > ギルドで受けた依頼を熟すべく、訪れたとある洞窟。
臨時で組んだパーティーの仲間が3名程いたのだが――今は己一人になっていた。
「うーん……まずい。」
まさか、洞窟に踏み入った瞬間に魔法陣が発動して飛ばされるとは、流石に思わなかった。
緩く頭を掻きながら、魔力を内包するからか、薄っすらと明かりを灯す鉱石に彩られた岩肌を見渡す。
当然ではあるが、見覚えのない景色だ。
歩き回るのはあまり良くない、とは分かっていても、この場で留まっている事も出来ず、周囲の気配を探りながら歩み始め。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 洞窟」にファルスィークさんが現れました。
■ファルスィーク > ある筋より良質な鉱脈が見つかったとの情報を仕入れ赴いた先にある洞窟。
入り口付近から魔力は感じ取れてはいたが、天然の物というよりは人の手が加わったものらしく、魔術を使用した罠の類も感じ取れる。
既に主のいない魔術師の研究所か、採掘用の鉱脈なのか。
「ふむ……まあ、どちらにしても放置しているようにしか見えないな。
トラップの類は生きているようだが……」
所有権が生きているのであれば、不法侵入の類になるのだが…そこは搔い潜り知られなければ…と、久し振りに冒険者の真似事も面白いかと、いつものように単身入っていくことになる。
己の周囲にふわりふわりとウィル・オー・ウィスプのように浮かぶ水晶柱が周囲を照らし、分かれ道に出れば、己だけが分かる印をつけて奥へと進んでいく。
魔力を感知し罠の類は避けるなり無効化して進んでいく足取りは普段の歩調のまま。
途中、目ぼしい魔力を付与された代物はいくつか見付けはしたが、回収するのは帰り道でもいいかと更に奥へ――。
ぼんやりと明かりのある空間が目に入ると、どうやらそれが己の一番目当てにしていた鉱脈らしく。
「――質は悪くはないな。
量もそれなりに………うん?」
反響する音と気配から、どうやら何者かいるらしい。
岩肌全体が発行しているので影の類は見つけるjことはできないが……さて、足音と気配を忍ばせて近づくか、それとも堂々と姿を見せるか――思案した結果。
選ぶのは後者であり、察した気配に接近していく事になる。
■エルバ > 岩肌を撫でたり、軽く叩いたりと状態を確認ては、他の罠の類が無いかを視ていく。
幸いにも、部屋全体にかけられた術式の類などは今の所なさそう――とは言え、己に感知出来ない程、巧妙に隠されていれば別だ。
その辺りは捨て置くとしても、かなり危険な場所と言う訳では無いだろう。
ふ、と一息吐いたのとほぼ同時、己の居る些か開けた空間へと近付く気配に気付く。
そちらの方へと身体の正面を向けつつ、腰裏のダガーを引き抜いて身構え。
■ファルスィーク > 進んできた道程、低級妖魔や獣が住みかとしている様子もなく…魔術的な罠が、まだ現役であるので入り込む余地もないかとすくませる肩。
魔力を含んだ鉱脈が発光し光源が確保できているので視界は良好。
周囲を漂っていた水晶柱は、すっと明かりを落として差し出した己の手の上へ降りると、それを懐へとしまった。
聞こえていた足音が消えたのは、どうやら己を察知したからだろう。
お互いにまだ姿は見えないが、待ち伏せの奇襲を心配することもない。
とはいえ、いきなり矢を放たれたり、斬りかかられてはと取りあえずは不可視の魔力障壁を張りつつ歩めば、そこに見つけるのは―――。
「……冒険者か」
小柄で軽装な少女の容姿と恰好から、この洞窟の所有者…とは思えない。
ダガーを構えているのは、妥当な判断ではあるが…ここまで少女が単身で来ているのならば、相当な技量ではあるのだろう。
道中、誰にも遭遇していないので、そのように判断した。
歩調はやや緩めにはなるが、止まることなく少女への距離を詰めていった。
恐らくは…と第一声を向けた己の姿は目深に被ったフードゆえに特徴は少なく。
■エルバ > 刃渡りを外側に向けて構えながら、まだ見ぬ誰かが視界へと入り込むのを待ち構えている。
気配や足音の種類から、魔物の類ではないだろう、と思いはするものの、一緒に飛ばされたパーティーのメンバーにしては危機感が薄い。
他の冒険者か、洞窟を棲み処にする何某か、と、思考を巡らせていれば、現れた人影。
己よりも随分と背の高い――耳に拾った呟きから察するに、恐らくは男性。
間違いなく、パーティーの仲間では無い。
増す警戒心にダガーの柄を握る手に力が籠り――
「っ、ちょ、ちょ! 止まってくれるかなっ!?」
こちらの出方を窺うでもなく、遠慮なく距離を詰めてくるのに、思わず双眸を見開いた。
反射的に数歩、跳ねるように距離を取りつつ、驚きが乗った声を上げ。
■ファルスィーク > 一見したところ、構えているダガーは魔力を帯びていないように見える。
であれば、己の身に刃が届くこともない。
もっとも、魔力を帯びていたとしても相当ランクが高くなければ、障壁を破ることは適わないが。
メインとしているのは、短剣術と体術だろうか。
身のこなしは軽快で身体能力は高そうだ……と観察しつつも、止めない歩みに少女の緊張感が増したのは容易に察する。
この状況で普通は取らないだろう行動を取ったのだから当然ではあるのだが。
「侵入者に対して、止まる理由などあるのか」
少女が数歩退いたのであれば、この状況は己の有利となる。
そして放つのは無論、はったりではあるが……ここを己の所有にするのも悪くはない鉱脈であるとは考えていた為の言葉。
少女が退いた分に加えて歩調を変えないままの足を進めれば、少女の戦闘範囲内の間合いともなるのだろう。
フードの奥から見据える目は、少女の金色の瞳を捉えて発動させる魔眼。
■エルバ > 十把一絡げの冒険者にすぎない己には、普通の剣に魔力を通す、なんて高等技術は出来ないし、勿論、通しやすくする為の剣とて手に入れるには少々値が張る。
そもそもが、索敵や撹乱であったりサポートをメインにしている身では、それよりも優先して揃えなければならない物が山ほどあるのだが。
足を止める様子のないあいてと距離を取りたがって、じりじりと足が下がっていく。
然し、侵入者、と言われて思わず動きが鈍った。
「えっ……、そんな話聞いてな――――」
相手のはったりなのだから当然ではあるが、ギルドで依頼を受けた際にはそんな説明は受けていない。
情報の行き違いか、はたまた――そんな風に思考を巡らせていれば、フードの合間から覗く眼と目が合った。
途端、思考が弛むような、浮つく感覚を覚えれば、それを振り切ろうとするように頭を揺らし。
■ファルスィーク > 出し惜しみが出来る状況でもなく、現状以上の手段を取らないのは、少女にとっては今が最大限の戦闘手段であるとの認識をしつつも、単身でここまで来れるほどの手腕であるのだから、隠し玉があるやも知れないと最低限の警戒はしつつ。
下がる分、余裕も無くなっていくだけではあるのだが…精神的優位取りつつも、投げた言葉はさらに行動と思考を攪乱するには十分な効果はあったもよう。
「考えてみれば分かるだろう。
わざわざ入り口付近に転移の罠など設置したりする手間をかける理由もない。
――知らないというのであれば、謀られたんだろうが…そちらの事情は私の知るところではないな。
さて…どうしてくれるか」
ここの事情は知らないとみて、勝手に作り上げていくのは状況に矛盾しない疑心暗鬼を誘う言葉。
そんな動揺の最中であれば、精神抵抗も隙を突くには容易ではあるが……どうやら生来の素質か、それなりに抵抗力は高いようだ。
が……少女の仕草も十分な隙となる。
対峙している状況で、その行為は―――ゆるりとした歩みは一変して素早く詰める間合い。
懐まで入り込めれば、鋭く拳を放つのは鳩尾を狙ってのもの。
■エルバ > 「それは――確かにそう、だけど……。」
先ず索敵に己が入り、何もなかったから他の面子が足を踏み入れた。
そうして、4人全員が洞窟へ入った途端、転移魔法の発動。
改めて言葉にすれば、侵入者を『防ぐ為の罠』にしては悪辣が過ぎるのだが、詰められていては内容の僅かな齟齬になど意識を回せない。
揺らぐ頭の儘、しどろもどろ、そんな様子で呟いていれば、緩急のついた相手の動きに追い付くのは至難の業だろう。
瞬きの内に詰め切られる距離に退避は間に合わず、構えていた刃を持つ腕を薙ごうとする――その刹那。
鳩尾へと落とされる拳が、腕の動きよりも早く体へと衝撃を伝えた。
「ッぐ……!」
嘔吐きながら幾度か噎せれば、その場でたたらを踏んで体が頽れ。
■ファルスィーク > 言葉がすぎれば襤褸が出るので、それ以上は語ることはなく…それでも十分な撹乱には至っている。
構えていた短剣を多少は危惧はしたが、反応から見て間に合うことはないと判断しての拳は奇麗に入たことで手応えは十分に。
瞬間でも動きが止まったのであれば、続けて短剣を持つ手を掴んで極めるように捻り上げるのは、武器を落とさせるため。
だが、それも必要がない程、戦闘力を奪うには十分すぎる一撃であったらしく……崩れ落ちそうになる躰は、掴んでいた手首にて吊り下げられたような状態で支えられた。
反撃はあるかもしれないが、おそらく届くことはないという判断のもと、改めてみれば華奢な躰は軽く、己の片腕だけでも十分ではあり……手首を掴んだままフードを挙げてさらす顔。
「……ありがちなセリフではあるが、対価は君に支払ってもらおう」
フードを挙げた手は、少女の顎へ向けられ指先で顔を上げさせると再度、覗き込むように見つめる少女の金色の瞳。
間近で発動させる魔眼は先ほどの比ではなく――。
■エルバ > 【持越退室】
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 洞窟」からエルバさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 洞窟」からファルスィークさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」にティアフェルさんが現れました。
■ティアフェル > その日は良く晴れていて風もなくその季節にしてはまだ暖かく活動しやすい気候ではあった。
冬眠に備えるのに忙しい動物たちに時折出くわす以外は一見穏やかな午後の森の奥深く。
紅葉も終わりに差し掛かり、色づき散った落ち葉が絨毯のようにふかふかと敷き詰められた獣道を、とある依頼を受注して樹海に分け入り進むヒーラーが一人。
時折地図やコンパスで位置を確認しながらゆっくりと傾きかけてはいるがまだ十分に高い日差しを仰ぎ、
「明るい内に森を抜けないとね――……」
暗くなると一気に危険度は増すし、迷う確率も上がる。野営するにもこの辺りは向いていない。慎重に進路を選んで、前後左右を気にするあまり――
ずっ……!
「えっ……?!」
足元が疎かになってしまっていた――
一見何もない、枯れ葉の堆積した地面だったが、その下には深い縦穴が隠されていた。
狩猟用の罠か、あ、と思った時にはもう遅く、
「ぅ、ぁ――きゃあぁぁぁああぁ!!」
思い切り踏み抜いて真っ逆さまに落下――悲鳴とともにその姿が地上から掻き消えた。
■ティアフェル > ずささささささ――!!
枯れ葉を巻き込み、身体が、視界が上下左右にぐるぐると大回りして穴壁に擦り打たれながら、どん、と全身を強打して穴底でようやく止まる。
「っ――……い、たた……」
成す術もなく下まで落っこちて膝やら腕やらあちこち擦って打ち付けて、木の葉に塗れながら穴底で呻いた。
のそのそと起き上がりながら、地上を見上げる。
たっぷり積もった枯葉がクッションになって大した怪我はしていないものの、緑の眼差しに戻るべき地上は遥か上に見えた。
実際の高さは2、3メートルと云ったところだろうか。もちろんいくら伸ばしても手は届きそうにない。這い上がろうにも取っ掛かりもないし、柔らかく掘り易い地質だからこれだけ深く穴に仕上げられたのだろうから、穴壁は柔らかく手を掛けてもぼろぼろと崩れてしまう。
結論。大変遺憾ながら自力で這いあがるのは非常に困難。
「ぁー……どうしよう、これ……。
――おーい! おぉーい!! 誰か、いませんかー!!?」
地上を歩いていた時は周囲に誰もいなかったようだしかなり期待薄だが、一応外に向かって大きく叫んでみた。
「だーれかーぁ!! たーすーけーてぇぇええ!!!」
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林」にゴーザさんが現れました。
■ゴーザ > ズシンズシンと重い足音をさせて、それは進む。
身の丈3mあまりの白く大柄な影。
一見すると魔獣か何かの類にしか見えないだろうが、その生き物から聞こえるのが調子外していても音楽らしいと知れば驚く者もいるかもしれない。
ある用事があって王都へ行くつもりの怪物はふと聞こえた声にぐるりと辺りを見回す。
「・・・何じゃあ?今のはヒト・・・なのか?さて・・・」
人助けなどと言う善行を成そうとしたわけではない。単に興味本位から声のあった方へ方向変えて歩き出す。
当然ながら、この怪物に重量感ある足音を消そうとか言う知恵はないから、穴の中の少女には得体のしれないものが近づいてきたとしか思えないだろうが。
さてこのあたりかと思えるあたりで歩みを止めると、なるほど鹿か猪を取るためであったろう落とし穴が、上塞いでいた網や落ち葉もろとも中へと落ちており、声もそこから聞こえる。
ぬっと覗き込んでみると、中にいたのは緑色の服まとった少女が一人。
あまり期待はしていなかったが、少なくとも自分と戦えそうな雰囲気ではなさそうなのに多少気落ちはしたものの、大声出せるところを見るとさほどの怪我はしていないようだ。
知恵の足りぬ魔族ではあるが、自分の姿がヒトに対していい印象持たれないのは理解している。
だから、精一杯の穏やかなだみ声の共通語でかける声が、少し遠慮がちになったのは仕方ないだろう。
「おーい?無事かー?助けはいるかー?」
■ティアフェル > おーいおーい、と懸命に穴の底から外界へ向けて声を張り上げていたが。
「……………ん……?」
なにか聞こえる……。
やがて地鳴りにも似た重厚な足音……らしき振動と何か……熊のように大型で重量のある生き物が進んでくるよう音に気づいてふと声を潜め。耳を澄ませた。
先ほどまでの騒ぎ声は一旦鳴りを潜めて、近づき来るそれに逃げる術はないので穴の底で身構えて、余り意味はなくとも隅に寄り。
その内に足音が停まって。
「――……っ…!?」
ぬ、と穴の向こうから顔を出したのはおよそ人とは思えない異形の姿。
思いがけない様相に息を呑んで頭の中で目まぐるしく思考が回る。
穴の中の獲物、と云った態の己は何も手を打たなければ頭から丸かじり……という結末しか浮かばず。
それを打開すべく脳は回転するものの――
「………っへ……?」
結局有効な手立ては何も浮かばないまま、穴の外から助けが必要かどうか、と問う……どちらかと云えば人道的な声があった。
呆気に取られたように惚けてぽかんと異形の様子を見上げ。
助ける振りをして油断をさせ、あんじょう引き上げたところでがぶり、との結末が頭を過ぎり、返答も碌にできないまま。
何が目的なのか、真意を推し量るように妖染みた風体を仰いでは、最初の一言を間違えないようにと慎重に言葉を選ぶも、適切な返答などまったく思いつかず。
「……………ぁ……あなた、は……?」
誰何の声を絞り出すのが精いっぱいだった。
■ゴーザ > とりあえずまともな返事があったことにほっとした。
少女から見れば、牙だらけの口の端から涎滴らせながら声をかけてくる異形など畏怖の対象でしかないのだろうが、
慎重に言葉選んだであろう少女の思惑など判りもしない単細胞の魔族は、先程とはまるで違う大声(本来こちらが地なのだが)
で答えを返す。
「おう、吾輩か?吾輩の名は、ゴーザという!もう少し上に行ったところにおるモノだ。
ヒトの娘、難儀しているのなら助けてやらんでもないが・・・うん、その代わり3時間・・・?ほど吾輩に付き合え!そうしたらそこから引き揚げてやるが、どうだ?」
何もなければこの少女は王都に帰るのだろう。ちょうど人里に用事もあった魔族としては好都合。
金品を要求しない代わりの条件として出した案は、恐らく少女にとってもそう悪い話にはならないはずだが、肝心の内容話していないので疑念だけが膨れ上がっていくことだろう。
問いかけた後は、ん?とばかりに首傾げて答えを待っていたが、何事か聞きつけたらしく穴から離れ、ズンと一度足音を立て穴の中の少女に少し硬い声で声をかける。
「おい、おぬし・・・戦えるのなら用意をしておけ。妙なのが来たようだ・・・」
先程の少女の呼び声聞きつけたのは魔族だけではなかったようだ。木々の中から現れたのは犬の頭持ち集団でヒトなどを襲う・・・コボルトと呼ばれる魔物がぐるりと穴と白い魔族取り囲んでいるようで。
一応独自の言語など持っているようだがその鳴き声は犬のそれに酷似しており、穴の中の少女には狼でも現れたかと思われるだろう。
■ティアフェル > 話せばわかる、なんて平和ボケした思想に他ならないが、ともかく人語を解し、今のところ穴底の人間を助けてもいいような意思表示はあった。
どうせこのまま穴底にいたって干からびて朽ちるだけだ。
――それならば賭けてみようじゃないか、と先程とは違い野太い地声での長文が聞かれれば傾聴して。
吾輩ときたか、渋いな、と仄かに肩を揺らしつつ。
「ゴーザさん! わたしはティア、ティアフェル……王都の冒険者でヒーラー!
3時間……? 待って、何をすればいいの? ゆっくり生き血を全身から生搾りする3時間ならお断りよ?」
短くもない時間だが、引き揚げてもらう対価としては内容によっては妥当な時間拘束だ。
まだ素直に金を出した方がマシという3時間になるとしたら話は別。
何をするのかとまずは基本的なところを確認してからの否応になる。
「………え……?」
人の女の声がよからぬものを呼んでしまったらしい。が、すぐにそれとは理解が及ばない。
急に見上げていた貌が穴から消えて見えなくなると目を瞬いて。
妙なの?と確かに何か不穏な音が混じり始めたようだ、と察して耳を澄ませてみれば。
「………!? え!? い、犬……?! 狼!? 犬?!犬なの!? 犬!? 無理! それは無理無理無理無理ー!! ぜーったいに無理ぃぃぃ!!
あなた絶対強いでしょ!? 殲滅できるでしょ!? 瞬殺で駆逐するでしょ!? 犬ならわたし無理だから!!
大変恐縮遺憾ではございますが何とぞぶっ殺よろしくお願いいたしますー!! なんでもするからお願いー!!」
穴底で反響して聞こえるそれは……唯一大の苦手で恐怖症な犬の鳴き声に聞こえた。
それだけは絶対に無理!とぶんぶんぶんぶんぶんと首を千切れんばかりに振って。
いざコボルトだと分かると、なんだ、二、三匹穴に落っことして来なさいよ、とスタッフ(殴打武器ではない)をふんふんスイングさせて臨戦するだろうが。
■ゴーザ > 「ほう?吾輩が戦っていいのか?
ようし判った!ティアフェルとやら、後で寄こせと言っても残っておらんかもしれんぞ!!」
少女から悲鳴交じりの殲滅願い受け、望むところとばかりに一声吠えたかと思うと、得体のしれない動物の皮から作ったと思われる背中の袋から得物の板剣引き抜いて、まずが右から左へと横なぎに一閃。
「ギャヒッ!?ギャワン!!」などと悲鳴上げさせながらも次々とあるものは肉塊、あるものは上下泣き別れにしながら打ち払っていく。
穴の底の少女に聞こえるのは、悲鳴、重いものが動く足音、振り回される剣の風切り音だけだったろうが、不意に少女の眼前にドスンと落ちてきたものがある。
何かと見ると、それは魔族の一撃避けようとして足踏み外したであろうコボルトが一体。
大した怪我もしていないようですぐに起き上がると、目の前に得物にするはずだったニンゲンを認め、「グワォン!」と威嚇の声上げながら、錆びたショートソードで一撃加えようと・・。
■ティアフェル > 「わたし! 犬は! 無理だから!
ぜひとも存分にいてこましてください!!」
犬だとしたら、死んでも相手をしたくない。コボルトやゴブリン、なんならオークの方がなんぼもマシ、と全力での訴え。
穴の向こうで何やら、無双している斬撃音が聴かれる。
外見を裏切らず、雑魚何匹掛かってこようがものの数ではないのだろう。
よしいけやったれ、と完全に野犬のような啼き声や断末魔に聞こえるコボルトの声や剣……にしては随分荒々しい剣戟を聴きながら、全滅した頃に引き上げてもらおう、と穴底で待機の構えだったものの。
「――ぎゃっ! い……!じゃない、コボルトか! なんだ、それならそーと云ってよぉー!」
犬じゃない、突然穴に落っこちて来たのはただのよくいるコボルト君だったので。それなら話は別!とすぐさま起き上がって今一剣筋の悪い一撃を放つそれを横跳びで躱して。
「せい!」
右に重心を移動させて躱しながら積もった落ち葉を片手でばっさ!と巻き上げて視界を眩ませると、その隙に握っていたスタッフを横凪ぎに一閃させ、がら空きの首筋を打ち据え。
横に倒れたところで喉元をごしゃっと踏みつけてそのまま動きが停まるまでごりごり踵で踏み潰しては。
「――おーい! ゴーザさーん! そっち終わったァー?」
穴上に耳を澄ませつつ口に手を添えて拡声器代わりにして声を張りつつ。
■ゴーザ > 「!!」
コボルトの一団を粗方片づけたと思ったところに、穴の底から上がる少女の悲鳴を聞いて「しまった」とばかりに穴の縁に駆け寄ると、拍子抜けした調子の声と何というか・・・一瞬戦ったら面白そうだなと言いたくなる戦いぶり見せる少女に今度は此方が肩をすくめ。
もっともあちこち返り血だらけのまま覗き込んだので、一瞬ホラーじみた面相になってしまったのは致し方ない事。
「・・・終わったとも、おぬし意外とやるのだな。機会があったら一戦(ひといくさ)やってみんか?
さてとりあえずおぬしをそこから出さんと、ろくに話も出来んな。ちと待っておれ・・・」
ニヤリと口の端ゆがめて笑ってから、森に入り近くのつたを適当な長さに千切り、それを三本程編んで太いロープ作って穴の縁に戻り。
「今から綱を垂らすから、しっかり掴め。合図したら引き上げてやるから、好きな時に言え」
そう言って、無造作に即席の綱の端穴の中に放り込むと、縁ギリギリで踏ん張ると自分も落ちてしまいそうだからと少し離れて、逆の端をしっかりと掴んで少女の言葉を待つ。
■ティアフェル > まったく犬みたいな声出して紛らわしい、キライッ、と容赦なくぐりぐりとコボルトの頸動脈を潰してぐちぐちぼやき。
そんな姿勢のまま穴の上に呼びかけていれば貌を出して答えるのは、さっきよりも大分凶悪さが増した血みどろな異形で。
もう少し小綺麗ならまるで森の主かなにかの様だろうにと呑気に感想を抱きつつ。
「えぇー…? こんなか弱いヒーラーと喧嘩するのぉ? そりゃあ……それなりの賞金とかなりのハンデ戦じゃないとわたし可哀そくない?
あー。ありがとありがと。助かるわ白い森の主さん」
もうそんな気がする。意外と話が通じるし、少なくともコボルトよりは人間の肩を持ってくれるらしい。
それにしても笑顔が怖い…と口端を歪める表情に悩まし気にアホ毛を揺らし。
そのまましばし待つと手早くロープを仕立てて投げ込んでもらうとその端をぱし、と掴んで。
手にしていたスタッフをウエストバックのベルトに差し込んで両手でそれを握りしめ。
それをぐい、ぐい、と強度を確かめるように何度が強く引っ張ってから。うん、と肯いて。
「よし、おっけー。お願いしまーす!」
見るからにとんでもない膂力の持ち主だと云うことは分かり、遠慮なく引っ張り上げてもらおうとしっかりと蔦のロープを握りしめて引き上げてもらうのを待った。